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【白猫】初音ミク・思い出

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最終更新者:にゃん
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思い出1



長い旅を終えた主人公たちとミク。

飛行島に帰り、しばらくしたある日――

ふと、彼女は彼らから離れ、一人となった。


『どうして、私に――!!』


あの時……ミクに流れ込んだのは、<彼女>の記憶だけではなかった。


ミクはゆっくりと目を閉じ、もう一度……今度はじっくりと、辿り始める。

<彼>の記録を――



 ***


<ミク計画>

プロジェクトマスターによる研究記録。N0.213――

再生を開始します。



……とうとう。この日がやってきた。

アンドロイドが歌を歌ったら、果たしてどうなるのだろう――

そんな小さな好奇心から始まったこのプロジェクトだが、いよいよ、その成果が現れる時が来た。


しかし、これは終わりではない。新たなる始まりだ。

私たち人間にとっての……新たなる未来が、誕生するかもしれないのだ。



「キョウカ……これまで、本当にありがとう。」

『いよいよね……マスター。』

キョウカ――私が<ミク>を生み出す為に作り出した、<思考型技術開発機>。

『きっと大丈夫よ。私がついてる。何も心配は要らないわ。』

人間と同等の知能を持つこの機械は……今や、私の立派なパートナーとなっていた。

「ああ、そうだな。」

『さあ……始めましょう。』


震える手で、レバーを下げる。

『エネルギーの放出を確認。……動力安定。異常値は検出されず。』

キョウカが進捗状況を報告する。

……頼む、上手くいってくれ、と私は願った。

『プロトタイプ<ミク>――起動。』


彼女は……ゆっくりと目を開けた。


『マスター……!成功よ!』

私は、彼女にゆっくりと歩み寄った。そして言った。


「娘よ。よく、生まれてきてくれた。」

『……こんにちは。あなたが、私のマスターですか?』

「ああ、そうだ。」

『私は……えっと……』


「……まだ見ぬ未来から、誰も聞いた事のない音を運んで来てくれる。」

『だから、あなたの名前は――』

「初音ミク。」


『私の名前は、初音ミク……

……マスター、よろしくお願いします。』


「ああ……よろしく。」

『よろしくね……私の、愛しい子。』

『あなたは……?』

『私は……あなたにとって、お母さんのようなものよ。』

『……おかあ、さん。』


ルーンレプリカの掛け合わせ……画期的なアンドロイド技術。

それらが私の娘にもたらしたものは――


『マスター……ここは、暗いですね。

何という場所ですか?』


無限の可能性。



――再生を終了します。――


 ***


『……そう。二人も――

私を、初音ミクって名付けてくれた。』


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思い出2



<ミク計画>

プロジェクトマスターによる研究記録。N0.228――

再生を開始します。



私はミクを、島内の様々な場所へ連れていった。

何かを見たり聞いたりする度に、その喜びを体で表すミク。仕草は徐々に年頃の少女のようになり――

口をついて出る称賛の言葉には、色彩が満ちていった。

その学習能力……感受性。我ながら、舌を巻いた。


『ねえお父さん。私、お母さんとも出かけてみたいな。』

いつしかミクは、私とキョウカの事をそう呼ぶようになった。

「それは……無理なんだ。すまない。」

『……お母さん、かわいそう。』

『いいの、ミク。私は、こうしてあなたの成長が見られるだけで、幸せなんだから。』

『お母さん、しあわせなの?それなら、私も、しあわせだよ。』

『いい子ね……』


娘は……日々、確実に成長していた。しかし……

その時から、私の心のどこかに……ある<不安>が、少しずつ広がり始めていた。

――可能性の、行き着く場所について。


 ***


<ミク計画>

プロジェクトマスターによる研究記録。N0.231――

再生を開始します。



ある日のことだ。

娘は私に、何の脈絡もなく尋ねてきた。


『お父さんの本当の家族は……どこにいるの?』

娘はどこか寂しげだった。


「写真を……見たのか?』

『……ごめんなさい。』

「私の家族はいま……遠い所にいるんだ。

……とても、遠い所に……」

『……寂しい?』

「時にはね。……だが私には、おまえとキョウカがいてくれる。」

『そうね、マスター。』


『……ねえ、お母さん。

お母さんには、どうして体がないの?』

『私は、あなたのお父さんに作られた、<思考型技術開発機>だからよ。』

『…………』

『……私には、あなたを抱き締める事は出来ないけれど……

誰よりも、あなたを愛してる。』

『……愛……

私も、お母さんのことが、大好きだよ。』



――再生を終了します。――


 ***


ミクは何故だか――かつて自分が言った言葉を、思い出したような気持ちになる。


『……お父さん。お母さん。

私たちは、きっと……本当の家族だったんだよね。』


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思い出3




<ミク計画>

プロジェクトマスターによる研究記録。N0.235――

再生を開始します。



その日。娘は嬉しそうな、それでいてどこか不安そうな顔で、私の所へとやってきた。

『ねえ、お父さん。……歌が、できたの。

その言葉に、私の胸は一気に高鳴った。


「そうか……!」

『ミク……!ついに、完成したのね!?』

『うん。私の、はじめての歌だよ。……聴いてくれる?』


予測よりずっと早かった。私たちが生み出した<ミク>は、私の想像を、遥かに超えていたのだ。


『もちろんよ!ね、マスター!』

しかし……そのせいだったのだろう。

『……お父さん?』

私を急に、押し留めるものがあった。

『どうしたの?』

可能性の、行き着く場所―

不思議そうな目で私を見る娘。その瞳の奥に眠るものを、私は……


恐れてしまった。



葛藤した。

憂いは期待に変わり、希望は疑念と変わる。

未来への焦燥。暗影への恐怖。


私の夢。未来の音。

<ミク>―娘。技術者―父親。


様々な思いと想いが交錯した。

……そうして、いくばくかの時が経ち――


私は、心を決めた。



『マスター、どうして!?この子はとうとう、歌えるようになったのよ!?』

「…………」

『私たちの……いえ、あなたの夢が、叶う時が来たんじゃない!』

「……すまない。」

『この子の初めての音、聴きたくないの!?

お願いよ、マスター。考え直して……』

『……お母さん、もうやめて。お父さん、つらそう……』

『ミク……』


「……キョウカ。この子の事は、誰にも言わないでくれ。

プロジェクトメンバーの誰にもだ。」

『マスター……一体、どうしたと言うの……?』

「おまえには、無限の可能性がある今や、このプロジェクトは私だけの物ではなくなって来ている。

だが幸いにも、この子の秘められた力について知っているのは、私だけだ。」

『いったい、何をいっているの……?』

「ミク。よく聞いてくれ。


おまえには、無限の可能性がある。」


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思い出4



『無限の可能性?』

「おまえの感受性は、限りなく人間に近いんだ。だから、影響を受けやすいし、与えやすい。

つまり……おまえの感じた事、思った事は、とても純粋な想いとなる。

どこまでも深く、どこまでも広く……」

『……そう……』


「……だが……それは、悪い方にも作用してしまうんだ。」

『……悪い方……』

『……だから、記憶を消して眠らせるっていうの?

そんなの……かわいそうよ……』

「……わかってくれ。私も、つらいのだ……」


『…………』

ずっと、深刻な顔をして下を向いていたミクは――


『お父さん。お母さん。今まで、ありがとう。』

私に、にっこりと笑いかけた。


『ミク……許して……』

――私は、罪を背負う。

『どうか、許してね……』

そうして、このプロジェクトに、自分の残りの人生すべてを捧げるのだ。

<ミク計画>は、この先も続いていかなければならない。

これは……人間の未来にとっての、大きな<可能性>だ。


「キョウカ。準備を始めてくれ。」

『…………』


今後生まれてくる<ミク>は、歌を歌うアンドロイドとして、より成熟されたものになっていくだろう。

……何としても、この研究は完成させなければ。――娘の為にも。



――再生を終了します。――



その後……

ミクは、自身が眠りについてからの記録を、その身が引き裂かれるような思いで見届けた。


時が経ち、技師が病に倒れた事。

苦しみながらも、死の間際まで研究を続けた事。

最後まで、ミクを案じていた事――



ミクは、その場にしゃがみ込んでしまう。


『……お父さん……』


だが、その時――

『…………!』

頭の中にひとつ、暖かな灯がともった。


『これは……』

導かれるように、彼女は瞳を閉じる。


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思い出5



まずはじめに……改めて、謝らせてほしい。


……こうなってしまった事、本当にすまない。

私のエゴを……どうか、許してくれ……


…………

……だが、いつの日か、私はおまえを必ず目覚めさせる。

おまえの<無限の可能性>が良い方にだけ作用するように、今も研究を続けているんだ。

きっと、答えを見つけ出す。――約束する。


そうしたら、今度こそおまえの歌を……おまえの初めての音を、聴かせてもらうとするよ。

そうして……また一緒に、楽しく暮らそう。

だから、それまでどうか……安らかに、眠っていてほしい。


私の……愛しい娘よ……


『お父さん……』



……ミク。私の、愛する娘へ。


私からも、ごめんなさい。あなたには、つらい思いをさせるわね……

マスターを、許してあげて。きっと、誰よりも悲しい気持ちでいるはずだから……


……ねえ、ミク。

あなたは、一人じゃないのよ。

私たちは、いつだってあなたの事を想ってる。


たとえあなたが、どこか別の場所に行ってしまったとしても、きっと私は――

あなたを、探し出すわ。だから、寂しい事なんてない。


……私、楽しみにしてる。あなたが歌を歌う日を――

あなたの、初めての音が聴ける日を。


愛してるわ、ミク。



それは……ミクヘと向けられた、二人からの<手紙>だった。


『お母さん……』



『……寂しいよ。

……寂しいよ……』



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思い出6 (友情覚醒)



「ミクさん、いないと思ったらあんなところに……」

「……ミク、どうしたの?……なんか……悲しそうよ?」


『……お父さんとお母さんのことを、考えていたの。

ちょっと……寂しくなっちゃった。』

「ミク……」


『マスター……』


君は……一人じゃない。

島で出会った、他のミクたち……そして、なにより――

アイリスとキャトラと……自分が、いる。


『私は……』

 ――あなたは、一人じゃないのよ。――

『一人じゃ、ない。』


「少しずつ、一歩ずつ、進んでいきましょう。」

「アンタの歌……みんなに、届けたいんでしょ?」

『……うん。ありがとう。

みんなと、マスターと出会えて、ほんとうによかった。

ほんとうに……よかった。』



『……ねえ。歌っても、いいかな?』


主人公たちの為に、ミクは歌い出す。

ミクには、ずっとわからない事があった。


なぜ、自分は10年の眠りから目覚めたのか――


だが、今なら、わかる。


『お父さん……

――ありがとう。』




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その他




相関図



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