フリーレ・バックストーリー

 
最終更新日時:
白猫ストーリー
黒猫ストーリー

フリーレ・ギフト CV:
2014/08/15


澄み切った、透明な音がする。
冷えきった体に、その音は染み入るように響いた。

「あなたは、どこから迷い込んだの?」
どこまでも広がる氷の世界。赤い核の透けた氷精が舞う、美しくも虚しい世界で、彼女は誰とも知らない旅人に声をかけた。
……旅人は、自分に積もった雪を気にするでもなく、涙を流した。それはすぐに薄氷となって風に乗り、雪景の果てに消えていく。
「どうして、泣くの?」
彼女はそっと旅人に寄り添うと、その頭を抱きかかえた。
暖かく、柔らかな熱が、ゆっくりと凍った旅人の体と心を溶かしていく。
「どうして?」
針金のように凍てつき、ごわついた髪を、少女の指が撫でた。
この世界に降り続ける雪のように、彼女の優しさには限りがなかった。
少女の指先が旅人の髪をとかしていく度に、旅人の表情は絶望に満ちたものから、少しずつ穏やかなものへと変わっていく。
しかし、それを見ていた少女の表情は、対して段々と曇っていった。

「……あなたは、どうして笑っているの?」

そして、不思議そうに、首をかしげながら――

「……私は、こんなに哀しいのに」

口元だけを微笑ませて、彼女は言った。
旅人の頬に添えられた手が、急速に温度を失っていく。
後頭部に感じていた膝の柔らかさは、今すでに無い。
頭を撫でる細い指先も、今はつららのように冷たかった。

「あなたが、教えて?」

……旅人は、彼女の周りに広がる数多の氷と同様に色を失い、静かに佇むだけだった。
少女を慰めるように、氷精が周囲を舞う。
氷精の羽根が擦れ、澄み切った、透明な音がした。
冷えきった彼女の体に、その音は染み入るように響く。

「あなたが、教えてよ……」

少女は、帰ってくるはずのない問いを繰り返す。何度も、何度も。

彼女は――フリーレ・ギフトは、やがて小さな足跡を残して、旅人の元から去っていった。
自分とは違う、暖かく、優しい誰かを求めて。

「教えて……誰か……」

彼女は、今日も銀世界をさまよう。
あてもなく、ただ、ぬくもりを求めて。




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