ルルベル・バックストーリー

 
最終更新日時:
白猫ストーリー
黒猫ストーリー

 CV:
2017/00/00




story1


ルルベルは邪神である。
憎み合う魔族たちの衝動が魔界に産み落とした、根っからの邪神である。
だが、生まれたばかりゆえに、その精神はまだ無邪気であると言えた。
――どんな邪悪なことも、悪意なくこなせてしまうという意味で。

さて、邪神と言えば、人間と契約するのが習わしである。
ルルベルは、正直わくわくしていた。
どんな人間が契約を求めてくるだろうか。もちろん、ただ契約するのではつまらない。
気がつけば破滅の道を転がっているような感じがいい。

そんなルルベルの前に現れたのは――なんと、聖女だった。

「戦争を止めたいので、力をお賃しください」
「って、ちょっと! あたし、邪神なんですけど!?」
「大丈夫です。善行にのみ使いますので。神も許して下さるでしょう」

あっけらかんと告げる聖女に、ルルベルはちょっとムカッと来た。
舐められたら邪神は終わりだ。精いっぱい、居丈高に胸を張る。

「よかろう! 我が力を汝に貨そう!」

善意ではない。聖女を惑悪わし、欲望のままに力を使わせ墜落させるのが目的だった。
しかし、聖女はしたたかだった。ルルベルのささやきを無視し、淡々と目的のためだけに力を使っていく。
ルルベルはあれこれ策を巡らせるが、聖女はあっさりそれを見抜き、かわしてしまう。
ルルベルの策略を楽しんでいるフシさえあった。ルルベルはますますムキになった。

そんな時――1体の魔神が、聖女をかっさらって行った。
ルルベルの隙を突いて契約者を奪うなど、とてつもなく強大な魔神だ。
だが、そんなことはどうでもいい。
邪神たる自分の契的者を横から奪っていくなど、許せるものではない!

「待ってなさい! 邪神の名に懸けて、必ず取り返してやるっ!」



クリスマス


クリスマスイブの夜――
無垢なる邪神、ルルベルは降誕祭で賑わう街を上空から眺め乱舞していた。
「みんな浮かれちゃってもう! あれじゃ自分から騙してくれって言ってるようなもんじゃなーい♪」
欲望全開のルルベルは、舌なめずりしながら人混みを探し始めた。
「ど・こ・か・に、誘惑できそうな人間はいないかなーっと」
キョロキョロと見回していると、重そうな荷物を引きずって歩く少女がいるのに気付いた。
「おっ、あそこにカモになりそうな子がいるじゃない?」
物音も立てず舞い降りたルルベルは、少女の背後近づき声を掛けた。
「こんばんはお嬢さん」
今度の獲物には絶対に逃げられないようにしなきゃ――ルルベルは以前、契約を交わした獲物に逃げられた苦い経験を思い出した。
今回は同じ轍を踏まぬよう用心深く誘惑の言葉を囁くが、少女はお構いなしに早口でまくしたててくる。
「それよりこれ手伝ってほしいんだけど」
そう言って少女は持っていた大きな布袋を見せた。
「は? なにこれ?」
「今日は何の日だか知ってる?」
「私の、だぁぁい好きな、クリスマス、よねぇ?」
ひきつった笑顔を浮かべながら、わざとらしくルルベルは言う。
「そう! それで悪いんだけど、これを子供たちの家に配るの手伝ってほしいの」
「なんで私が?」
袋の中にはリボンの付けられたオモチャがたくさん入っているのが見える。
「本来ならサンタクロースの役目なんだけど、ぎっくり腰で動けなくなっちゃったらしくて……」
コルセットをしているサンタの三段腹を想像し、ルルベルは噴き出しそうになる。
「私の力じゃ、明け方までに配り終わりそうにないし……それに家には煙突から入らなきゃならないでしょ?」
「まあ、普通に考えるとそうよね。それで?」
「やってくれたら契約してあげてもいいんだけどな……無理だったら別の人に頼むからいいけど」
その言葉にルルベルのプライドが掻き立てられる。
「やるよ! やる……そういったことは私にしかできないからさ!」
こうして少女に上手く乗せられたルルベルは、プレゼントを配る羽目になってしまった。

東の空が白み始めオンドリが朝を告げ始めた頃、最後のプレゼントを配り終えたルルベルが煙突から顔を出した。
煤で真っ黒になったルルベルは、もはや誰であるかさえ判らない。
「汚れちゃったけど、かえってこっちの方が邪神らしくていいかもね?」
朝日に照らされるルルベルの姿に気付いた子供が、眠い目を擦りつつ叫び声を上げた。
「あ、サンタさんだ!」
否定する間もなく、ルルベルの周りはすぐに子供たちでいっぱいになってしまう。
「プレゼント運びにきたの?」「いつもありがとうサンタさん!」
「やったぁ、待ってたんだ、本物だよね! 来てくれてありがとう!」
子供達は邪神であるルルベルに、臆面もなく感謝を口にする。彼女にとって、それは初めての経験だった。
なにかにつけて失敗ばかりの彼女を暖かく迎えた子供達に、ルルベルははにかみながらこう言った。
「め、メリー、クリスマス……」
彼女の顔には、邪神らしからぬ魅力的な笑顔が溢れていた。



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