伝説再臨! Story

 
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黒猫ストーリー




story1 大魔道士はゆく


 アリエッタ・トワは超天才である。

 幼少の頃より様々な魔法学を修め、
 今に至るまでに多くの魔法を編み出した。

 この世界における魔法大系を根底から覆し、
 全て過去のものにした。

 魔法学園を飛び級で卒業し、
 “超越の大災害”と呼ばれる彼女は今、
 山を眺めている。


アリエッタ
……また吹き飛ばしてしまった。

 天高く突き上げるよう並んでいた山――
 “醜悪な山脈”と呼ばれていたところだ。

 見事に……そう、ものの見事に。

 アリエッタ・トワが吹き飛ばしてしまった。

アリエッタ
やってしまった……。

 “稀代の大魔道士”、“魔道を極めし者”、
 “慈悲なき暴力”、“大魔道怪獣”……。

 様々な呼び名を持つアリエッタとはいえ、
 やはり“えらい人”に怒られることは避けたい。

 今年に入って23件。
 この山を吹き飛ばした案件を含めて24件。

 アリエッタの問題行動には、
 魔道士協会も頭を悩ませている。



アリエッタ
…………。
まあ、いっか。今月は少ないほう。少ないほう。

 ――そう、この無駄なポジティブさに


 人々の生活に役立つ魔法や、
 魔道障壁という画期的な技術の開発。

 魔法の歴史を数百年
 進めたと言われるほどの才を持ち、
 全世界からの羨望を集める大魔道士だ。

 そんな大魔道士であるアリエッタが、
 しかし畏怖の対象ともされるのは、
 この問題行動のせいである。 


アリエッタ
なくなったものはしょうがない。

あんなところに山なんてあるのが悪い。
そうだ。山が悪い。


 体内に蓄積される魔法というものが、どうしても
 溢れてきてしまう。

 抑えられない熱い思いなのだ。止めどなく魔法を
 追求したい気持ちなのだ。

 だからアリエッタは止まれない。

 否――止まってはいけないのだ。





 エリス=マギア・シャルムは
 封印の魔法を使う名門の生まれである。

 彼女の祖父が魔杖の封印に失敗して以降、
 国を追い出され、没落したと言われているが。

 エリスが生まれてからは、
 その汚名もそそがれつつある。

 彼女は凶悪な魔物、憎悪や怨嗟、
 そして魔道士を縛りつけることができる、
 特別に強力な魔法を扱えた。

 魔物や魔道士の魔力を奪い、
 封印の罠に閉じ込めてしまうなど、
 秘めたる力は比類なきものだ。

 そしてそれは、
 魔道士協会が喉から手が出るほど
 欲しがった力であった。

 あの怪獣――
 アリエッタ・トワを押さえつけるために。



 エリス 
あのね、アリエッタ。

アリエッタ
なに?

 エリス 
あなたは馬鹿――じゃなくて、
世間知らずだから知らないかもしれないけど。

アリエッタ
うん。

 エリス 
地形っていうのは、
人為的に変えてはいけないのよ。

アリエッタ
わたし、そんなことしてないよ。

 エリス 
悪びれずなに嘘ついてるのよ。
してるでしょ。すごくしてるでしょ。
見なさいよ。
山がなだらかな丘になっているじゃない。
何をどうしたらこうなるのよ。

アリエッタ
わはは……ぎゃあ!

 匣から現れた異形の何かが、
 アリエッタをとらえた。

アリエッタ
ま、待って……何もしてない……
ほんとに……アリエッタ嘘つかない………

 エリス 
嘘もつくし、隠そうともするじゃない。

アリエッタ
……たまにだよ。

 エリス 
いい?アリエッタ。普通のいい子はね。
たまにでも嘘はつかないし、隠蔽しないの。
それとね、アリエッタ。あなた嘘をつくとき、
髪の毛を指でくるくるする癖があるわよ。

アリエッタ
ええ!?

 エリス 
はい、嘘をついた罰ね。食べられなさい。

アリエッタ
ぬぎゃあ!

 つい先日、
 人に取り憑いた魔杖を引き剥がしたその異形は、
 人間災害を相手に怯むことなく噛みついた。

 シャルム家を恐れた魔物が、
 魔道士と一定の距離を保つかわりに差し出した贄
 ――と言われている。

 醜悪な容貌。匣のサイズにそぐわない巨躯。
 総てを喰らい尽くす凶暴さ。
 どれをとっても、少女が持つには不相応だ。

アリエッタ
はあ……気持ちが落ちていく。

 エリス 
仕方ないじゃない。
あなたの馬鹿げた魔力に正面から挑むなんて、
正気の沙汰じゃないもの。

 この異形は暴走少女を抑えるには、
 うってつけというわけである。

 アリエッタは、一所にとどまれない性分だ。

 高い山々を越えて、小さな船で海を渡り、
 とにかく様々な国に出現した。

 不意の災害が襲ってきたと恐れる人々もいたが、
 概ね好意的に受け入れてもらえていた。

 アリエッタの功績は世界に轟くものであり、
 否定する者はほとんどいないということだ。

 暴走の結果として、
 人々に役立つものとなったことは……
 ほぼ全ての人が知らないことではあるが。

アリエッタ
さ、次いこー!

 エリス 
次って……いったいどこに行くつもりなのよ。

アリエッタ
都会に行きたいなー。王都とか。そーゆーとこ。

 エリス 
……王都、ね。
勝手気ままに生きるのはいいけれど、
魔道士協会からの呼び出しはどうするの?
いつも無視しているでしょう。
怒られるのは私なのよ。
いい?怒られるのは私なのよ?

アリエッタ
あはは!
あいたあっ!

 エリス 
協会からの呼び出しを無視し続ければ、
魔道士の資格を剥奪されるかもしれないのよ。

アリエッタ
そうなったらしょーがない!
エリス養ってね。

 エリス 
嫌よ。どうして私が。

アリエッタ
あはは! お金どっかにいっちゃったから!

 エリスは大きくため息をついた後で、
 かぶりを振った。

 如何に様々な功績を残そうと、
 アリエッタはまだ子どもである。

 何よりこの性格のせいで、
 生活スタイルはめちゃくちゃだ。

 エリスには、この大魔道士のお目付け役のほか、
 教育という重要な仕事があった。

 立派な大人として、そして何よりも……
 “問題を起こさない”大魔道士として教育する、
 重大かつ世界のための仕事が――。 

アリエッタ
わはは!

 無論、それが何一つ上手くいっていないことは、
 もはや報告するまでもない。

 エリス 
それで、どうして王都に行きたいの?

アリエッタ
ソフィが“王都はいいぞ"って言ってたよ。

 エリス 
あの子、そんな口調だったかしら……。
……っていうか、
ソフィがいた王都は海の向こうよ。

 王都という言葉だけで、
 近場の王都を探そうとするのは
 アリエッタらしいともいえる。

アリエッタ
人が多いと楽しいだろうなー。
やっぱりそーゆーのがいいね。
行ってくるよ、わたし。

 エリス 
まず今いる場所を把握しておきなさい。
森を抜けて、あなたが吹き飛ばした山を越えて、
それでようやく王都よ。それでも行くの?

アリエッタ
行くー!
やっぱり栄えてる街じゃないと。
気分がねー、乗らないもんねー。

 エリス 
あなたの問題は神出鬼没ってところね……
魔道士協会も酷く頭を悩ませているわ。

あなたひとりのために、
さらに多くの魔道士をつけるべきか
会議が行われてるのよ。


 アリエッタは楽しげに笑いながら
 先へ先へと進んでいく。

 あらゆる道理をもってしても、
 縛り付けることのできない少女。

 これはその少女が、奮闘するお話。


story2 ある王都での噂


 “街の向こうで怪物が暴れているらしい"

 “凶暴で手をつけられないそうだ"
 “それか本当なら、この街もそろそろやばい"

 ようやく街に辿り着いて、
 宿を探しているとそんな言葉が飛び込んできた。

 どうやら凶暴な魔物が街の近くに現れ、
 暴れているということらしい。


 エリス 
アリエッタ。ちょっと来なさい。

アリエッタ
ええっ! わたし、わた、わたしじゃないよ!
ほ、ほほほんとだよ!

 エリス 
動揺しすぎよ……。

 エリスはアリエッタの挙動を注意して見てみたが
 どうやら嘘はついていないらしい。

 実際、アリエッタがここを訪れたのは
 初めてのことだった。

アリエッタ
だいたいわたし、
怪物じゃないし凶暴でもないもん。

 エリス 
…………。
そうね。うん、そうね。

アリエッタ
でもそっかー。怪物かー。ふーん。




 ――例えばの話だが。
 正義感の強いソフィやリルムであれば、
 そんな怪物に憤っていただろう。


 レナであれば、“腕試しができる"と
 喜々として向かっていただろう。

 しかし――。



アリエッタ
大変だね~。

 アリエッタは、興味がなさそうに歩き出した。

アリエッタ
それでね、わたし、
ここに来たら食べてみたいものがあって――

 エリス 
……魔物、いるみたいだけど?

アリエッタ
あはは、怖いね~。

 エリス 
それだけ? 倒さなくていいの?

アリエッタ
え? どうして?

 エリス 
このままだったら襲ってくるわよ? 魔物。

アリエッタ
魔物にも主義主張があるよ。
何でもかんでも力でねじ伏せるなんて、
人間のエゴだよ、エゴ。

 エリス 
……どの口が言うのよ。


 ***


 夜も更けた頃。
 まだ賑わいを見せる街中は、
 魔物の話で持ちきりだった。

 日く“山をも越える大男”――。
 日く“海をも飲み込む怪物”――。
 日く“アリエッタ・トワの襲来”――。

 どうやらまだこの王都には着ていないようだが、
 それも時間の問題だろうという話だ。


アリエッタ
あのね、魚のね、尾びれを
スッととる魔法を開発したんだけど。

 エリス 
そんなほかに使い道のない魔法を……。

アリエッタ
魔道士協会に申請しよーっと!

 エリス 
待ちなさい、アリエッタ。
あなた、申請するっていう心がけはいいけれど、
やれ靴紐が解けない魔法だの、
やれ踏み込む足を限界まで伸ばせる魔法だの……。
どこで使うのよ! どのタイミングの魔法!?
最近、そんなのばかり申請するから、
協会が仕事に追われてるのよ!

いい?アリエッタ。
尾びれじゃなくて骨にしなさい、骨に。
骨だけスッととれたら、みんな喜ぶわ。骨よ骨。

アリエッタ
骨なー、骨はなー……。

 アリエッタは空を仰ぎ見た。

アリエッタ
魚の骨を自分の手でよけるのが、
醍醐味なんじゃないかな………

 エリス 
なにもっともらしいこと言ってるのよ。

 エリスが杖を振り下ろして、嘆息した。
 アリエッタといることで、
 溜め息の回数は増えたかもしれない。

 アリエッタといることは、
 エリスが望んだことではあったが……。

 エリス 
そういえばアリエッタ。あなた、本当にいいの?

アリエッタ
なにが?

 エリス 
魔物よ。倒さないの?

アリエッタ
うーん……。

 アリエッタは自由気ままな子である。
 気分が乗らなければ魔法を使うことすらない。
 貴重な才能ではあるが……
 やる気にさせるのが非常に難しい。

 エリス 
だいたいあなた、ここに何をしに来たのよ……
用もないのに転々とするから、
協会も居場所を把握できなくて困っているのよ?

アリエッタ
あ、ええっと……あのー、うーんと……気分?

 アリエッタが髪の毛を指に絡ませながら、
 そう答えた。

 エリス 
…………。

アリエッタ
あ、あとで魔物見に行ってみるよ!
うん! それがいい!

 エリス 
はぁ、しょうがない子ね……。

せめてもう少し、やる気を出してくれれば………
もっとアリエッタは世界に認められるだろうに。
エリスはそう考えてしまうのだった。


 ***


アリエッタは、辺境にある農村の生まれだった。

農業を営んでいた両親は、
魔法の力で仕事をしていたものの、
大した魔力は有していなかった。

姉が3人、妹が2人いるが、彼女たちもまた
魔道士になれるだけの魔力はない。

アリエッタは、何故か生まれた頃から
膨大な力を持っていた。

両親はほかの兄弟同様、
アリエッタにたくさんの愛を注いだ。

彼女が特別な人間であること、
いずれ魔道士として世界に
名を轟かせるであろうという期待……。

そのとおり、アリエッタは8歳の頃に
大国の魔法学園に入学し、
わずか2年足らずで飛び級での卒業を果たした。

齢10に満たない頃には、
もう彼女は大魔道士として
世界に知られる存在であった。

それは、アリエッタの才能と魔力を見抜き、
のびのびと育てていった両親のおかげだろう。


アリエッタ
はー、びっくりした。

 エリス 
どうして魔物を追い払うだけなのに
地面に大穴ができるのよ………

 ――のびのびと育ちすぎてしまった。

アリエッタ
わはは! 間違えた!

 エリス 
よく聞きなさい、アリエッタ。
ほら、あそこに大きな月があるでしょう?

アリエッタ
満月だね!

 エリス 
月にちょっと見える黒い影、わかる?

アリエッタ
うん!

 エリス 
実際にどうかはともかく、
へこんでいるように見えるわよね。
あれね、たびたび地形を変えるほどの魔法を
使うアリエッタがやったんじゃないか?
って言う人がいるのよ。

アリエッタ
あはは! まさかー!
いくらわたしでも、そんな……ことは……。

…………。

……あれ?犯人はわたしか?

 エリス 
そんなわけないじゃない!
あなたの仕業なら、今ごろ捕まってるわよ!
私が言いたいのはね、
あなたは羨望を集める魔道士だけれど、
それと同等以上に恐れられているってこと。

 結局、凶暴だと言われていた魔物は
 ふたりが追い払った。

 群れをなして暴れていただけで、
 アリエッタとエリスにかかれば、
 さほど問題にもならなかった。

アリエッタ
泊まる場所探さなきゃ!

 エリス 
……あなた、お金ないって言ってたじゃない。

アリエッタ
野宿も辞さない構えだね。本が枕になるよ。

 エリス 
……わかったわよ。
私か出すから宿を探しましょう。

アリエッタ
おお、持つべきものは友だちだね!

 エリス 
調子がいいんだから……。

最終話 大切な友人へ


 エリスが王都での仕事をもらいに行く、
 と言って出たタイミングで、
 アリエッタもまた外に出ていた。

 知り合ってから、だいたい2年ほど経った。

 よくよく考えてみれば、アリエッタは
 エリスの誕生日を祝ったことがない。

 魔道士の杖を製造することで有名な王都で、
 アリエッタはエリスの杖を買おうと考えていた。

 エリスが使うシャルム家に伝わる鍵型の杖――
 匣の封印を解くために必要なものでもあった。

 しかしどうだろう。

 エリスはとても貧乏だ。
 収入の大半を実家に送り、
 必要最低限のものだけを買う。

 だから杖も毎日磨き、
 メンテナンスも自分で行っている。

 立場上、
 そこそこの実入りがあるにもかかわらず……。

 だがこの王都なら……。

 そう、この王都で代用の杖を手に入れれば、
 大切な杖をメンテナンスに出せるのだ。

 ここに滞在する数日中に点検が
 終わることも確認済みである。

 あとは代用となる杖。


 貧乏ではあるが、穀然としていて
 高貴な雰囲気が漂うエリスに似合う、
 最高の杖だ――。


アリエッタ
杖かー……
わたしのはお母さんにもらったやつだからなー。

 微小の魔力しか込められていない、
 アリエッタにとっては
 言ってしまえば役に立たない杖だ。

 それどころかアリエッタは魔法を使うのに、
 杖や本を必要としないのだが――

 それはまた別の話。

アリエッタ
やっぱり高いやつがいいのかなー。

綺麗なやつかなー、
でも高いやつのほうがよさげだなー。

 エリスに嘘をついたが、
 そのお金だけは持っている。

 だがこういうことの知識は、全くない。


アリエッタ
やっぱりこういうのは感覚だ!
いちばんいいと思ったのを買おう!

善は急げだね!


 ***



アリエッタ
買ってしまった。

杖。

買ってしまった。

 綺麗に包装された杖を両手で抱えながら、
 アリエッタは店を出た。

 決して安い買い物ではなかったが、
 彼女自身意外と溝足していた。


アリエッタ
これならエリスも喜ぶ気がする。

 何の確証もないというのに、
 そうだと信じて疑わない。

 そう。自分が間違いだと思わなければ、
 それは決して過ちにも失敗にもならないのだ。

 暴走少女――アリエッタは、
 だから間違えたことがない。

アリエッタ
あとはいつ渡すかだなー……
やっぱりこういうのってタイミングだよねー。

うーん……。

 そうして悩みながら歩いていると、
 ふと地鳴りが響き渡った。

アリエッタ
タイミングなー……どうしようかなー……。




 魔道障壁をも乗り越え、
 訪れた巨大な魔物。

 グルルルル……と唸り声を上げながら、
 人々の住まう建物を踏み潰していく。

 恐怖に怯え漏れる声や、
 竦み上がり、振り絞るように出た悲鳴が伝播し、
 濁流のような人の波を作り上げた。

 アリエッタの進む道とは逆方向に、
 どんどんと流れていく。

アリエッタ
寝てる時にそっと置いておこうかなー。
それがいいかもしれない。

 そして。

 轟音とともに、手のひら大の魔法の塊が
 アリエッタの元へ飛んできて――

 バキッ、と手元で嫌な音が響いた。


アリエッタ
あ。


大きな魔物
あ。

アリエッタ
…………。

わたしの杖、折れたけど。

大きな魔物
折れ……ましたね。すみません。

アリエッタ
……さっき買ったばっかりの杖。

大きな魔物
考えてみてください。
私がいるのに向かってきたのはそちらですよね。
だいたいあなた人間の分際でクソ生意気ですよ。

あ、いや、ちょっと待ってください……
先日私の仲間を追い払ったのはあなたですね。
特徴が一致してます。

そうだ。だとしたら私が謝る必要ないですよね。
憎き仲間の仇ですもんね。返してください。
私の謝罪を返してください。

いや、もちろん暴れてたのは悪いですよ。
でもね戦いの末に肉離れですよ、私の仲間が。
だから復讐戦とばかりに乗り込んできたんです。

アリエッタ
わたしの杖ッ!!
折れた! わたしが買った杖ッ!!

 アリエッタが秘める極大の魔力が爆発する。

 魔道障壁という魔力や魔法を吸収する“壁”が
 まるで怯えるように振動している――
 それは巨大な魔物にも理解できた。

 ……理解できてしまった。


大きな魔物
え、うそ……待って。ちょっと待って。
聞いてない。そんなの私聞いてない。
落ち着こ? ね? 落ち着こ?

 己よりも強大な魔力、
 あるいは凶暴性を秘めている“何かが”
 存在することを――この魔物はたった今知った。

大きな魔物
ええええええ、なんかでかくなってない!?
目線、私とばっちりあってない――!?


アリエッタ
くううぅぅぅらあああああええぇぇぇッ!!



 ***




 エリス 
言い訳があるなら聞くけど。

アリエッタ
あの! えっと……その……。

 アリエッタは何かを言いかけて、口をつぐんだ。

 更地である。

 街の外れであったことが幸いして、
 建物自体は壊れていない。

 魔法によって舗装された道路は吹き飛んだ。

 打ち捨てられていた瓦磯の山は消し飛んだ。

 何かに扶られたように出来上がった凹凸。

 被害と言えばそれぐらいである。

 エリス 
はぁ……あのね、アリエッタ……
私もそうガミガミ言いたくないんだけど。

 はた、とエリスはアリエッタが
 背中に隠している何かに気づく。

 エリス 
それ、何?

アリエッタ
えっ。

 エリス 
……怪しいわね。

アリエッタ
ただのゴミだよ! 落ちてたの! あはは!

 アリエッタは髪を指に絡ませながら、
 声を上げて笑う。

 隙を見て、エリスはその奥を覗き込む。
 リボンで包装されてはいたが、間違いなく杖だ。

 エリス 
杖? アリエッタ、こんなの買ったの?

アリエッタ
えっとー、わたしも使おうと思って!

 エリス 
……魔法の使い方と違って、
ほんと嘘をつくのが下手ね。

 アリエッタが自分で使うために買ったものを、
 こんな丁寧に包装するわけがない。

 エリスはそれを見抜いていた。

 エリス 
先のほうか折れてるじゃない。

アリエッタ
あはは! 踏んづけちゃったー!
もう使えないねー!

 エリス 
そ。
だいたい先端が折れたといっても、
サイズがあなたに合わないわ。

アリエッタ
えっと……お、大きくなる予定があるから!
ほら、あの山みたいに……。

 エリス 
必要ないなら、私がもらってもいい?

アリエッタ
え?

 エリス 
もちろん、お金は払うわ。
使わないなんてもったいないじゃない。

アリエッタ
お金なんていらないけど、
でも折れちゃってるよ?

 エリス 
ええ、ここがないおかげで私にとって、
ちょうどいいサイズよ。

 エリスが杖を持ち替えて、
 アリエッタに見せつけた。

 エリス 
この杖も、そろそろ
しっかり見てもらわなきゃいけなかったしね。
ちょうどいいわ。

アリエッタ
ほんとにいいの?

 エリス 
何の偶然か、大魔道士様の気まぐれで
杖で有名な王都に来られたし。

アリエッタ
そっかー。それでいいのかー!

 エリス 
ええ。素敵な杖ね。ありがとう、アリエッタ。

アリエッタ
わはは!




 照れたように、
 それでいて嬉しそうにアリエッタが笑う。

 エリス 
そういえばこの国の王様が、
山がなくなったおかげで迂回せずに済む。
国民もみんな感謝しているって言っていたわよ。

アリエッタ
そっかそっかー! まったくしょうがないなー!

 そんなことを言って、
 アリエッタがエリスの腰をバシバシと叩いた。


 エリス 
あ、そうそう、アリエッタ。

アリエッタ
なぁに?

素敵なものをもらったあとで悪いんだけど……。

アリエッタ
うん。

 エリス 
ここ。こんな風にした罰ね。

アリエッタ
えっ。

 エリス 
ちゃんと受けてもらうわよ。ほら。

アリエッタ
あばばばばーー!


 その声が響き渡ったのは、魔物がいなくなり、
 落ち着きを取り戻そうとしている
 街中でのことだった。

 アリエッタの暴走も、エリスの苦悩も……
 当面は続きそうである。



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