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【黒ウィズ】深夜の話題はトリテンが独占! Story

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最終更新者:にゃん
2018/01/01

目次


Story1

Story2

Story3



主な登場人物






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story1 芸能活動は順風満帆




ここは、12の支神に幸を与えられし異界。

動物の姿をした神様が、人々を見守りながら、時に寛大な心で幸と福を与え――

人間たちは、そんな神様たちに感謝しながら慎ましく(・・・・)生きていた。


m『美少女グループ〈ビューティー12天女〉のトップ天女であるトリテン・コロロ。熱愛発覚!』

b『お相手は、福の神の小槌酉。だが、すでに小槌酉には配偶者がいるため、ふたりの関係は、不倫にあたるのではとの疑いがもたれている』


 Aトリテンちゃん、応援していたのに……ショックだよ。

 Bもう忘れようぜ。あんな不倫鳥(・・・)のことなんてよ。それより、新人天女のイヌミコちゃんすっごく可愛くないか?


b噂になるのは、早いっぺ。トリテン先輩、大丈夫だっぺ? いまごろ落ち込んでいるんじゃ……。

m恋愛スキャンダルは、天女にとって致命傷だものね。ましてや相手は、福の神だなんて……。


 Cあ、トリテンちゃん。……いや、不倫鳥だ!


その時、街頭テレビの周囲に集まった人の□から、聞き覚えのある名前が聞こえてきた。

「トリテンさん。一部週刊誌で報道されている件について真相をお聞かせください。」


「トリテンちゃんは、まだ子どもなので~難しいことはわかんないです~。

でも~、小槌酉さんには、すっごく優しくしていただいてます。この前も~ふたりっきりでお食事――

やだ、言っちゃった! これは内緒にって、言われてたのに!」

「どういうことですか? やっぱり、ふたりの間になんらかの関係があったんですね?」

「トリテンちゃんは、難しいことわかんないです~。」

でも、来週月曜からはじまるトリテンちゃんの冠番組「トリテンのおんどりゃ-でめんどりゃー」を観てくれれば、なにかわかると思いますよ。」


m不倫報道を逆に利用して、自分の番組を宣伝しやがった!? ……たくましい子!!

b元気そうでよかったっぺ。

mうちらにも出演依頼が来るかもよ? あの子、友達少ないし。

でも、トリテン。冠番組持つようになったとは……。売れっ子はすごいね。

b……え? まだ先輩には出演依頼、来ていないっぺか? 先週、最初の収録があって、ワタスはもう出演してきたんだっぺが……。

m……は?

 (うち……全然呼ばれてない。というか、冠番組もったことも、いま知つたのに……)

m友達だと思ってたのは、うちだけかい……。

bせ、先輩。これはなにかの行き違いだっぺ。

mうちに声をかけないのは、許せない! 絶対に出演してみせる!


その日の晩、マワシはトリテンの家に電話をかけて、涙ながらに直接出演を直訴したという。


tさー、今週もはじまりました。トリテンちゃんのおんどりゃーでめんどりゃー。

司会のトリテンちゃんです。

bアシスタントのビシュラだっぺ。


m (なんで、ヒジュラがアシスタント役でうちが、ひな壇最奥の目立たない場所なのよ。

い……いや。後ろ向きになってもしょうがない。あの子の番組なんだから、うちは盛り上げ役に徹しよう!)


t……関節痛を予防するには、粘り気のある食べ物が、一番いいってことだね。勉強になったねー。

bんだ。んだ。

tそれじゃあ、今週はここまで。また来週かな?

m(終わりー!? 一言も発する機会なく終わったー! せめて一言、なにか……喋らせて……)


tおっと、今日せっかく来てくれたのに、まだ喋ってない人いるよね。ひな壇の奥にいるマワシさん。今日はどうでしたか?

mえ? う……うち!?

t(もうマワシちゃんったら、せっかく呼んだのに全然前に出ようとしないんだもん。がっかりだよ。

でも、そういうダメな演者を活かすのも、司会である私の手腕だよ)

mきゅ、急に言われても……。よ、よかったんじゃないかな?

か、関節の痛みって、時々あるけどたいていは、ほっといたら治る……うん、治るし。治らないときもあるけど………。

t(うわー。マワシちゃん、トークぐっだぐだだー。振るんじゃなかったー)

じゃあ、ヒジュラちゃん。最後に瓦割り40枚いってみようか?

bうっす!

tすごーい。きれいに全部割れたね。それじゃあ、今週はここまで。また来週~!

mま……また来週。


 ***


mあの……ご、ごめんね。 せっかく振ってくれたのに、うまくしゃべれなくて。うち、フリートーク苦手っぽい。

tマワシちゃん。次からは、もっと身体張ってもらうから。いいよね?

m(え、笑顔が怖い……)

……はい。わかりました。


翌週。池にいた人食いワニに噛みつかれるマワシの姿が放送された。

天女らしからぬ身体を張った必死な姿が好評を博し、マワシはかろうじて視聴者数の増加に貢献することができた。


tやっぱり適材適所。出演者の素質を見極めてあけないとね。

私って司会だけしゃなく、プロデューサーとしての才能もあるかもー!



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story2 小槌酉の機嫌を損ねるな


「ほっ、ほっ、ほーっ! トリテンちゃん、お疲れなのじゃ。今週も、おもしろかったぞよ。」


「あ、スポンサーさん。いらしてたんですね?」

「最近芸能れぼーたーなる輩が、ワシの周りをなにやら嗅ぎ回っておるようじゃが、かーるくあしらっておいたわい。」

「さすが、スポンサーさん。つよ~い。尊敬します。」

「トリテンちゃん。スポンサーさんなどとつれない呼び方するでない。前みたいに、あなたと呼んでくれんか?」

「あ、そうそう。スポンサーさん、実はお願いがあるの。」

「なんじゃ? トリテンちゃんの言うことなら、なんでも叶えてやろうぞ。」

「番組のセット、もっと豪華なものにしたいの。そしたら、もっと沢山の人に観てもらえると思うの。

トリテンちゃんが有名になったら、スポンサーさんも嬉しいでしょ?」

「制作費を出せというのじゃな? そのぐらいお安い御用じゃ。この小槌を振れば、黄金なんぞいくらでも出てくるわい!」

「やったー黄金げっーと。……じゃなくて、ありがとう小槌酉さん。私だけの感謝を捧げます。」

「ほっほっほー。言葉だけじゃなく、もっと具体的なものでお礼をして欲しいのう。たとえば、結婚とか……。」

「それじゃ、私次の打ち合わせがあるので。お先に失礼しまーす。」

「トリテンちゃん!? このあと、お食事でも……いってしもうた。」


 ***


「あー、寒かった。野外ロケが、肌に堪える季節になってきたわね。」

「腹を空かせたヒグマと猿回しで対決なんて、すごく攻めた企画だったっぺな。」

「まあ、最終的にドローに持ち込めたからよかったものの。一歩間違えたら、熊の餌になってたわ。」

「さすが先輩だっぺ。でも、あまり無理しないで欲しいっぺ。」

「ありがとう。でも、うち幸せなの。」

テレビでうちの芸を披露して、それを大勢の人が観てくれるなんて夢みたい。」

うちの芸を大勢の人に知ってもらうチャンスを与えてくれたトリテンには、感謝しかないわ。」

「……大人だっぺ。そういう姿勢、憧れるっぺ。」

「ねえ。それより、トリテンの不倫騒動は大丈夫なの? あの子、いまでも「不倫鳥」って呼ばれてるんでしょ?」

「本人は、もう天女の時代じゃない。これからは司会者として売っていくと公言してるっぺ。」

「でも、この週刊誌にもこんなに大きく取り上げられてるわ。ほら、この雑誌にも。」


みんな、おつかれ! 時間ないけど、来週の打ち合わせしとこっか?

あ、そうそうマワシちゃん。先週放送した荒野でコンドルとの猿回し対決の回、すっごく評判よかったよー。


mまあ……過酷なロケだったしね。

違い目をする。言葉で語り尽くせない苦労が、マワシの脳裏に浮かんでは消えていった。


tさすがマワシちゃんだね。これからも、身体を張ったロケ。期待してるよー。

mま……まあ、身体張った分、評判がよかったなら、いいんだけど。


ビシュラちゃーん。ごめんね。今日の収録で突然、真剣白羽取り無茶ぶりしちゃって。

問題ないっぺ。偶然出来ただけだっぺ。

きっと今週も、視聴者数うなぎ登りだよ。この調子で、来週の打ち合わせ、ちゃっちゃとすませよっか。


次はいよいよ大晦日スペシャル番組のロケだね。元天女のマワシちゃんが、より過酷なロケに挑戦――

そういう企画、上に通してきたから、はい、これ私が徹夜で書いた台本だよ。

mちょっと待てい! 元天女ってなにさ!? そもそもあんた、テレビの仕事に浮かれすぎて、自分の本分、忘れてるんじゃないの?

tなにいってんの? これから天女なんて、流行らないよ。ニコニコ笑顔振りまいて、握手してれば人気が出た時代とは違うんだよ?

mでもうちらは、福の神のお世話をして、人々に幸を与えてもらえるようにお導きするのが、本分なわけで……。

tもちろんそれはするよ。大晦日の特番で、小槌酉さんと来年の福の神様の無制限一本勝負をいま企画してるから。

題して「どっちかが動けなくなるまで、放送は終わりませんスペシャル!」

m福の神を番組の企画に使うな! どんなクズ天女だよ!?

あんた、あんまり調子に乗りすぎると、そのうち痛い目に遭うよ? ほら、週刊誌だってまだ大変なことになってるし……不倫のことで。

tこんなの気にする必要ないよ。むしろ、騒いでもらえばもらうほど、番組の宣伝になっていいかもね。

m強いわねあんた。でも、実際のところどうなの? 小槌酉さんとは……? 関係はないの? あるの?

マスコミはいろいろ騒いでいるが、実際のところはどうなのか、真相は本人たちしかわからない。

bどうなんだっぺ?

気になるのか、ヒジュラも身を乗り出している。


tや……やだー。ふたりとも。そんなのあるわけないじやない。ないない!

小槌酉さんは、ただのスポンサー。恋愛感情なんてあるわけないよ。

m……ほっ。そうよね。

tそりゃあ、スホンサーになってもらう前に~、期待させるようなこと言っちゃったかもしれないけど~。

でも、具体的な約束はしてないし、もし向こうが本気になってたのなら、それは全部、向こうの勘違いだし……。


話は、聞かせてもらったぞ。

だ、誰だっぺ!?


kトリテンちゃーん、いまの話は本当かのう? もし、本当なら、ワシは騙されていたことになるのかのう?

mあっちゃー……。

tえ? あ! 違う! 違うよ~。いまのは、違うの! 小槌酉さんのことじゃないの!

kそうかのう? 詳しい話は、ワシの家で聞かせてもらうとするかのう。

トリテンちゃん、ワシとー緒に来るのじゃ。

tた、助けてマワシちゃん。ビシュラちゃ~ん!



「連れて行かれてしまったっぺ。」

「はあ~。全部、あの子の身から出た錆とはいえ、ほっとくわけにはいかないわね。」

「助けにいくっぺ?」

「もちろんよ! トリテンがいなけりや、来週の放送はなくなるもの。」

うちの身体を張ったロケが無駄になっちゃうわ!」

「そうだっぺ! 私もようやく番組に馴染めてきたところだべ。ここで、仕事のない天女に戻りたくないっぺ。」

「助けに行きましょう!」

「もちろんだっぺ!」


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