Gate Defenders ~DEAD END BRINGER~ Story

 
最終更新日時:
白猫ストーリー
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2017/00/00

目次

Story1 断絶をもたらすもの
Story2 戦士の礎
最終話 DEAD END BRINGER


主な登場人物






story1 断絶をもたらすもの


a長銃隊、長弓隊、魔道隊!準備はいいな!

緑豊かな平原に、凛と張り詰めた声が躍る。
境界騎士団副団長アネモネ・フラル。
若くして多くの兵を預かる女騎士は、馬を叩く鞭のような鋭さで、居並ぶ精鋭たちに戦いの開始を告げた。

a一斉射撃!放てえっ!!

アネモネの剣が馬上で燦然ときらめくや、兵士・魔道士らの射撃が、地鳴りのような轟音を伴って嘆き上がった。
矢が、銃弾が、火や氷や雪の魔法が、黒々とうごめく津波となって、天へと馳せる。
蒼い空と白い日差しを、無遠慮に覆い隠しながら横切るうとする。あまりに巨大な影へと向かって。
次々に命中し、詐裂し――世界の終わりともみまごうほどの衝撃で、空気という空気を容赦なく揺るがした。

aどうだ、ティーレ!


T見えちゃいるけど――認めたくない!
境界騎士団のひとり、銃騎士ティーレが、〈鷹の目の次元〉ホーク・アイ・ディメンションに達したとされる瞳をすがめて、うめいた。
T敵、健在――いや!それどころか、まったくの無傷だッ!副団長ッ!!

炸裂によって巻き起こった黒い爆煙が、蜘蛛の子を散らすように四散する。
その内側から現れたのは、全身を光り輝く膜で覆った巨体だった。
手足がなく、前後に長い体つきは海の獣のよう。全身を、重厚な甲殻で覆い尽くしている。
そんなものが、城のような巨体を見せつけ、悠々と空を泳いでくるなど――にわかには信じがたい光景だった。

a無傷だと――どれだけ分厚い皮膚なんだ!


e違います、アネモネさま!
魔道部隊を率いる魔道士エステルが、青ざめた顔で馬を走らせてくる。
e魔道士の何人かは、貫通式の魔法を撃ちました! 物理的な装甲なら、無傷とはいかないはずです!
aならば、あれは――!
eええ。まちがいなく――あいつです!

察するや、アネモネの行動は早かった。
剣をひるがえし、即座に号令を放つ。
a総員、後退ッ! 下がれるだけ下がれ!


K副団長! 敵がッ!
翼を羽ばたかせ、宙を舞っていた騎士カシアが、切迫の声を上げた。

怪物の方を向いて、アネモネは、見た。
怪物の甲殻――その隙間と末端のヒレが、うごめくような光を放つのを。
怪物が身体を丸めると、その光は背部に収束し、ぎゅるぎゅると凝縮されていく。
a来るぞ! 急げっ!

再びの号令で、我に返った部隊が一斉に後退するのと同時――
怪物の背から、光の奔流が吹き上がった。
まるで火山の噴火するがごとく放たれた光は、宙を貫き、天を穿ったかと思うと、千々に裂け、雨粒のように降り注ぐ。

地上へ。懸命に下がろうとする部隊へと。

e防御――――ッ!!
エステルの一声に応じ、魔道部隊が魔法障壁を展開――何重もの楯として、部隊の頭上に広げる。
光雨は、それすらぶち抜いた。
障壁を貫通し、肉と鎧を食い散らし、大地に突き刺さって爆裂する。
砕かれて舞い上がった血と肉と鉄の雨が降り、怒号と悲鳴と恐慌の叫びが入り乱れた。
aなんということだ……!

光雨は、部隊の中央を直撃した。前線にいたアネモネは被害を免れていたが、無論、それを喜べるはずもなかった。
瓦解した自軍を建て直すため、アネモネは、すぐさま伝令を飛ばした。


R出るぞ、おまえら! 負傷者の救出を優先しろ!
号令とともに、ロベルトは馬を走らせた。離れたところに布陣していた騎兵隊が、一斉についてくる。
長射程攻撃によって、敵が高度を落とし、地上に降りたら、突撃する手はずだった。
しかし、こちらの攻撃は無効――あまつさえ、敵の反撃で射撃部隊は壊滅的被害を受けている。
こういうときの救援も、織り込み済みの立ち位置だった。


L隊長!
副官のルートヴィッヒが隣に並ぶ。
怜俐(れいり)な相貌に、色濃い緊張が映えていた。彼のそんな顔を見るのは、”あのとき”以来だと、ロベルトは思った。

Lあの怪物――あれはまさか――
R十中八九、そうだろう。
苦々しい表情で、ロベルトは答える。

R〈デッドエンドブリンガー〉……2年前にエルロウ隊を踏み潰したあの怪物が、とうとう戻ってきやがった!




story1-2


S突如として大陸東端に出現した怪物は、我が物顔で、西に横断を始めた。

境界騎士団本砦――
その廊下を先導しながら、境界騎士団長セドリックは、君たちに現在の状況を告げる。

S怪物は『異界の歪み』から現れたものだった。当然、我ら境界騎士団が討伐に向かったが、手痛い打撃を受け、撤退を余儀なくされた。
クエス=アリアスに時折生じる、『異界の歪み』。そこからは、この世界には存在しない、強力な魔物が現れることがある。
その侵攻を食い止めるため戦う境界騎士団には、同様に『異界の歪み』から現れた、異界の戦士や魔道士が、多く所属している。
強大な敵との戦いにおいては、魔道士ギルドと連携することも多い。実際、君は過去に何度か、彼らと共に敵に立ち向かっている。
今回も、依頼を受けてきたのだが――どうも、いつもと雰囲気が違うことに、君は戸惑いを覚えていた。

S怪物が西進すれば、王都ウィリトナに至る。だが、その途上にも、いくつか街がある。
今は、そうした街での避難誘導を優先している。
敵の迎撃ではなく? と君は首をかしげた。
S現状、迎撃は無意味だ。あれは、この世のいかなる攻撃をも受けつけない障壁を展開している。
一瞬、歩みを止めて――セドリックは、ちら、と君を振り向いた。
Sそれを破るため、君の力がいる。
強く、真摯な決意の色が、彼の瞳を満たすすべてだった。

 ***


折しも、風向きは怪物にとって追い風だった。
空を泳ぐ怪物は予想以上の速度で移動し、まだ避難の続く街の上空へ、悠々と差しかかった。
このまま上を通り過ぎてくれればと、誰もが祈ったが――
あいにくその祈りは、この世界のどの神にも届かなかった。
怪物の頭上の空間が、禍々しく歪み、闇色の大穴となって渦巻いた。
するとそこから、怪物本体によく似た、無数の小さな魔物が現れ――

川に肉を放り込まれた肉食魚のように、逃げ惑う人々へと喰らいついていった。


Rこっちの予想を、ことごとく裏切ってきやがる!
怪物に追われ、逃げ惑う人の流れとは逆方向に走り出し、ロベルトは双剣を抜いた。
Rたあっ!
街路に入り込んできた魔物に接近し、見事な剣撃で斬新する。
まさに鎧袖一触。足も止めずにそのまま駆け抜け,さらに2体の魔物を血祭りに上げる。
Rなるほど、こいつは――
双剣を振るい、血のりを落とすロベルトヘ、新たな魔物が上から垂直に降り落ちた。
L休んでる場合ですか!
怒声とともに、一刺が走る。
駆けこんできたルートヴィッヒの長剣が、ロベルトを狙った魔物の腹部を貫き、一突きで絶命させていた。

Rふむ。やはりな。
Lなにが、”やはり”なんです?
Rいや。おまえのへなへな剣でも倒せるってことは、どうやら我が身に眠る太古の王の血脈が突如目覚めて超パワーをくれたわけじゃなさそうだ。
Lアンタん家、魚屋でしょうが。
R魚 屋 王。
Lどのみち魚屋。
じろりとロベルトを睨みつつ、ルートヴィッヒは周囲を警戒する。
また新しい諸物が何体か、人気のない路地から通りに出てきていた。
Lまじめな話、雑魚には攻撃が通じるようですね。本体を覆っていた光の膜がない。
Rわざわざ雑魚を出してきたってことは、例の攻撃は相当疲れるんだろうよ。
でもって、雑魚に障壁がねえってことは、あの障壁を維持するにも、体力なり魔力なりを使うってことさ。
Lだとすれば、この雑魚どもは、”栄養補給”のために送り込まれた、ってところでしょうね。
Rああ。俺らが牛や豚を喰うのとおんなじさ。もっとも――
笑い、ロベルトは双剣を構え直した。
Rこちとら狼だがね!


 ***


Jこっちです、みなさん!落ち着いて、誘導に従ってください!

Uこらそこ、ドサマギで火事場泥棒なんてやってんじゃないよ! とっとと来な!

Tあら~、こっちから敵が来ちゃいました~。クルンちゃん、時間稼ぎ、お願いね~。

町人の避難誘導を行いながら、状況に応じて敵尖兵を迎撃する。
そんな臨機応変な対応は、一般兵には難しい。”変わった場数”を踏み慣れてきた境界騎士団だからこそできることだった。


Eアネモネさま! 伝令からの報告です。黒猫の魔法使いが、砦に入ったと!
Aわかった。なら、我らのすべきことは――
Eウルトラ死ぬほど癩だけど、時間稼ぎと人逃がし!
エステルは杖を掲げ、呪文を詠唱する。
カッと天から迅雷が降り注ぎ、街路を駆ける魔物を数体、まとめて討ち貢いた。

天元魔道。雨や雷、果ては唄石など、天に属するものを利用する、超々高等魔法である。
クエス=アリアスの魔法ではない。かつてエステルがいた異界で使われていたものだ。エステルは、その最大の名手と謳われていた。
E(そんな私でも、勝てない相手はいた)
『異界の歪み』から、魔法の効かない魔物が現れ、高度な魔法文明を誇る異界を破壊し尽していった。
世界最高の魔道士を自負していたエステルも、無力な小娘でしかなかった。泣き叫び、逃げ惑うことしかできず、己のすべてを呪った。
逃げた果て、異界と異界の狭間に落ちたところを、オルハとアネモネに救われていなければ、そのまま死んでいただろう。
E(今は、あのときの私とは違う)
才能のすべてを否定され、心を折られた。初めての、そして圧倒的な挫折に膝を屈し、流せるだけの涙を流した。
すべてを失い、無力さに震えるという絶望。そんなものを味わってしまっては――
E(私みたいな才色兼備の超天才でさえ、あれだけ落ち込んだんだもん。そんじゃそこらの凡人じゃ、立ち直れるわけないよね)
必死に逃げていく人々を背に、エステルは立つ。
Eしょうがないから守ってあげる。あとで感謝の嵐をくれなさい、凡人ども!
それは、かつての自分を守るのと、同じことでもあるのだった。




story1-3


Rいよっと!
Lはあっ!
ふたりは大通りの真ん中で、敵尖兵の迎撃に努めていた。
Rおうおう、面白えくれえ釣れるじゃねえの。
L目についた人間から優先的に狙う習性があるようですね。
Rつまり、目立てば目立つほど被害を減らせるって寸法だな。おいルートヴィツヒ、おまえ、アレやれよアレ。いつものホラ。裸踊り。
L一度たりともしてねえよ。

軽口を叩き合いながらも、ふたりは、続々と迫りくる敵尖兵をことごとく斬り捨て続けている。
豪胆にして麗々たる双剣と、怜俐にして冷酷なる長剣。
ただ剣技に優れている、というだけではない。両者とも、その場の状況・環境・敵の位置と、戦況のすべてを見定めながら動いている。
最遊な立ち位置で、最適な攻撃を、最適な相手に、どんぴしゃのタイミングで繰り出す戦術眼。それこそが、このふたりの真骨頂だった。

Rケッ。故郷の戦いを思い出させてくれるじゃねぇの。
Lもう負け戦の気分ですか? あなたらしくもない。
Rおいおい、俺ァ、負け戦なんざしたことねぇぜ。あんときだって、最後には俺の勝利だったろ。
L僕がいなかったら死んでたでしょうけどね。それに、どのみち故郷には帰れなくなった。

ふたりは、同じ異界の出身だ。
奇抜な手を打つ常勝の将軍と、緻密な策をなす冷静な副官として、幾多の劣勢を文字通りひっくり返してきた。
『異界の歪み』から現れる異形の軍団に、帝都を攻め落とされかけたときも、ふたりは協力して、敵の首魁を討ち取ってみせた。
その代償として『異界の歪み』に呑まれ、異界と異界の狭間をさまよい、漂着したのが、このクエス=アリアスだった。

R後悔はしてねぇさ……。
後方から躍りかかってきた1体を、振り向きざまの一閃で斬り捨てながら、ロベルトは違い目をした。
Rこの世界の方が、物価が安くて飯がうまいからな……。
L理由がひでえ。
あきれながら、ルートヴィッヒは新手の頭部を唐竹割りにした。

 ***

A勇者たちよ、鎮魂の詩を刻め!
凛然たる一声に応え、無数の剣が宙を駆けた。
街路を逃げる人々の間を縫って飛来し、無防備な背中にかぶりつこうとした魔物たちへ、正面から突っ込んで串刺しにする。
単に、剣が飛んで突つ込んでいるわけではない。それぞれの剣が、自ずと流麗にひるがえっては、果敢に突撃し、正確に敵の急所を突いている。
Aいいぞ! 1匹たりとも、民に触れさせるな!
霊剣を鼓舞しながら、アネモネ自身も剣と魔法を駆使し、向かい来る敵尖兵を迎え撃つ。
ひとり、『歪み』に落ちて、オルハに救われ、この世界に漂着したアネモネは、彼らの命を無駄にしないよう戦うことを誓った。
そして、セドリックとオルハの力を借りて、異界の狭間をさまよう部下たちの魂を救い、剣に宿したのだ。
R民を守るために戦う。それが我らの誓いだ。たとえ世界が違っても、誓いを果たさぬ理由はない!

霊騎剣・空華星楼。死してなお弱き者のために戦う騎士の刃が、ずらりと並ぶ。
そうだ――と告げるように。それでいい――とうなずくように。
Aゆくぞ!

 ***


O ようこそ、黒猫の魔法使いさん。お待ちしていましたよ。
セドリックに案内された部屋の前で、彼女は、おっとりと微笑んだ。
名は、オルハ。『異界の歪み』の存在を感知し、また、その消失を早める能力を持つ女性だ。
Oご足労いただいちゃって、すみません。実は、あなたに会っていただきたい方が、こちらにいらっしゃるんです。
Sさ、どうぞ。

ふたりが扉を開き、君を部屋の中に勧める。
君は、若干の緊張を覚えながら、ゆっくりと部屋に足を踏み入れた。
そこにいたのは――


初めまして、黒猫の魔法使い。
私はエアリル――
かつて神界に属していた、天使です。


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