空戦のドルキマス Story2

 
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白猫ストーリー
黒猫ストーリー




1 ドルキマス軍への合流
2 戦艦ドッグへ向え
3 湾岸基地攻防戦
4 鉱山奪取作戦
5 太古の竜が眠る場所
6 竜の遺跡を奪取せよ
7 神秘的な空域の突破
8 謎の遺跡への侵入
9 聖なる地
10 退路なき戦い
11 突撃あるのみ
12 要塞を制圧せよ


story1 ドルキマス軍への合流



「遅い!全く遅すぎる!
貴様、軍規というものを知らないのか!いいか、貴様。
ドルキマス国シャルルリエ軍に身をおくのなら、軍の規定は必ず守れ!

ガライド連合王国という大国を、ベルク元帥率いる軍が滅ぼして以降の我々は
隣国にも、大陸奥にいた強国にも、ドルキマスは危険だと知らしめたのだ。
軍に所属する人間がその体たらくでは、強者であることを示せないではないか!
たとえ貴様が弱かろうと、強者であると誇示し続けなければ、国は守れな――」



「中将閣下。もうそこらへんにしときましょう。この方は、俺らの救世主かもしれないんだ。」
「む……オルゲン大尉。貴様、どこにいっていたのだ。」

「あんたが噂の魔法使い殿か。俺はヴィラム・オルゲン。
あー、ドルキマス国シャルルリエ軍整備担当……だったんだが。」
「整備士……やっぱり船にはそういう人がいるんだにゃ。」

だけど、だった……というのは? 君は疑問を投げかけた。
「……ま、言うまでもなく死に体だからなァ、うちの国は。見ての通り、子守も必要だ。」
ヴィラムは君に近づき、そっと耳打ちをする。

子守……


「子守!? 貴様、上官を侮辱するのか!」
「あづッ! ちょっ、蹴らないでくださいよ、中将閣下。何もあんたのことを言ってるわけじゃ――
う、うちの軍は、ほら、荒くれもんが多いから、そいつらを指して――ああ、痛いッ!」

「……どうしてこう、我が軍には上官を敬わない連中ばかりが集まるんだ。」
クラリアの嘆息とともに、カツン、と小気味よい音が船内に響き渡った。
君とウィズは、知らず背筋を伸ばしてしまう。

無論、その音の正体は――。




「中将閣下と打ち解けられたようで何よりです。」
「そう見えるのだとしたら、ローヴィはどうかしてるにゃ。」
君はウィズのぼやきを慌てて止める。

「元帥閣下がお見えになられました。」

「……おやおや、元帥殿がこんな寂れた戦艦においでになられるとは。」
「ば、馬鹿者……ベルク元帥に何たる無礼を。」



「オルゲン大尉、そう警戒せずともよい。なにすぐに去る。」
下の人間の軽口を軽くいなして、ディートリヒは君に目を向けた。

……君はこの目が苦手だった。
ローヴィに銃口を向けられていたほうがマシだと思えるほどに。

「シャルルリエ中将。」
「はっ。」
あのクラリアが萎縮し畏まっている。

「……この軍は、〈イグノビリウム〉最前線にあたる。」
「俺らは尖兵ってところですね。まあ、わかっちゃいましたが。」
「当然だ。ただし、貴君らには、果たさなければならない責務がある。」
ヴィラムの言葉を肯定したディートリヒは、表情を崩すことなく続ける。
「〈イグノビリウム〉を漬すため必要な4つの拠点を、貴君らで落としてもらう。」

「他国ですらあっさり飲み込まれたほどの物量に、俺らだけで?
言っておきますがね、元帥閣下。俺らの戦力は、今日までにおよそ3割りは削られてる。
戦争において軍の3割程度も削られたら、敗戦を認め、撤退するのか常だ。」

「言うまでもなかろう。だから貴君らを当てる。頭がある限り軍は死なない。
ふふ、それに何も理由なき戦いを命じているわけではない。
まずあの拠点には資源がある。そこを押さえることで、不必要な部分を切り捨てることができる。」

国の不必要な部分、という意味だとクラリアが教えてくれる。

「最善となるのは、空を飛ぶ心要がなくなる、ということ。この意味かわかるか?」
「……ええ、痛いほどに。」

戦争による爆撃の彫響か、元々の地形のせいか、大陸は歩くには困難な地が多い。
君はそんな話を思い出した。
拠点をおさえた先、山を乗り越えたところには、かつて最大の造船国であった地がある。
偵察隊によれば、〈イグノビリウム〉に使われているものの、人がいるとのことだ。

そこを解放すれば、人を取り込むことができる。
小国……ドルキマスだけでは限界であった戦艦の増強ができる……ということだろうか。

「船があり、人がいれば“どうとでも”なる。」
「……では我々は、軍を指揮し、その拠点を叩いていけばいいのですね?」
「貴君が最も得意とするところであろう?」
「ふふ、お任せください、元帥閣下!
わたしがあんな軍など必更ない、と示してみせましょう!」

あんな軍……それはきっと(ファーブラ〉や〈ウォラレアル〉のことだろう、と君は察する。

「貴君らには期待している。」

ディートリヒが背を向けたのを見て、君は胸を撫で下ろす。


「つまりそういうことだ、わかったな?」
「……全くわからないにゃ。」
君も同調し、わからなかった、と口にする。

「要するに拠点となる地を落とせばいいってこと。」
だけど〈イグノビリウム〉には、攻撃がきかない、というような話を聞いた、と君は言う。
「奴らの戦艦は、我々の火力だけじゃどうしようもない。だからぶつけてやるのさ。」
「にゃ!?」
ヴィラムが拳を握り、ぶつけあう。
「圧倒的な物量、圧倒的な攻勢を切り崩すためのひとつ。
戦艦と戦艦をぶつけて乗り込んでしまえば、アレらはわたしたち同様、生身だ。太刀打ちはできる。」

クラリアの瞳が静かに、しかし強く燃えている。
「いくぞ。我々の力を、かの敵に見せつけてやるんだ!」


story2 戦艦ドッグへ向え



「魔法使い殿。」

船の清掃をしている最中、ふと呼び止められた。
しかし、いったいどこの誰なのか、君は思い出せない。

「おいおい、忘れられちゃ困るぜ。俺は、ヴィラム。ヴィラム・オルゲン。
ドルキマス国シャルルリエ軍に所属する――ああ、大尉だ。元は整備班にいたんだが……。」

「整備の人が最前線に立たされるって、いったいどんな軍にゃ。」
君はウィズが囁いた言葉を、そのまま口にした。

「普通そんなことは起こりえないな。俺は……運がなかったのさ。中将閣下の気まぐれってやつ。
整備の人間が突然ここに配属になるなんて、聞いたことがない。
あっ、これ中将には秘密な。知れたら何されるかわかったもんじゃない。」

「中将……確かあの子にゃ。」
君は頷く。少し……いや、すごく言葉の“キツイ”女の子だ。

「おっと……噂をすれば……。」



「貴様、いまわたしを馬鹿にしていなかったか?」
足音を響かせながらやって来たクラリアが、君を見上げてそう言った。
「何故答えない? それともなんだ? 貴様ら、口の利き方を忘れたのか?」
「違うんですよ、中将閣下。俺はただ魔法使い殿に挨拶をしていただけで……。」
「ふん、どうだかな。」
クラリアはつまらなそうに言って、君から目をそらした。

「それで中将。俺らは、まずどこを攻めるんです?」
「ふむ。」
「元帥閣下も人が悪い。俺らを“駒”にするのは結構だが、でもそれだけだ。」
クラリアが声を荒らげることなく、ヴィラムを手で制する。

「我々はまず、船を取り戻しに行こうと思う。」
「船ならたくさんあるにゃ。」
そのとおりだ、と君は頷き、クラリアに問いかける。
「馬鹿者。この程度で“数がある”などと、言えるのか。」
ここに魔道艇を運び込んだとき、君はずらりと並ぶ戦艦を見て言葉を失った。
紛れもない武力と壮観さにアレだけ驚いたのに、クラリアはまだ足りないという。

「魔法使い殿、あんたは戦争ってのを知らないようだ。」
「そんなの普通は知らないにゃ。」
「戦艦など、我々が戦うため――いや、移動するための一手段に過ぎん。
そもそも〈イグノビリウム〉が持つ戦艦には、火器の類が一切きかないからな。」
全く馬鹿げている、とクラリアは呟く。

「だというのに、うちの船は奴らの一発で大打撃を受ける。
俺らの技術力、あるいは科学力じゃ防ぎきれないからな。」
「貴様の持つ魔道艇とやらがいったいどれほどのものかは知らん。
使えないものだとしたら切り捨てる。使えるのなら、“的"にでもなってもらう。貴様、覚悟はできているな。」
君はクラリアの問いかけを前に、思わず頷いてしまった。
「ふん、よい返事だ。」
「キミ……勢いで答えちゃって大丈夫なのかにゃ………」

「ああ、そうそう。それで俺らは戦艦のある場所を攻めるんだが――」
「オルゲン大尉。今すぐ全員集めろ。その作戦をこれから説明する。」


***


「作戦は簡単だ。我々が所持していたドックを奪い返す。これだけだ。
まっすぐ進み、まっすぐ落とせ。容易だろう?」
「そんな適当な作戦……あるのかにゃ………」

クラリアの言葉を聞いて昂ぶる兵たちが、高らかに叫びだす。

君は首を傾げた。
まっすぐ進めばいいのであれば単純でいいけれど……
〈イグノビリウム〉の戦力を前にしてみればわかる。アレを正面から潰すのは、無理だ。

「ま、中将は見ての通り、“ああいう人"だし、うちの連中も“こういう奴ら"ばかりだ。」
ヴィラムが小声で耳打ちしてくれる。

確かに、と君は思った。
クラリアの部下らしい人たちは皆、どこか感情が突き抜けてしまっているような、そんな言葉にしづらい印象を受けた。
「中将が中将たる所以ってところだ。」
中将たる所以……君にはそれがわからない。
ただなんとなく、ここの兵たちのように、鼓舞されたような……。
“熱さ”を感じてしまった。

「キミ、流されちゃダメにゃ。ローヴィの話を聞いてなかったのかにゃ?」
君は、はたと思い出す。
銃撃や兵器の類が一切きかない戦艦を持つ〈イグノビリウム〉……。
そんなものを相手に、真正面からぶつかるだなんて、“狂気の沙汰”だ。

「まあ……何とかするさ。」
君の不安を掻き消すように、ヴィラムが声を発する。


「おい、貴様ら! 私語は慎め!」
「あー、中将閣下。少しいいですか。」
「ん? なんだ?」
「正面から攻めたいってのは、理解できますがね。
奴らは俺らのように思考することはないが、向かってきた連中を叩くことぐらいはできる。」

「む。しかしだからといって、背後に隙があるとは思えん。
どんな技術か、どんな力か、向かってくる者を遥か遠くから察知し迎撃するだろう、アレらは。」

「ええ、だから……魔道艇を使うんです」
「にゃ!?」
「話してみろ。」
君とウィズの驚きをよそに、クラリアは至って冷静に続きを促す。

「元帥閣下はああ言っていましたが“実際、この魔道艇がどれほど使えるものなのかわからない。」
「……ふむ。なるほど。
つまりこれが使えないなら即時撤退、使えるなら囮にして、敵を背後から殴ると言いたいんだな?」
「何もそこまでは言いませんが、仮に使えるものなら、優位に戦いを進められる可能性がある。」

「き、キミ……なんだかまずいことになってきたにゃ。」
君は彼らの話に口を挟もうとするが――。

「おい貴様。作戦変更だ。」
「魔道艇に3隻、我々の戦艦をつける。何があっても生きて戻れ。」
……自分たちを囮にするのでは? と君は問いかける。

「馬鹿か、貴様。使えるかどうかもわからないんだぞ。
見極めた上で、ベルク元帥に報告しなければならない。囮などという冗談を真に受けるな。
とにかく魔道艇が使えようが使えまいが、我々が死んでも護り抜く。
いいか、貴様が最優先するべきは、生きて戻ること。そして魔道艇を傷つけないことだ。」
君とウィズは、ぽかんと口を開いたままクラリアを見つめる。

「返事は?」
君は慌てて、はい!と返答する。
クラリアは満足気に頷き、身を翻した。

「作戦は明後日。それまで各人待機だ。」



story3 湾岸基地攻防戦



”見えるか、黒猫の魔法使い。アレは我々が所持していた“モノ”だ。”
”ちょっと中将閣下。先行しすぎじゃありませんか。高度を低く保ち、速度を抑えてください。”
”やかましいぞ、馬鹿者。背後で怯える指揮官に、いったい誰がついてくるというのだ。”
”尤もらしいこと言っていますがね、中将。“頭”が最初に撃墜されるなんて、笑うに笑えない。”

「……意外と呑気に会話してるように聞こえるにゃ。」
君は、そうだね、と口にした。

これから彼らドルキマスが所持していたものを取り返しにいく……だというのに、
ともすれば和やかともいえる空気感はいったい何なんだろう?

いったいどこから現れたのかすらわからないくイグノビリウム〉を、――いや、
銃火器、兵器が一切きかない戦艦を持つ脅威を打破する術を、彼らは持っているのだろうか?


”魔道艇はその速度を保ち進軍だ。仮に我々の戦艦が撃墜されようと、貴様だけは守る。
だから恐れず進め。貴様の魔道艇が、<イグノビリウム〉にとっての脅威だと知らしめてやれ!”

 ***

 湾岸造船施設 攻防戦

 ***


story4 鉱山奪取作戦



「おい。」
船の上――ちょうど風のあたる場所で休んでいると、ふとぞんざいな声が飛んできた。
「中将閣下にゃ。」

「貴様、こんなところで何をしている?」
君は素直に、休んでいた、と伝える。

“戦った”あとの疲労感と虚脱感が、体に重くのしかかっていた。
敵艦に砲撃がきかないと知っているシャルルリエ軍団は、
自らの戦艦をぶつけることで足止めをさせ、相手側に乗り込み白兵戦を繰り広げる。
それが異常なまでの疲労感の原因だろう。

「全くだらしのない……ほら、飲め。」
手渡されたのは水筒のようなものだった。
蓋を開くと、ほのかに甘い香りが漂ってきた。

「隣国には、それは見事な茶園があった。そこでとれた茶葉を使ったものだ。飲め。」
君は、その茶園はどうしたの? と尋ねた。
「ふん、聞くまでもないだろう。全て燃やされ、灰も残らなかったよ。」
忌々しげに吐き捨てるクラリア。
「結局、アレらが何をしたいのか、何をしようとしているのか、誰もわからず飲み込まれていった。」

「……戦ってみて思ったけど、〈イグノビリウム〉との戦力差が歴然としているにゃ。」
「そうだ。」

幸いドルキマスの戦艦は沈まなかったけれど、かなり消耗――いや、打撃を受けていた。
それだってヴィラム日く、「奇跡のようだ」という話だ。

「魔道艇がいかに“有用な”駒であるか、我々は理解した。貴様はこれ以上にない、我が軍の戦力だ。」
どういうわけか――〈イグノビリウム〉の兵は、魔道艇を狙い、そして魔道艇を恐れていた。
そして君自身の魔法も、彼らにはとてつもないダメージを与えた。
だからドルキマスの戦艦が無事であったとも言えるのだが……

「安心していい。貴様は我々が守る。たとえこの身が沈むことになろうとも、だ。」
得意気に、強気な笑みを見せながらクラリアは言う。


「いやいや、アンタを沈ませたら、俺らのクビが飛ぶ。」
停泊している魔道艇に乗り込んできたヴィラムが、呆れ果てたように口にした。
「アンタを死なせないようにするのが、俺ら兵隊の役目だ。もちろん、魔法使い殿もな。」

「……意外といい人だちなのかにゃ?」
そうだといいんだけど、と君は呟く。

だけど守られているばかりではダメだと、君は思う。
1日2日でひとつの拠点を落とすことができないとは思っていたけれど、
まさかここまで時間も、人も、そして自分自身の精神も、すり減っていくとは思っていなかった。

まだ近くの拠点をひとつしか落としていない。
大陸には100を超える国があったというし、長い道のりになりそうだ。

「臆したか? だが逃げられないぞ、魔法使い。貴様は、我々ドルキマスと運命を共にするんだ。」
君から水筒を受け取ったクラリアが、不敵に笑う。

「まあ、魔法使い殿。気楽に行きましょうや。どうせ普通にやっちゃ勝てない喧嘩をしてるんだ。」
「そんなのに巻き込まれた私たちの身にもなってほしいにゃ。」
「次については追って通達する。貴様は、少しでも長く体を休めていろ。」
そうしてクラリアが背を向け歩き出したのを、君はウィズ、ヴィラムとともに跳めていた。


「……何を生き急いでいるんだか、中将閣下は。」
ヴィラムの言葉が、やけに耳に残っていた。

 ***

 鉱石資源採掘場 奪取作戦

 ***



story5 太古の竜が眠る場所


「キミ、今日はまた戦場に出る日にゃ。」

ウィズに言われて、思い出す。
呑気に魔道艇の清掃をしている場合ではない。

「結構。清掃は行き届いているようですね。」
「にゃ………」



「貴官は非常に優秀だと、中将も仰っていました。」
突然現れたローヴィが、ほんの少し表情を緩ませてそう言った。
「中将も、元帥閣下も、貴官の活躍に期待されています。」

君は曖昧に頷く。
ここに果て何日経ったか覚えていないけれど、魔道艇が使えると考えたらしい彼らは、
ようやく君自身のことを仲間だと認めてくれたらしい。

それは、君がここからクエス=アリアスに戻るためにも、重要な一歩だった。

「…………」
会話が途切れたにもかかわらず、ローヴィは立ち去らない。

「……キミ、何かしたのかにゃ?」
ウィズもどことなく緊張しているようだ。

あの銃で撃たれたことがトラウマとなって、蘇ってきた。
君は仕方なく、どうしてここに? と問いかけた。

「元帥閣下が、貴官の船に同乗しろ、と。」
君は思わず驚きの声を上げる。いったいどうして――。

「魔法の仕組みを理解できれば、〈イグノビリウム〉への手立てが見つかるかもしれません。
……というのは、あくまでも建前ですが。」
建前……というのを、ここで言ってしまっていいのだろうか。

「元帥閣下は、他者を誰ひとり億用していません。
……貴官が裏切らないとも限りません。」
つまり怪しい行動を見せたら、撃つ、ということだ。

「キミ、ここに来てから災難続きにゃ。」
全くだ、と君は思う。

「行きましょう。中将がお待ちです。」
だが……だからといって、逃げ出すこともできそうになかった。


story6 竜の遺跡を奪取せよ


「遅い! 貴様は時問を守るということができないのか!
……む。ローヴィ。何故、貴様がここにいる。」

「元帥閣下のご命令です。」

「いったい何の理由で?」
「ふん、そんなものどうだっていい。ベルク元帥が仰ったのなら、拒否する道理はない。
ローヴィ。邪魔だけはしてくれるなよ。仮にも、こいつはドルキマスの戦力だ。」
「わかっております、シャルルリエ中将。」

「……クラリアとローヴィは、やけに険悪にゃ。」
君も同じことを考えていたが、理由は聞くに聞けない。

「階級でいえば、中将のほうが圧倒的に上なんだが。」
とヴィラムが囁く。
「中将がドルキマス軍に所属したときから、どういうわけか彼女を毛嫌いしていてな。
あえて理由は聞いていないが、まあ、魔法使い殿が気にするようなことじゃないさ。」
そう言われてしまっては、やはり口を挟むことはできない。

とうのクラリアは、既にローヴィに目を向けていなかった。
自軍の兵に向け、彼女は声を発する。

「貴様らの力によって、先の戦いでは、見事に勝ちを収めることかできた。
だが魔道艇に遅れをとったこと、忘れてはいないだろうな。
たった“1つ”に、貴様らは劣っていると、あの戦いで証明されてしまった。」

兵を鼓舞するのは、上官の役目だと言わんばかりに、クラリアは声を張り上げる。
彼らは、君をちらりと見やったあとで、関の声を上げる。巨大な戦艦が揺れんばかりの声だ。

「ドルキマス国には、我が軍のほかにも〈イグノビリウム〉殲滅に向け、動き出した軍がある。
シャルルリエ軍団を出し抜こうと考える輩も、決して少なくはない。
しかし我々には、魔道艇を含め、過去の戦争で無敗を誇る力がある。
〈イグノビリウム〉の連中を討った先の戦いを思い出せ。我らの力が、奴らに劣っていないと――
いや、奴らよりも勝っていると、貴様らは知った。
いくぞ! 次の戦いで我らシャルルリエ軍団の脅威を、奴らの体に刻み込んでやるんだ!」


お腹の奥底に響き渡る“少女の声”は、それだけで君にも熱を与えた。
「こんな声だけで、勝てそうな気がしてくるのが不思議にゃ……」
ウィズも例外ではないようだ。

「貴官の船に同乗します。よろしいですね?」
ローヴィの声に頷き、君は魔道艇へと向かった。

 ***

「ひとり増えただけで、こんなに緊張感が漂うようになるのかにゃ……」
ウィズが指しているのは、ローヴィのことだ。

〈イグノビリウム〉という敵との争いなのだから、緊張感はあってしかるべきだが、
無言を貫き、君の背後に立つ彼女の威圧感たるや……

「何か?」
君の視線に気づいたローヴィが、特別気にした素振りもなく問いかけてくる。
君は誤魔化すように〈イグノビリウム〉とは何なのか、というような質間を投げかけた。

「以前も話したように、我々は〈イグノビリウム〉という存在について、確かな情報を持ちません。
しかし、恐らく貴官も見たでしょうが、アしらはまるで灰や塵のように消えていく。
“人間の形”を模してはいますが、我々とは作りが根本から違うようです。」

「アレはもしかしたら意志のない人形とか、そういうものかもしれないにゃ。
魔法みたいなものを使ってるように見えたけど、誰かが作ったモノのような気がするにゃ。」

ウィズの言葉とローヴィの言葉……君はまだ理解しきれていない。
無限ともいえるほどに、どこからか湧き出てくる敵を倒すのに精一杯だったからだ。

かつて大陸に降り立った彼らは、〈イグノビリウム〉……名を持たぬ者と、呼ばれていました。
そして名を持たぬ者は、瞬く間に勢力――いや、暴力によって大陸に君臨することになりました。
……ドノレキマスより遥かに力のあった国々も、“戦い”、そして散っていった………

力があったのに、そんな簡単に負けてしまったのか、あるいは逃げ惑ったのか……
君にとって、それは定かではなかった。

「敵兵を倒すことはできましたが、あの圧倒的な物量を前に為す術なく敗走した、ということです。
それはもはや戦争と呼べるものではなく、蹂躙。言葉を必要としない暴力でした。」
「……聞くだけで目眩がする話にゃ。」

”聞こえているぞ、ローヴィ。奴ら――大国の連中は、間抜けが過ぎたという話じゃあないか。
どれほどの武力を持とうと、しょせんは貴族だ。礼節を重んじる? ふん、笑わせるな。
運動競技と勘違いしていたんじゃないか? 馬鹿者どもめ。礼に始まり礼に終わる戦があるか。”
クラリアは、通信機越しに忌々しげに吐き捨てる。

”まあまあ、お三方。そこらへんにしときましょうや。呑気に駄弁る暇なんてありませんぜ。”
「オルゲン大尉、貴官の声も、何やら楽しげに聞こえますが。」

”争いなんてのは、なんていうか、気持ちを昂ぶらせなきゃやってられねぇ。
長く戦争を見てるが、未だに手が震える。楽しげだなんて馬鹿言わないでください。
俺は緊張で死にそうだ。要するにそういうことです。”
気持ちを強く持つために、無理やり自分を騙している、というような……。


「戦争狂といったいなにが違うと言うのです。」
通信機を終えたローヴィが、つまらなそうにぼやいた。
君は、その言葉を聞かなかったことにする。

「さあ、進みましょう。貴官の力、私にも見せてください。」


 ***

 ウォラレアルの里 奪取戦

 ***


story7 神秘的な空域の突破



「どうやら魔道艇は使えるものらしい。」
「はい。間違いありません。〈イグノビリウム〉の戦艦を落とせるのは、魔道艇だけです。」
「現状、ドルキマス軍の損害はどれほどだ?」
「シャルルリエ軍団の損害が最も激しく、既に3割程度削られています。
他軍から回すほどの戦力的余裕はなく、何より撤退戦など、あの中将が認めるはずもありません。」

そんなに損耗が激しいだなんて……。
君は、2、3割も削られたら撤退を視野にいれる、とヴィラムが言っていたのを思い出した。

「結構だ。何ひとつ問題ない。」
「問題だらけにゃ。壊滅したらどうするつもりにゃ。」
「先遣隊としては、これ以上にない戦果を上げているといえるでしょう。」

「あれほどの軍団を送り込んでもなお、〈イグノビリウム〉は健在。……全くどうして面白い。」
「シャルルリエ中将は、やはり“うまい”やり方を知っています。彼女でなければここまでは。」
「無論だ。クラリア・シャルルリエという頭があるかぎり、かの軍団に敗走はない。」

何日ぐらい戦ったのか、君にはこの“戦争”が、無限に続くように思えた。
必至に〈イグノビリウム〉に対抗しているのに、そんなに損害が出ていることもショックだった。

「貴君を守り、貴君を生きて戻らせるための、“投資”だ。気にすることはない。」
役資……そうだ。君は守られていた。
〈イグノビリウム〉は魔道艇を狙い、魔道艇に向かってくる。
その数がひとつ、ふたつ程度なら問題なかったかもしれないが、
無数の戦艦が攻めてくる以上魔道艇が“ひとつ”だけではどうしようもない。

……君は、それはディートリヒの命令なの? と訊いた。
「いや、私は何も言っておらんよ。全てシャルルリエ中将の判断だ。」
それならばなおさら、君ば守られで戦うべきではない、と考えた。
仲間……と呼べるかはわからないが、君を守るため傷つく人を見たくない。
「貴君が何を考えているかは知らないが、彼らの名誉を穢してくれるなよ。」

「……元帥閣下はこれからどのように?」
「私は、ここに残る。なに、どうせすぐ“空けること”になるがね。」
ディートリヒの言葉を理解できず、君はローヴィを見た。
「では参りましょう。中将がお待ちです。」
だが、そんなこと知ったことではない、とばかりに彼女は歩き出した。




story8 謎の遺跡への侵入


ドルキマス国シャルルリエ軍団は、他国との争いに打ち勝ち、
〈イグノビリウム〉の侵略をおさえていた、いわば国内最大の戦力であった。

軍内において“不死身”と、他国からは“戦争狂”と比喩されるクラリア・シャルルリエ。
〈イグノビリウム〉が大陸に降り立って以降、彼らと幾度も相まみえることがあったものの、
その全てで一度の撤退もないドルキマスの武力が今、最大の窮地に立たされていた。



「ちいッ……!」
「……こいつはまずいですよ、中将。」

〈イグノビリウム〉は、視界に入った敵を攻撃する、特別な策を練らないもの。
まっすぐに進み、邪魔者を踏み潰すだけのもの。君はそのようなことを聞いていた。
だから向かってくるものを排除しに動く、いわゆる――

「こいつら“ゴリ押し”するだけの連中じゃなかったのか!?」
「……学習するようですな。」
「なにを呑気なことを言っているんだ!コレを見ていないのか!?」

前方から無数に押し寄せてくるだけと――もしかすると、侮っていたのかもしれない。
囲み込むように現れた〈イグノビリウム〉が、君たちを撃つタイミングを見計らっている。

「見ても見なくても変わらんでしょう。」
「……撤退するほかありませんね。」
「“撤退”だと!? 馬鹿を言うな! “どこから”、どう”退くというんだ!」
「しかし、このままでは壊滅的な打撃を受けてしまいます。」
「……参ったな。まさかアレに学習能力が備わってるなんて。」

「うむ。これはどうしようもない。」
クラリアの、よもやあっけらかんとした声音に、君は驚きを禁じ得ない。
「おい、魔法使い。貴様はローヴィを連れて魔道艇で抜けだせ。道は我々が開く。」
君は必死に言葉を探し、そんなことはできない!と叫んだ。
みすみす仲間を見殺しになんて――君にはできなかった。

「幸い、後方は空いている。我々が魔道艇の前に立ち、盾となろう。いいか。死に物狂いで逃げろ。」
「仕方ありませんな。本隊――元帥閣下と合流してください、魔法使い殿。」


「中将閣下のご命令です。撤退してください。我々は魔道艇を守らなければなりません。」
それは受け入れがたい命令だ。自分も仲間も助ける、君はそう誓った。
……それはたとえ銃を突きつけられても、敵の群れに囲まれても、決して曲げてはいけない――そう思った。
「何をしているのです?」

君は、「前へ進む」ことを伝える。
下がって敵に背を向けたところを、狙い撃たれる可能性だってある。
魔道艇は君の魔力に反応するが、魔力がどうあれ、速度には限界がある。
むしろ今こそ――“魔道艇”が囮になる必要があるのではないだろうか。
君は、それを伝えた。

「確かにそれは一理あるが、魔法使い殿の負担が大きすぎるな。
そもそもこうした行動に出るようになった〈イグノビリウム〉が、魔道艇だけを狙うとも限らない。」
「キミ、ずいぶんな賭けに出たにゃ……。」
「貴官のそれは、無謀とも言えます。」

無謀でも、決して無策ではない。
魔道艇は、〈イグノビリウム〉が持つ戦艦の攻撃に十分耐えうる。
それが1度だけなのか、2度なのかはわからないが、通常の戦艦が喰らうよりはマシだろう。

「“最も重要な"戦力である魔道艇を、よもやそのように使うというのですか!?」
後頭部に銃を“突きつけられる”感じがあった。だけど君は、かぶりを振る。

“最も重要な戦力だからこそ、最も重要な今この局面で使うのだ”


「ちっ……どうしてこう、我が軍には“上官を敬わない連中"ばかりが集まるんだ。
作戦変更だ。いいか魔法使い、必ず道を開け。それとひとつ勘違いはするな。
撤退ではない。“道を開くんだ”――戦うために。奴らに負けないために!」


story9 聖なる地



『……っとと、おお、アンタらかァ、俺らの邪魔してんのは。』

「……なんだ? ずいぶん人間っぽいのが出てきたな。」
「……耳障りな。」
「こいつらが何を言っているかなんて、我々が理解できるはずないだろう。」

「私たちには聞こえてるにゃ。」
君は頷く。眼前の男性は、普通に“言葉”を喋っているように聞こえるが、どうやら彼女たちには、わからないらしい。

『戦っていうから来てみたが、やってることは前進するだけだなんて、馬鹿にもほどがあるよなァ!
どうやらアンタらの軍は、今散ってるって言うじゃねえか。こいつらは能のない連中だが、
この程度の情報ぐらいはどうにでもなるわな。』

「貴官は、彼が何を言っているのか、理解できるのですか?」
君は、わかる、と口にする。

『俺らを潰すのに必死で、脇をあけるなんて甘いよなァ。甘すぎるよなァ!』
まァ、アンタらが前に来ることはわかっちゃいたんだ。だから……
“アンタらの持ってる拠点”をひとつ攻めさせてもらったぜ。』

君は言葉を失った。
背後にいるクラリアたちには、ただの雑音にしか聞こえていないのかもしれない。

「なんだ、どうした?」
君は、眼前にいる男が言った言葉を、そのまま伝えた。

「ちッ、そういうことか。」
「拠点……そんなことを〈イグノビリウム〉が?」

『ま、俺は時間稼ぎってやつだな。本当はアンタら――いや、アンタの魔道艇を壊したかったが。
残念だが、そいつはまたの機会にさせてもらう。大事な仕事はさせてもらったしなァ!』
男は、それだけを言い残し、足早に戦艦へと戻っていった。

「逃がしてよろしいのですか? シャルルリエ中将。」
「構わん。まずは我らの拠点が本当に落とされてしまったのか、確認する必要がある。
仮に“そうだったとしたら”、あの男は死ぬよりも苦しい目にあわせてやる。」

story10 退路なき戦い


「見事にまあ、やってくれたな。あいつら。」
魔道艇の外で、かつて拠点だった場所を眺めていると、ヴィラムが話しかけてきた。

「ベルク元帥は――ドルキマス国はどうなっている!?」
クラリアが声を荒らげ、ローヴィに詰め寄る。
「元帥閣下は依然音信が途絶えています。2名の大将以下、11名の中将の行方もしれません。」
「冗談じゃないッ! 失態だッ!」
苛立ちを抑えきれず、クラリアは地面を蹴り上げた。

あのディートリヒ・ベルクが行方不明だなんて、君にとっても認められなかった。

「もしかすると既にやられた可能性もありますな、中将。」
冷淡な言葉を前に、クラリアの表情が一変する。
「我が国の要塞は既に〈イグノビリウム〉の手に渡っている模様です。
また所有していた国土の約3割程度を侵略されたとの報告がありました。」
「ずいぶんと粘ったつもりだったが、落とされるときはあっさりいくもんだな。」
「このままじゃ、敗戦は確実にゃ。」
君も、そうだね、と言ってあたりを見回した。

兵の士気が落ちているだけではない。
シャルルリエ軍団も、何とかあの包囲網から逃れることができたが、ごっそりと戦力を奪われてしまっている。

「あー、どうするんです? 中将閣下。
一時的ではありますが、軍の指揮権はアンタにあるんだ。決めてくださいよ。」

「貴官の魔道艇に不備は?」
君は首を横に振る。
〈イグノビリウム〉の戦艦から放たれる特大の魔法を受けてなお、君の魔道艇は沈まなかった。
「白旗上げて許しを請うたところで、通じる相手じゃない。
身ぐるみ剥がされて、“痛い目”を見るくらいなら、いっそのこと逃げてみますか?」

逃げる……ここからどう逃げるというのだろうか?
海の向こう? 確かに戦艦なら海を越えることはできるかもしれない。
だがその先に何があるのだろう?まだ平和に暮らしている国々が存在しているのだろうか?
あるいは、既に侵略され、君が見てきたように苦しい日々を過ごす人々が……
“もはやそんな人がいるかさえ、怪しい”とさえ思える状況だ。

「逃げるとは言っても、戦艦に乗れる人間には限りがある。
ま、ドルキマスにいったいどれほどの人間が残っているかって話ではありますがね。」
ヴィラムが髪を掻きあげたその瞬間、
「――あづッ!? な、何するんですか、中将!」

「逃げる!? ふざけるな! 我が軍が撤退することなどありえない!」
「しかし中将、お言葉ですがね、俺たちは敵を侮って罠にハマった間抜けだ。
今、退かなければ待っているのは――うぐッ!待ってください、中将。本当に痛い!」

ヴィラムのすねを取り飛ばしたクラリアが、君の目の前まで近づいてきて言う。

「まだ国民は生きている。だから国も生きている。
わたしがいればシャルルリエ軍団が死なぬように、国民がいるうちは国も死なない。
だから命を賭して守る。国と、国に住まう人々を。それにな、貴様ら。わたしは命令を受けたぞ。
撃滅しろと! 敵を殲滅し、大陸の全てを取り戻せと! わたしはベルク元帥から命令を受けた!
退けるものか。船を失い、首だけになろうと、わたしは奴らを撃減する! いくぞ魔法使い!」
そう言ってクラリアが歩き出す。


――その熱いクラリアの言葉に引っ張られるよう君も歩を進めてしまう。
「いや……キミ、どれだけこの空気に流されてるにゃ。結果的に作戦とか何もないにゃ。」
しかし、国や人々を守ると言われては、その思いを無下にすることはできない。

「待ってくださいよ、中将。アンタひとりじゃ何もできないでしょう!」
「……無策で飛び込むなんて、理解に苦しみます。」
そう言いながら、残ったふたりも君たちのあとをついてくる。

少なくとも、ドルキマスの要拠点だけは、取り返さなければならない。

 ***

魔道艇を進めながら、君は近づいてくる要塞に目を向けた。
「あれがドルキマスが持っていたっていう要塞みたいにゃ。」



ドルキマス国の前王が、戦争から身を守るために建てさせたという、まるでお城のような建造物。
敵から身を守るだけではなく、迎撃することができる重要な拠点として機能していたという。

君が所属するシャルルリエ軍団、ほか複数の軍が国から離れていたため、今回のようなことが起こった。

「〈イグノビリウム〉が色々なところに現れたから、つられて軍を出すことになったにゃ。
人に限らず、近くにあるものを何でもかんでも踏み潰すだけって聞いてたけど、実際は、作戦をたてる人がいたってことにゃ。」

そのとおりだ。君も目の前のことに精一杯で、そこまで考えが回っていなかった。
事実、無数の戦艦、無数の兵たちがただただ攻撃してくる、というだけだったのだから。

「貴官は、何故このドルキマスに来たのです?」
突然の質問に、君は答えられずにいた。
「貴官が魔道艇を使い、いったい何を目論んでいたのか、と考えていました。
怪しい動きを見せたら撃つことも躊躇わないつもりでしたが……
貴官にそのような様子は見受けられません。魔道艇という力があるのに。」

君はローヴィの問いに答えず、先行する戦艦に続く。
答えず――ではなく、答えられなかったのかもしれない。

「あの要塞は、ドルキマスの軍事拠点でもありました。」
それを察したのか、ローヴィが話題を変えた。

「無論、そこに全てがあるわけではありませんが、アレを落とされると立ちゆかなくなります。
事実、我がドルキマスは過去に例を見ない損害を被りました。」

「軍のえらい人たちが軒並みいなくなったにゃ。」
「万全の軍は、ほぼなくなったといっていいでしょう。」

これからどうするの? と君は訊く。
「シャルルリエ中将に従います。」
それでいいの? と続ける。

「中将のお言葉を聞き、無謀と思う反面、我々が立ち向かわなければならない、と思いました。
貴官に心配されるまでもなく、これでいいと思うからこそ、私はここにいます。
ドルキマスは、戦わねばなりません。勝つために。」


story11 突撃あるのみ


「これは、酷い有様だ。」
ヴィラムの言葉どおり、要塞は既に〈イグノビリウム〉に占領されていた。
敵艦が周囲を取り囲み、侵入を防いでいる。

「おい貴様、見えるか? アレがわたしたちの敵だ。」
そうだ。何度となく戦ってきた相手。
クラリア……クラリア・シャルルリエ中将の言葉で、一層身か引き締まる思いを抱く。

「ここまで来たら魔法使い殿に任せるしかないな。」
「馬鹿者。一番いいのはわたしがもらう。魔法使いにくれてやるものか!」
ここに来て、そのテンションを保っていられるのは、シャルルリエ中将だからなのかもしれない。

戦艦をぶつけて敵艦へ乗り込み、敵味方入り乱れての白兵戦。
戦力は削られてしまうが、彼らにとってその手段しかないというのだから仕方がない。

だが……いや、だからこそできうる限り、犠牲を生まないよう、君自身が頑張らねばらない。
心に強い覚悟を持ち、君は魔道艇とともに進んでいく。


story12 要塞を制圧せよ


敵艦への激突――そして、入り乱れての白兵戦。
互いに折り合い、撃ち合い、時には魔法も飛ぶ乱戦。

「なかなか奴らもやるじゃないか!
負けるな、貴様ら!攻めろ!攻め抜くんだ!」

「しっかし、これじゃあ埓が明かないな。」



『ようやく来たなァ。待ってたぜ。』
やけに凶悪な武器を携えた男が、ゆっくりと近づいてくる。
君たちを囲み、おびき寄せ、その隙にドルキマスの拠点を奪った男。

『俺はァ、エクサヴェルってんだ。わかってると思うが、あんたらの敵だ。』
「くッ、なんだこの音………」
「〈イグノビリウム〉の兵の言語は、我々には理解できない。」

「……みんな、あの男が何を言っているのか、理解していないんだったにゃ。」
君には、男性が――敵意こそあるものの、話りかけてきているだけのように思えた。
だが要塞を奪ったのは事実。君にとっての敵でもある。

『アンタにしか言葉が通じてないようだが、まァ、ここまできたら理由なんていらねェよなァ!』
巨大な兵器を君たちに向けて、エクサヴェルが口元を笑み歪めた。
『俺はなァ!暴れて、破壊して、奪って、そういうのが楽しくてしょうがねェんだ!』

「おいおい冗談じゃねえぞ。ただでさえ敵兵に囲まれてるってのに、あんなのどう避けるってんだ!」
君はみんなの前に立ち、カードを構える。

『〈イグノビリウム〉に喧嘩売ったのが運の尽きだと思って、悪ィが、このまま逝ってくんなァ!』


 ***

 BOSS エクサヴェル

 ***


爆発音とともにエクサヴェルが吹き飛んでいく。

『ま、参った参ったァ……あんた、強えなァ……』
強力な魔法を受けてもなお、エクサヴェルは立ち上がろうとしていた

「とっ捕まえろ。今なら容易だろう。」
「なんて奴だ……武器はぶっ壊れたが、体は傷ひとつ負っちゃいねえ。」

「頑丈な敵だったにゃ。」
一応、これで抑えたことにはなる……ようだ。


『……弱ったぜェ。あの方になんて言い訳すりゃいいんだ、俺はよォ。』
あの方……君はそれが誰なのか、気になってしまう。だが……

「貴官の疲労は窺い知れますが、まだ戦いは終わっていません。」
そう、エクサヴェルを倒したところで、敵兵の動きは止まっていない。
まずは……この拠点を取り戻すことが先決だ。

「すまないな、魔法使い殿。面倒をかける。」
君は、大丈夫、と微笑むが……この敵の数を前だと、強がりにも聞こえたかもしれない。

「本当に大丈夫ですか?」
ローヴィに問いかけられ、君はすぐに答えられない。
「無理はなさらないでください。貴官は健闘しました。あとは我々が……」
ローヴィの言葉を遮るように、要塞の奥から爆音が響き渡る。


「ッ、なんだ? 敵の増援か!?」
「いや、あれは……ドルキマス国の戦艦です!中将、俺らの援軍がきたようです!」

その声を聞き、君はほっと息を吐く。
轟音が今はとてつもなく心強かった。

「もう一息だけ、頑張るにゃ!」
ウィズの言葉に頷いて、君はぐっと体に力を込める。

これを乗り切り、拠点を取り戻さなければ……!


***

 ドルキマス要塞 争奪戦

***


「魔法使い。貴様にはずいぶんと助けられた。」
拠点となる要塞を取り戻した君たちは、敵兵を退け、ようやく一息ついていた。
まだ〈イグノビリウム〉の一部を倒したに過ぎない。それに比べて、ドルキマスの損耗は激しい。

「ファーブラは、我々より早く複数の地を落としたようですな。」
「彼らは、〈イグノビリウム〉相手の戦い方を心得ていると見えます。」
「効率のいいやり方があるなら、知りたいものだ。」

「おい貴様。飲め。」
そういって手渡されたのは、いつだったかの水筒。それはどこか甘い香りの、特別なお茶だ。

「我が軍の立て直しが急務ですな、ローヴィ殿。」
「援軍が来てくれたのは幸運でした。そこまで連携がとれていなかったこともありますが……。」


「ほう。悪くない。」
背後から……あの、低く、それでいて鋭い声が響く。



「貴君ら、期待に背くことなく、十分な戦果を上げているようだ。」

「べ、ベルク元帥……生きておられたのですか。」
「ふふ、死んでいてくれたほうがよかった、ということか、シャルルリエ中将。」

首をぶんぶんと横に振って、言葉にならない言葉を上げるクラリア。

「どちらにおられたのですか? 元帥閣下。」
「言ったであろう。“空けることになる”と。」

……君は、あのときディートリヒが言った言葉を思い出した。
“なに、どうせすぐ空けることになるがね”
それはつまり、要塞を手放すという意味だったようだ。

「貴君に声をかけておいたのが功を奏したようだ。」
君を見下ろすディートリヒが、いびつな笑みを見せた。
しかし言葉の意味がわからず、君は首を傾げる。

「アレらも無能ではない。いずれ頭を使うときが来ることを考え、貴君を利用した。
アレに囲まれたとき、貴君は前へ出ることを選んだ。それが私の言葉によるものと気づかず。
あとは――貴君らも知っての通りだ。アレはない頭で考えぬき、ここを落とすことを選んだ。」

深追いした結果、背後に大きな隙ができた。
そうして〈イグノピリウム〉かここに乗り込んだときには、既にディートリヒたちはここにいなかったのだという。
結果的に被害を出すことなく明け渡すことになったわけだが……

「なにも貴君だけをそうしたのではない。我が軍に隙を作らせ、アレらをここに籠城させたのだ。」
閉じ込めたうえで逆に取り囲み、一気に叩こうという作戦……だったらしい。

「くくっ、面白いように動いてくれたよ、貴君は。」
どうしてそんなことを、どうしてそれを言わなかったのか、君はまくし立てるように問いかけた。
「戦争に勝つために、駒を利用するのは当然のことであろう。」
悪びれる様子もなく、それどころか愉快げに笑い、ディートリヒは言う。
「ダメにゃ。全く言葉が通じないにゃ………」

「さあ、次だ。まだ戦争は始まったばかりではないか。
シャルルリエ中将。貴君に指揮権を与える。最後まで戦い抜いてみせたまえ。」
「はっ!」
「……とんだ元帥閣下だ。欺くにしたって、やり方ってのがあるだろうに。」

大将以下の行方が知れなかった将も、ディートリヒとともに“潜んでいた”らしい。
いったいどこに、ということを聞いたところで、はぐらかされるのがオチだろう。


「いきましょう。貴官にもまだ働いてもらいます。」
「さあ、いくぞ魔法使い。全敵勢力を退けるまで、戦いは終わらない!」


分岐
●ドルキマス軍
●ウォレアル軍
●ファーブラ軍
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