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【白猫】シェアハウスⅡ レイン story

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最終更新者:にゃん
2017/07/31


目次


Story1 きっと働くしかない

Story2 レインの得意なこと

Story3 アシスタント悪魔

Story4 クソ最高!

Story5 好きにやる

Story6 レインの叫び

Story7 拳の価値は?

Story8 二人の漫画道

Story9 ギリギリバイク

最終話 オメーが決めろ




story1 きっと働くしかない



 レインに家賃の話をしなければ――


あん?誰だ?

赤髪じゃねーか。なんだ?俺と勝負しようってのか?

いや、そういう話ではなく――家賃の話を――


 ***


――というわけで仕事をして、家賃を払ってほしい。

魔物退治とか魔獣退治みてーな仕事ねーのかよ?

ない。

めんどくせーな。やっぱ性に合わねー。さっさと決着つけて、帰るか……

つーことで、勝負しよーぜ、赤髪!

今、忙しいから無理だ。

気にすんな。俺は気にしねー。

冒険家としてシズに依頼されたことがある。

それを今は優先しなければならない。

…………

だが、レインが家賃を払ってくれるなら、勝負のことを考えてもいい。

わかったよ。働けばいいんだろ?働けば……

クソめんどくせー……


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story2 レインの得意なこと



 レインは仕事をみつけただろうか――


あん? なんか用か、赤髪。

仕事はみつかったか?

みつかんねー。面接っつーのか?

なんか態度が悪いとか、ゴチャゴチャ言われた。

喧嘩で金とか稼げねーのか?

それはダメだ。

なんで魔物退治とか、そういう仕事がねーんだよ。

そういう島ではないから――

戦闘以外で得意なこととかないのか?

得意なことねぇ……そう言や、昔、絵がうまいって褒められたこと、あるな。

そうなのか?

まーな。取り逃がした悪魔の顔とか、いろいろ描いたりしてたからよ。

ま、どうでもいい昔の話だ。

試しに描いてみてくれないか?

あん?なんでだよ?

もしかしたら、絵の仕事があるかもしれない。

……わかったよ。ちょっと待ってろ。


 ***


ほら、できたぞ。

<予想以上にうまかった。まるでプロの画家のようだ>

すごい。

別にたいしたことじゃね一よ。必要だから上達しただけだ。

これなら仕事になるレベルだと思う。

……そうか?

絵やデザイン関係の仕事を探してみたらどうだろうか?

……そうだな。考えとく。



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story3 アシスタント悪魔



レイン。どこに行くんだ?

あん?仕事だよ、仕事。みつかったんだよ。

漫画家のアシスタントだ。

よくわかんね一けど、来てくれって言われてな。

漫画、読んだりするのか?

いや、読んだことねー。ま、どうにかなんだろ。

(大丈夫だろうか?)


 ***


あ~、すんません。アシスタントしに来たんすけど?

あ、待ってたよ!ほら、早く早くこっち来て。

ういっす。

いや~、アシスタントの子が一人、病気になっちゃってね~。困ってたんだよ~。

君、画力あるんだよね。背景いける?

はいけい……っすか?

うん、それを頼もうと思って。森の中のシーンだから。

この立ってる奴らに合わせて、森描けばいいんすか?

そう、頼むよ。

……わかりました。

線がブレないね、君。

早く正確に描かねーとならなかったんで。

…………

なんすか?

いや、大丈夫そうだと思ってね。任せたよ。

わかりました。


 ***


できたっす。

早いね!そして、うまいね!

……どうも。

次、こっちの背景、お願い。それが終わったらトーンで。

トーンってなんすか?

……君、本当に素人なんだね。

……すんません。

いや、いいよ。トーンてのは描画されたシールでね。

これを貼ったり、削ったりして、陰影つけたりするんだよ。

へぇ……

頼むよ。


…………悪くねぇ仕事だな。


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story4 クソ最高!



<レインが珍しくソファーで寝転がっている>


ん? なんだ、赤髪か……

なにを読んでるんだ?

漫画だ。<特攻ドラゴン>っつ一んだよ。

どんな内容なんだ?

ドラゴン乗った連中が、チーム作ってよ。喧嘩したり、助け合ったりすんだよ。

誰が一番強ぇかみたいな感じで、ぶつかったりしてな。

すげー燃える。オメーも読め。

アシスタントの仕事して、はじめて漫画、読んだけど、クソ最高だな!

それはよかった。

俺もこういう腕っ節だけの連中が、喧嘩したり仲間集めたり、そういう漫画、描きてー。

目標ができたのはいいことだ。

ところで、その漫画はどうした?

アシスタントのセンパイに借りた。

……仲間ができたのか?

仲間ってわけじゃねーけど、いろいろ教えてくれるから助かってるぜ。

<レインも仕事を通じて、丸くなってきているようだ>

よし、赤髪、勝負しようぜ。

え?

漫画の喧嘩シーン見てたらよ、俺もやりたくなっちまった。

それはまたの機会で……

いいじゃねーかよ。

怪我でもして、漫画家の先生に迷惑をかけるわけにも――

……そりゃ、まあ、そうだな。

やるとしたら休日前か……センセーに休みの交渉しとく。

(そういう問題ではないのだが――)



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story5 好きにやる



フゥ……少し休憩入ろうか。

あ、俺、なんか飯作るんで。

ありがとう、レイン君。

レイン君のおかげで食事が楽しみだね。

別にたいしたことじゃないんで……


 ***


また明日もよろしくね。

お疲れ様。

お疲れ様です。


レイン君もデビューしたいの?

デビュー?

プロの漫画家としてさ。

多少は……

だったら、いつかアシスタントに見切りをつけないとダメだね。

俺みたいにプロアシで食ってくことも可能だけどね……

でも、センパイ、絵、クソうまいじゃないっすか。

技術は長く続けてれば、嫌でも身につくよ。

でも情熱を燃やし続けるのは大変なんだ。若い時は自然にできるけどね……

結果が全てだし、負ければへこむ。でも、勝てばそれが情熱の燃料になる。

若いうちにチャンスをつかんで、スタートラインに立ったほうがいい。

俺みたいになっちゃダメだよ。

…………


 ***


おい、赤髪、ちょっといいか?

俺、このままでいいのかと思ってな……

いきなりどうしたんだ?

センセーんとこで、漫画の描き方とか、面白さを学んだんだけどな……

そのうち自分でもギャラとかストーリーとか作りたくなってきたんだ。

でもよ、センセーんとこのアシスタントで長え人がいんだよ。プロアシっていうんだけどな。

アシスタントとしてできる奴でも自分の漫画を描いてねー。

それが悪いってわけじゃね一んだ。でもよ、どうせなら自分の漫画描きて一だろ?

描きたいのなら描けばいいんじゃないのか?

……そりゃそうなんだけどな。

センセーに比べると、俺の絵はまだまだなんだよ。

…………その先生より絵が描けないと、漫画は描けないのか?

いや、そういうわけじゃね一。

だったら描いてみればいい。描かない限り、なにも始まらない。

…………それもそうだな……

オメーの言うとおりだわ。どーせ、センセーみたいに描けるわけねー。

好きにやってみるか……


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story6 レインの叫び



 最近、レインを見かけない――

 アシスタントの仕事をし、帰ってきてからは部屋にこもっている。

 ――少し心配だ。

「ちくしょう!時間がねぇぇっ!!」

 レインの声だ――



レイン、どうした?

どうしたもこうしたも、時間がねぇ……

今、自分の漫画描いてんだよ。投稿用のやつなんだけどな……

明日が最終締め切り日なんだよ。だから、今日中に上げねえとならねー。

でも、ギリギリ時間が足りね一んだ。

手伝えることはあるか?

手伝ってくれんのか?

できることは限られてると思うが。

いや、べ夕塗りとトーンだけでも助かる。

このバツ印つけてるところがべ夕の指定だ。

わかった。

…………

<はじめてレインの描いた漫画を見たが――>

本当に絵がうまい。

まだまだだよ。

漫画ってのは絵がうめぇだけじゃダメだ。

絵ってのは、瞬間を切り取るもんだろ。でも、漫画はそうじゃねぇ。

一枚の絵のなかに動きが入ってる。

動きのある絵は瞬間だけじゃね一んだ。

俺は、まだそういうことはできねー。

でもよ、できねーなりにできることはある。だから、やれるだけやる。

本当に漫画が好きなんだな。

元悪魔殺しが今や、こうして絵を描いてるなんざ、自分でも想像できなかったな。

ま、おもしれ一からいいんだけどよ……

いいことだと思う。

集中すっから少し黙ってくれ。

わかった。


<その後、朝まで黙々と作業を続けた>


終わった……

赤髪、助かった。オメーがいなけりゃ、終わってなかった。

たいしたことはしていない。

さてと……

どこに行くんだ?

アシスタントの仕事だよ。ついでに原稿、送ってくる。

寝てないが、大丈夫なのか?

まあ、どうにかなんだろ。じゃあな。


 レインは、がんばってるようだ。



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story7 拳の価値は?



「クソがあああっ!」

 レインの声だ――


レイン、どうした?

どうしたもこうしたもね―よ!ふざけんな、ちくしょう!

落ち着け、レイン。

うるせー!!ああ、クソ!漫画なんてクソだ!!

なにがあったんだ?

落ちたんだよ!!笑えよ!!

落ちたというのは、漫画のことか?

そうだよ!!落ちやがった……落ちたんだよ。

…………

やっぱ性に合わねー。悪魔殺しが漫画?ありえね一だろ。

おい、赤髪、今日という今日は勝負しよーぜ。

そっちのほうが俺らしいしよ。なあ、赤髪、ヤろーぜ。

ヤケになるな。

うるせー、表出ろ。

……わかった。


 ***


…………

行くぞ!赤髪!

クソが……

…………

<レインの拳が主人公に当たる寸前で止まっていた>

レイン……

どうしちまったんだろうな……あんだけ喧嘩が好きだったのによ……

手ぇケガしてGペンにぎれなくなるとか、考えちまうんだ。

それだけ漫画が好きなだけだ。

……でも、落ちたぞ。俺が漫画を好きでも、漫画は俺を好きじゃねー。

チャンスはいくらだってある。一度の失敗で諦めるのは、もったいない。

…………

……次は必ず勝つ。負けたままじゃ終われねーしな。

だから、なんつーか、赤髪……頼みっつーか……

いや、だから……締め切りが近いんだよ。忙しいっつーか……

第三者の意見が欲しいっつーか……

手伝うよ。

……あんがとよ。


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story8 二人の漫画道



で、どうしたらいいと思う?

どうして落選したのか、そこから考えてみよう。

わかんねー。俺は俺の中での最高なもんを描いたつもりだ。

…………。手伝っていた時に思ったのだが……

セリフが多すぎたと思う。絵で表現できてるのに、セリフで説明していた。

……伝わるか、不安だったんだよ。

それと、主人公がどうして戦うのかわかりにくかった。

あん?

強そうというだけで喧嘩を売っていては、普通の人は共感しない。

……そういうもんなのか?

そういうものだ。戦うのはいいが、わかりやすい目的がないと……

確かにな……よし、ネーム切ってみる。

ネーム?

漫画の下描きみてーなもんだよ。それでストーリーがわかる。

…………。その前に登場するキャラクターをきちんと考えたほうがいいのでは?

そんなもん、強え奴でいいだろ。

ただ強いだけだと共感できない。漫画を読むほとんどの人は強くない。

だから、普通の人が理解できる要素がほしい。

そう言や、センセーも弱点作れってよく言ってるな。

……なるほどな。ただ強えだけじゃダメか……

例えば――


 ***


こうやって考えるとキャラクターってヤツは、大変だな。

でも、だいぶよくなってきたと思う。

あとはストーリーか……よし、ネーム切んぞ!ちょっと待ってろ。

わかった。


 ***


よし、できた!どうだ!?

…………。波がない……

あん? 波?

ずっと同じテンポでバトルをしている。戦う理由が復讐なのはいいが、バトルだけではダレる。

なるほどな……どうすりゃあいい?

コミカルなシーンや切ないシーンを入れてみては?

……わかった。描き直す。


 数日後――


できた……ぜ。

最近、寝てるのか?

三徹目だ……時間もねえしな……

それより、ネームどうだ?

…………。おもしろくなってると思う。

だよな!いや、これは我ながら手応えあんだよ!

よっしゃあ!描くとするか……

今から?

あ、仕事行かねーと……

……がんばれ。

おう。


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story9 ギリギリバイク



赤髪、すまねぇ……頼みがある……

明日が新人賞の締め切りなんだよ……なぁ、悪い、手伝ってくれ……

それはかまわないが……

恩にきる……


 そして……


終わった……

おつかれさま。

後はこれを……郵送して……住所は……嘘……だろ?

どうした?

消印有効じゃなくて、必着だと!?もう間に合わね……

どういうことだ?

必着は締め切り日に出版社に届いてないといけね一んだよ。

だが、前は間に合ったではないか?

前は締め切り日の消印有効だったんだ。その日のうちに郵送のスタンプもらえればよかった。

だから、もう間に合わねー……ああ、クソ……ふざけんな、チクショウ!

……諦めるのは、まだ早い。

要するに今日中に届けばいいのだ。なら、直接、持っていこう。

俺のバイクがあるじゃねーか!よっしや、行くぞ!

オメーも来い……ってダメだ、メットがねえ。俺一人で行ってくる!

――気をつけて。


 しばらくして――


赤髪、間に合ったぜ!

なんか持ち込みってことで、エントリーしてくれるってよ!

あんがとよ。オメーがいなけりゃあ、無理……だった……ぜ……

レイン!

Zzz……

<寝ているようだ>

おつかれさま。



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最終話 オメーが決めろ




 今日は、新人賞の発表日だ――


買ってきたぞ……


 漫画雑誌のページをめくっていく。

 受賞者の欄にレインの名前はなかった。

 レインが拳を握りしめている。また、怒りだすかもしれない。



レイン、落ち着け……

ダメだったな……

佳作くらいには、食い込んでんじゃねーかとは思ってたんだが……

…………

やっぱ向いてねーのかもな……

レイン、元気出せ。

……自分でも驚きだよ。ここまで落ちこむなんて思わなかった。

でも、全力でぶつかって、これなら、しかたがね一よ。

…………レイン、勝負しよう。

あん?

あれだけ勝負しろと言ってただろ?

気分転換だ。

……それも悪くねーかもな。よし、ヤるか……


 ――PPP


ったく、誰だよ?知らねー番号だな。

出てみたらどうだ?


あん?誰だ?コラ。

レイン・ディアボルスさんでよろしいでしょうか?

そうだけど、オメーは?

週刊少年ゴメスの編集をしているニコラスです。

それって……おい、読んだぞ、コラ!落としやがって!なんの用だ!?

今回は選外になりましたが、レインさんの漫画には光るものがありました。

もし、よければ私か担当編集として一緒に連載を目指していければと思いまして……

……担当? 連載?でも、賞は取れなかったじゃねーか。

まだ技術的に足りない部分が多かった。ですが、そこは努力次第で克服できます。

どうでしょう?一度、お会いしてお話できればと……

よくわかんね一けど、今から顔出せばいいのか?

こちらはかまいませんよ。

すぐ行く。

おい、赤髪!なんかよくわかんねーけど、担当ついたぞ!

そんで一緒に連載目指すって話になった! どういうことだ!?

レイン、落ちつけ。

赤髪……漫画って最高だな!

オメーも一緒に来い。

どうして自分が?漫画を描いたのはレインだ。

オメーのアドバイスがなきゃ、この話だってなかった。それくらいわかってる。

オメー用にメットも買ったんだ。ほら、行くぞ。

――わかった。

レイン、―つだけ言おうと思っていたことがある。

なんだよ?

ペンネームを考えたほうがいい。本名での投稿は……

めんどくせー。オメーが好きに決めろ。




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