覇眼戦線 Story

 
最終更新日時:
白猫ストーリー
黒猫ストーリー

2014/01/14

目次

プロローグ
Story1 初級 ただ走る、戦場
Story2 中級 確執と過去
Story3 上級 狩る者と狩られる者
Story4 凛眼級 いつかくる最後へ
Story5 決戦前
最終話 煌眼級 心に宿る氷と炎
エピローグ





プロローグ



“我ら傭兵は故郷を持たず、家や曖炉のぬくもりも、心温まる団欒も、なにもかもない”

 鼻から息を吐きながら、ウィズは大きな壁画を眺めていた。

“ゆえに我らの心には常に冬があるのだ”……


「っていう事だと思うにゃ。」

 街からほど遠くないその場所に、突如としてその遺跡が現れたのはつい最近のこと。
 君たちは、おそらくは他の異界にあるべきその遺跡の調査にやって来ていた。
 ウィズは手元の文献と自分の知識だけで見た事もない文字の意味を推測し、読み取っていく。

「どうやら過去の戦争の記録みたいだにゃ。
 本当だったらこの壁画、あっちからずーっ……と長く続いているはずにゃ。」

 この世界ではきっと長い間争いが続いていたんだな、と君は思う。
 その時君は、ふと壁画の一部……。
 瞳を隔てて睨み合う、ふたりの指揮官の絵に目を止めた。

 どちらの人物も、特徴的な兵士たちを大量に引き連れている。

 赤い瞳が見上げ、青い瞳が見下ろす……
 その構図は、不思議と君の心を掴んで離さない。


「……んん? この絵、女の子にゃ?」

 ウィズの言うとおり、描かれたふたりの指揮官は、ともに長い髪をしている。
 それに装備や武器も、他の兵たちとは大きく趣が異なっている。
 ウィズによると、その下に描かれた叙事詩の一文には……。
 「目の力持つもの、戦いの時の中に消える」と書かれているらしい。


「昔の文章は詩的すぎてわからないにゃ。そろそろ調査を終わらせて帰るにゃ。」
 君はウィズの言葉にうなずく。
 興味をひかれるのは確かだが、長居をするつもりはない。

 君は壁面についての報告書をまとめようと壁面を背にしてペンを手に取り……。
 隣に、知らない誰かが立っていることに気づく。
 その人物……否、“人物たち”は白銀の鎧に身を包み、虚空の一点を凝視していた。

「……なんだか、変な空間が開いたみたいにゃ。」
 警戒を強める君の耳元で、ウィズが小さくつぶやき、それに対して君はうなずく。
「ヘタに身動きをしないほうがいいにゃ。異変が過ぎるまで耐えるにゃ……!」


 そうしてどのくらい経っただろうか。やがて、君たちの周りの空気が一変する。

 濃い砂埃、目を焼く強い陽光、耳をつんざく爆音……。
 武器と武器がかち合う音、叫び声、獣の断末魔……。

「にゃにゃ! ここは、まさか……!」
 息を飲むウィズの隣で、君はゴクリと喉を鳴らした。

 そう、君の目の前では今、戦争が繰り広げられている。
 精霊や魔法の力に頼らない、武器と兵器で戦う生々しい戦争が……。



story1 初級 ただ走る、戦場



  兵士   
うおおおお!

 陽光を受け煌めく刃が振り下ろされる。
 君は何とかそれをかわし、手にしたカードに魔力を込める。


  兵士   
なに!こいつ、魔法を使うぞ!?

  ウィズ  
早く!今はとにかくここから逃げるにゃ!

 ウィズの声に導かれるようにして、君はとっさにレンガ造りの壁に身を隠した。


  ウィズ  
一体どうなってるにゃ………

  兵士   
猟兵、あの壁の向こうだ!撃て!

 息つく間もなく、耳をつんざく発砲音とともに金属片が壁に撃ち込まれる。

  ウィズ  
まさか銃まで……。魔法があんまり使われて無いのも気になるにゃ。
気をつけるにゃ、この異界……。私たちには魔法ばかりの世界より危ないにゃ。

 深刻そうなウィズの言葉に君はうなずく。
 君の魔法は、このような乱戦の中で使う事は難しい。

 状況に応じて力―ドを選び、その精霊からの呼びかけに答える。
 精霊を召還するには、飛び交う弾九や矢をかわしながら、それらを行う必要があるからだ。
 そのことを、ウィズは強く警戒していたのだった。


  ウィズ  
ここも危険にゃ。とにかくどこかに隠れて様子を見るにゃ。

 自分の魔法を、精霊の力を発揮出来ない状況に、君はかつてないほどの不安を覚える。

  ウィズ  
まずはあそこの森まで走り抜けるにゃ。頭を低くして、急ぐにゃ!

 足の震えをどうにか抑え、君はウィズを抱えて走りだした……!


 ***


「もう少しで森だにゃ!頑観るにゃ!」

 足をひきずりながら、君は懸命に森へと急ぐ。
 ここまで来る途中、君は青と白の羽をつけた矢によって右足を負傷していた。
 倒れこむように茂みに身を隠すと、君は砂まみれ身体で荒い息をする。
「た、たすかったにゃ……。」

 茂みから覗き込んだ戦場は未だ混乱を極め、目を覆うような惨状だ。
 舞い上がる砂埃と、鼻につく硝煙の臭いが、君たちのいる茂みにまで漂ってくる。

「本当に私達はココを抜けてきたのかにゃ。……運がよかったにゃ。」
 君はウィズの言葉にうなずきながら、思わず息を飲む。
 と、同時にホッとしたためか、矢傷の痛みが急に強まり、君はその場にうずくまる。

「早く傷の手当をしないとダメにゃ!」
 ウィズは君を心配するか、治療をしている暇はない。
 君には解っていた。誰かが、君たちの背後から近づいて来ていることが――!

 その方向へ、君は痛みに苦しみながらも手にしたカードに魔力を込める!
 だが。


  ???  
……勘はいいみたいね、魔法使い。

  ウィズ  
誰にゃ!!



 イスルギ  
誰も彼もないわ。私はイスルギ。
あなたたちは、私の名前を知ってる?

  ウィズ  
……フン、知るわけないにゃ。
何をするつもりにゃ!

 イスルギ  
何をする……って、息の根を止めるとか?
そういうのでいい?

  ウィズ  
なっ……?

 あまりにあっけらかんとしたイスルギの言葉に、ウィズも君も続ける言葉をなくしてしまう。
 だが、イスルギは全くこちらの態度を意に介さない。

 イスルギ  
私のこと知らないって時点で敵確定よね、ここに迎れてきた兵士は皆私の顔知ってるし。
それにあなたたち、人間のくせに魔法上手よね。亜人じゃないの?
……まあ、いいか。僅しい奴はとりあえず連れていけば……。
足も怪我してるし、ちょうどいいよね。

 剣を構える彼女は、もう言葉では止めようがない。
 そう思った君は、まずウィズを自分の背後に隠した。

 イスルギ  
行くよ。

 白銀の刃が、来る!

 ***

 BOSS イスルギ

 ***

 イスルギ  
ずいぶんしぶとい魔法使いね。
普通の魔法使いならもう音を上げてるのに。

 激しい戦いではあったが、君はまだ何とか立ち続けていた。

 イスルギ  
……あんまり時間かけらんないのよ。そろそろあの人が出陣する頃だからさ。

 呆れたように言いながら、イスルギは自分の手にあるナイフの切っ先を眺めた。

  ウィズ  
あの人って………

 ウィズの言葉に一瞬遅れ、君は背中に剣を突き立てられたような感覚に陥る。
 首筋に感じた嫌な予感に、君は素早く振り返った。


  ???  
私だ。

 同時に、君の首にはヒヤリとした感覚が押し付けられる。

 イスルギ  
……下がれ、下郎。

 いつ、目を逸らしただろうか。否、いつ、まばたきをしただろうか。

  ???  
苦戦しているという報せを受けて来てみれば、ただの魔法使いではないか。

 この女剣士は、いつの間に君の前に立っていたのだろうか。

  ???  
イスルギ、あまり私を落胆させるな。

 イスルギ  
……申し訳ありません、ルドヴィカ様。

 ルドヴィカ 
まあよい。お前は出陣の準備を。

 イスルギ  
承知いたしました……。

 言葉を交わすふたりに、君たちは口をはさむことすら出来ない。
 君とウィズは、ルドヴィカの殺気に当てられ、身動きを取ることが出来なかったのだ。


 ルドヴィカ 
……さて、魔法使い。ひとつ貴様に提案がある。

 ルドヴィカの言葉に、一段と空気が引き締まる。
 さっきまでは耳をうんざくほどだった戦場の音が、遠い。

 ルドヴィカ 
私に付き従うならば歓迎しよう。歯向かうならば斬り捨てる。

 そう君を見据えるルドヴィカの眼光は鋭く、只ならぬ威圧感を放っている。
 君は恐怖で動く事が出来ない。

 ルドヴィカ 
……選ぶがいい、服従か死のどちらかを。

 言葉に合わせ、ルドヴィカの剣の切っ先が、君を睨む。

 服従……? 紛れ込んだこの異界で、この凄まじい戦場で、兵士として戦う事など出来ない。
 この相手と戦わなければ。そしてウィズとともにクエス=アリアスに戻らなければ……。
 沸き上がる恐怖を押さえつけ、君はルドヴィカを睨む。


 ルドヴィカ 
いい表情だ……懐かしい目をしている。

 声を出すことも出来ず、首を振ることも出来ない君へ向けて、その刃は振り下ろされ……


  ウィズ  
!?

 ルドヴィカ 
ちっ……!


  ???  
確保ォーー!!

  ???  
了ォ解じゃ!


 目もくらむ閃光とともに、君は意識を失い、そして………
 目覚めた時、君は見知らぬ軍人の前に転がされていた。



  ???  
ハロー、お目覚めかしら魔法使い。
……さて、女王裁判でも始めようかしら?


story2 中級 確執と過去


  ???  
……さて、女王裁判でも始めようかしら?

 相変わらず君は地べたに寝転がされたままだ。
 軍人……と言うには少し若すぎる女性が、君を見下ろすように座っている。
 その膝では、硬直した表情のウィズが撫でられていた。

 さらに、君の周辺には武器を構えた兵士や獣たちが立ち並んでいる。
 どう見ても、逃げられるような様子ではなかった。

 ウィズ  
あ、あの……リヴェータ?
その魔法使いは私のパートナーにゃ………

 リヴェータ 
だから助けろっていうのは
ちょっと聞けないにゃあ、ウィズちゃん。
喋る猫と、亜人並に魔法を使う人間……面白いじゃない。

 言いながら、リヴェータは嗜虐的な雰囲気を纏い君を見つめる。
 ウィズの助けを求める視線を受けて、君はリヴェータを睨み返す。

 リヴェータ 
フフ……アンタみたいな反抗的な奴の心を根っこから折るのが楽しいのよ、魔法使い。

 挑発された君が、ウィズを放せ、と口を聞こうとした瞬間………
 君の背中には刃の切っ先が押しつけられ、それと同時に腕が捻り上げられた。

  ???  
口を聞いて良いと誰が言いました?

 リヴェータ 
離してやんなさいアマカド。
ねえゲルデハイラ、こいつ使い道あるかな?

 ゲルデハイラ 
そうじゃなぁ……。

 ゲルデハイラと呼ばれた白髪の亜人は君に近づくと、縛られた手をほどいてくれた。

 ゲルデハイラ 
まあ弾除けか荷物運びかの。とはいえ、なかなか見どころのある奴じゃぞ、こいつは。
おぬし、イスルギと渡り合っておったな。それからルドヴィカとも。
奴らとの間係はなんじゃ。ソレ次第ではお前を助けてやれんこともないぞ。

 ゲルデハイラはそう言うと、リヴェータに視線を送る。
 対するリヴェータは、居心地悪そうなウィズを抱えたままニヤリと笑い立ち上がる。

 リヴェータ 
そういうこと。
……とはいえ、遊んでるヒマもなさそうね。
ジミー!兵士たちを叩き起こしなさい、敵襲よ!

  ジミー  
…………。

 ジミーと呼ばれた兵士は無言のままどこかへと走り去る。
 その背中を目で追っていると、どこかで爆発音が鳴った。

 ゲルデハイラ 
ルドウィカめ、もう追いついて来よったか……
どうするリヴェーダ。

 リヴェータ 
今はどうしようもないわ、サッサとずらかるわよ!
ゲルデハイラ、そいつ連れて来て。
使えなかったらこの猫と一緒に始末していいわ。

 言い終わると、リヴェータはウィズを置いてすぐさまその場を去っていく。

 ゲルデハイラ 
足を引っ張るなよ、新入り。ワシの獣はいつも腹を空かしているからの。

 にっこりと笑うゲルデハイラに対し、君はひきつった顔で返事をする。
 爆発音は近づいてきている。早くこの場を離れなければ……!


 ***


 戦場を走り抜けながら、君とウィズ、ゲルデハイラはあらかた自己紹介を済ませた。
 話によれば、グルデハイラはリヴェータとは旧知の仲であるらしい。

 君は騎獣の上で、ゲルデハイラに掴まったまま話を聞いていた。

 ゲルデハイラ 
ワシとジミー、それとガンドゥ……あのほら、デカイ猫がおったじゃろ。この三人は同郷じゃ。
亜人のくせに魔法を全く使えないワシに、リヴェーダは別け隔てなく接してくれた。
……だからの、ワシはお前たちにひどく当たるようなことはできんのじゃ。
人間のくせに魔法を使えるお前と……猫のくせによく喋るお前さんにはな。

  ウィズ  
この世界では亜人しか魔法を使えないにゃ?

 ゲルデハイラ 
ああ、基本的にはな。人は剣や銃で身を守り、我々亜人は魔法で身を守っておる。
……だが不思議なことに毛の白い者は魔法が使えん。ワシのようにな。

 彼女は一瞬悔しそうな顔をして、その直後騎獣の足を突然止めた。

  ウィズ  
ど、どうしたにゃ、ゲルデハイラ。

 ウィズの言葉を無視して、ゲルデハイラの毛がざわざわと大きく迎立つ。
 彼女は歯をむき出しにしながら、森の一点を凝視していた。これは……。

  ウィズ  
……敵、かにゃ?

 ゲルデハイラ 
ああ、そうじゃ………
ワシとジミーとガンドゥ、そしてリヴェータが同郷だと言ったな。あれには続きがある。
我々の故郷は、もうこの世界に存在せん。

  ウィズ  
どういうことにゃ?

 ゲルデハイラ 
我々の郷には他に、エスメラルダ、ヤーボ、ギルベインという者達がおってな……。
奴らは我々の故郷を焼き、裏切った。絶対に許すことは出来ん。なあ、エスメラルダ……!

 ゲルデハイラの言葉にあわせて、茂みから姿を現したのは、金毛の亜人だった。


 エスメラルダ 
アッハ!白毛のゲルデハイラ様じゃない、その後リヴェータはお元気かしらぁ?

 ゲルデハイラ 
黙れ小娘が。多少魔法が使えるからと言って上から目線とはオメデタイ奴じゃ。

 エスメラルダ 
ホンっと魔法使えない野蛮人ってヤーね、言葉遣いも汚ければ獣臭くて近寄りたくなーい。

 鼻をつまみながら、ゲルデハイラを手で払うようなジェスチャーをするエスメラルダ。

 ゲルデハイラ 
なめるなよ小娘ェ!!

 ゲルデハイラは君を騎獣から蹴り落とすと、単騎でエスメラルダヘと突進した

 エスメラルダ 
アッハ!来いよ白毛種!!

 対するエスメラルダは、鞭を振るって魔力で出来た獣を召喚する!

  ウィズ  
げ、ゲルデハイラを止めるにゃ!

 ウィズの言葉にうなずきながら、君は体についた泥も気にせず、カードを手にした!


BOSS エスメラルダ




 エスメラルダ 
なんなのよこの人間!
魔法使うとかあり得ないんだけど!

 エスメラルダは傷ついた休をかばいながら、魔法獣に乗ってその場を去ろうとする。
 逃走を阻止しようと君は魔力を放つが、彼女は新たに魔法獣を召喚し、それを防御した。
 断末魔の叫びを残して消える魔法獣の後ろで、エスメラルダは君を睨みつける。

 エスメラルダ 
……アンタみたいな甘ちゃんなら、次会った時には狩れそうね。
まあ、それは次の楽しみにしてあげる!

 ゲルデハイラ 
逃かすかッ!

 だが、次の瞬間には、エスメラルダは魔法獣と一緒に大きく跳躍し、その場から消える。


 ゲルデハイラ 
ああもう!逃げ足だけは速い……!

  ウィズ  
……どうするにゃ?

 ゲルデハイラ 
放っとく。今追いかけても分が悪すぎるからのう。
それに……この戦いでお前たちを処分せずに済む良い口実ができたわい。

 にかっ、と笑うゲルデハイラに、君たちはホッとため息をつく。
 この異界から、自分たちは無事生きて元の世界へ戻れるのだろうか。

  ウィズ  
……これから先、大丈夫かにゃ。

 どうやらウィズも同じ気持ちのようで、君は自分の不安を噛み殺すように彼女を一度撫でる。
 先行きの見えない不安を感じながら、君たちはゲルデハイラの後を追った。


story3 上級 狩る者と狩られる者


 君は泥だらけのままゲルデハイラにリヴェータの前へと連れ出されていた。
 リヴェータの側にはアマカドが立っており、君に向けてむき出しの敵意を向けている。

 リヴェータ  
ふーん、それで、この魔法使いはそこらへんの奴よりは使えるワケね?

 ゲルデハイラ 
ああ、そこらへんの猟兵なんかよりはよっぽど使える。魔法は便利じゃなあ。

 にしし、と笑いながらゲルデハイラは君の背中をバシバシと叩く。
 その様子をジロジロと不満気に見ながら、リヴェータは相変わらずウィズを撫でている。

 リヴェータ  
それじゃあ、アンタはみんなの手伝いでもしてなさい。
あと、はいコレ。この子の世話もちゃんとすんのよ!

 ウィズを押し付けなから、リヴェータは君ヘビシリと指を差す。
 もう撫でなくていいの?と君が聞くと、

 リヴェータ  
そういうの、もういいから。
長く触ってると惰が移るし。

 と言い、その場を立ち去っていった。


  ウィズ   
なんて自分勝手な女の子にゃ……!

 ウィズはプンプンと怒りながらそう言う。
 その様子を見て、ゲルデハイラはにししと笑った。

 ゲルデハイラ 
あの子は難儀な性格でな、好きな物を作らぬようにしておるんじゃよ。
失うのが怖くてな。

  アマカド  
ゲルデハイラさん、喋り過ぎですよ。

 ゲルデハイラ 
おお、すまんすまん。
……じゃ、まあ水汲みにでも行くかの。
どんな時でも、生きとるモンは食って飲まなきゃならんからな。


 ***

  ウィズ   
な、なんにゃあれ……?

 たどり着いた水場には、大砲を背負った巨大な猫が陣取っていた。

  ???   
……なんじゃ、貴様らは。

  ウィズ   
ね、猫が喋った!

  ???   
お前も猫だろうが。
ガンドゥとは体格がだいぶ違うようだがな。

  アマカド  
ガンドゥさん、見回りお疲れ様です。

  ガンドゥ  
ウム。先ほど木に登って周辺を確認したが、どうやらここはルドヴィカの陣営に近い。

 どうやら、このガンドゥという大猫は仲間のようで、周囲の見回りを兼ねていたらしい。
 そういえば、この世界へ初めて来た時、君を助けてくれたのはこの猫だったように思う。

  ガンドゥ  
それに……罠も多くあるようだ。

 言いながら、ガンドゥはいくつものトラバサミなどの罠を君たちに見せる。
 どうやら、それは彼の手により全て壊してあるようだった。

  アマカド  
ここはもう、敵の腹の中ってことかしら。

  ガンドゥ  
そのようじゃ……気をつけて戻るとしよう。

 言いながら、ガンドゥは君たちを先導するため歩を進める。

 この世界へ来た時から、何度か耳にする“ルドヴィカ”という女性の名前。
 なぜ、ガンドゥやアマカド、ゲルヂハイラは彼女たちに執着するのか。
 それをまだ聞くことの出来ない君は、得体の知れない恐怖と不安を再び感じ始めていた。


 ***


 罠だらけの戦場を抜けようという頃には、君たちの体はボロボロになっていた。
 一見して解るような罠は一つとしてなく、どの罠も巧妙に隠し通されている。
 服はあちこち破れ、赤く滲んでいる箇所もあった。


  アマカド  
しかし、不思議な罠の配置ですね。
ただの夜道かと思えば、いやらしい位置に罠を配置してある……

  ガンドゥ  
……この罠の配置は覚えがある。
我ら大猫を狩る、狩人の手法だ。

 ゲルデハイラ 
なんじゃと?

 ゲルデハイラが声を上げた瞬間、君たちの目の前に白銀色の影が降ってくる!


  イスルギ  
……奥技“針鼠”!

  アマカド  
遅い。

 瞬間、目にも留まらぬ攻撃の応酬が始まった!

 投げられる刃物を次から次へ撃ち落とすアマカドと、速度を上げていくイスルギ……!
 そしてそれに目を奪われていた君たちに、大きな影が覆いかぶさった!

  ウィズ   
にゃ!?

  ガンドゥ  
甘い!

 叫びながら、ガンドゥは打ち下ろされる大剣を巨大な前足で払う。
 完全に白兵戦慣れした彼らの動きに、君とウィズは圧倒されるばかりだ。

 大剣の主は剣を構え直すと、静かに君たちへ言う。

  ???   
惜しい、一撃で首を貰えたと思ったのに。

  ガンドゥ  
貴様にやる首をガンドゥは持たぬ、諦めよ、大猫狩りの剣士。

 ゲルデハイラ 
それよりも……その鎧はグランファランクスのものじゃな。
群れないはずの大猫狩りが、なぜルドヴィカの尖兵たちと一緒なのか聞きたいのう。

 落ち着いた二人の質問に、大猫狩りの剣士はため息をつきながら続ける。

  ???   
単純だ、金だよ。大猫の牙は高く売れる。
それに、お前さんたちの仲間に大猫が居たのが運の尽きさ。

  ガンドゥ  
……貴様、名前は。

 オーリントール 
オーリントール・バイア。

 構えを取るオーリントールの横に、アマカドと競り合っていたイスルギが着地する。

  イスルギ  
オーリントール、助太刀しよう。

 オーリントール 
悪いねイスルギくん。

  アマカド  
……私もそっちに混ぜてよ、ガンドゥさん。

  ガンドゥ  
ウム。

 ニヤリと笑うアマカドは、臨戦態勢のガンドゥヘそっと寄り添い、居合の構えを取った。

 ゲルデハイラ 
……私達はガンドゥとアマカドのサポートに回る。
油断はするなよ、魔法使い。

 君は小声のゲルデハイラにうなずき、一触即発の空気にゴクリとツバを飲んだ。

 オーリントール 
行くぞ大猫、その首狩らせてもらう!

  ガンドゥ  
来い人間!押し潰してやろう!

 ふたりが一歩踏み込んだ瞬間、戦いが始まる!


 BOSS


 オーリントールとガンドゥの戦いは、見る限り平行戦を辿っていた。

  ガンドゥ  
罠が邪魔だな……!

 オーリントール 
邪魔になるように置いてるからな!

 だが、罠や隠し武器を使い、オーリントールはジワジワとガンドゥを追い詰めていく。
 遂に、アマカドとイスルギの戦いはアマカド優勢で決着がつきつつあった。



  アマカド  
あなた、間合い取るのが下手くそねえ。だから飛び道具一辺倒なの?

 大太刀であらゆる武器を叩き落としたアマカドは、そう言ってイスルギを見下ろす。

  イスルギ  
うるさいッ……裏切り者のくせに!

  アマカド  
心外ねえ、こっちのほうが自由にやれるから鞍替えしただけよ。

 彼女はそう言うと、ゆっくりと剣を構えながら笑う。


  ガンドゥ  
ぐあっ……!

 悲痛な声に君が思わず振り向くと、オーリントールが彼に剣を振り下ろそろとしている!

 オーリントール 
もらったァ!


  アマカド  
覚悟しなさい。

 そして、アマカドはイスルギに対し無慈悲な剣を走らせようと、刀に手をかける……。

 君は迷った。
 命のやり取りを、止めるべきかどうか。
 そう、君は目の前で繰り広げられている血戦の“どちらを止めるべきか”を迷ったのだ。

 その時!
 迷いに足を止めた君の脇を、赤と蒼の風が強く吹き抜けた!


 ルドヴィカ 
相変わらずの抜き打ちだな、アマカド。

 気付いた時には、アマカドの一閃は巨大な剣に止められ……。


 リヴェータ 
私のペットに手ぇ出してんじゃないわよ!!このクズ鉄!

 オーリントールの剣は、鞭に絡め取られ動きを封じられている!



 ルドヴィカ 
久しいなリヴェータ。少し身長が伸びたか?

 リヴェータ 
アンタは相変わらずうるさいわねルドヴィカ。
そんなんだから胸も成長しないのよ。

 ルドヴィカ 
それは戦いに必要の無いムダな成長だろう?

 リヴェータ 
じゃあ私の勝ちね、何の成長もないアンタと比べて、私の身長が伸びたのは本当だもの。

 互いに互いを嘲笑しながら、ふたりは説く睨み合う。
 その緊張を先に解いたのは、ルドヴィカの方だった。

 ルドヴィカ 
………ふっ、まあいい。帰るぞオーリントール、イスルギ。

 リヴェータ 
ちょっと待ちなさいよ、逃がすとでも思ってんの?

 ルドヴィカ 
逃げる?何を言っているリヴェータ。私は今“帰る”と言ったのだ。ただの散歩からな。

 ルドヴィカはそう言うと、ゆっくりと皆の中心を歩いて去ろうとする。
 そしてルドヴィカは、君の隣に来ると、足を止めて優しくつぶやいた。


 ルドヴィカ 
魔法使い、さっきは迷ってくれて助かったぞ。
お陰で、有能な部下をやられずに済んだ。
フフ……私は本当に本当に感謝しているぞ。
ありがとう、本当にありがとう、魔法使い。
ククク……ハハハ………


 圧倒的な威圧感と、格の違い。

 たったそれだけで、君はルドヴィカをまっすぐ見ることすら出来ず……。
 傷だらけのまま、君は白銀の鎧を見送った……。


story4 凛眼級 いつかくる最後へ


 リヴェータ  
魔法使い、アンタに話があるんだけど。

 ルドヴィカとの遭遇から数日後。
 落ち込み気味の君に、リヴェータが声をかけた。

 彼女は君の隣にドッカと座ると、足元の草をブチブチと千切りながら言う。

 リヴェータ  
アンタ、あの時……
こないだガンドゥがやられそうになってた時、なんで迷ったの?

 突然の質問に、君は答えに窮してしまう。
 それを無視して、彼女は言葉を続けた。

 リヴェータ  
私は味方“敵”と“味方”を天秤にかけるような奴は信用出来ない。
敵は倒す、味方は守る、それをアンタは飲み込めないワケ?

 何も言えず、君はリヴェータから目をそらした。
 あの時迷った理由は、敵とか味方とか、きっとそれだけではない。
 特にアマカドとイスルギは、何か確執がある。話をすればきっと……。

 と、君がそこまで口にした時。突然胸ぐらを掴まれ、君は地面に押し倒された。
 君を見下ろす彼女の左目は、燃えるような怒りの色をしている。

 リヴェータ  
戦場でお話ししましょうとかヌルい事言ってんじゃないわよ……!!

 彼女の片目から、燐光が吹き上がる。

 リヴェータ  
昨日まで楽しくお話ししてた奴に銃を向けられたことがあんの?
笑って食事をしていた家族に矢を射られたことは?
姉と信頼していた人間に剣を向けられたことは!?何もかも奪われたことは!?
アンタはそんな時、どうすんのよ!?奪われっ放しでいいわけ!?

 彼女の口から紡がれるのは、深く、純粋で、切実な叫びだった。

 君には当然、彼女の言うような体験をしたことがない。
 だからこそ、君はもう一度言った。

 わからない、と。

 リヴェータ  
……アンタはそこで堂々巡りしてればいいわ。私は前に進む。
……どことなりと好きに歩けばいい。もうアンタは自由よ。

 吐き捨てるようにそう言うと、リヴェータは森の中へと歩き去ってしまった。


  ジミー   
…………

 いつも彼女の後をついて歩いているジミーが、君をじっと見下ろしている。
 このままでいいのか、と彼の目が言っていた。良いはずがない、と君は思う。

 それなら、どうすれば良いのか。君は一度自分が口にしようとした言葉を思い返す。
 話をすればきっと、互いの距難を縮めることができるはず。

  ジミー   
…………


 君に背を向け歩き出すジミーの後を、君は慌てて追いかけた。
 リヴェータと話をするために。


 ***


 リヴェータの陣営近く、君たちが打ち捨てられた砦へと足を伸ばした時……。

  ジミー   
…………!

 武器と武器のかち合う音を聞いて、君とジミーは同時に走り出した。
 戦っている誰かはあまり遠くには居ないだろうと君は思う。
 なぜなら……。


 リヴェータ  
やめろっつってんのかわかんないのアンタら!
いい加減に――

 そんなリヴェータの声が、すぐそこまで聞こえてきていたからだった。

  ウィズ   
急ぐにゃ!
そんなに離れた場所じゃないにゃ!

 ウィズの声に急かされ、君とジミーの足は早くなる。
 そして、少し開けた森の中に現れたのは……。


 リヴェータ  
だから、いっぺん話し合えって言ってんでしょ!?
なんでわかんないのよ!

  アマカド  
私は戦う気がなくても、彼女にはあるみたいですよ……!

 以前と完全に優劣の入れ替わった、イスルギとアマカドの姿だった。

 アマカドは肩で息をしているにも関わらず、イスルギは息ひとつ乱していない。
 そのすぐ近くには、顔をくしゃくしゃにしているリヴェータが居る。

  ウィズ   
アマカド!リヴェータ!無事かにゃ!?

 リヴェータ  
イスルギは……“眼”の力の影響を受けてるわ。
おそらくはルドヴィカ以外の………

 少しでも間合いに入れば、きっとイスルギは攻撃を仕掛けてくるだろう。
 悔しそうに爪を噛みながら、リヴェータは様子のおかしいイスルギを睨む。

 アマカドは何度も何度も剣を振った。だが、その剣は一度としてイスルギに届かない。
 おおよそ人間の腕力を越えた力で、イスルギはアマカドの剣を次々に弾き返していた。


  ???   
なるほど、ギルベイン殿の烈眼にもなかなか使い道があるようだな。

 突如聞こえた声に振り返ると、そこには槍を持った騎士の姿があった。
 戦い続けるイスルギとアマカドを無視して、騎士は君たちを見下ろしながら言う。

  ???   
久しいな、ジミー。
無口なのは相変わらずか?

  ジミー   
…………!

 リヴェータ  
ヤーボ!?なんであんたがここに!

  ヤーボ   
フン、貴様らに語る言葉は既に無い……さて、とはいえそろそろ邪魔だな。
それに我が手を汚すのも一興。相手をしてやろう、かかってくるがいい。

 顔色ひとつ変えぬまま、ヤーボは手にした槍を構え直した。
 背後にはアマカドを気絶させたイスルギが近づいてきている。

 リヴェータ  
こんなところで……!!

 ふと、君はリヴェータを裏切った人間の中にヤーボという名前があったことを思い出す。

 次の瞬間、深い恨みの色に染まるリヴェーダの眼を見て、君の心に憤怒の炎が燃え上がった。
 この人間たちを許すわけにはいかない。そんな気持ちが胸の中央で渦を巻く。

 逃げ場はもとより無い。戦いが始まる……!



BOSS ヤーボ&イスルギ


  ヤーボ   
なかなかやる。だが、ここまでのようだな。

 リヴェータ  
くっ……!

 戦いが幾分落ち着いた時、そこには絶望的な光景が広がっていた。

  アマカド  
う………

  ジミー   
がはっ………

 倒れているジミーとアマカド、そして君も体中大小の傷を大量に負っていた。
 戦うには、傷が大きく、多すぎる。また、それはリヴェータも同じ。

  ヤーボ   
イスルギにはギルベインの烈眼、俺にはルドヴィカ様の凛眼………
このふたつの覇眼を相手にして、貴様達はよく戦ったよ。

 対するイスルギとヤーボは、いくら攻撃を加えても倒れる気配がなかった。
 おそらく、ヤーボの言う覇眼が彼らに力を与えているのだろう。

 彼らは落ち着き払った表情と眼の色で、君たちを憐れむように見下ろしていた。

  ヤーボ   
それにしてもリヴェータ、お前はまだ覇眼を完全に使いこなせないのか?

 リヴェータ  
それは……!!

 ヤーボの言葉に、リヴェータは侮しそうに唇を噛む。


  ウィズ   
リヴェーダも、覇眼を使うことが出来るにゃ……?

  ヤーボ   
本来ならばな。何がキッカケでこのような中途半端な状況になっているのか解らんが。

 覇眼、という言葉で、君はひとつ思い出すことがある。
 少し前に彼女の眼から吹き出した燐光――あれがヤーボの言う覇眼なのだろうか。

 その答えを口にしないまま、彼は槍を振るとイスルギを連れ君たちに背を向けた。

  ヤーボ   
……5日後。貴様達の陣営にルドヴィカ様がお出でになる。
それまでに、自分の身の振り方を考えておけ、リヴェータ。

 リヴェータ  
くっ……!

 リヴェータは、うつむいたまま何も言わない。
 返事が無いのを確認し、ヤーボはイスルギを連れその場を立ち去った。


 しばらくの間を置いて、リヴェータは小さな声で言う。

 リヴェータ  
……魔法使い。わかったでしょ、話なんて何の役にも立たないのよ。
家の暖炉の暖かさや、街のにぎわい、村の陽気な喧嘩も、全部私達は手に入れられない。
小さいころ夢見た場所も、その中身も、何かする前に消えちゃったわ。
……だから、アンタがさっき言ってた言葉は、全部甘っちょろい戯言なの。

 彼女の言葉に、でも、と君は返す。
 だが、その先の言葉が出てこない。

 上滑りする綺麗な言葉だけを並べただけの言葉では……。
 リヴェータの心に、君の気持ちは届かない。


 リヴェータ  
季節がいくつ変わっても、私達の心にはいつも冬があるのよ。
来るはずのない春を待ち続けるだけの、冬が。

 苦笑混じりのボロボロの表情で、リヴェータは君に言った。
 ひとすじの、涙を流しながら。


決戦前


……ついに来たか、この日が。

 ガンドゥの上に座り水を飲みながら、ゲルデハイラは空に向かってつぶやく。
 ガンドゥはというと、砲弾を猫のように前足で弄んでいた。

ルトヴィカ来襲前日に奇襲をかけるとは、リヴェーダらしいといえばリヴェーダらしい。

……それよりも、勝つ見込みはあるのかしら。

…………

 包帯だらけのアマカドに睨まれ、ジミーはふっと目を伏せる。
 ふの時ヤーボとイスルギに徹底的に敗北した彼にとって、その質問は酷というものだった。

 だが、ジミーの目は死んでいない。
 次は勝つ、そういった気合が彼の目にありありと宿っていた。


 ヤーボがリヴェータたちに言った、5日後の期限は、明日。
 決戦を目前に控え、リヴェータは傭兵団たちを集め演説を行っていた。


行くわよ、ハーツ・オブ・クイーン!!
お前たちは私の心臓だ、手足だ、武器だ!!
敵から逃げることは絶対に許さないわ!!
前進せよ、ただ私だけのために!!

おおおおおおお!!!!

 兵士たちはそれぞれに武器を掲げ、戦いの始まりを各々の胸に刻む。
 だが、君の胸には数日前からの様々な思いが渦を巻いていた。

 命のやり取りをしなけれぱならない、という重い宿命……。
 言葉というものの頼りなさ……そして、リヴェータとルドヴィカの関係。
 自分の至らない点が次々と浮き彫りになっていく現実に、君は気力を失いかけていた。


……アンタ、なんて顔してんのよ。

 落ち込みかけた君の肩に、リヴェータが無遠慮に寄りかかる。
 別に、と君は返し、足元のウィズを抱きかかえた。

はぁ……アンタさ、ちょっと前のことで落ち込んでんなら、やめてよね?
元に戻らない二人を嘆くより、腹立つアイツを殴りに行く方が気分としては良いのよ。

 そう言うと、リヴェータはニッと明るい笑顔を浮かべる。

リヴェータは悩んだり、落ち込んだりしないのかにゃ?

 ウィズにそう聞かれると、リヴェータはにっこりと笑って言った。

人並みに悩むことが出来る人生なら、もう少し私も悩んだかもね。
今自分がどこにいるかなんてわかりゃしないし、歩くより走るほうがいいってだけよ。

生き急いでるにゃ。そんなんじゃ疲れちゃわないかにゃ?
それにリヴェータはルドヴィカとは昔、仲が良かったにゃ?何か起きたんだにゃ?

 リヴェータは『ルドヴィカ』という単語に一瞬ムッとすると、不機嫌に言葉を続ける。

……ルドヴィカはね、血の緊がらない姉って感じだったのよ。
それに、生き急いでるつもりなんてないわ。置いていかれたら死ぬから走ってんのよ。
……だから、アンタも全力でついてきなさい。置いて行かれたくなければね!


 かつて姉妹のように慕いあった二人を、ここまで引き裂いた事件とは何なのだろうか。
 リヴェータの言うとおり、悩む事が出来さえすれば、彼女は変わったのだろうか。

 だが、そんな終わってしまった可能性の先に、今がある。
 そして今、その可能性の集大成となる戦いが始まろうとしていた……!


最終話 煌眼級 心に宿る氷と炎


 幾つもの戦いを乗り越え、君とウィズ、ジミーの3人は砦の最奥へと辿り着いた。
 他の仲間の安否はわからない。恐らく、砦の内外で未だ戦っている最中だろう。
 最後の扉をくぐり抜けた、その先では……。


  ???   
……さて、いよいよ俺の出番というところか。


 ギルベイン  
ギンガ・カノンに連なる、覇眼の末裔が一人、ギルベイン・ルガ。

  ヤーボ   
同じく、覇眼の末爾ルドヴィカ・ロアに仕えし戦士、ヤーボ・ブラックモア。

 巨大な剣を持った騎士とヤーボが、君たちの前を塞いでいた。
 ルドヴィカの姿は、無い。

  ウィズ   
……ルドヴィカはどこにゃ。

 ギルベイン  
さあ、知らんな。
我が弟子ながら奴は気まぐれでな。

 男は片目を簿く閉じ、敵意に満ちた視線を君たちへとまっすぐに向けている。
 ジミーはすっ、と君の視界を遮るように前へと出た。


  ヤーボ   
ジミー、つくづく貴様も救われないな。
戦いの才能も無く、技術も未熟、見ていて滑稽だ。
ギルベイン様、早くコイツらを仕留めてルドヴィカ様に追い付きましょう。時間がない。

 ギルベイン  
……そうだな。

 ギルベインはヤーボに返事を返すと、ゆっくりと立ち上がり……。
 両目を、見聞いた。
 瞬間、君の体の中を、得体の知れない何かが突き抜ける!

  ウィズ   
にゃっ!?

 何かを、誰かを壊したくてたまらない、強烈な欲求と衝動……。
 他に何も考えることが出来ない。
 ただ、何かを壊したくて、たまらない……!!


  ジミー   
…………!?

 ギルベイン  
何を慌てている、ジミー。俺は見ただけだぞ、ただ、この目でな。
これが我が覇眼「烈眼」。見た者の心を、破壊衝動によって裂く力。
ジミー、貴様が降伏するというのなら、この魔法使いは助けてやろう。
……さあ、どうする?

 沸騰しそうな意識の中、悲痛な表情のジミーに対し、君は必死に首を横に振る。
 ただの流れ者である自分なら、まだリヴェータが受ける心の傷は浅いだろう。だから君は言う。
 自分を見捨てて、戦え、と。

  ジミー   
無理だ……俺は、出来ない……!!

 君は聞く。なぜ、と。
 ギシギシと歪む君の視界の端で、ジミーは必死に君の手を握った。

  ジミー   
仲間を裏切ったら……捨てちまったら……
俺は、ルドヴィカと同じだ………
だから俺は……お前を諦められない……!!


「ジミー!よく言ったわ!」

 高く、大きく、聞き慣れたよく通る声が聞こえた。

 ギルベインによって鷲掴みにされていた君の心は、その瞬間に自由を取り戻す!
 その言葉と同時に、君は自分の闘志が燃え上がるのを感じた!

 背中に突き刺さる煌く視線、その主は……!


  ジミー   
リヴェータ様……!!

 リヴェータ  
泣いてんじゃないわよジミー、アンタそんなんだからかき氷に負けんのよ。

 そんなやり取りをしている君たちへ向けて、ギルベインはギリリと歯噛みをした。

 ギルベイン  
リヴェータ……それが貴様の「覇眼」か。

 リヴェータ  
ええ。アンタの眼なんかよりもよっぽど上等よ?

 ギルベイン  
もう少しで上手くいったものを……邪魔をしおって。

 彼は続けて右目で君たちをひと睨みすると、携えた剣を勢い良く肩に担ぐ。
 君たちの間に横たわる緊張が、ぎりぎりと音を立てて張り詰めた。

  ジミー   
覇眼の末裔、リヴェータ・イレに仕えし戦士、ジミー・デヴィス。

 ジミーが剣を構えるとともに、君も魔力を込めたカードを手にする。

 リヴェータ 
もうアンタ達は振り向かなくて良い……アンタ達の背中は、私が守る。
だからアンタ達は前だけ見てなさい!前進せよ!ただ私だけのために!


BOSS ギルベイン


 ギルベイン  
貴様たちは……
これで平和が訪れるとでも思うのか……?

 戦いを終えたギルベインは、リヴェータに聞く。悲しく、冷たく、寂しい眼をして。
 そこにはもう、騎士としてのギルベインは居なかった。

 ギルベイン  
軍旗がほどかれ、都市の城門が内側から開く世界があるとでも……?
戦って戦って、戦い尽くしたその先にこそ、春があるとでもいうのか……?

 傷つき膝をついた男の言葉には、虚しい響きが漂っている。
 ふと、君はリヴェータの言葉を思い出した。

『季節がいくら変わっても、私達の心にはいつも冬があるのよ。
 来るはずの無い春を待ち続けるだけの、冬が。』

 そこにはただ、冬の寒さに凍えているだけの、男の姿があった。

 君はふと、ジミーを見る。
 彼の表情はギルベインと同じく、暗く複雑なものだった。

 ギルベイン  
聞かせてくれリヴェータ。
ルドヴィカを討った先に、貴様は一体何を――


 リヴェータ 
そういうのいいから。

 ギルベイン  
は?

 君とギルベインは同時にその言葉を発する。
 ギルベインの質問を心底面倒くさいと言わんばかりに、リヴェーダは軽くあしらった。

 リヴェータ 
先とか未来とか春とか冬とかそういうのどうでもいいのよ。
私はね、正気を失ってどっかに行った腹立つアイツを殴りに行く。それだけよ。
ねえ、ジミー。

 ジミーは何も言わず、ただ満面の笑みで頷いた。


 ***


 戦いが終わり、空は既に暗く、漆黒の闇と火の手があらゆる場を支配している。
 空には薄く小さな星が輝き始めていた。


  ウィズ   
……戦いばかりでも、空は綺麗だにゃ。

 リヴェータ 
そうね、星はいつも綺麗。
……ちょっと羨ましいくらいに。


 リヴェータ 
ルドヴィカ……。

 空に光る青い巨星を見て、リヴェータはつぶやき、君はその視線の先を追う。


 体中にどっしりとのしかかる疲労に落ちていくように……。
 君は、意識を失っていった……。



エピローグ


 ビキビキと体中の筋肉が痛むのを感じて、君は目を覚ました。

 首をひねりながら体を起こすと、そこは旅の始まりと同じ、巨大な壁画の前。

「……長い旅だった気もするけど、すごく短かった気もするにゃ。」
 同じように疲れきった顔をしているウィズの隣に座りながら、君は壁画を見上げる。

 壁画の中では、相変わらずリヴェータとルドヴィカが視線を交わし、争い合っている。

 君の旅は何の前触れもなく、唐突に終わってしまった。
 始まった時と、全く同じように。


「リヴェータに、春はやってきたのかにゃ?」
 さあ、どうだろう、と君は返し、古い壁画にあるリヴェータの姿をそっと撫でた。

「……またきっと会えるにゃ。運が良ければ、きっと。」
 ニッ、と笑うウィズに君は苦笑を返す。


 ウィズに見透かされていたのかはわからないが……。
 君は願わくば、もう一度リヴェータに会いたい――否、一緒に戦いたいと思っていた。

 それはきっと、君の胸の中に、リヴェータから貰った“闘志の炎”が……。
 まだ、煌々と燃え盛っていたから。

 いつか、また会えることを信じて。

 君はウィズと一緒に、古く大きな壁面を後にした。



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