黄昏を背負う少女 Story

 
最終更新日時:
白猫ストーリー
黒猫ストーリー

黒ウィズゴールデンアワード2017
2017/08/31

目次

Story1
Story2
Story3




story1



黄金を溶かしたような空を背に、リフィルは眼下に広がる光景を見つめる。
背の高い煉瓦造りの家々が、石畳の地面に長い長い影を落とす。
思えば、いつもこうしていたものだった。黄昏の光にあぶられた街並み。
黄昏時――門に近づこうとする〈ロストメア〉を見つけるため、門の上から都市を眺めるのが、〈メアレス〉としての日課になっていた。

「だから、〈黄昏〈さんせっと〉〉って呼ばれているにゃ?」
声とともに、風がそよいだ。
魔法使いと黒猫のウィズ。ふたりが隣に並ぶ気配を感じながら、リフィルは街並みを見つめ続ける。
「……ひねくれたアフリト翁のこと。それだけじゃないでしょうね。
衰退した魔道文明が、完全な終焉を迎える、その手前――魔道の黄昏を背負う者。
そのくらいの含みを持たせていてもおかしくない。
だけど、本当は違った。真の魔法は黄昏を迎えることなく、〈絡園〉で受け継がれていた……。」

〈園人〉。アストルムの魔法を受け継ぐ者たち。
リフィルのように疑似的に魔法を再現するのではなく、己の意志で魔法を操ってみせた。
その魔法に、リフィルは負けた。

「疑似魔法ごときで、真の魔法と渡り合えると思うな!」
なすすべもなく、地に塗れるしかなかった。

胸が、肺が、焼けつきそうになる。
心の炎。魂の火。あるいはただ、意地とでも呼ぶべきものが、胸の奥で駆け回り、荒れ狂っている。
怒りも無力感もやるせなさも嘆きも悲しみもー―叫び出したくなるすべてを魂の火にくべて、ひとつの想いに集約させている。

「このままであってなるものか――
この空のようにどろどろに融けた想いの塊を、リフィルは風に吐き出した。
「真の魔法が相手だろうと――あんな傲慢を通してなるものか!」
ウィズが、飄々〈ひょうひょう〉と、しかし鋭い視線を向けてくる。
「勝つための方法を見つけなきゃいけないにゃ。相手は、リフィルの人形を操るほどの使い手にゃ。」
そうだね、と魔法使いがうなずいた。あんな魔法を許しちゃいけない、と。
リフィルにとっては、目を背けたい事柄だ。だが、そこに目を向けなければ、勝てない。そんな含みを感じる視線だった。
「魔法は叡智の結晶にゃ。だから魔道士には、すべてを知ることへの覚悟と勇気が求められるにゃ。」
「そういうところに切り込んでくるあたり、さすが魔法使いの師匠ね。」
「覚悟と勇気、ね。母も、似たようなことを言っていたわ。」
リフィルのお母さんは、どんな人なの?と、魔法使いが首をかしげる。
「あなたに話したことはなかったわね。
私のとっての、魔道の師匠――先代の”代替物”〈リフィル〉よ。」




story2


「”代替物”となる子は、母と離され、10歳になるまで、本家で魔道の勉強をさせられる。
どうして? と、魔法使いは驚いたようだった。
「魔法の存在を示し続けるのが ”代替物”の役目だからよ。

「魔道に関係ない子育てや、基礎的な知識の習得は、”代替物”の手をわずらわせないように行われる。
私の場合、それは父がやってくれたわ。
「じゃあ、リフィルがお母さんに会ったのは、10歳の時が初めてにゃ?
「そう。さすがに緊張したわ。自分の手を握って離さなかったって、あとで父にからかわれた。
ただ……実際、会ってみると、緊張するどころじゃなかったわね。

「あんたが次のリフィル。つまり私の娘ね。
久しぶりー……なんて言っても、ま、覚えてるわけないだろうけど。」
あっけらかんと告げる母の前で、リフィルはただ、唖然と立ち尽くしていた。
駅舎の前の広場。
人々が憩うべきその場所に、何人もの男たちが、うめきながら転がっていた。
あんたが来てくれて助かったわ。
そんな尋常ならざる惨状を前に、その惨状を生み出した張本人である母は、けらけらと楽しそうに笑ったものだった。

「奴らを一網打尽にてきた。餌としちゃ上出来よ、かわいい我が子。
どのような方法で”魔法”の存在を示すかは、”代替物”の判断にゆだねられる。
母が選んだのは、賞金稼ぎの道だった。
技術が発達し、多くの街に工場が設けられ、貧富の差が広がり、治安が乱れに乱れた時代。
当然のように犯罪者の数も爆発的に増加し、警察だけでは対処が難しくなった。
「名うての賞金稼ぎは、民衆にとって一種のヒーローよ。
それが古の魔法の使い手となれば、良くも悪くも耳目を引く。」
「確かに、目立つにはいい手段にゃ。その分、敵も作りやすそうだけどにゃ。」
「そうね。まさに、私か母と初めて会った日に母を恨む連中の襲撃があったわ。」
仲間を捕縛されたことへの報復であると同時に、”こいつを仕留めれば箔がつく”という 狙いもあっただろう。
「母は、それを予測して、魔法で罠を張っていた。 ”娘が来る”という情報自体、あえて流していたフシがあるわね。」
「とんでもない人にゃ。」
「ええ。まったくえげつない人だったわ。

「あんたがこれから学ぶのは、 ”代替物”としての魔法の使い方。
それはつまり、”代替物”としてやってきた、あたしのすべてを学ぶということでもある。
だから手は抜かないし、逃げることも許さない。なんせこちとらー―
覚悟もなしに学べるような、安い人生、送ってないの。」

母の教え方は、徹底していた。
「私の考えが甘ければ厳しく叱るし、うまく行ったら、きちんと褒めてもくれる。
でも、失敗すると笑うのよ。
冷笑とか失笑とかじゃない。抱腹絶倒の大笑いよ。」
それは、大変だね……と魔法使いが言った。
「魔道士ギルドにもいろんな教官がいるけど、そんなタイプは見たことがないにゃ。」
「一度、訊いてみたことがあるわ。なんてそんなに笑うのかって。」

「え? そりゃあんた。単に面白いからよ。
〈秘儀糸〈ドゥクトゥルス〉〉こんがらかって、ばたーんって倒れて、涙目でジタバタもがいてるのとか、いやあ、あれ今思い出しても涙が出てくるわアハハハハ!」

「…………。」
「悪意はないのよ。」
でも気遣いもないの。面白いと思ったら素直にげらげら笑う。そういう人だった。」
そうなると、こっちもむきになるしかないでしよ。今に見てろ、って気持ちで、必死に人形の扱い方を修練した。
それで14になった頃、ようやく、母から人形を譲ってもらえる許可が出たの。

「じゃ、後は任せた。」
相変わらず、あっけらかんと母は言った。
人形を託されたリフィルは、ただ、あっけに取られていた。
「……それだけ?」
「それだけって?」
「魔法を使えなくなるのよ。」
「そうね。」

母はニヤリとして、机に置いてあった銃を取った。
くるくると回してからホルスターに納める仕草が、異様にさまになっていた。
「これからは、こっちを使うわ。」
「……え?母さん、賞金稼ぎを続けるつもり?」
「性に合ってんのよね。逃げる賞金首どもを追い詰めて、ふん捕まえるのが。」
「……どうして父さんが婿養子に来たのか、時々、すごく不思議に感じるわ。」
「そりゃ、追いつめてふん捕まえたからよ。」
「でしょうね。」
「あ、家にはよろしく言っといて。気が向いたら戻るから。」
「自分で言ってよ。」
「めんどくさい。」

「……なんというか、さっぱりした人にゃ。
「いろんな意味で『ああはなるまい』と思わせる人だったわ。仲が悪いわけじゃないけど。
コピシュがゼラードにあこがれるように、母にあこがれを抱くことはなかった。だから〈メアレス〉になれたのだとも言える。
「母は、魔法をあくまで道具と捉えていた。魔法のためにすべてを捧げるのではなく、人生のー過程に魔法があるという捉え方だった。
人形に魔法を使わせるための”代替物”――でありながら、人生を悲観せずにいられたのは、そんな母を見て育ったからかもしれない。
「だから――」
リフィルは、っと魔法使いに視線をやった。

「あなたと出会って、驚いたのよ。魔法使い。
”魔法使い”として生きてる人は始めて見たから。」


story


「魔法を使う。魔法の存在を示す。私はそのための存在だったし、私自身も、それしか考えていなかった。
別に、それが嫌というわけじゃなかった。ずっと魔法を学んできたんだもの。魔法を使うのは、私にとって当たり前のことだった。
だから、驚いたの。
ただ魔道士であるのではなくー―”人のための魔道士”であろうとする、あなたの姿に。
それから、ずっと考えていた。私はどんな魔道士であるべきなのか。」
答えは出たの? と問う魔法使いに、リフィルは首を横に振った。
「まだ、わからない。簡単に答えを出したくないの。魔法は……私にとって大切なものだから。
私の魔法は、疑似魔法にすぎない。あの人形だって、暗殺した祖先の骸を改造した業の塊であるとわかった。
だけど、それでも……私は、私の魔法を捨てたくない。」

始まりは、己の意志ではなかった。おまえは魔道士になるのだと、言われるがままに魔法を学んだ。
子供だったから、素直に従った。そうすることが当たり前だと思っていたから、夢を持つこともなかった。

母と出会い、手ほどきを受けた。笑われては奮起し、必死に努力して、ついに魔法を使えるようになってみせた。
やった――という喜びがあった。自分の培ってきたものが実を綸んだという、魂のすべてが打ち震えるような純粋な感動が。
その思い出を、その誇りを――決して、手放したくはない。

「魔法を、どう使うか。それを見つけるのが魔道士のあるべき姿なら――
人の心をないがしろにする〈園人〉たちの魔法を、私は認めるつもりはない。」

魔法使いが、ゆっくりとうなずく。
その肩で、ウィズが小さく笑った。
「魔法を正しく使いこなすから、”魔法使い”にゃ。
強大な魔法に目がくらんで道を誤るようじゃ、魔法に゛使われている、、も同然にや。そんなのは、真の”魔法使い”とは言えないにゃ。
だから、魔法は疑似でも、リフィルの方が〈園人〉より立派な”魔法使い”にゃ。」
「ありがとう。猫。」
「いい加減、名前で呼んでほしいにゃ!」
「冗談よ。ありがとう、ウィズ。クエス=アリアスの四聖賢が太鼓判を押してくれるなら、疑う余地はないわね。」
微笑んで、リフィルは街並みに視線を戻す。

黄金に暮れる街並み。自分が魔法を使い、示してきた街並みだ。
その事実が、自信をくれる。
自分は魔法使いだと――胸を張って、言わせてくれる。

あとは、どうやって勝つかだね、と、魔法使いが思案げに言う。このままでは勝ち目がない、と。
対してリフィルは、揺るぎなく微笑んだ。

「”ない”を”ある”に変える。不落の城も打ち崩す。
そうであってこその魔法よ。そうでしょう? 魔法使い。」


 ***


リフィルは、ぱちりと目を覚ました。

朝の陽ざしを浴びてきらめく、素朴な木の天井が、まず見えた。
〈ピースメア〉の小屋である。彼女を連れて戻ってきたとき、すでにとっぷりと夜が更けていたので、寝床を借りたのだ。
人数が人数なので、雑魚寝になった。床には、他の面々が寝転がり、それぞれ寝息を立てている。


「夢……。」
リフィルは、ぽつりとつぶやいた。


人の心とつながっている〈絡園〉には、”こうなってほしい。という願いや夢が流れ込み、混ざり合う。
君たちが普段見る夢は、その集合だ。世界中の人の願望が混じり合って生まれる、いわば”願いのカクテル”というところかな。
ネブロの言葉を思い出す。

なら、今の夢もまた、何かの願いを土台にしていたのだろうか。
たとえば、そう、本当なら面と向かって口に出したくないことを話したいという、そんな願望が――

「んにゃ~あ……。」
「――!」

あくびが聞こえて、リフィルは、びくりと振り返る。

ウィズと魔法使いが、ゆっくりと身を起こしていた。
おはよう、と言う魔法使いに、リフィルは真顔で尋ねる。


「見た?」
何を?
「夢よ。」
見たような気がする、と、魔法使いは、目をこすりながら言った。よく覚えてないけど、と。 
「そう。よかったわ。」
「なにがにゃ?」
「なんでもない。」

リフィルは夢を見たの?と、魔法使いが尋ねてくる。
リフィルは一瞬、魔法使いを横目に睨んだ。

そして、つんとそっぽを向き、ぴしりと答えた。

「――夢は、見ない。」


ウィズが、どこかおかしそうに笑っていた。



家事全般は父に教わったのよ。あの母の夫とは思えないくらい真面目で几帳面な人なの。
あの二人、どうしてくっついたのかしら?




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