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【黒ウィズ】神竜降臨Ⅱ Story

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最終更新者:にゃん
2014/06/23




目次


プロローグ

Story1 初級  竜人の少女を救え

Story2 中級  暴れ狂う水竜

Story3 上級  狂乱せる雷竜

Story4 封竜級 炎まき散らす火竜

Story5 絶焉級 黎明の光






プロローグ



 整然と石が積み上げられた古い壁を、君の手にしたランタンが灯を照らし出す。

石畳を踏みしめながら、君は油断なく、遺跡の奥を目指して慎重に歩いていく。

「竜神信仰の遺跡……っていうわりには、あまり変わった感じはしないにゃ~。」

 君の足元を歩きながら、ウィズはどことなく退屈そうに言った。

「とはいえ、ギルドの依頼にゃ。どんな魔物が棲みついてるかわからないし、警戒するにゃ。」

 師匠らしく戒しめるウィズだが、ふにゃあ、とあくびをしながら言うのでは、さまにならない。

「ケガをしたら、傷薬を塗るにゃ。この間バロンにもらったアレは、とびきり効くからにゃ~。」

 いたずらげな笑顔を見せるウィズ。二重の意味で、ケガをしない方がよさそうだ……

いつ魔物に襲われてもいいよう身構えながら進んでいくと、やがて遺跡の最奥に辿り着いた。


「祭壇の間……ってところかにゃ?」

 おそらくそうだろう。人型の像を中心として空けた空間が広がっている。

「あの像……竜神っていうか、竜の翼と尻尾が生えた、女の子……にゃ?

像の台座に、何か書いてあるみたいにゃ。」

 うなずいて、君は像へと近づいていく。

台座に刻まれている古代の文字は、朽ちかけているものの、なんとか読めないほどではない。


「我 霊妙なる異ノ世の天地を 夢に見たり

 たそがるる世の果て 貴き竜神 顕現す……」


 書かれている言葉に、君とウィズは、ハッと顔を見合わせる。

「これ……異界のことにゃ!?」

 ウィズが叫んだ瞬間、像が突然、まばゆい光を放った。

そちらを向いた君は、像の放つ光の奥に、ひとりの少女の幻影を見た。

小さな女の子をかばって傷つきながらも、襲い来る竜に敢然と立ち向かう少女の姿を……。

凶悪な竜の爪が少女に迫る。

助けられるはずもない……それでも君は、彼女を救うべく反射的に手を伸ばしていた。

手が像の光に触れたとたん、目の前で無数の光芒が鮮烈に弾け……。


「……きゃあっ!?」

 次の瞬間、君は少女もろとも大地の上を転がっていた。

「あなたたちは……!?」

 君に突き飛ばされた少女が、驚いた様子でこちらを見つめてくる。

答えてる余裕はない。

今、目の前には……少女を襲っていたドラゴンの群れがいるのだから。




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 君は魔法を放ち、周囲の竜を吹き飛ばした。

威力は低いが、強烈な衝撃を与える術だ。転ばされた竜たちは苦しげにうめいている。

敵の数が多すぎる上に頑丈にゃ。この子たちを連れて逃げるにゃ!

 君にだけ聞こえる声でウィズがささやく。君はうなずき、少女に手を伸ばす。

小さな女の子を胸に抱いた少女は、差しのべられた手に、ためらいの色を見せた。

逃げる――というのですか?できません誇り高き竜人が戦いから逃げるなど――

 言いかけて、少女は「くうっ」とうめきを上げ、膝を突く。全身の傷は浅くないようだ。

だいじょうぶ……?

 心配そうに見上げてくる女の子に、竜人の少女は優しくうなずく。

……心配かけてごめんね。私なら、大丈夫よ。

 そう言って立ち上がった彼女は、ひどく悔しげな表情で、君の手を取った。

すみません。わがままを言える状況ではないですね……離脱しましょう!

 「逃げる」とか「撤退」といった言葉を避けるあたり、よほど屈辱なのだろう。

ともあれ話は決まった。君は傷ついた彼女をかばうように引き寄せながら走り始める。

竜たちは、ようやく起き上がりかけている。行く先からも、新たな竜が迫ってきていた。

はさみ撃ちにされるとマズいにゃ。前の敵を速攻で片づけて進むにゃ!

 師のささやきにうなずいて、君は前方の敵に意識を集中する。

……。

 傍らでは、竜人の女の子が、どこか不思議そうに君を見上げていた。


 ***


 迫り来る竜たちを蹴散らして、君たちはようやく、ー息ついていた。

どうやら、どこかの異界の街道らしい。君たちは、道の脇に並んで座り込む。

……すみません、魔法使いさん。助けていただいて、ありがとうございます。

 少女は、深々とおじぎをした。

私はミネバ。誇り高きクロードー族の末裔です。

 ミネバと名乗った少女は、美しい顔を悔しげにうつむかせる。

本当なら、あの程度の敵から逃げ……いえ、離脱する必要なんてないのですが……。

残念ながら……今の私の力は、非常に弱まっていて……。

 何かあったのかと訊ねると、ミネバは、ふるふると首を横に振った。

わかりません。力を高め、ー族の名を上げる旅の途中で、突然意識を失ってしまって……。

気がついたら、近くでこの子が襲われていて。戦おうにも、いつもの力が出せなくて……。

 ミネバは、ひどく落ち込んでいる様子だ。力を失ったことが本当にショックなのだろう。

ひとまず彼女の手当てをせねばならない。君は、包帯や傷薬を取り出そうとして……。

来たにゃ!最初に転ばせた、ちょっと頑丈なヤツらにゃ!

 ウィズのささやきに、慌てて背後を振り返った。

囲まれていた先ほどと違い、今なら正面から迎え撃つことができる。

君は精神を集中し、戦いに備えた……。


 ***


 勝負が決したかに見えた時、1頭の竜が、君の脇をすり抜けてミネバに牙をむいた。

だが、ミネバはそれを予期していたらしい。毅然として、狙い澄ましたー撃を放つ。

馳せよ迅雷、荒べ風烈!

 放たれた迅雷の魔術が、迫る竜の脳天を鮮やかにとらえ、ー撃で撃沈せしめた。

ふぅん……正確な狙いと判断力にゃ。少ない魔力で、見事に敵の弱点を突いたにゃ。

これで、今度こそ敵は全滅した。

ふう、と吐息するミネバの腕のなかで、女の子が手を叩いて笑う。

みねば つよい!みねば ありがと!

ふふ……どういたしまして。それより、あなた、どれから来たの?

どこから?わかんない。いずこともしれず いずこにもあらん?

えーっと……つまり、迷子ってことかしら。あなた、お名前は?

なまえ?んー……アニマ?

そう……アニマね。よろしく、アニマ。

よろしく みねば!

 うれしそうなアニマの頭をなでて、ミネバが君の方を振り向く。

ひとまず休める場所まで行きたいのですが……ええと……その――

 君は、困り顔のミネバにうなずく。傷ついた少女と迷子の女の子を放っておけるはずもない。

す、すみません……誰かに頼るというのは、その、はじめてなもので……。

 恐縮しつつ、はにかむように微笑むミネバ。

君も微笑みを返しながら、傷薬を取り出す。

しばらくの後、傷薬を塗られたミネバの悲痛な叫びが響き渡った。



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え?別の世界から来た……ですか?

 ミネバは、驚いた様子で君を見る。

街を目指し、歩いている途中。君が事の経緯を説明したところだ。

そんなこと、あるんですね……じゃあ、この世界のこと、何も知らないんですか?

 うなずくと、ミネバは少し考え込んで……。

それから、にっこりとうなずいた。

信じます。私たちを助けてくれた方の言葉ですから。

しんじる しるじる!

 ミネバの腕のなかに収まったアニマが、ひよこひよこと手を挙げて主張する。

この世界は、本能と力がすべてを支配する……そういう世界なんです。

強者は弱者を屈服させ従属させる。それが世界の習わし。ゆえに誰もが強くあろうとします。

たとえば私のような竜人は、強さを求め、竜と契約した者の末裔なのです。

もっとも……今の私には、大した力は残っていませんけど……。

 しゅんとなるミネバ。

力がアイデンティティになる世界なら、それを失うってことは、すべてを失ったも同然にゃ。

 君の肩に乗ったウィズが耳打ちする。

傷が癒えたおかげもあって、多少は回復しましたけど……それでもまだぜんぜん――

 ミネバがため息を吐いていると……。

Zおぉーいっ!そこの人たちぃー!

 前方から、ひとりの竜人の女性が、大きく手を振りながら走ってきた。

あんたたち!こっちには来ない方がいい!

えっ……?何かあったんですか?

竜が暴れてて、手がつけられないんだ今、近くの人たちを逃がしたところさ!

これからあたしは、あっちに取って返してヤツと戦う。あんたたちは引き返しな!

 女性の言葉に、君は首を横に振った。そういう事情なら、引き返すわけにはいかない。

私も行きます!力を失ったといえど、お手伝いくらいはできるはずです!

アニマ、あなたは――

あっち?りゅう あっち?

ちょ、ちょっと、アニマ!勝手に行っちゃだめだったら!

 翼をはばたかせて進んでいくアニマを、君とミネバは慌てて追いかける。

う、うーん……。心強いんだか、どうなんだか……。

まあいいや!協力してくれるなら助かるよ!あたしはイェルノー。流れの学者さ!


 ***


 暴れている竜のもとに辿り着くと、その足元で涙目の少女が飛び跳ねていた。

と、止まって!止まってくださいっ!

スーチャ!あんた、まだいたのかい!?危険だって言っただろ!

で、でも!わたしの竜力が暴れてるのを放っておくなんてできません!

竜力が……暴れる!?

あれは竜じゃなくて、あなたのなかにあった竜の力なのですか!?

は、はい!そうなんです!

いきなり胸が苦しくなって……そしたら竜力が外に飛び出て……!

スーチャの内側から飛び出た竜力があれになったのは、あたしも見た。

とにかく、あれを止めないことにゃどうしようもない!l

そうですね……スーチャさんは下がってあれは私たちで対処します!

す……すみません!お願いします!

 君たちが暴走竜に向き直ると、相手は、血走った目で威嚇の咆呼を上げた。

すると、竜の周囲に謎めいた魔力が収束し、ー回り小さなドラゴンの群れに変化する!

アニマを襲ってたのと同じようなヤツらにゃ!

大地の竜力を、実体化させやがった!?

向かってきます!

くるくる、くるるん!


 ***


 暴走竜の爪が、ミネバを狙ってー閃する。

瞬時、身を屈めるミネバ。頭上を爪が薙ぐ。

寸毫の見切り。竜の懐に飛び込んだミネバの全身から、膨大な魔力が湧き起こる。

――ほのめくは雷華、うがつは電影!

 ゼロ距離から放たれる迅雷の魔術が、君の攻撃で弱まっていた水竜にとどめを刺す。

……ふうっ!

 水竜が倒れ、青い光の風となって消えていく。それを見つめながら、ミネバは呼吸を整えた。

君が近づいていくと、彼女はやや好戦的な微笑みを浮かべた。

いい戦いでした。心が昂ぶり洗われるよう……なんだか、少し力を取り戻せた気がします。

竜は戦いが生きがいだからね。竜人も、苛烈な戦いのなかで成長するもんさ。

不思議なのは、あっちの子がなんだか強くなってることだけど……。

え?

 君とミネバが慌てて振り返ると……。

りゅーりょくいっぱい!ちょーいっぱい!

 青い風に吹かれ、アニマがきやつきゃと喜んでいる。

彼女からは、強い魔力を感じる……これまでにはなかった力だ。

……あ、そうだ!えーと、スーチャ、さん?あなたの竜力は……。

あ、はい!少しは戻りましたけど……ほとんど消えちゃったみたいです。

そうですか……すみません、あの竜を倒すことしかできなくて……。

いいんです!正直、竜力が強すぎて持てあましてたので……。

そうなんですか?

はい。ご先祖さまの契約した竜が、それはもう強くって……わたしじゃ制御できなくって。

でも、まさかいきなり飛び出すだなんて……。

周囲の大地に宿ってる竜力を、同じように竜化させてみせたのも気になるね……。

実は、竜人の力が実体化して暴走するって現象が、各地で起こってるんだ。

そんなことが……。

あたしは、それについて調べててね。スーチャにも話を聞いてたんだけど……。

うぅ……すみません、こんなことになってしまって……。

いや。あんたのせいっていうより、この世界に何かが起こり始めてるのかもしれない。

 そう言って、イェルノーは君とミネバを振り返る。

調べたいけど、あたしだけじゃ心許ない。あんたたち、よかったら協力してくれない?

わかりました。同じことが起きているなら、放ってはおけません。

それに……強い敵と戦えば、もっと力を取り戻せるかもしれませんし。

 隣で君もうなずく。イェルノーは、ニッと笑った。

助かるよ!んじゃ、いっしょにこの謎を解明しようじゃん!

しよーじゃん!しよーじゃん!



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竜力ってのは、竜と契約して得られる、文字通り、「竜の力」のことなのさ。

 道を歩きながら、イェルノーが君に説明してくれる。

竜人は、もらった竜力を自分の魔力と同化させ、より強く練り上げていくんだ。

竜人の強さは、竜力の強さで決まる。そして、最強の竜人と名高いお人こそ――

 イェルノーに視線を向けられ、恥じ入るように顔を伏せた。

わ、私は……今は力を失っていますから……。

あんたがあの『雷鳴の竜魔』だってのにも驚いたけど、まさか力を失ってるとはね。

こ、これではー族の恥さらしです……早く、元の力を取り戻さなければ……。

竜人は戦いのなかで成長するからね。強敵と戦い続けていりゃ、いずれ元に戻るさ。

ただ、戦ってないのに強くなったあの子が、不思議でしょうがないけどねぇ……。

 イェルノーの視線の先で、アニマは、ぱたぱたとお気楽に空を飛んでいる。

あの時、風に散った竜力を吸収したように見えたんだよね……。

竜力は自分の内側で練り上げるもんだから、普通、吸収なんてできないはずだけど……。

……あれ?かぜ?かぜぇぇぇ~!?

 ふと強い風が吹き、体重の軽いアニマがさらわれていく。

わ、わあっ!アニマ!?

 慌てて、アニマを連れ戻しに飛ぶミネバ。

その様子に、イェルノーは君へと苦笑をよこし……。

……!?あれは……。

 君の向こう側を見て、彼女は急に表情を険しくした。

振り向いた君の視線の先では、竜の群れがうろうろしている……。

どうやら、向こうに暴走してる竜がいるらしいね。

 うなずき合う君とイェルノー。そこヘアニマを連れたミネバが戻ってくる。

……どうかしました?

お食事の時間だよ、お嬢ちゃん。

 イェルノーは、にやりと笑った。

まずは、オードブルを食い散らかすといたしますかね!


 ***


Zこっちだ!こっちを狙え!

 電撃をまき散らす竜の前で、女性がぶんぶんと槍を大きく振り回している。

別方向では、隊商らしきー団が縮こまって震えている。女性はオトリになっているのだ。

隊商たちは、あたふたと地を這うようにして必死にその場を離れようとしている……。

だが、慌てるあまり若い商人が転倒し金物の類を盛大に地面にぶちまけてしまう。

その音に反応したのか、竜が転んだ商人をギロリと見やる……。

くそっ、こっちだと言っているだろう……うあっ!!

 竜は蛇のような身体をくねらせて、無造作に女性を弾き飛ばした。

そして、転んだまま腰を抜かした商人に、その鋭すぎる牙をむく……。

……はあっ!

 牙が商人を喰らう直前、電光のような速度で突進したミネバが、竜に体当たりを見舞った。

怒りに吼える竜が、全身をしならせて襲ってくるが、ミネバはこれを軽やかにかわす。

この人はこっちで運んどくよ思いっきりやっちまいな!

感謝します!

 凛として竜と対峙するミネバ。追いついた君も、その隣に並ぶ。

気を……つ、つけて、くれっ……!

 竜に吹き飛ばされ、地面に倒れた女性が、苦しげながらも声を放った。

そいつは、私の力つ……!電撃の力を得手としている!

……そうですか。

 ミネバは勇ましく微笑んだ。

でしたら……ますます負けられませんね!

 ばぢっ、とミネバの周囲で紫電が弾ける。膨れ上がる竜力の余波だ。

そのさまに、槍使いの女性は、ハッと目を見張った。

あなたは……もしや、クロードー族の……。

残念ですが、今の私に、家名を名乗る資格はありません。

 そう言って、ミネバは隣に立つ君に視線を送ってくる。

まぎれもない強敵です。ふたりの力を合わせましょう!

 うなずいて、君は魔法の集中に入る。

ふれーふれーみ・ね・ばっ!ふれーふれーまほーつかいっ!

 誰に何を教わったのやら、背後で踊るアニマの応援を受けながら……。

君とミネバは、黒き蛇竜に立ち向かう。


 ***


 君の魔法を受け、蛇竜が苦しみもだえる。

直後、竜の頭上で、ぱぢっと音が鳴った。

慌てて顔を上げた竜の真上には、球状に膨れ上がった電光を掲げるミネバの姿……。

天宇の彼方に縛執されたる暴虐の化身よ我が解放の鐘鳴に応じ、高く吼ゆるべし!

 球状の電光が解放され、黒き竜の頭蓋をむさぼり喰らう。

倒れ伏し、黒い風と化していく蛇竜。ミネバは髪をかき上げ、君に笑いかける。

お見事です。おかげで、魔術を撃ち込む隙を得られました。

みごとみごと!りゅーりょくだいほーしゅつ!

 きゃっきゃと踊るアニマは、黒い風に吹かれさらに魔力を高めたようだ。

お?もう終わっちゃった?さすがだね~、おふたりさん。

いえ……イェルノーさんが、あの方々を逃がしてくださったからこそです。

いやあ、あたしみたいなひ弱な竜人じゃ、そのくらいしかできないからねえ。

……私からも礼を言わせていただきたい。

 振り返ると、槍を手にした女性が、きまじめなー礼を見せていた。

私はパメラ。此度はご助勢、痛み入る。おかげで彼らを殺めずにすんだ……。

あれ、やっぱあんたの竜力かい?なんでまた、あんなことになったんだい?

 問いに、パメラは唇を噛んでうつむく。

正直、わからない……突如、激痛に襲われ、気がついた時には竜力が具現化していた。

ふぅむ……やっぱ、スーちゃんの時と同じパターンか……。

情けない限りだ。自分の力だというのに、制御することも打ち勝つこともできぬとは。

 つぶやいて、パメラは、まぶしそうにミネバを見やった。

『雷鳴の竜魔』とお見受けする。噂に違わぬ……いや、聞きしに勝る強さだ。

そんなことはありません……私の力は、その、弱体化してしまっていますので……。

そうではない。

 パメラは、穏やかに笑う。

あなたは、最強の竜人でありながら、決して弱者を見下さず、敬意を払うという……。

その通りだった。あなたは弱者のために命を懸けた。そのあり方をこそ強いと感じた。

 ミネバは、毅然として答えた。

強いだけでは、獣と同じ……真の強者は、気高き誇りを抱いていなければならない。

それが我がー族の家訓……私はそれを忠実に守っているだけです。

その「だけ」というのが、余人にはなかなかできぬのさ。

竜力は散ってしまったが、感服を得た。私もまた、修練に励むとしよう。

そしていつか……私自身の力で、あなたと刃を交えたいものだ。

 ミネバ、にっこりと微笑んだ。

その時は……私も、私の持てる全力でお相手できるよう、努めましょう。

 楽しげに笑い合う2人を見て、イェルノーがちょいちょいと君の肩をつつく。

こういうノリの人が多いわけよ、この世界ってばさ。

 そう言ってから、イェルノーがぽつりと小さくつぶやいた。

ああいう誇りあるヤツならまだいいけど。本能のまま力をふるう連中が本当に多くてね……。



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これまでの竜の出現地域と学者仲間からの情報提供を合わせて考えると、だね――

 旅の途上。道端に座り込み、携帯食の包みを開いて昼食をとりながら、説明するイェルノー。

竜力の暴走現象は、世界全土で起こってるわけじゃない。あるー定の範囲内に集中してる。

一定の範囲……ですか?

 アニマが食べやすいよう、干し肉をナイフで切り分けながら、ミネバが首をかしげる。

うん。この世界の中心にある霊山ロドム……その周辺地域で発生してるんだ。

ただ、事件の発生範囲は、時間が経つにつれじょじょに広がりつつあってね……。

放っておけば、いずれ世界全土で竜力の暴走が起こるかもしれない……ってわけだにゃ。

 君の耳元でウィズがつぶやく。

しかし、大した情報網にゃ。ただの流れの学者にしては、驚きの調査力にゃ。

なら……調べるべきは――

ああ。霊山ロドム……そこに何かがある。その可能性が、どうやらいちばん高そうだ。

向かってみるしかありませんね。

 決意の表情でうなずくミネバの隣では、

はぐはぐはぐはぐはぐはぐはぐっ!

 干し肉とチーズをはさんだパンを手渡されたアニマが、ものすごい勢いで食いついていた。

みねば!これおいしいおにくちょーおいしい!

 口の周りに食べかすをつけたまま、目を輝かせて叫ぶアニマに、ミネバは苦笑する。

はいはい。お口、拭いてあげるから、ちょっとお顔を貸してね。

ん!

はは、なんか歳の離れた姉妹って感じだねえ。

けど、ミネバ。拭いてあげるのはいいけど、あんたも鼻の頭にチーズついてるよ。

えっ!?

 ぎくりとして手を止めるミネバ。アニマが、きゃっきゃっと笑う。

みねば おそろい!ちーず おそろい!

ほれ、魔法使い。取ってやりな。

じ、自分でできます!

 叫んだミネバの顔が、ハッと不意に緊張の色を宿した。

鋭く振り向くミネバの視線の彼方には、遠く何かの動き回る影が見えている。

竜……でしょうか?

やれやれ。あたし、まだ食べ終わってないんだけどねぇ。

また誰かが襲われているかもしれません。向かいましょう!

オッケー、了解!……でもだね、ミネバ。

弁当持参は、さすがにどうかと思うのよ。

 イェルノーの言葉に、少女はきょとんとなり……ー瞬の後、慌てて鼻頭のチーズをぬぐった。


 ***


むぅぅぅううぅううううんッ!!

 暴れ回る炎の竜と、屈強なる男とが、真っ向からがっぷり四つに組み合っていた。

意志で制御できぬなら、力でねじ伏せるまで!

……す、すごい方ですね。

あの黒鎧……「竜麟の武人」バスか。名の知れた竜人だよ!

 バスと組み合った翼ある竜が、ぐわっと口を開き、炎の吐息をまき散らす。

ぐうっ……!ええい、怯むものか!

助けに入りましょう!

 うなずいて、君はミネバとともに、ドラゴンの方へと向かっていく。

はあっ!

 君とミネバの魔法が、はさみ込むようにドラゴンを襲い、大きくよろめかせる。

おおっ!?なんたる天佑!感謝いたす!

いーからあんたは下がってな!よっと!

 竜が起き上がろうとするところに、イェルノーが烈風を起こして動きを封じる。

かたじけない!そやつは我が竜力の化身炎を使う!お気をつけめされよ!

 ー般に、炎の魔力は雷の魔力を克する。ミネバにとっては相性の悪い相手だ。

視線を送る君に、ミネバは凛然たる笑みで応えた。

確かにやりにくい手合いですが、その程度で怯んでいては、クロード家の名折れです。

それに、今はあなたがいてくれる……!

 君はうなずき、暴れる竜へと向き直る。

がんば がんば!みんな がんば!

 アニマの声援を受けながら、炎の竜との戦いが始まった……。


 ***


 君の魔法を受け、瀕死の傷を負った竜は、苦しみながらも暴れた。

猛烈な勢いで振り回される尻尾が、ミネバを弾き飛ばす。

くぅっ……!

 助けに入ろうとする君だが、竜は周囲に炎の壁を築き、君の援護を阻んでしまう。

みねば!

 悲痛な叫びを上げるアニマ。竜は、ミネバを踏み潰すべく足を振り上げ……。

……みねばぁぁぁぁーーーーっ!!

 突如、全身に激しい光輝をまとったアニマが空を駆け、炎を破って竜に突進した。

ア……アニマ!?

 ぎゅっと目をつぶったアニマの頭突きが、竜の顎を下から撃ち抜き、たたらを踏ませる。

みねば!やられるのぜったいだめ!だめ!

 泣きながら、ミネバの胸に飛び込むアニマ。

すると、アニマのまとっていた光輝が、ミネバの身体をも輝かせていく。

これは……!

 絶大なまでの魔力がミネバに宿り、ごうごうと風を渦巻かせるほどに猛り狂う。

アニマを胸に抱いたミネバは、目を閉じ……そして、カッと強く見開いた。

王たる者の杯は、満つるを知らず干るもなしもって汝の耐えうる道理なし!

なぁーし!

アニマとミネバ、2人の手から、塔のごとく巨大な電撃の奔流が横ざまに走り……。

竜をー瞬で消し飛ばして、風へと変えていく……。

ふぅっ……!

やった!かった!りゅーりょくちょーいっぱい!

ありがとう、アニマ……。

 ミネバは、喜ぶアニマをそっと抱きしめる。

こいつはたまげたねえ……なんなんだい、あの子?

うむ。まこと驚くばかりにござる。

いやしかし、貴殿らのおかげで助かり申した恥ずかしながら、窮地に陥ってござった!

ござった!ざった!

 バスの古めかしい言い方が気に人つたのか、アニマは盛んにはしゃいでいる。

あんた、「竜麟の武人」バスだろ?なんで竜力があんなことになったんだい?

それが、それがしにもさっぱりなのだ。気がついた時には自身の竜力に襲われていてな。

スーチャさんにパメラさん、そしてバスさん。いずれも強い竜力の持ち主ばかりが……。

 ミネバは、何か考え込んでいる様子だ。強く抱かれたアニマが不思議そうに見上げる。

まあ、なんにしても、制御できぬ力を持つなど武人にとっては恥のー言。

改めて地道に精進を重ね、今度こそ、己の技量にふさわしい力を培う心算にござる!

ござるざるざる!

 笑うアニマをよそに、ミネバはずっと黙考を続けていた……。



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 世界の中心に位置する霊山ロドム。

君たちは、そこにこそ異変の原因があるのではないかとにらみ、その山を登っている。

霊山であるはずのロドムは、今や、魔力の荒れ狂う魔境と化していた。

ずっと考えていたのですが……。

 山道を歩きながら、ミネバが□を開いた。

霊山の近くにいる強い竜人の竜力が暴走するのなら、どうして私は無事なのだろうと……。

え?そりゃ、力を失つたからじゃないのかい?

そこなんです。どうして私が力を失ったか……その理由は、きっと、この子にあるんです。

 ぎゅっとアニマを胸に抱き、ミネバは言った。

たぶんこの子は、私の竜力なんです。

……へ?ど、どういうことだい?

白竜との戦いで、この子が助けてくれた時……私の身体には、強い竜力が流れてきました。

その力は私にとって驚くほどなじむもので……なつかしい感じすらしたんです。

おそらく……他の方々と同様、私は自分の竜力を制御しきれなくなって――

それで、無意識に竜力のー部を切り離した。それがこの子だと思うんです。

それであんたの力は減ったように見えてた……けど実際はその子として存在してたわけか。

力のー部をとっさに切り離すとか普通できないもんだけどねえ。さすがクロードー族だ。

ひょっとしたら、弟たちも今頃、そうやって難を逃れているかもしれません。

 その発言に君が驚きを見せると、ミネバはあどけなく首をかしげた。

あれ……言ってませんでしたっけ。私、弟が2人いるんですよ。

しっかし……だとすると、1つ謎が解けたよ。なんでその子が強くなってたのかが、さ。

 イェルノーにしげしげと見つめられ、アニマは「?」と目をまたたかせている。

前も言った通り、竜力は内側で練るしかない。外から吸収することは、竜人でも無理なんだ。

でも、その子は竜力そのものの化身だ。だから竜力を直接吸収し、成長できたわけだ。

ミネバ。今のあんたがその子を取り戻せば、まぎれもなく最強の竜人になれるだろうね。

そうかもしれません。でも、そんなつもりはないです。

 アニマの頭をそっとなでながら、ミネバは穏やかに微笑む。

そんなことをしたら、きっと私は今度こそ暴走するでしょうし……。

それに、今のこの子は自分の意志を持っています。もう、私とは別の存在です。

そう言うと思ったよ。

 肩をすくめ、イェルノーが先頭に立つ。

じゃ、謎が解けたところで前に進もうか。すべてが終わることを願って、ね。


 ***


 霊山ロドム頂上。吹き荒ぶ風が、みなの衣服をはためかせていく。

何もない……ですね。

いや。あたしから、言うべきことがある。

 先頭に立っていたイェルノーが振り向く。その瞳には、常ならぬ決意の色があった。

悪い、ミネバ。あたしは……あんたをここに連れてくるのが目的だったんだ。最初からね。

……!?どういう……ことですか?

……この世界は大地に宿る竜力で保たれてる。でもそれは放っておくとすぐ乱れちまうんだ。

その竜力を制御し、世界を安定ならしめていた竜……『均衡を保つ者』ロドム。

その竜は……ちょいと前に、ここで命を落とした……。

亡くなった――のですか?どうして……。

世界各地で、誰もが本能のまま竜力を使いまくったせいで、大地の竜力が乱れた。

ロドムは必死に竜力を制御しようとしたが……制御しきれず、反動で絶命しちまったのさ。

そんな……!

大地の竜力を制御するってのは特殊な才能だ。それができるのはロドムだけだった……。

そのロドムが亡くなった今……世界の竜力の暴走は抑えようがない。

竜人の力の暴走は、その影響のせいだ。いずれ大地の竜力が暴走し、すべてを砕く。

世界が……終わっちまうのさ。

 悲しげなイェルノーの言葉に、君とミネバは思わず息を呑む。

終わるだなんて……じゃあ、どうすれば――

どうしようもない。もう打つ手はないんだ。世界は滅ぶしかないんだよ……ミネバ。でも。

 イェルノーが、強くミネバを見据える。両の瞳に、凍える悲哀とわずかな希望を宿して。

それじゃ、あんまりだ……この世界のすべてが消えてしまうなんて……あんまりだろ……。

だから、あたしは探したんだ……世界が滅びても生きられるほど強くなれる存在を!

 風が吹く。膨大な魔力を伴う風が渦巻き、イェルノーヘと収束していく……。

ロドムの契約者たるあたしの、本当の力さ。あんたみたいにここに『切り離して』おいた。

ロドムの契約者たるあたしの、本当の力さ。あんたみたいにここに「切り離して」おいた。

さあ――ミネバ!あたしと戦え!そして、あたしに打ち勝ち、最強の竜人となれ!

そうすりゃ……世界が滅んでも、あんただけは生き延びる!世界が存在した証を残せる!

わ……私だけ生き延びろだなんて……!

頼むよ……。

 イェルノーは泣いていた。ほたほたと、尽きせぬ涙があふれていた。

ロドムは必死にがんばったんだ。世界のために最期までがんばり通して死んだんだ!

あたしはロドムの意志を無駄にしたくない。少しでも世界が存在した証を残したいんだ!

イェルノーさん!

ロドムの加護があるこの山頂にいれば、竜力が暴走する心配もない。最強となれ、ミネバ!

頼むよ……ミネバ!あたしと……戦って、戦ってくれ!勝ってくれえっ!!

 渦巻く暴風のさなかで絶叫するイェルノー。ミネバは、うつむいて黙り込み……。

凛然として、面を上げた。

わかりました……イェルノーさん。あなたと戦い……打ち勝ちます!

 彼女の決断に、君が驚きの顔を見せると……ミネバは、君にちらりと目を向けてきた。

そして、ぱちりと刹那、片目をつぶる。

ミネバには、何か『考え』があるようだ。あるいはそれは、『賭け』かもしれないが……。

いずれにしても、何もしないで世界の終焉を待つ理由は、君にだってない。

みねば!あにまもがんばる!

ええ……行きましょう!

 理性を失いつつあるイェルノーを見すえ、ミネバは敢然と全身から魔力を放ち始める。

クロードの名に懸けて……打ち勝ってみせます!


 ***


おぉおぉおおおおおぉおおツ!

 君たちの猛攻に膝を突きかけながら、イェルノーは最期の力を振り絞る。

もっとだ!全力を引き出してみせろ!あんたの力を極限まで高めろ、ミネバぁっ!

 イェルノーの竜力が吹き上がり、竜のごとき形をなして、ミネバヘと突き進んでいく。

みねば!いくよ!

ええ……合わせて、アニマ!

 ミネバとアニマ、2人の身体が輝きを放つ。昂ぶる竜力が大地を揺るがし、天に聶く。

天も地も、我が魂のありかたらんと欲すれば、すなわち我がともがらにして我が省属なり!

わがさけぴてんのたかきをつらぬきてわがあゆみちのふかきにとどろかん!

されば聞け――吼ゆる天地の共鳴りを!!

 天より落ちる雷と、地より吹き上がる雷が、イェルノーの放った竜力をはさみ込んで砕く。

白雪のごとく竜力が散り吹雪くなか、イェルノーは、がっくりと膝を突いた。

あたしに勝った、か……これであんたは、世界が滅びてもなお生きられる――

終わらせはしません。

 決然たる言葉に、イェルノーが顔を上げる。

自分ひとりが生き残るなど……そんなこと、私の誇りが許しません!

うぅぅ~~……えぇーーーーいっ!!

 風に散る竜力を、アニマが全力で吸い込む。すると、アニマの全身が淡い光を帯びて……。

えいっ!

 アニマは、美しい黎明色の翼を持つ少女の姿へと、ー気に成長した。

みてみて、みねば!あたし、おっきくなったよー!

ふふっ、そうね。今のあなたなら、もしかしたら――

うん!やってみるね!……こうかな?えぇーいっ!

 アニマが元気よく気合を入れると、淡い光がさあっと周囲に広がっていく。

その光は、霊山ロドムを中心に、地平線の果てまで広がっていく……。

膝を突いたまま茫然としていたイェルノーはハッとして周囲を見回した。

ウソだろ……!?竜力が……安定を取り戻した!?

いぇいっ!

火竜との戦いで、アニマが私に力をくれましたけど、私は暴走しなかった……。

それで、ひょっとしたら、って思ったんです。

竜力の化身であるアニマには、竜力を制御する力があるんじゃないかって……。

正直、うまくいくかどうかは、完全に賭けでしたけどね。

 くすりと笑って見つめてくるミネバに、君も微笑みで返す。

はは……なんてこった――

 イェルノーが、肩を震わせ、笑いながら涙をこぼす。

あたしは、完全にあきらめてたってのに……あんたらは、そうじゃなかったんだな……。

ね、いぇるのー。

 ひょこん、と、アニマが腰を折ってうずくまるイェルノーに笑いかける。

まだ、りゅーりょくのおさえかた、びみょーにわかんないとこあるの。おしえてくれる?

 その言葉に、イェルノーは目を見開き……そして、たくましい笑みを浮かべた。

ああ――もちろんだ!ロドムの契約者としてばっちりノウハウを伝授してやるよ!

 淡い光は、なおも果てまで広がっていく。

その光は、深き夜を照らしてきらめく黎明の輝きに、どこか似ていた。



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story



 君とウィズは、あの遺跡の像の前に戻ってきていた。

戦いが終わり、竜人たちが盛り上がっているさまを見つめていると、急に光があふれたのだ。

そして気がついた時には、この像の前に立ち尽くしていた。

「やれやれ……また大事件に巻き込まれたにゃ。

キミといると、命がいくつあっても足りないにゃ。」

 言葉とは裏腹に、ウィズは満足げだ。

「……うにゃ?この像……よく見ると、アニマに似てないかにゃ?」

 ウィズの言葉に、君も像を見つめた。確かに今見ると、成長したアニマそっくりだ。

「我 霊妙なる異ノ世の天地を夢に見たり たそがるる世の果て 貴き竜神顕現す……。

『たそがるる世』……終わりかけた世界に、アニマという竜神が現れた、ってことかにゃ。

異界に行く時、同時に過去に飛んだのか、それとも像を造った人が未来を見たのか……。

キミは、どっちだと思うにゃ?」

 わからない、と君は答えた。それよりも、不思議に思っていることがある、とも。

ミネバの切り離した竜力がアニマとなった。それが世界を救う可能性につながった。

だが、それはアニマが独自の意志を持ち、彼女が成長を続けてきたからこそだ。

どうして、切り離された竜力である彼女は、自分の意志を持てたのだろうか?

「そのへんの理屈は、私にもわからないにゃ。

ただ……。

あのミネバの持っていた力なら、強い意志に目覚めたって不思議じゃない気がするにゃ。」

そうかもしれない。

本能と力がすべてを支配する世界にあって、強者でありながら誇りを抱き続けたミネバ。

彼女の比類なき意志の強さが、アニマにも魂を与えたのかもしれない……。

きっと今頃、アニマは竜神として、世界の竜力の乱れを制御しているのだろう。

あの世界の人々が本能のままに戦い続ければ、竜力は乱れ続けるが……。

きっと心配ないだろう、と君は思った。

強いだけでは獣と同じ。強者とは、気高い魂を持つ者でなければならない。

そのことを……きっと、ミネバたちが伝えていくのだろうから。








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