双翼のロストエデン Story【黒猫のウィズ】

 
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ストーリーまとめ




プロローグ


異界からの侵入者エルデステリオを退治することに成功した境界騎士団。
戦いが終わり、彼らはそれぞれの帰るべき所へと帰っていっていた。

そして、彼らに協力を求め、
クエス=アリアスに舞い降りた白羽の天使ルシエラもまた………



「ふわわわー。平和ですねえ。」
……帰っていなかった。



「ルシエラはいつまでここにいる気だにゃ。」
「そうですねえ。特に急がなきゃいけない理由もないですし………もうしばらくいますよ。」
「あ、そう……にゃ。」

ウィズは上辺に飛び上かると、君に耳打ちした。
「キミ、まだしばらく居候する気にゃ。ここはハッキリと言うにゃ。」

ウィズの言う通り、長居されたら、自分たちの仕事に支障が出てくるかもしれない。
何しろ彼女の容姿は目立つ。
これまでも好き勝手に出かけられて、大騒ぎになったことがあった。

仕方ない。君は意を決して、ルシエラに言った。
君の帰りを待っている人がいるんじゃないの?と。
「なんでそんなに遠回りなんだにゃ。情けないにゃ!」

「そんな人いませんよ。なんせ私は……そういえば私、ここに何をしにきたんでしたっけ?」
「忘れてたのかにゃ。」

ルシエラは人差し指を口元にあてて、
しばらく考えてると、唐突に妙な声を上げた。

「ぴょ!あわわわ……。」
「どうしたにゃ?」
「そこのおふたり、一緒に私の世界に行きませんか?いえ、行きますよ!」

ルシエラは、強引に君とウィズを抱え上げると、部屋の窓から空へと飛び立った。

しばらくクエス=アリアスの上空を飛びまわった後、
彼女がそこからやってきたという、異界の歪みに、君たちは放り込まれた。



story1 初級 魔王と天使


 アルドベリク 
…………。

 彼の名はアルドベリク・ゴドー。魔界の王の1人らしい。

 彼はルシエラが異界を超えて、
 クエス=アリアスに行ってから、戻ってくるまでの間、
 その歪みを拡げ、彼女を待ち続けていたらしい。

 彫像のように、美しい顔が印象的だった。
 それは表情が読み取れないという意味でも、同様だ。

  ウィズ   
けっこう長い間にゃ。
だからルシエラはあんなに慌てていたんだにゃ。

 うん、と君はウィズの言葉に同意した。
 たぶん自分たちは、それをごまかすために、連れてこられたんだろう………
 それにしても………

  ウィズ   
私たち、なんで魔界に来てるにゃ………

  ルシエラ  
あ、言ってなかったですか?
私、魔界から来たんですよ。見た目に騙されちゃいけませんね。

 一言いってほしい。と君は率直に返答した。



 アルドベリク 
ルシエラ。行き先を言わずに連れてきたのか?

  ルシエラ  
言わなかったと言えば、そうですね。そうとも言えます。でも………
最初から行き先かわかってたら、つまんないじゃないですか。
アルさんだって、私かいつ帰ってくるか分からないから、ワクワクしませんでしたか?

 アルドベリク 
そんなワクワクはいらん。
それと……俺の名はアルドベリクだ。

そう言うと、アルドベリクは君の方を見た。



 アルドベリク 
迷惑をかけた。しばらく俺の城で、ゆっくりすると良い。

ただ、ここは魔界だ。
訳もなく、襲いかかってくる奴もいる。気をつけろ。



  ルシエラ  
安心して下さい。
何かあったらアルさんかやっつけてくれますよ。

 アルドベリク 
勘違いするな。俺はそこまでお人好しではない。

言葉とは裏腹に、なぜか彼の言葉は、人を安心させるような響きがあった。


 ***


道中に現れた魔物たちの大半は、アルドベリクのひと睨みで退散していった。
君は、恐怖で逃げることもできずに半狂乱で向かってくる者を退治するだけでよかった。

  ルシエラ  
アルさんは相変わらずお人好しですね。

ルシエラがそういうのを聞いて、アルドベリクはそう言った。

 アルドベリク 
……アルドベリクだ。間違えるな。

  ルシエラ  
間違えていませんよ。アルドベリクだから、アルさん。
それともアベさんが良いですか?

アルさんとアベさんならどっちがいいですか?
ルドさん、ベリクさんもありますよ。

 アルドベリク 
……アルドベリクだ。

  ルシエラ  
わがままですね!
アルさんかアベさんのどっちかに決めて下さい!
贅沢は許しませんよ!

 アルドベリク 
アルさん。……いや、アルドベリクだ。

  ルシエラ  
んもう!わがまま大魔王!

  ウィズ   
このふたりは何をやっているにゃ?

さすがに君も肩をすくめるしかなかった。

ふと禍々しい雲が覆う空に、人影が見える。
その人影は、急速に拡大していた。

  ウィズ   
誰か来るにゃ。

やってきた人影は、君たちの前までやってくると、
その場で羽ばたき、宙に浮かんでいた。

  ルシエラ  
アルドベさん……アルベさん……
やっぱりアルさんが一番しっくりきますね。

 アルドベリク 
……アルドベリクだ。

彼女は、相変わらずルシエラと押し問答を続けていたアルドベリクに声をかけた。


  エストラ  
こんな所にいたのか、アルドベリク。

 アルドベリク 
……アルドベリクだ。

  エストラ  
……なんだ、急に。

 アルドベリク 
……すまん。間違えた。

  ルシエラ  
うぷぷぷ………

傍らで笑いを堪えるルシエラを牽制するように、アルドベリクは咳払いをする。

 アルドベリク 
エストラ。俺の国に何の用だ。

  エストラ  
何の用だ、ではない。お前こそ、いままでどこにいた?
いや、そんなことはどうでもいい。至急、王侯会議を行うぞ。議題は……。

そこまで言って、エストラは言葉を切った。

  エストラ  
言うまでもないな。

確かに彼女の言う通りだった。
いつの間にか、神々しい光を帯びた白羽の兵士たちが、周りを取り囲んでいた。

  エストラ  
天界の奴らが攻めてきた。どうするかは、この場で即決しようか!


 ***


 アルドベリク 
他愛もない。

 その言葉の通り、彼にとっては、あの程度の敵を討つのは造作もないのだろう。
 アルドベリクは、戦闘が終わってなお、涼しげな表情を崩さなかった。

  エストラ  
こいつらは偵察の兵だろう。敵の本隊はおって到着するはずだ。ところで………

 エストラは、訝しそうに、アルドベリクの側にいる白い翼を持った少女を見た。

  エストラ  
なんだ、そいつは………

  ルシエラ  
ルシエラと言います。よろしくお願いしまーす!

 睨みつけるエストラの視線を、まったく意に介さず、
 ルシエラはふわりと舞いながら、答えた。

 さすがのエストラも気が抜けたのか、

  エストラ  
まあ、いい。現場に向かうぞ。

 諦めたように、話題を元に戻した。

  エストラ  
今回はどこで行う。順番で言えば、ジルヴァ家の国だが……少し遠いな。

 アルドベリク 
安心しろ、今回はここで行う。

  エストラ  
なぜだ?

 アルドベリク 
ここが、戦場だからだ。
行くぞ、イザークが待っている。

  ウィズ   
にゃ!


 初めて来た場所、初めて会う人、初めて聞く言葉の連続。
 会話についていくのかやっとだった君にとって、その名は、特に懐かしく聞こえた。
 それはかつて会ったことのある男の名だった。

 かつて天界の王の座を姉に譲り、異界へと降りた男。
 イザーク・セラフィムの名は、君にようやく、自分が今いる場所を教えてくれた……。
 ……ような気がした。

 彼は、いまどうしているのだろうか。

story2 中級 天界の攻勢



  イザーク  
おや。どこかで見たことのある奴がいるじゃないか。

 君のことを覚えていたのか、イザークは開口一番そう言った。

 アルドベリク 
知り合いか?

  イザーク  
そんなところだ。どこで拾ってきた?

 アルドベリク 
どこかの世界からルシエラが拾ってきた。

  ルシエラ  
はーい。拾ってきました。

  イザーク  
なるほど、面白いことになってきたじゃないか。

  ウィズ   
勝手に面白がられても困るにゃ。

 ウィズは呆れたように、尻尾を左右に掴った。

 アルドベリク 
冗談を言うな。厄介事ばかり増えている。

  イザーク  
だとしたら、貴公の、これまでの行いが悪かったのだろう。

 アルドベリク 
魔族としては、行いが悪いに越したことはない。
それにしても……。

  エストラ  
相変わらず集まりが悪いな。

  イザーク  
元々、魔族はそういうものだろう。自分の欲望に忠実な者ばかりだ。
貴公らが少し変なのだよ……状況を説明しよう。

 イザークの話によると、アルドベリクの留守を狙って天界の軍団が攻めてきたらしい。
 この国を、魔界侵攻の拠点としようとしているのだ。

  イザーク  
貴公が馬鹿正直に、異界の歪みの前でルシエラの帰りを侍っていたからだな。

 アルドベリク 
こいつがいつまで経っても、帰って来なかったからだ。一体何をしていた?

 アルドベリクはルシエラの首根っこを掴み、持ち上げてみせた。

  ルシエラ  
えー? それは内緒です。
知りたいですか? すごく知りたいですか?

 アルドベリク 
……知りたい。

  ルシエラ  
でも内緒でーす。

  エストラ  
頭が痛くなってきた。
さっさとそれぞれの役割を決めようじゃないか。
私は何をすればいい?

  イザーク  
そうだな。エストラ、貴公は援軍を呼んできてくれ。
迎撃は我々が行う。魔法使い、せっかくだからお前も手伝うか?

  ルシエラ  
断ったら、ただじゃおきませんよ。

 笑顔でそういうこと言わないでほしい。と君は返した。

  ウィズ   
魔族と天使の喧嘩に関わることはないにゃ。
でもここにいて、響き込まれないのは無理な話かもしれないにゃ。
振りかかる火の粉くらいは払うにゃ。

 仕方ない、と君はウィズの言葉に同意した。

  イザーク  
ふふ。それで十分だ。では行こうか。



 ***


 魔界に降り立った天使たちの中に、燃えるような赤い髪をした少女がいた。



???
思ったより抵抗がありますね、マクシエル。

 彼女の言葉を受けて、その傍らにいる痩身の天使は言った。



 マクシエル  
アルドベリクは不在だと聞いたのですが、
この様子だと、もう戻っているようですね。

  ???   
どうしましょうか?
ここは一旦、兵を退いた方が良いかもしれません。

 マクシエル  
クリネア、何も慎重論だけがお前の取り柄ではあるまい。
もう征伐の軍のいくらかは、この地への降下を終えている。
アルドベリクが戻っているなら、奴を倒して、そのまま、この地を制圧するまでだ。

  クリネア  
そうではないです、マクシエル様。
我々の、当初の計画は崩れています。
この先、どんな予定外の事が起こるか………

  ???   
私もクリネアの意見に賛成です。
このまま無理をすることもないでしょう。

 マクシエルは、赤い髪の少女を一瞥した。

 マクシエル  
ミカエラ様、あなたは甘い。

  ミカエラ  
そうでしょうね。退却です。これは命令です。

 それだけ言い、ミカエラは踵を返した。

  クリネア  
あ……。

 マクシエル  
……かしこまりました。

 次の瞬間、空が破裂した。
 降下途中だった天使たちの大半は制御を失い、哀れな滑空を行っていた。

 マクシエル  
どうやら、退却するわけにもいかなくなりましたな。

  ミカエラ  
それなら、皆を無事に退却させるのか、我々の責任です。続きなさい。

  クリネア  
は、はい。

 いち早く、破裂した空へ向かって、飛び立ったミカエラ。
 クリネアはすぐさまそれに続いた。

 マクシエル  
御意。

 そして痩身の天使は、最後に続いた。



  ウィズ   
と、とんでもない威力にゃ………

 アルドベリクが造りだした、黒い魔力の塊が、天使たちの降下してくる空へ放たれた。
 すると一瞬にして、押し寄せる天使たちは重力に捉えられて、地面に叩きつけられたのだ。

  ルシエラ  
さっすが、アルさん!

  イザーク  
やれやれ、俺達の出番はなさそうだな。

 アルドベリク 
さあ、仕上げにかかるぞ。

 君は少し苦笑した。
 まさか魔族と一緒に戦うとは……さすがに思わなかったからだ。
 それでも、想像しているよりも、彼らは人間味のある人たちだ。
 嫌な気持ちはまったくなかった。


 ***


 もはや周囲に、抵抗できる天使の兵は皆無だった。
 残党は逃げるに任せて、深追いはしない。それがイザークたちの判断だった。

  イザーク  
こんなものか。天界の軍も存外情けない。

 アルドベリク 
イザーク。お前が言うと、妙に聞こえるな。

  イザーク  
他意はないさ。

  ウィズ   
イザークも魔界で楽しくやってるみたいで安心したにゃ。

 こんな状況で楽しそう、というのもおかしな話だな、と君は思った。

  ミカエラ  
そこまでです!

 凛々しく透き通るような声と共に、燃えさかる炎の舌が、君の目の前に垂れ下がった。
 炎の中から現れたのは、見覚えのある赤い髪の少女だった。



  ミカエラ  
イザーク。


  イザーク  
姉さん、兵を退くなら今だ。
もうすぐ援軍も到着する。これ以上は無駄だ。

 マクシエル  
馬鹿げたことを言うな、イザーク。

  クリネア  
ミカエラ様、言う通りにしましょう。
無益な争いはやめるべきだと思います。

  ルシエラ  
そうです。こっちには強い強いアルさんもいるんですよ。
さっさと退いた方がいいです。

突然、一歩前に飛び出したルシエラは、翼を羽ばたかせながら、声高に言った。


  ルシエラ  
さもないと、さすがのアルさんも怒っちゃいますよ。
そもそもですね……。

 アルドベリク 
むっ………

 ルシエラの翼がアルドベリクの顔を撫でた。
 羽ばたかせるたびに、何度も何度も。

  ルシエラ  
アルさんはですね。
お人好しなところもありますが、根っからの魔族で、本当は怖いんですよ。

  ウィズ   
ずっと羽が顔に当たっているにゃ。

 アルドベリク 
む……。ルシエラ。

  ルシエラ  
はい?なんですか?

 アルドベリク 
気づいてないかもしれないが、お前の羽が俺の顔に当たっている。

  ルシエラ  
え?気づいてましたよ。わざとですから。

 アルドベリク 
なら、すぐにやめろ。

  ルシエラ  
はーい!

 マクシエル  
なんだ、あいつは……

 ミカエラは鋭い視線をルシエラに向けていた。

  ミカエラ  
ルシエラ………ルシエラ!こんなところにいたのですね。
イザーク。あなたがアルドベリクとルシエラを?

  イザーク  
ああ。そうだ。

  ミカエラ  
残酷なことを……。

 その言葉とともに、ミカエラは一歩、イザークの近くへと進みかかる。

  クリネア  
ミカエラ様……これ以上は。
マクシエル様。敵の援軍の気配も近いです。
退きましょう。私たちは敗れました。もうこの戦いは無意味です。

 マクシエル  
ふん。

 つまらなそうに、鼻を鳴らすと、マクシエルは飛び立った。
 ミカエラもクリネアも、それに続いた。そして天使の軍も続いた。

 やがて魔界に舞り立った天使たちは、皆いなくなってしまった。

 アルドベリク 
イザーク。何の話だ。俺とルシエラに何がある。

  イザーク  
そうだな………

 と、イザークはもうひとりの当事者たるルシエラの姿を探した。
 だか、どこにもいなかった。

  イザーク  
もしかすると天使たちについていったのかもな。
あの魔法使いもついでに連れて行かれたか。

 アルドベリク 
まったく………

 アルドベリクはそれを聞いて、すぐさま後を追いかけた。

  イザーク  
残酷か………姉さん、それは少し違うな。


story3 上級 螺旋の胎動


 君とウィズは、ルシエラに抱えられ、天界の空を飛んでいた。

  ルシエラ  
うわー、こうして見ると、何もなくてつまらないところですねえ。

  ウィズ   
自分の故郷をひどい言いようにゃ。

  ルシエラ  
故郷?ここはそんな良いものじゃありませんよ。

 どうして?と君はルシエラに訊ねた。

  ルシエラ  
どうしても何も、気づいた頃には、暗くて冷たくて狭い所に閉じ込められていましたから。
そんなところを、どうやって好きになるんですか?
馬鹿も休み休み貫ってください。ふざけたこと言っていると、落としますよ。

  ウィズ   
や、やめるにゃ!

 君は、閉じ込められていた理由をルシエラに訊いた。

  ルシエラ  
さあ?知りません。気にしたことないです。なんでもかんでも理由を求めるのは、よくないですよ。
あなたとその黒猫さんは、何か理由かあるから一緒にいるんですか?
だとしたら、つまらない関係ですね。特に理由もないのに、一緒にいるのがステキなんですよ。
運命で繋がる関係みたいでステキじゃないですか。

 そういうものなのかな?と君は思った。
 そんなことを話していると、大地のいたる所で、岩が溶け出し、沸き立ち始めた。
 その灼熱の沼から、魔族たちが飛び出してくる。
 そして、その場にいる天使たちに見境なく襲いかかった。

  ウィズ   
魔族が反撃に出たにゃ……。

  ルシエラ  
きっとアルさんですね。
これは私たちも駆けつけなければいけません。行きますよ。

そういうものかな?と君が言うと、

  ルシエラ  
えー、落としますよ。それでいいですかー?
いいですよねー?

やめて………という君の諦めの声を聞くと、
ルシエラは天使と魔族たちが戦う戦場へと向かった。


 ***


君たちが、魔族と天使の争いの中を駆け抜けていると、
見覚えのある少女を見つけた。



  クリネア  
わ! 敵ですか?

  ルシエラ  
敵ですよ! 悪いことしますよ! ふふふふ。

  クリネア  
あわわわ……

  ウィズ   
何をやってるにゃ……

 ミカエラと一緒にいた天使の子だね、と君は落ち着かせるように、少女に声をかけた。

  クリネア  
はい。この混乱を収拾しようと思ったのですが、元々非力なもので……
上手くいきませんでした。

  ルシエラ  
まあ、この場合は腕力がモノを言いますからね。

 もうちょっと遠慮しなよ、と君がルシエラ論していると……


 マクシエル  
その通りだな。

 ミカエラの側にいた、もうひとりの人物。
 いつの間にか、彼を含む数人の兵に君たちは取り囲まれていた。

  クリネア  
マ、マクシエル様。彼女は私たちと同じ天使です。争いはやめて下さい。

  ルシエラ  
やめないと、ぶっとばしまーす!

  クリネア  
え?

  ウィズ   
台無しにゃ……

 マクシエル  
ふん。ということだ、クリネア。話し合いは終わりだ。

 彼は高々と杖を褐げると、一息にルシエラに向けて振り下ろした。

  ウィズ   
キミ!

 君は、とっさにルシエうをかばおうと、身を投げ出す。
 しかし、それよりも早く反応した者がいた。
 君の前には見た事がある剣が、地面に突き立てられていた。



 アルドベリク 
聞こえなかったか?
やめなければ、ぶっとばすと言ったはずだ。

 マクシエル  
アルドベリク……。

ルシエラに向けられた一撃は、
その直前でアルドベリクの剣によって、阻まれていた。

 アルドベリク 
覚悟はいいか?

 ***


BOSS マクシエル

 ***


 マクシエル  
クッ………まだだ。

だが勝負はついていた。
マクシエルは、君とアルドベリクの前にひざまずき、傷ついた体を抱いていた。
すると、彼の前にクリネアが飛び出してくる。

  クリネア  
もう、終わりです。この人は戦えません……。

君は傍らに立つアルドベリクを見やった。

 アルドベリク 
抵抗できぬ者をいたぶる趣味はない。

それだけ言って、彼はきびすを返した。
君は震えるクリネアに目配せを送る。

  クリネア  
………ふぅ。

それを見ると、クリネアは安堵の息を漏らし、

  クリネア  
よかったです……。

緊張の糸が切れたのか、彼女はその場にへたり込んだ。

その背後から何かが見えた。

ぬっ、と現れた鈍い光の軌跡が、君の脇をかすめていく。
君は咄唯にローブを振り回し、それを叩き落とそうとした。

手応えはあった。普通なら叩き落とせただろう……。
だが、それはローブを突き破り、背後へと吸い込まれていった。




 アルドベリク 
……ッ!……な、に?

  ルシエラ  
あうっ……。アルさん……。
大丈夫……ですか?

彼女は、なぜか安心したように笑っていた。

 アルドベリク 
ルシエラ!

アルドベリクヘと向けられた刃は阻まれた。
ルシエラが身を挺したことによって。

けれど、君は妙な錯覚をした。
その刃は、初めからルシエラに向けられていたのではないか。
そんな、妙な感覚である。

しかし、それどころではなかった。

 マクシエル  
ぐぁ……!

 アルドベリク 
貴様……。

マクシエルの胸ぐらを掴み、
もう片方の手には魔力が込められていく。

  クリネア  
お、落ち着いてください。

一瞬、君とクリネアを睨んだ彼の目は……初めて見るものだった。

 アルドベリク 
俺は、そこまでお人好しではない。


  イザーク  
よせ! アルドベリク。

 焦げた臭いが辺りに立ち込めた。
 マクシエルから逸れた火球が地面を焼く臭いだった。
 間一髪、やってきたイザークが我か身を顧みずアルドベリクを制止したのだ。
 アルドベリクの腕を取る、イザークの手もまた焼かれている。
 それでも彼はその手を離さなかった。

  エストラ  
あれは……アルドベリクか?

それは彼を知っている者なら、誰もが口に出した言葉だろう。

  ミカエラ  
始まったようですね。

少し遅れて、その場にやってきたミカエラは、そう言った。

 アルドベリク 
訳のわからんことを言うな。
……お前たちは何を知っている。

イザークはちらりと、ミカエラを見た。

  ミカエラ  
私たちは………



  イザーク  
ルシエラがもうすぐ死に、
やがてお前もそれを追うように、命を失う。

  ミカエラ  
そして、あなた達が、それをもう何度も、
数えきれないほど、繰り返していることを。

 ミカエラは、確かにそう言った。
 その言葉は、それが持つ通りの意味として、使われていた。
 信じられないことだか、間違いなく。

story4 封魔級 決意の時


 ――これは何度目の出会いのなのだろうか?


 アルドベリク 
おい。顔を見せろ。



  ルシエラ  
あ、こんにちは。

 アルドベリク 
……なんだそれは?

  ルシエラ  
挨拶ですけど……?よくなかったですか?
囚われの身らしく、しくしくと泣いていた方か良かったですか?
そういうの、堅苦しくないですか?

私、自分のやりたいことは自分で決めますよ。
泣きたくなったら泣くし、笑いたかったら笑います。

 アルドベリク 
名は?

  ルシエラ  
ルシエラ・フオルですよ。
あなたのお名前聞いていませんけど?

 アルドベリク 
アルドベリクだ。

 ――そしてこれは、何度目の別れなのだろうか?


 アルドベリク 
そういえばお前、なぜ魔界に来た?
自分で魔界に来たのか。
それとも魔界に来ざるを得なかったのか?

  ルシエラ  
内緒です。

 アルドベリク 
……答えは帰って来てから聞くとしよう。


 ――その答えを、俺はまだ聞いていない。


 ***


 アルドベリクは何を考えていたのだろうか?
 彼はじっと壁に背をもたせかけて、ミカエラたちの話を聞いていた。

 君はただ、その様子を見ていた。

 イザークの話は、クエス=アリアスの感覚からすると少し荒唐無稽に聞こえた。
 アルドベリクとルシエラは、あらゆる次元で、存在を変えながら、出会い――
 運命に引き離されるように、「死」という別れを繰り返しているらしい。



  エストラ  
なぜ、そんなことか分かる。
誰がそんなことを言いだしたのだ。

  イザーク  
時界の監視者が、妙な現象を発見したのが最初だ。

  ミカエラ  
世界の時間の流れからズレた、ひとつの小さな時間の流れがある、と。
それを先代聖王のイアデルが調査しました。そこでわかったのです。

アルドベリクとルシエラが、延々とふたりだけで小さな時間の流れを繰り返していることが……。
神界のどこか、神界ですらないどこか、あらゆるところで、その小さな時間の流れは、繰り返されていた。
名を変え、姿を変え、あらゆる形で、彼らは同じ時間を繰り返していた。

 アルドベリク 
何のためだ? 何のために、俺達はそんなことを繰り返している。

  ミカエラ  
ひとつの推測として、あなたたちかともに生きるという〈可能性〉を捨てたからではないか。
と、イアデルは言っていました。あらゆる〈可能性〉を繰り返していますが――

ただひとつ、ふたりかともに生きるという〈可能性〉を捨てた。
その報われない想いは、永遠に、未練を残しながら繰り返されている。
そしていま、彼らの循環は、再びひとつの終わりへと向かっている。
いつも通りの繰り返しを行う為に。

  ミカエラ  
イアデルは、あなた達が、この神界の存在として生まれ変わった時、ルシエラを保護しました。
彼女は秘密の存在として、長く匿われてきました。

  クリネア  
だから、私も見たことがなかったんですか。

双方が出会わなければ、何も起こらない。少なくとも不毛な繰り返しを止められる。
そういう判断らしい。

そして、先代聖王のイアデルが崩御し、神界が7つの興界に分かれた、混乱の中ルシエラは逃げ出した。

  イザーク  
それを、俺が魔界で見つけた。
しばらくどうするか考えたが、結局会わせることにした。
ルシエラはきっとお前に会いに来たのだからな。

その言葉に、アルドベリクは少しだけ反応した。

  イザーク  
それに、ひとつだけ方法かあるからだ。
お前達の運命を切り開く方法が。

 アルドベリク 
それはなんだ?

  ミカエラ  
あなた達が〈可能性〉を捨てたのなら、〈可能性〉を拾いに行けばいいのです。
〈回廊〉を開きます。そこにはあらゆる〈可能性〉があります。
調和を重んじるイアデルは、その方法を避けてきました。
ですが、私は聖王の名において、それを行おうと思います。もちろん……。

 アルドベリク 
俺次第か。

 そこまで話し終わって、エストラが口を開いた。

  エストラ  
馬鹿げた話だな!そんな話、誰か信じる。
アルドベリク、いくらお前でも分かるだろ。
これがデタラメだということが!

見ろ、周りは皆、天界の奴らばかりだ!
イザークも含めてな!

アルドベリク。お前がかつてどんな存在であったとしても、いまのお前は魔族だ!
……魔族であることを示せ。




アルドベリクは黙って、寝台の上に寝ているルシエラの元に歩いていった。
意識を失っていたはずの、ルシエラは足音が近づくと、薄く眼を開けた。

  クリネア  
あ、意識を取り戻しました。

アルドベリクがその顔を覗き込むと、彼女は言った。

  ルシエラ  
アルさんでも……そんな顔するんですね。

それだけ言うと彼女はまた意識を失った。


  ミカエラ  
アルドベリク、どうしますか?

 アルドベリク 
そんな話を信じろというのか? 出来るわけないだろう。

  ミカエラ  
そうですね………

  イザーク  
さすがに、そこまでお人好しではないか。

 アルドベリク 
勘違いするな。俺は行くぞ。……俺は行く。
何か理由が必要か? 俺は、そうは思わない。

  ミカエラ  
では、〈回廊〉に案内します。

 君はルシエラが言っていたことを思い出した。
 何にでも理由を求める心要はない。
 アルドベリクの言っていることは、少しだけルシエラに似ている。
 そんな気がした。

  エストラ  
…………。


 ***



 あらゆる〈可能性〉があるという〈回廊〉。
 そこは見たこともない光景が広がっていた。

 アルドベリク 
思っていたものとは違うな。

 アルドベリクの言う通りだった。言葉で説明されたものよりも、そこは歪だった。
 〈可能性〉があるというよりも、必要と不必要すら区別されないまま〈可能性〉が投げ出された。
 そんな場所のようだった。どちらかといえば、ゴミ溜めに様子が似ていた。

  ミカエラ  
ここは7異界の狭間、すべての〈可能性〉があります。
ただし、あるだけです。見つけ出すのは………


  ???   
至難の業ですよ。

 ミカエラの言葉を継いだのは、大人しそうな少年だった。しかし………
 彼の次の言葉は、驚くほど、粗暴なものだった。


 レイチェル  
だから、尻尾巻いて帰るなら今のうちだぜえ。

  ミカエラ  
彼はレイチェル。この〈回廊〉を管理する者です。
ああ見えますが、私達より長く生きています。

 アルドベリク 
ここに相応しい、混乱した奴だな。

 レイチェル  
おめえに言われたかねえな。お人好しの魔王なんて、訳の分からねえ奴にな。

 レイチェル  
あなたは何度もありえたかもしれない〈可能性〉を繰り返したことで、存在が混乱しているんだ。
それは、あなたの愛しい人も同じだよ。ずいぶん混乱した存在なんじゃないかな?

 レイチェル  
アルドベリク。たしか昔は、そんな名を名乗ってねえよな。

 レイチェル  
少なくとも、ここに自分の〈可能性〉を捨てに来た時はそんな名ではなかったね。

 アルドベリク 
それなら話は早い。捨てたものを返して貰いにきた。案内しろ。

 レイチェル  
うーん………その前に、まずは今ある〈可能性〉を捨てて来てほしかったね。

 レイフェルの視線は、君とアルドベリクの背後に注がれていた。

  エストラ  
アルドベリク、もうよせ。お前には魔族としてプライドはないのか。
天界の者を救うために、何をしようとしている! いや、それだけでないぞ!

 レイチェル  
あいつも、お前の〈可能性〉のひとつだ。残念ながら、取るに足らないものだけどなあ。

 アルドベリク 
エストラ、邪魔をするな。それ以上は言わない。

  エストラ  
わかった。ならば私も何も言うまい。魔族らしい方法で、決着をつけようじゃないか。

 エストラは、怒りも悲しみも見せずに、そう言った。
 ただ、魔族としての生き方を全うするだけの為に黒い羽を開いた。

  エストラ  
魔族なら、欲しいものは、奪い取るだけだ……。


BOSS エストラ

 ***


 ひとつの〈可能性〉を選んだ時、もうひとつの〈可能性〉が潰える。
 エストラが消耗しきった体を横たえているのを見て、君はそんなことを考えた。

 アルドベリク 
すまない、エストラ。

  エストラ  
勝ったくせに謝るとは……魔王の風上にも置けない奴だ。とっとと失せろ。

 アルドベリクは彼女の言葉に従うように、〈回廊〉の奥へと目を向けた。

  エストラ  
タダで、戻ってくるなよ。

 そしてそれは、もうひとつ別の〈可能性〉が生まれたということではないか。
 たぶんそれは間違いではない、と思った。

  ミカエラ  
私は、ここまでにします。聖王としてはここまでが限界です。

 あまり、バランスを崩すことはできない、ということだろう。

 レイチェル  
ラッキー!案内は少ないほうがありがてぇ。そこのお前はどうする?

  ウィズ   
どうするにゃ?

  ミカエラ  
イザークが言ってました。
もしあなた達がいなければ、いま私達がこうしている〈可能性〉も、なかったはずだ、と。
きっとあなた達がいたから、何かが変わりつつあるのです。

  ウィズ   
そこまで言われたら、行かないわけにはいかないにゃ。

 そうだね、と君は笑いながら同意した。

  ウィズ   
ほとんど、脅迫にゃ。

  ミカエラ  
すみません。

 レイチェル  
あの? 決まりましたか?

 アルドベリク 
ああ、決まった。

 君は、自分の決断が、ひとつの〈可能性〉の扉を叩いたように思った。
 そんな音が聞こえた気がしたのだ。


最終話 絶級 永劫と無限の終り


 レイチェル  
アルドベリク、このあたりにあなたの捨てたものかあるかもしれないね。

  ウィズ   
少し気になっていたんだけど、アルドベリクはなぜそんなことをしたにゃ。

 レイチェル  
そんなこと、俺が知るかよ。バカの考えることが分かるわけ無いだろ。

 ぞんざいにそう答えたレイフェル襟首を、アルドベリクが掴み上げた。

 レイチェル  
イタタ。乱暴は反対ですよ!

 アルドベリク 
まったく。都合のいい性格だな。


 何かが聞こえた。


???
ちょ、ちょっとお、まーた掃除当番さぼって、アンタいったい何様のつもり?

???
うるせえな。お前こそ、俺の、何様なんだよ。

???
な、何様って……馬鹿じゃないの!?


  ウィズ   
何の声にゃ?

 その声は、アルドベリクトとルシエラの声に少し似ていた。


???
アンタかい。俺に仕事を頼みたいってのは、ずいぶん高貴な身分なようで。

???
無暗に近づくな。貴様に頼みたいのは、仕事だけだ。それが終われば、どこへでも失せろ。

???
まあ、いいさ。俺だって金以外には興味はない。


 また、別の声が聞こえた。古い記憶のようにその声は君の耳に届いた。


 レイチェル  
んー。これは多分………


???
何か、言い訳はしないのですか?我が父の敵として、このまま斬られるつもりですか。

???
ないよ。

???
なら、私の許婚だった男としては、なにか………

???
どうか、お幸せに………


 レイチェル  
多分これは、これまでアルドベリクとルシエラが繰り返してきた〈可能性〉の声だろうね。

 レイチェル  
おめえらは、こんなことをずっと繰り返してきたんだよ。そのたびに、悲惨な末路にたどり着く。
とっても哀れな存在だよ。失礼な言い方だけど。

 突然、身の毛もよだつような声が、君の背筋を剌した。


???
うあああああ……!
ああ……ああああああ!



 その声を聞いて、誰もが顔をしかめた。

 レイチェル  
もしかすると、最初の〈可能性〉の声かも。
きっと〈とても良くないこと〉があったんだろう。

 レイチェル  
よくいるだろ。一番最初に貧乏くじをひく奴がさ。
だから、おめえらは自分たちの運命を閉じた。

 レイチェル  
そして永遠に終わらない関係を得たんだ。

 レイチェル  
最悪の結果から永遠に逃れ続ける関係だ。

 レイチェル  
それを幸せだと思う人もいるだろうね。
本当に、それを終わらせてしまって、後悔しないかい?

 沈黙の後、アルドベリクは口を聞いた。

 アルドベリク 
もし目の前で苦しんでいるあいつの為に、何もしようとしないのが、以前の俺だったのなら。
俺はそいつを殴りに行く。……それだけだ。

 永遠に終わらないもの、それはまるでまがい物だ、と君は思った。
 終りがあるから、終わらせないでいようと思える。と君はアルドベリクの言葉に付け加えた。

  ウィズ   
そうにゃ!

 レイチェル  
へっ! かっこつけやがって。


 ***



俺はそこまでお人好しではない………

 アルドベリク 
こいつは?

 その化け物は激しい魔力と、憎悪の感情を撒き散らしていた。

 レイチェル  
あらゆる〈可能性〉の中で、最強で、最悪の、あなたです。

 レイチェル  
最低の選択を、全部やってみたら出来た奴だな。

 レイチェル  
普通に考えれば、あなたが勝てるわけないんだよ。どうする?

  ウィズ   
それは、どこかの異界から、お人好しの魔法使いがやってこなかった場合じゃないかにゃ?

 レイチェル  
ケッ。ずりぃの。ま、今回はいいけどさ。

 アルドベリク 
いいのか?

 と、君に向かってアルドベリクは言った。君はただ……。
 もちろん、と答えた。

 アルドベリク 
お前は、俺以上のお人好しだな。

 そう言って、アルドベリクは少し笑った後、鋭い視線を目の前の化け物に向けた。


 アルドベリク 
遠慮はいらないだろう。お前は、俺なんだからな。


 ***

BOSS アルドベリク

 ***


  ウィズ   
やったにゃ!

 その化け物を倒すと、〈回廊〉は世界を閉ざすように、暗闇に呑まれた。

 レイチェル  
いやー、めでてー。めでてーな。でもよ。

 レイチェル  
勘違いしないでね。これはただの始まりだよ。永遠に終わらない関係の方が良かった。
そう思う時もきっとあるはずだけど………

 アルドベリク 
ああ、そんなものには、もう頼らない。

 レイチェル  
当たり前だ!さて、魔法使い!お前たちがここにいる〈可能性〉ももう終りだ。

 レイチェル  
とっとと失せやがれ、だよ。

 ***

 アルドベリクが神界の神殿に戻った時、
 青ざめた顔だったはずのルシエラか何事も無かったように、神殿の中を飛び回っていた。
 その光景は、何かが変わったことを、彼に教えてくれた。



  ルシエラ  
あ、アルさん!もー、一体どこに行っていたんですか?
目が覚めた時、いなかったから置いていかれたのかと、思っちゃいましたよ。
これからは勝手に出て行くのは禁止ですよ。あと、私を置いていくのも、もちろん禁止です。

 アルドベリク 
ああ。

  ルシエラ  
あれ?なんか素直ですね、今日は。

 アルドベリク 
ああ。

  ルシエラ  
ふふふ。ならもっと近くに来てください。

 アルドベリク 
ああ、わかった。

  ルシエラ  
もっとです。……もっと近くです……。
そうです。それでいいですよ。
……ところで、今まで、一体どこで何をしていたんですか?

 アルドベリクは少し微笑んでから、答えた。



 アルドベリク 
……内緒だ。

  ルシエラ  
ああ、ずるいー! それは私の得意技ですよ。
返して。返してくださーい!




エピローグ


  ウィズ   
どうしたにゃ?

 君は、自分のローブに空いた大きな穴から手を出してみた。

  ウィズ   
もうそれは買い換えなきゃいけないにゃ。
やれやれ、出費が増えるにゃ。

 君がローブを払うと、一枚の羽が落ちた。



  ウィズ   
きっとアルドベリクの羽にゃ。
せっかくだから、何かの記念にするにゃ。


君は、栞にでもしようか、と考えながら、窓辺に歩いていく。
窓辺に、もう一枚。今度は真っ自な羽が落ちていることに気づいた。
君はその羽を手に取ると、二枚を揃えて、読みかけの魔道書に挟んだ。






双翼のロストエデン - 完 -

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