双翼のロストエデンⅡ Story後編

 
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story5 聖王と魔王



 ミカエラ 
ここに来ると、
いつも悲しい気持ちにさせられます。


 緑色の絨毯に覆われているが、
 所々に大きな窪みや唐突な隆起が目立つ。
 見た目の鮮やかさに反して、
 そこには戦いの傷跡しかなかった。




 ミカエラ 
長い魔界との戦いで散った同胞の声が
聞こえるようです。

マクシエル
こんな所で会談を申し込むとは、
奴の考えが分かりかねます。

 ミカエラ 
そうですか?
私には少し分かる気かします。
ここには戦いの虚しさしかありません。

そんなところで、戦争の話はないでしょう。

マクシエル
その考えも、私には分かりかねます。

 ミカエラ 
考え方はひとそれぞれです。


 数歩離れた先の地面の一部に穴が空いた。
 ゆっくりと浮かび上かってくる黒い翼に、
 ミカエラは安堵と緊張を同時に感じた。

 ミカエラ 
よく来ました……魔王イザーク。

 あえてつけられた『魔王』という肩書に、
 イザークは姉であるミカエラの真意を察する。
 いまは姉弟ではない。

 少なくともいまこの場では魔王と聖王なのだ。
 という決然とした意志を。




 イザーク 
こちらこそこの場を作って頂き感謝する。
聖王ミカエラ。

マクシエル
早速だが、要件に入ってもらおう。

 イザーク 
無論。天界と魔界は長い間戦い続けている。

 ミカエラ 
ええ。

 イザーク 
それをやめるつもりはない。
ただ、いま我々魔界は、
少々厄介な敵と対峙している。

一時的な休戦と……共闘を申し込みたい。

マクシエル
バカなことを。
貴様ら魔界の危機に、
我々が指をくわえて見ているだけでいろだと?

あまつさえ、共闘しろとは。
片腹痛い。

貴様らの危機は、我々の好機だ。


 イザークは何とも答えなかった。
 一息にまくしたてたマクシエルは
 ミカエラの顔を見る。

 まだそこには同意も拒否もなかった。
 冷静に真意を見定めている。
 そんな様子だった。


 ミカエラ 
敵は、何者ですか?

 イザーク 
詳しくは調査中だ。
実体を持たず、体から体へと移動し、
多くの世界に侵攻している。

それゆえ、我々は死界の協力を仰ぎ、
彼らは協力を約束してくれた。

 ミカエラ 
……そうですか。

マクシエル
その話に何の正当性があるのだ。
死界が協力しようがしまいが、
貴様らは敵だ。

他の者が滅ぼしてくれるなら、
我らの手が省けるだけだ。

 ミカエラ 
分かりました。協力しましょう。

マクシエル
ミカエラ様!
とても正常な者の判断とは思えません。

 ミカエラ 
本来、どことも干渉しないはずの死界が
協力すると判断したのは、
それ相応の事態だということです。

事態が収拾するまで
安易な侵攻や敵対は禁止します。

共闘の件も約束いたしましょう。

 イザーク 
協力感謝する。

マクシエル
馬鹿な! なぜ我々が魔界の手助けを
しなければならないのです。お考え直し下さい!

 ミカエラ 
マクシエル、二度は言いません。
天界はこの戦いに協力します。

事は魔界だけの問題ではないのです。

マクシエル
ですが!

 言いかけた所で、
 イザークがマクシエルを睨みつける。


 イザーク 
先ほどから気になっていたのだが、
なぜ王同士の会談の場に貴様風情がいるのだ?

王が発言するよりも先に発言し、
まるで対等の立場であるかのように、
意見する。

何の権利かあって、貴様はそうするのだ?

失せろ。

マクシエル
ぐっ……。

 イザーク 
即刻、この場で切り伏せられなかった
だけでもありかたく思え。

 ミカエラ 
魔王イザーク、配下の者の非礼を詫びます。
……マクシエル、あなたは魔界へ向かう手はずを
整えてください。

 イザーク 
申し入れを受けて頂き感謝する。
では、魔界で……。

 ミカエラ 
ええ。……魔界で。


 会談の終わりと共に両者は瞳を返し、
 背を向け合い、それぞれの場へと帰る。

 いつかの決別と同じように、
 お互いがお互いのことを理解し合い、
 納得した上で、天界と魔界へ帰っていった。



story6 魂呼


 魔界に戻った、つまり甦った君は
 さっそくヴェレフキナに言われた通り、
 彼ら死界の者を呼び出す儀式の準備をした。

クィントゥス
ほら、言ってた草を拾ってきたぜ。

 ウィズ 
ありがとうにゃ。
茎の皮をむいて、
その皿の上に置いてほしいにゃ。


 必要なものを集めるのは、
 魔界の住人たちに任せ、
 君は簡易的な祭壇を用意していた。

 知っている魔法の象壇に似た所があったので、
 こちらはすぐに準備出来た。

 ただヴェレフキナに指示されたものの中には、
 特殊なものも多かった。

 エストラ 
悪霊キュウリと無慈悲茄子……。
こんなものをどうするんだ?

 ウィズ 
そのふたつに棒を4本刺して、
牛と馬の人形を作ってほしいにゃ。

 エストラはウィズの指示通り、
 4本の棒をそれらに刺し、手足に見立てた。

 エストラ 
牛と馬……には見えんな。

 ウィズ 
後は供物にゃ。
獣の血を便ったものがいいと
言っていたにゃ。

クィントゥス
それなら、そこらの獣を掻っ捌いて
供えればいいんじゃねえか。

獣……獣……。
獣っと……?

 と、あたりを探るクィントゥスの視線、
 エストラの視線、君の視線が、ひとつに交わる。

 ウィズ 
にゃ!?何こっち見てるにゃ。
私をそのへんの獣と一緒にしないでほしいにゃ。

そもそもキミ!
なんで私を見たにゃ!
獣だと思っていたにゃ!


 考えもなく見てしまっただけです、
 と君はウィズをなだめる。

 ウィズが毛を逆立てて
 フーフー言っている所にルシエラがやってくる。

 魔界のお菓子〈ダークサンブラッド〉が
 山のように盛られたトレーを両手に抱えている。


 ルシエラ 
皆さん、ご苦労様です。
ほら(ダークサンブラッド〉の差し入れですよ。

クィントゥス
お。ありがてえ。
ひとつ頂くとすっか。

 君もクィントゥスに倣い、ひとつ手に取る。
 ふと、その豆を血色に煮て作られたお菓子を見て、
 君はあることを思い立つ。
 別にこれでもいいんじゃない、と。

 ウィズ 
キミもそう思うかにゃ?
私もいまそんな気になったにゃ。

 君は周りのみんなに意見を求めた。
 みんなは……。

クィントゥス
いいんじゃねえか。

 エストラ 
いいと思うぞ。

 ルシエラ 
なんでもいいと思いますよ。

 というわけで、
 君は2、3個取り分けて、
 祭壇の前に供える。

 ウィズ 
では火を起こすにゃ。

 君は簡単な魔法を使い、
 集めてきた植物の茎に炎を灯す。

 ルシエラ 
これで完成ですか?

 ウィズ 
そうにゃ。
ヴェレフキナたちはこの火を目印にして、
その牛と馬に乗って、やってくるらしいにゃ。



 炎から立ち昇る煙が空へと伸びてゆく。
 たしかにそれは何か道しるべのように見えた。

 しばらくすると、
 炎に合わせ揺らめく牛馬の影が、
 意思を持ったかのように轟き始める。

 エストラ 
始まったか。

 あらぬ方向へと伸びたり縮んだりを
 繰り返した後、炎が消えた。

 一瞬下りた暗闇の薄布に視界を奪われ、
 闇と静寂が君を包む。

 やがて闇に眼が馴れてくると、
 目前に明らかな気配を感じる。
 そこには、




 ??? 
まいど。

 ??? 
まいど。

 エストラ 
……なんだこれは?


 なんでしょうか?と君はエストラに同調する。

 声に聞き覚えはあるのだが、
 姿形が違い過ぎて、
 どう考えればいいのか悩ましい。


ヴェレフキナ
なんやとはなんやねん。
ボクやヴェレフキナや。

 シミラル 
なんやとはなんやとはなんやねん。シミラルや。

ヴェレフキナ
せっかく死界から出張って来たのに、
その態度、ごっつ傷つくわ。

こっちはこれでも切り札やねんで。

……まあそれはええわ。
それよりもアレ、なんや?


 と鼻を祭壇の方へ向ける。
 〈ダークサンブラッド〉のことを
 指して言っているようだ。

 供物です。と君が答える。


ヴェレフキナ
アホ。それは分かってる。
ボクは獣の血を使え、言えへんかったか?

 言いました。と君はヴェレフキナの言葉を認める。

ヴェレフキナ
せやろ。言うたやろ。
それをなんや、
あんなけったいなモン使うて。

 血の色をしているし、
 美味しいから大丈夫だと思った、
 そんな風なことを言って君は自己弁護を試みる。


ヴェレフキナ
せやね、血の色してるしね、それに美味しいし、
これでもまあええやろ。

……ってなるか、アホ!
キミ、2本足で立ってたら、熊でも人や思うん?
思わんやろ?

 シミラル 
でもヴェレフキナ。
これ本当においしい。


 説教するヴェレフキナの後ろでは、
 シミラルが勝手に供物を食べ始めている。


ヴェレフキナ
キミ、ボクが説教してる横で、何食べてんの?
常識あるん?
あとボクの方が偉いんやから、タメロやめてな。

 シミラル 
うるさい、バカ。


 そのやり取りを皮切りにして、
 ふたりはまた喧嘩を始めた。
 それを見なから君たちは、


 ウィズ 
……言われたことはやったにゃ。

 と納得するしかなかった。



story7 決戦前




  リザ  
猫! にくきゅう、ぶにぷにしてる!

 ウィズ 
そ、それはわかったにゃ……。

 リュディ 
もうリザばっかり、にくきゅう触るなよ。
僕にも変わってよ。

 ウィズ 
私は肉球ばっかり触られるのか嫌にゃ。

リザ&リュディ
ぷにぷに。ぷにぷに。


 戦いと戦いの合間に訪れた休息。

 緊張から解放されたからか、
 いままで見たことのない子供らしさを
 リザとリュディが発揮していた。

 そのせいで師匠が苦労しているか、
 もう少しだけ我慢してもらおうと君は思った。

 安息は誰にでも必要だ。
 ましてあの歳で異界を漂流してきたふたりには、
 絶対に必要なものだ。

 それにしても……。と君は見上げる。
 こちらに帰ってきてからのアルドベリクは、
 何か考え事をしているように思えた。

 岩の上に腰をかけ、
 じっとしている姿はそんな風に見えた。


アルドベリク
…………。

 ただし、それを心配するのは、
 自分の役目ではないだろう。
 そう考えながら、君は子供たちの方へ向かう。




 ルシエラ 
元気が無いですね、アルさん。

アルドベリク
お前は俺たちの未来をどう思う?

 ルシエラ 
んー?どういうことですか?

アルドベリク
俺たちを縛っていた鎖は本当に解けたのか。
時々俺は疑いたくなる。

まだ俺たちはあの鎖に繋がれたままで、
またあの決められた運命に従う……。

そんなことを疑わないか?

 ルシエラ 
んーまあ、あると言えばありますし、
ないと言えばないですね。

でもそれって普通のことじゃないですか?
先のことか分からなくなって不安になる。

それは普通で、当たり前のことですよ。
つまらないくらい普通ですよ。

アルドベリク
嫌な予感がする。

 ルシエラ 
きっと良い予感がする時もありますよ。


 ルシエラはアルドベリクに分かるよう、
 彼の顔の前を経由して、
 その細い指で子供たちを指差す。


 ルシエラ 
あの子たちの世界は、予言を信じて
生きているそうです。

いま起こっていることは、
すでに予言で決められた。
世界の終わりなんだそうです。

信じることは、
確かに強い力を生み出すかもしれないです。

でも彼らか信じているのは、
世界の終わりなんですよ。

そんなもの蹴っ飛ばしてあげるのが、
アルさんの役目ですよ。

アルドベリク
お前は俺を何だと思っているんだ。

 ルシエラ 
アルさんです。


 アルドベリクはルシエラの顔を
 ちらりと盗み見る。

 彼女はじっと前を見たままだった。
 そんな風に横顔を見るのは初めてかもしれない。

 あるいは別の時間、別の自分たちでは、
 あったのかもしれないが。

 数秒経ち、
 自分が彼女の横顔を見続けたままだと気づいた
 アルドベリクは視線を戻した。



 ルシエラ 
あの子たち、どうしましょうか?

アルドベリク
ひとりも3人も変わらない。

 ルシエラ 
ですよねえ。

 ルシエラが嬉しそうに
 こちらを見たのがわかった。


 ルシエラ 
それと、この戦いが終わったら、
あの約東を果たしてくださいね。

アルドベリク
なんだ?

 ルシエラ 
あの花が咲いている所に
連れて行ってくれる約束ですよ。

アルドベリク
ああ。あれか。
あそこは天界なんだ。
そう簡単には行けない。

 ルシエラ 
それなら天界を奪ってください。

 相変わらず本気か冗談か分からない調子だった。

アルドベリク
お前は俺を何だと思っているんだ。
だかまあ、考えておこう。


 呼ぶ声がする。
 その何気ない呼び声か戦いの始まりを予感させた。

story8 封魔級 合同作戦




ヴェレフキナ
はいはい。みんな集まってんか。
いまから大事なこと説明するで。

 ちょかちょかと短い脚を動かしながら、
 ヴェレフキナが前に出る。 

それよりも、
先にそのふざけた姿の理由を教えてくれるか?

ヴェレフキナ
まあ、そう急ぎなや。
これにも相応の理由があるんやから。



ヴェレフキナ
さて、前に説明したことは覚えてるか?

 君が死界で彼から聞いた情報は、
 すでに仲間たちには共有しておいた。

 敵が魂を書き換え、
 体を乗っ取ることは皆知っている。


問題はその戦い方です。
それを説明して頂けませんか?

ヴェレフキナ
まず理解する上で分かっておいてほしいのは、
魂というのが一種の記憶の集合であることやね。

魂は肉体か滅ぶと死界へと向かう。
そこで1回クリーンにされて、
真新しい状態で、次の輪廻の輪に加わるんや。

そうすることで、
肉体に余計な前世の記憶を
乗せへんようにしてるんや。


 彼の説明では、魂に以前の記憶か残ることで、
 肉体に影響を与えてしまう。

 それを避けるために、
 魂は一度記憶を浄化される
 ということだった。


ヴェレフキナ
ジェネティスのやり口は、
相手の記憶を分析して、その構造を分解していく。
つまり魂を分解していく。

 シミラル 
分解し、再構成された魂は
もちろんあのクソ野郎の思い通りです。

ヴェレフキナ
シミラル、口悪いで。
お子さんもおるんやから

 シミラル 
おっと失礼しました。
クソ野郎様の思い通りです。


  リザ  
くふっ……。
リュディ、クソ野郎様だって。

 リュディ 
し。大事な話の最中だよ。


ヴェレフキナ
で、重要なのは、
アイツが記憶の構造を分析するってところや。

大抵の魂はまっしろな状態で
輪廻を繰り返してるけど、
例外もある。

何回も何回も同じような生を繰り返している存在。

アルドベリク
なるほど、俺か……。

ヴェレフキナ
そうや。例えばそんな複雑な配憶の中に、
ジェネティスをぶち込んだら、
構造が複雑すぎて、すぐには乗っ取られへん。

そこをこの記憶を食べる神獣タピーロで、
吸い出して捕まえる。

 シミラル 
パクン!


 確かにあの神獣は記憶を食べることができる、
 といつか聞いた覚えがある。


アルドベリク
いいだろう。その方法で大丈夫だ。
俺の中にアイツを入れろ。

 ルシエラ 
ダメです。もっと適任の人がいます。

 唐突に反対の声を上げたのはルシエラだった。

 ルシエラ 
アルさんがその役目をしたら。
こっちの戦力が落ちてしまうじゃないですか。

それなら私かやった方が良くないですか?

 思わぬ正論だった。
 けれども彼女は時々とても鋭い発言をする。

 それか論理の声なのか、直観の声なのかは、
 わからないが、彼女の判断には曇りがない。
 曇りが無さすぎる。


イザーク
どうする、アルドベリク?

アルドベリク
俺に聞くな。
ルシエラは俺の言うことだけは聞かない。

 ルシエラ 
ふふふ。わかってますね。
囚われたり、閉じ込められたりするのは
私の役目ですよ。

もちろん助けられるのも。


 自分の身を案じるという曇りすらない。
 君は危うさと怖さを彼女に感じる。


イザーク
では続いて現在の戦況を説明する。
敵の軍勢との遭遇はすでに7度を超えている。

我々もギブン兵を展開し、
応戦しているか、戦況は芳しくない。

だが今回は違う。
取るべき対策かある。
まずは敵軍を一か所に集中させる。

ミカエラ
場所はかつて天界と魔界が
何度も交戦した〈嘆きの丘〉です。

そこへ天界と魔界双方の軍が敵を追い立て、
誘導します。

恐らく敵将を守ろうと、
敵は密集を始めるはずです。
そこへ突撃、突破し敵将に接触します。

ヴェレフキナ
一番守りの厚い所を突破すれば、
自然とジェネティスに近づけるということや。

アルドベリク
こうなると、魔界の情勢も気になるな。
この機に乗じて謀反気を起こす奴らもいるだろう。

エストラ
その件に関しては私に任せてもらおう。
すでにカナメとクルスか先手を打っている。

自分の家が燃えていたら、
謀反を起こす気にもなれないだろ。


 どうやら全ての準備は整っているようだった。
 この短時間で、これほど周到な準備を整える。
 戦争に慣れている、と素直に君は感嘆した。


イザーク
クィントゥス、突撃の先鋒はお前だ。

クィントゥス
任せとけ!


 命を落とすかもしれないのに、笑っている。
 魔界の住人というのは、こういう時には一番
 頼もしいかもしれない。と君は思う。

クィントゥス
ヘヘ。ようやくワクワク魔界フェスティバル
ぽくなってきたじゃねえか!
やっぱ祭りはこうだよな!

イザーク
何様か知らないが。
この魔界に喧嘩売ったことを後悔させてやろう。

もちろん充分後悔させたら……。

アルドベリク
生きては帰さん。

イザーク
ああ。それが魔界の流儀だ。



 そんな時、ミカエラが切り出す。


ミカエラ
イザーク。
ひとつだけ確認しておきたいことがあります。

イザーク
これ機に天界に攻め込むことはない。
それは協定を結んだはずだが?

ミカエラ
いえ、そんなことではありません。
そのワクワク魔界フェスティバルとは
何ですか?


 場に沈黙が漂う。


アルドベリク
ワクワク魔界フェスティバルとは、
魔界全土の国家が参加する……。

イザーク
説明しなくていい、アルドベリク。


 ***



クィントゥス
覇道・極炎穿掌!

 狙い通り敵を誘導することに成功し、
 先鋒であるクィントゥスの開幕早々の一撃で、
 戦場に集結した怪物の群れに大穴が空く。

 だが……。


チチ?チチチ!?

 相手も手当たり次第に、
 自らの分身を増やし、空いた穴を埋めていく。




ヴェレフキナ
イザーク!
ボクが魂をコーティングしてやった奴以外は
撤退させえ!

イザーク
もうやっている!
クィントゥス、周りは敵だらけだ。
どこに撃っても敵に当たるぞ!

クィントゥス
ああ! 楽しくて仕方ねえな!


 再び猛烈な炎を前方に放出する。
 炎は敵陣を貫くが、
 また別の層か前方に立ちはだかる。

 相手も一筋縄では貫通を許さない構えである。


 ウィズ 
防御の陣が固いということは、
この先に本体がいるということにゃ。



ミカエラ
イザーク、私も前へ出ます!
後ろは任せます。

イザーク
わかった。

 ミカエラの周囲にまばゆい光と炎が集まる。
 触れただけで炭と化してしまうような、
 鮮烈な炎が。

ミカエラ
まさか、貴方と一緒に戦うことがあるとは
思いませんでした。

 言い残して、ミカエラは敵陣に突入していく。

イザーク
感傷的だな、姉さん。

 わずかにほほ笑み、
 イザークも黒く染まった翼を広げる。

イザーク
俺も行く。魔法使い、ついて来い。

ヴェレフキナ
シミラル、お前も行くんや。
その鼻でジェネティス見つけるんや。

 シミラル 
うるさい、指図するな。


 言葉とは裏腹にシミラルの体が波打ち始める。

 その姿は、さっきまでの珍妙な姿から
 うって変わり、気高さを愚じさせる姿だった。



 シミラル 
さあ、乗って。

 君がシミラルにまたがると、
 彼女は中空にその蹄を踏み出す。

 脚は宙に留まり、さらに次の一歩を踏み指す。
 そうして見えない道を進むように、
 君とシミラルは空に昇り、
 イザークの傍までたどりつく。

 そのまま仲間たちか空けた風穴を
 突き進んでいく。


 ウィズ 
どうにゃ?

 シミラル 
段々あいつの匂いか明瞭になって来た。
……こっち!


 首を横に向けると、弧を描くように、
 敵の中を駆け抜ける。

 君は邪魔な敵を魔法で撃ち落とす。

 シミラル 
いた!



 ??? 
ふん。興味深いな。

 思ったよりも穏やかな声だった。
 彼がジェネティスだろうか。


ジェネティス
そこのお前。お前も私と同じではないか?

 彼の言葉は、
 シミラルヘと向けられているようだった。



 シミラル 
お前に、お前と言われる理由はないし、
お前に同類と見なされる覚えもない。

ジェネティス
そうだな。お前どうも人造物のようだ。
そうでなければ、私を否定しない。

お前は逆らわない。
そう決められて造られた。

 シミラルに対するジェネティスの言葉は、
 どこか古い友人に対してかけられる
 調子を帯びていた。

 以前、ヴェレフキナがシミラルについて、
 『造った』と表現したことかあった。
 恐らくシミラルも造られた存在なのだろう。


 シミラル 
ちょっと違う。私には理性がある。
お前にはない。

お前はただ拡大しようとするだけ、
理性のないバケモノだ。

お前は最初は小さな瞬きだった。
それが別のひとつの瞬きと呼応し、
そしてさらに他のひとつと。

そうして徐々に拡大していった。
お前はその頃から成長したか?

ジェネティス
何にでもなれる。
何でも奪える。
巨大で強力になった。

 シミラル 
それは、魂を舐めとる、と言うのよ。
完全にアウトだ。

ジェネティス
まあ、それは考え方の違いだ。
ではその違いを埋めようではないか。

分かりやすい方法で。


 シミラル 
聞いて。
まずはあいつの体を壊して。
そうすれば別の体に移る。

 ウィズ 
それをルシエラに誘導するにゃ。

 君は小さく頷く。
 まずは初戦に勝たなければ、何も始まらない。


BOSS ジェネティス


 ***


 ポロリとジェネティスの顔が崩れた。
 比喩的な表現ではなく、まさしく崩れた。

 しかし相手は全く動じることなく、呟いた。

ジェネティス
不自由だな。体があると。

 ボロリ、ボロリ、と体が崩れていく。
 だかあくまでも平然と続ける。

ジェネティス
新しいものが必要だな。
お前たちの体には入れないようだが……。
かといって私を殺すことはできまい。

 シミラル 
奴は体を探している。

 シミラルが君にそっと囁く。
 ヴェレフキナの術のおかげで、
 ジェネティスは君の体への侵入は出来ない。

 それは自分たちを守るためでもあり、
 敵をルシエラヘ誘導するためでもあった。

 ルシエラには、その術を施していない。


いま、アイツを食べることはできないにゃ?

 シミラル 
食べようとしても逃げる。
あいつにとって体はただの道具でしかない。

捨てるのは苦も無く行える。
けど体を乗っ取る時は隙が出来る。

 ウィズ 
危険を冒さないとダメということかにゃ。




ジェネティス
……あるじゃないか。

 その眼は、
 争い続ける分厚い群衆の壁を無視し、
 先を見ていた。

 ぶつかり合う肉体など見る価値すらない。
 見えるのは、その価値かあるのは魂だけ
 なのだろう。

ジェネティス
貰おう。

 言った途端、対峙していた敵の体は
 粉のように散った。
 何が起こったのかわからなかった。

 ウィズ 
どうしたにゃ?

 シミラル 
行った。私たちも向かうよ。


 まるで見えなかった、と君は正直に告白する。
 それは自分の油断ゆえに起こったことだ、
 と考えていたからだ。


 シミラル 
当たり前。
物質に縛られない移動が
人の目に捉えられるわけかない。

 ウィズ 
……想像していたより厄介な敵にゃ。

 君たちはすぐに反転し、ルシエラの元へ向かう。


 ***




ヴェレフキナ
来よったぞ!

アルドベリク
どこだ!

ヴェレフキナ
もうルシエラの中に入っとる!


 すでにルシエラの顔には正体がなかった。
 その声は彼女のものだが、
 どこか遠くから聞こえる声のようでも、
 別人のようでもあった。



 ルシエラ 
ああ……なんだ?これは?

 君が到着したのも、
 ルシエラが遠い声を呟いていた時だった。


ヴェレフキナ
アホが。かかったぞ!
こんなわやくちゃな魂に入んのは
初めてみたいやな。

シミラル、やるで。

 シミラル 
命令するな、カス。




 2頭の獣はルシエラに向けて大口を開ける。
 すると何か文字のような形をした光の粒が
 彼らの□に吸い込まれていく。

ヴェレフキナ
おもろいな。
こいつ構造自体はとんでもなく簡単な記憶や。

 食べながら、その代物を吟味しているのか。
 どうやらタピーロという種族は食べることで
 記憶を分析できるらしい。

 シミラル 
増殖と感染。それしかこいつにはない。
哀れだな。

ヴェレフキナ
はは。キミ、そんなことどこで習たんや?

 シミラル 
お前からじゃないのは確かだよ。

ヴェレフキナ
誰がお前や!

 やがてルシエラから光の粒の放出が止む。
 ジェネティスは全て吸い出されてしまったのか。

 よろめき倒れるルシエラの声は
 いつもの調子だった。

 彼女の体が地面に落ちる前に、
 アルドベリクはそのか細い肩を抱き止める。

アルドベリク
終わったのか?

ヴェレフキナ
せやな。


 アルドベリクは辺りを見回し、
 いまだ戦闘が続いているのを確認する。

アルドベリク
戦いは続いているぞ。なぜだ?

ヴェレフキナ
本体がいなくなっても、
分身は分身で活動できるんやろうな。

アレはそれほどの脅威はない。
全滅させたら終わりになるやろ。

アルドベリク
そうか。

 君は珍しく彼の感情が読み取れた気がした。
 いつもは何事にも動じることのない彼が、
 はっきりと安堵の様子を見せた。

 彼も不安を感じていた。
 そんなことを考えていると、
 アルドベリクが漏らすように言った。


アルドベリク
俺たちのことをお前は知っていると思うが、
時折俺は不安になるんだ。

まだ終わってないんじゃないか、と。

ルシエラが囮になると言い出した時、
いつか、これと同じことかあったのではないか?

そんなことを考えていた。


 そっとルシエラの頬に手を添える。
 その素振りは、そこにとある温もりを
 確かめているように見えた。

 その手に応え、ルシエラの嶮がわずかに動いた。


 ルシエラ 
ん……?アルさん……?

 重たい瞼を押し上げ、瞳を開くと、
 そこにはアルドベリクが映っていた。

 ルシエラは頬に添えられた手に
 自分の手を重ねた。



 ルシエラ 
その汚い手を退けろよ、クソ野郎。




最終話 絶級 宿命の殺し合い


 何が起こったのか、理解できなかった。
 いや、にわかには信じがたかった。

 ルシエラ 
ふぅむ。

アルドベリク
ぐう……。


 跳くアルドベリク。腕を取り見下ろすルシエラ。
 何か起こったかはわからないが、
 何か良くないことか起こっている。

 それだけはわかった。


 白炎が君の目の前に舞い降りる。


 ミカエラ 
どうしました?

ヴェレフキナ
あんのガキィ……。

 出し抜けにヴェレフキナが忌々しげな
 言葉を呟いた。

 シミラル 
ヴェレフキナ。あいつ、ジェネティスだ。

ヴェレフキナ
わあっとる!

 ミカエラ 
分かるように説明してください。

ヴェレフキナ
あいつ、咄嵯に分からんくらい小さな自分を
ルシエラの中に残しておいたんや。

そうやって時間稼いで、
ルシエラの記憶を読み取ったんや。

 ミカエラ 
ルシエラを教う方法はないのですか?

ヴェレフキナ
……ルシエラの記憶の書き換えが完璧ちゃう
ことを期待するだけや。

 シミラル 
可能性は低い。
というか両者の同化が著しくて、判別が難しい。


 ヴェレフキナが濁した言葉の先を
 シミラルが継いだ。

 冷静に状況を分析し事実を伝えた。
 必要だから……。そんな網子の言葉だった。
 その言葉を聞いて、


アルドベリク
ならこいつはもう、ルシエラではないのか……。

もう……元には戻らないのか?

 抑えつけられた腕をやり返しながら、
 アルドベリクは立ち上がる。


ヴェレフキナ
悪いが……難しい。

 難しい。
 精一杯の希望を絞り出し、
 ヴェレフキナはそう言った。


 シミラル 
ひとつ教いがあるとすれば、
ジェネティスはいまルシエラの体に縛られている。
ルシエラを殺せば、ジェネティスも死ぬ。

ヴェレフキナ
シミラル!

 シミラル 
必要だから伝えた。


アルドベリク
……そうか。



 それと、この戦いが終わったら、
 あの約東を果たしてくださいね。

 あの花が咲いている所に
 連れて行ってくれる約東ですよ。

 ああ。


 この花をいっぱい敷き詰めて、
 その上で眠りたいです。



アルドベリク
ああ。あの花の上で……。
殺してやる。


 言うと、ルシエラに掴みかかり、
 共々空へ飛び上かった。
 君の横にシミラルが駆け付けて、



 シミラル 
乗って!

 言われたまま君はその背に飛び乗る。

 ミカエラ 
追いましょう!



 ***




 白い翼と黒い翼はもみ合いながら、
 花の咲き乱れる丘へと落ちた。

 衝撃につられ、
 赤い花びらが血のように吹き上がり、
 白い花びらが雪のように舞った。

 君たちもすぐさま降り立った。




アルドベリク
ここで、殺してやる。

 ルシエラ 
ぐぅぅ……。


 花の上へ叩きつけた勢いのまま、
 抑えつけたか細い首に力を込める。


ヴェレフキナ
ここ?……知ってるぞ。

 シミラル 
ルシエラの記憶の中にあった。

ヴェレフキナ
そうや。ジェネティス食う時に見たとこや。
アルドベリク、答えろ!
ここが“あの場所所”か!?



アルドベリク
関係ない!

 言い切るアルドベリクをルシエラは嘲笑する。
 どこにそんな余裕があるのか、
 気分の悪くなる笑い声をあげた。

 ルシエラ 
ハハハハァ! そうよ、ここよ。
この思い出の場所で私を殺してくれるそうよ。

アルドベリク
ああ。殺してやる。


 さらに腕に力を込めるアルドベリク。
 突然、ルシエラはもの悲しげに言った。
 声はまるで別人のようだった。




 ルシエラ 
いつもそう……ここで私を殺せば私が幸せなの
それって誰が決めたの?

アルドベリク
な……?

 意表を突かれ、腕の力が緩む。
 再び力を加える勇気はなかった。

 ルシエラ 
あの時、あの花を摘みに行くのを見て、
私がどう思っていたと思う?

知らないでしょ?
どうして一緒にいてくれないの?
そう思っていたのよ。

最後の瞬間まで、そう思っていた。
あなたは花ばかり摘んでいたけど。

私はそんなこと求めてなかった。
可能性を捨てたのだって………

あなたが勝手に決めた……。
いつも………いつも……。


黙ってれば好き勝手しやがってよぉ!
……ここで殺してやる?

お前が死ねよ!!


アルドベリク
くあっ!



 ルシエラが怒号と共にアルドベリクを吹き飛ばす。
 そのままゆらりと立ち上がり、
 顔を覆う髪をかき上げると、



 ルシエラ 
お前が死ねよ……。

 すでにそれはルシエラ以外の何かだった。


アルドベリク
殺してやる、ルシエラ。



 アルドベリクの不安は的中した。
 起こるべきことは、必ず起こる。

 君は手にしたカードを握りしめ、つぶす。


ヴェレフキナ
アホが!

 突然、ヴェレフキナがアルドベリクに
 体を当てて吹き飛ばした。


アルドベリク
何をする!

ヴェレフキナ
アルドベリク! まだ方法はある!
殺すな! 生きたまま捕まえろ!

シミラルぁ! この花や! この花の香り。
しっかりと記憶しとけ!

 シミラル 
もうやってる。ウスノロ。

ヴェレフキナ
上出来や!


 ミカエラ 
アルドベリク、冷静になりなさい!

状況が絶望的なものであるのは、認めます。
けれど、あなたは……。あなたたちは!

わずかでも可能性かあるなら、
それを捨ててはいけません!


 その言葉に反応し、
 アルドベリクは激情から踏みとどまる。


アルドベリク
ヴェレフキナ。本当に救えるのか……?

 感情を噛み殺し、アルドベリクは答えた。
 少しだけいつもの彼に戻っているようだ。

ボクの魂賭けたるわ。


 ルシエラ 
殺し合いは終わり?
一緒に宿命をやり直しましょうよ?
アルドベリク。

殺し合いの宿命をね、クソ野郎。


 ウィズ 
キミ、ふたりを助けるにゃ。
ふたりを。




BOSS ルシエラ


 ***



 ルシエラ 
キシャァァァーー!

 どこにそんな力があるのか。
 相手は全身のバネを使い、
 飛びかかってくる。

 それだけではない。
 両翼の浮力を活かし、重力からも逃れ、
 その動きは不規則極まった。

 もちろん殺さずに捕らえるという
 伽も重く、君たちの身動きを奪っていた。

 徐々に焦りも生まれてくる。


 ミカエラ 
肉を切らせて骨を断つ。それしかないですね。

アルドベリク
それなら俺がやる。

 次の瞬間、アルドベリクは前に出た。
 無防備に、構えを解いて、ただ立っていた。

 君は彼を守ろうと一歩踏み出す。


 ウィズ 
待つにゃ!
ここはアルドベリクに任せるにゃ!

 ウィズに促され、君は思い直す。
 ここは彼に任せるしかない、と君は覚悟する。




 でたらめな軌道を描いて、
 ルシエラはアルドベリクに激突する。



 ルシエラ 
お前が死ね!

 ルシエラの爪がアルドベリクの肉を引き裂く。

アルドベリク
ああ。お前が死んだら、俺も死んでやる。

 その傷をもろともせず、
 そのままルシエラを抱きしめる。

アルドベリク
だから、大人しくしろ!

 背中に回された手は、ルシエラの両翼をへし折る。

 ルシエラ 
離せえ!


 腕の中でのたうち回り、
 肩に噛みつき、
 肉を噛みちぎる。

 それでもアルドベリクは、
 しっかりとルシエラを抱きしめている。


 花の上に押し倒し、手を握ると、
 自らの手もろとも剣で貫く。


 ミカエラ 
捕らえた……。

アルドベリク
さあ、始めてくれ。



ヴェレフキナ
任せとけえ。


 ルシエラ 
無駄だ!
ルシエラごと消えてなくなるぞ!
それでいいのか!

 2頭の神獣に食われながら、
 最後のあがきのように喚き散らす。

 ルシエラ 
無駄だぁ! 無駄だぞぉ!

 声が遠くなる。ルシエラの皮膚を覆った殼も
 ぽろぽろと剥落していく。
 やがて。

ヴェレフキナ
往生際の悪いやっちゃ。



 全てが終わったように、静けさが帰って来た。

 アルドベリクはルシエラと自分を繋げる
 剣を引き抜く。
 彼女はまだ眠ったままだ。

アルドベリク
すぐに目覚めるのか?

もう目覚めてるやろ。

 アルドベリクがルシエラを見返すと、
 彼女の目はもう開いていた。




アルドベリク
大丈夫か?

 ルシエラ 
手が痛い。翼も……。

アルドベリク
すまない。仕方がなかった。

 ルシエラ 
……あなた、誰ですか?


 君は胸が締め付けられるように感じた。
 あるいは後遺症があるのかもしれない。
 あるいは失敗した、ということも。



アルドベリク
どういうことだ、ヴェレフキナ。

さあ?知らん?

アルドベリク
知らない?ちゃんと説明しろ。

だって、ボクは完璧にジェネティスと
ルシエラを区別してアイツだけ食べた。

花の香り。より具体的な記憶を元に区別したの。

□で『甘い』言うよりも、
食べてみた方が分かりやすいし、強い記憶や。

ここにある花の香りを鍵にして、
ルシエラの記憶を見つけた。

面白いことにジェネティスは、
五感を完全に閉鎖しとった。
たぶん痛覚が邪魔やと思ったんやろうね。

 たしかに戦った時、
 痛みを感じていた様子はなかった。

だからアイツは花の香りを□では説明できるけど、
具体的には知らない。ドンピシャやね。

アルドベリク
そんなことは聞いてない!
この状況はどういうことだ。

だから……知らん言うてるやん。

言うてるやん。




笑い声が聞こえた。


 ルシエラ 
ぷぷ。ぷぷぷ。
……冗談ですよアルさん。
ビックリしましたか?

 なるほど。彼女らしい。
 いたずらだったのか、と君は胸をなでおろす。
 もちろん、アルドベリクも。

アルドベリク
お前は……。

 多少呆れているか、
 ムッとしているかはしていたようだか。



 ルシエラ 
ここが約束の場所ですね。

 ルシエラは顔の真横にある花を見た。
 大きく胸を膨らませて、その香りを吸い込むと、
 瞼を閉じた。

 ルシエラ 
このまま、眠ってもいいですか?

アルドベリク
ああ。

 返事を聞くと、
 彼女は花の中に埋もれるように
 眠りに落ちた。






 ミカエラ 
終わりましたね。

ヴェレフキナ
まだやで。
ジェネティスの分身があちこちに残ってる。
世界を股にかけてな。

 ミカエラ 
ではその討伐も考えましょう。
ただ、いまは少し休ませてください。

 シミラル 
賛成。


 君もふたりについて、
 その場を後にすることにした。

 ヴェレフキナだけは、
 少しアルドベリクに用があるのか。
 最後まで残っていた。






ヴェレフキナ
ん~……。お。あれでいいやろ。
カッー、ペエッ!

アルドベリク
何をした?

ヴェレフキナ
ああ、使ってない肉体に魂を移したんや。

 放置されていた亡骸がむくりと起き上がる。


ジェネティス
チチチ?

ヴェレフキナ
無害にしたジェネティスや。
持って帰ってもええんやけど………

死界に送ってもらった方が早い思てね。
方法はキミに任せるわ。

アルドベリク
なるほど……。

 アルドベリクはゆっくりと新たな身体に移った
 ジェネティスの元へ歩いていく。

ヴェレフキナ
あんじょう頼んまっせ。

 とヴェレフキナはアルドベリクに背を向け、
 去っていった。

アルドベリク
さて。悪いが俺は血も涙もない魔族だ。
手加減なんて言葉は知らん。

俺が魔王と呼ばれる理由を、
お前にだけ教えてやる。
……クソ野郎。


誰にも、内緒だぞ。



ジェネティス
チチチ~?

チチチーーッ!!




 奇妙な声が聞こえた。そんな気がした。
 何か聞こえた?
 と君はウィズに尋ねる。


気のせいにゃ。

 そうかもしれないと思い直し、
 君は仲間たちの方へと向かった。




エピローグ


 オルハ 
ふう……。

 目の前で黒猫の魔法使いが消えてから、
 しばらくの間、オルハは異界の歪みの発生を、
 神経を研ぎ澄まして待ち続けた。

 そしてようやく、いつもの如く白日夢が
 歪みの発生を教えてくれた。

 そこは以前、魔法使いが歪みの中に
 消えていったところだった。

 オルハ 
もうすぐね。
……あ。

 花が舞った。
 風に吹かれたのではなく、
 歪んだ空間に引き裂かれて、舞った。

 花の吹雪が去った後、
 開いたオルハの眼に映ったのは
 一本のボトルだった。

 見たこともない禍々しい絵の描かれたラベル。

 それが貼られているボトルの中身は
 とうの昔に飲み干されていた。

 オルハ 
何かしら?

 怪訝に思いつつも、
 オルハはそのボトルを持ち上げた。

 空っぽのボトルの底には
 小さく折り曲げた紙片がある。

 蓋を取り、しばらく下に向けて
 振っていると地面に紙片が落ちた。

 オルハ 
あら?

 そこに書かれていたのは、
 見慣れた形の文字だった。

  もうしばらくこちらにいます。
  楽しくやっているので、
  心配しないでください。

 最後には黒猫の魔法使いの名が
 署名されていた。

 オルハは風に誘われるまま紙片から
 指を離した。
 紙片は、花と共にどこかへ消えた。


 オルハ 
う~ん。
これなら、心配ないわね。












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