ドルキマスⅢ Story4

 
最終更新日時:
白猫ストーリー
黒猫ストーリー

2017/00/00

目次

Story1
Story2
Story3
Story4
Story5
最終話


主な登場人物






story10 鉄機要塞へ


イグノビリウムの残党を掃討していたドルキマス軍の動きが、突如鈍りはじめた。
戦の行方を見守っていた対イグノビリウム連合諸国の指導者たちは、急に追撃の手を止めたディートリヒに疑問を抱く。

やがて、彼らはその理由を知る――ドルキマス軍の前線への補給が滞っているのだと。
その噂は、たちどころに諸国の間へと伝播していった。

ドルキマスと、ディートリヒの存在を快く思っていない者たち(特に連合諸国)は、いまが好機とばかりに軍を勤かす。

『イグノビリウムという脅威は去った
大陸の覇権を握るのは、ドルキマスではない。我らだ』

ふたたび、連合国の艦隊が編成される。彼らの次の敵は、イグノビリウムではない。
次の目標はドルキマス軍――
対イグノビリウム連合軍は、そのまま対ドルキマス連合軍へと看板をすげ替えた。
無数の敵意が、鉄の船に詰め込まれ、ドルキマスの空めがけて艦隊が出撃していった。

「1隻、2隻、3隻……うわ一。いちいち数えてられないくらい、たくさんいるねえ。」
哨戒用の小型偵察機に乗っているのは、ドルキマス要塞防衛軍の第18哨戒分隊に所属するベティナ・□ロフ。
「連合諸国が、まだあれだけの艦隊を持っていたなんてびっくりさねえ。いよいよドルキマスもやばいかもね。」
彼女は、連合の艦隊が迫っていることを無線で要塞司令部に報告すると、機首を返して要塞とは違う方角へと向かった。
「要塞には、わずかな兵しか残つていないし……。連合軍に攻め込まれたら、ひとたまりもないわね。」
ベティナは近くにいる味方の艦隊に、救援を求めるつもりだった。
たしか、第4艦隊がフェルゼン王国より、戻ってくるはず……。
「あ、あれは?ドルキマスの第4艦隊の先遣隊だ。おーい! おーい!」

王国暦545年。白い花が咲く月の10日。
第2次対ドルキマス連合軍が、イグノビリウム戦線で、ディートリヒの策謀によって捨て石にされた遺恨を晴らすべく。
ドルキマス領土内にある鉄機要塞目かけて侵攻を開始した。
ディートリヒと磨下のドルキマス空軍のほとんどは――
いまだフェルゼン王国とヴルカン公国の上空にて、イグノビリウムの残党との交戦の最中にあった。

「……ということがあったのよねえ。」
「そうなんだ。たいへんでしたわねー。」
「王国の指導者たちは、自分たちの脅威となる敵を見つけては、早めに叩き潰そうとするセコい奴らばかりでゲビス。
そんなことだから、いつまでたっても戦争が終わらないのでゲビス。どうしようもない奴らばかりゲビッ!
「で、いまはドルキマス国の第4艦隊のみで、連合軍の艦隊を防いでいるのか?
うん。事前に元帥閣下が敵の襲来を予測して、第4艦隊だけをドルキマスに帰らせたみたいだねえ。
でも、敵の数は第4艦隊の比じゃないのよ。このままじゃ要塞が落とされ、帰るところがなくなっちゃうのさねえ。」
「面倒な軍人なんかやめたらいいのにねー?
「そうさねえ?やっぱり、向いてないのかねえ?
でも、ドルキマス人としては、同胞たちが戦っているのに、なにもしないわけにはいかないじゃないのよお。
だから、ジークにお願いつ。鉄機要塞にいるドルキマスの同胞たちを助けて欲しいのさ。
「……ベティナは軍人だが、その前から俺たちの仲間だった。
「だよね? 私この戦いが終わったら、軍人やめて空賊に転職するつもりだよお。義理の前借りだと思って助け
「ベティナに頼まれたら断れない……。それに、俺たち空賊は、弱い者の味方だ。
大勢で少数を袋だたきにしようとする卑怯者を見てると吐き気がする。天が罰を下さないのなら、俺が下す。
「相棒が、助けに行くってなら、俺はどこまでも付き合うぜ!
「ナディちゃん特製の救援のマーチを演奏しましよう!
「みんな、ありがとうねえ!」
「それでは、ナハト・クレーエ号発進だ。全速力で飛ばすぞ。」

全速力で飛ばすには、それだけ魔力が必要となる。
ジークは艦橋の中央にある魔法陣の上に立つ。

「……俺の中にある魔力を引き出すために、感情を昂らせる必要がある。
みんな、なんでもいい……。俺を怒らせてくれ。」

「あいよ!」
「ナディちゃんも!」
「くそっ、いてえ……。
……いい感じに怒りが湧いてきたな。この機を逃すな、全開で飛ぶぞ。」
「相変わらず、便利なのか不便なのか、わかんねー体質してやがる。でもいい感じだ。全速でいくぜ。
「あっ。……怒りが収まってしまった。

「手のかかるお頭でゲビス。ナディ、ベティナもう一回殴るでゲビス。

 ***

一方そのころ君とウィズは、ディートリヒの命令を受けて、ドルキマス国境付近にまで引き返していた。
戻ってきた理由は、補給が滞っている原因を調査するためだった。

「もうダメにゃ。お腹が空いて……目が回りそうにゃ。」
でも、前線で戦っているドルキマス兵たちも、きっと同じような飢えを体験しているのだろう。
もう、2日ぐらいまともに食事をしていない。
腹が減ってはなんとやら。もはやウィズは、戦争どころじゃなくなっていた。
「補給を滞らせている犯人を見つけて、叱りつけてやるにゃ。お腹が空くのは、一番辛いことにゃ。」

君たちは、なんとかドルキマス北方にある鉄機要塞にまで戻ってきたのだが……。
そこではすでに、対ドルキマス連合軍と第4艦隊との交戦がはじまっていた。
あの要塞が落とされれば、襖給路は完全に遮断され、前線の艦隊は後方連絡線を閉ざされ、前線で孤立してしまう。
連合軍に狙われている鉄機要塞は、防衛の要。ドルキマスの玄関口でもある。

「要塞を守るしかないにゃ!キミ、ドルキマス軍に合流するにゃ。
でも、その前になにか食べさせて欲しいにゃ……。」

”……黒猫がいる。偶然だな?”
「この声は……!? ジークにゃ?」

君たちの視界に入ってきたのは、黒い鴉のような魔道艇。
空賊ナハト・クレーエが、どうしてこんなところに?
”鉄機要塞に向かってるということは、目的は俺たちと同じようだな……。”
「ジーク、その顔はまさか魔力を発動している最中にゃ?」
”ああ……故あって助けに行く途中だ。だから……お前たちの救援は必要ない。”
「協力しようにゃ。こちらは戦力が少ないにゃ。」
”必要ない。もし、俺たちの邪魔をするなら……殺す。”
「にゃっ!」
”そして黒猫を、俺のものにする。”
それは困る、と君は突っぱねた。

「ナハト・クレーエ号、両機一杯。全力で飛ばすぞ。」
「あいよ!」


「行ってしまったにゃ。キミ、私たちも急ごうにゃ。」
なんだかあのジークって人、ディートリヒと似てるところあるよねと君は言う。
「たしかに無愛想なところは、そっくりにゃ!」



story11 要塞防衛戦(封魔級)


「申し訳ありません。きっとなにか手違いがあったのです。本国に戻り、再度陛下を説得いたします。」
「皇女に謝罪される理由はない。お父上の元にお帰りあれ。」

メヒティルトは、とつぜん病床に伏せっている現フェルゼン国王から帰還の命令を受けた。
それだけではなく、メヒティルトが水面下で進めていたフェルゼン王国とドルキマス国との盟約も。
唐突に本国からの命令で破談にされてしまった。
原因は、双方の見解に相違があったためとされている。

だが、一方でフェルゼン王国は、すでに(対ドルキマス連合軍》に艦隊を派遣していた。
メヒティルトの知らないところで、フェルゼン王国は、ドルキマス国と敵対する道を選んでいたのである。

「必ず、陛下を説得して、ディートリヒ閣下のお力になれるようにいたします。しばらく時間をください。」
「あまり無理をしないことだ。」

盟約が破談となったのは、メヒティルトのせいではない。
ディートリヒは、しばらく本国を留守にしている間にまたぞろ陰謀家たちが、影で轟きはじめているのを察知していた。
補給の停滞も、盟約の破談も、すべてその陰謀家どもと――
それに踊らされている愚かな兄の仕業であるとディートリヒは見通していた。
そして……メヒティルトは、迎えに来た小型艇に乗って母国フェルゼンに帰っていった。


「前面には、イグノビリウムの残党。背後には対ドルキマス連合軍。なかなか面倒な状況だな。」
「貴君か? あちこち、飛び回っていたようだが、なにかつかんだのかね?」
「旧ガライド連合王国領にある古代遺跡をいくつか調べた。
そこで、イグノビリウムが休眠に使っていたであろう、まゆを発見した。
イグノビリウムを覚醒に至らせたのは、間違いなくガライド連合王国だ。」

ガライド連合王国は、イグノビリウムを蘇らせておそらく戦力として扱うつもりだったのだろう。
あるいは、彼らが持つ魔法文明を軍事利用するつもりだったのかもしれない。

「だが、貴君も知ってのとおり、ガライド連合王国は、とっくに滅んでいる。今更イグノビリウムを蘇らせてどうする?」
「ガライド連合王国が滅んだあともイグノビリウム復活に執念を燃やしている奴らがいたのだろう。
そのものの仕業だと我らは睨んでいる。」
「なるほど。では、その執念深いものの名は?」
「ディートリヒ・ベルク……といえば、驚いてくれるかな?」
「笑えない冗談だな。」

「ガライド連合王国を滅ぼしたあと、宰相のゲルトルーデを生かしたのはなぜだ?」
「使えそうな男だと思ったから生かした。それだけだ。」
「そのゲルトルーデが、現在対ドルキマス連合軍の旗振り役を担っているのは知っているか?」
「ほう、それは初耳だ。」
「ある筋書きを思いついたのだが、いまここで披露するには、あまりにもできが悪い。また今度にしよう。」
「完成したら、ぜひ聞かせて欲しいものだな。」
「……もちろんだ。」


対ドルキマス包囲網を敷いた連合諸国は
フェルゼン王国を新しく味方に加え、ディートリヒの留守中を狙う形で、ドルキマス国境まで押し寄せた。


「敵を要塞に寄せ付けるな!第10戦隊、第3戦隊の救援に向かえ!」
ディートリヒに本国の守備を命じられたのは、ドルキマス空軍第4艦隊司令官エルンスト・バルフェットである。
彼女の第4艦隊は、ドルキマス北方にある鉄機要塞を防衛拠点と定め、多勢の連合軍を迎え撃つ。

「なにが《対ドルキマス連合軍》だ。雑魚がいくら集まっても、しょせんは烏合の衆。我ら第4艦隊の敵ではない!」
エルンストは、女性でありながら、艦隊操縦が巧みで、どのような場面にも柔軟に対応できる提督だと軍内での評価は高い。
哨戒や防衛、機動戦。いかなる場面でも力を発揮する艦隊司令官として、ディートリヒからの信頼も厚かった。

「我々の背後は、ドルキマス王都だ。我らは国民の盾であり、伝統の守護者である。
ドルキマス500年の歴史が、潰えるかどうかは、この一戦にかかっている。総員奮戦せよ!」
上官に対しても物怖じせずに意見を言う性格。そして、下の者の意見を汲み上げる柔軟性。
エルンストは、非の打ち所のない提督であった。
ただひとつ。第3艦隊を率いるクラリアヘの対抗心を隠そうとしなところを除いては……。

「なんだあれは?」
鉄橋要塞に雲霞のごとく群がる連合軍艦隊の隙間を縫うように飛び回る、ふたつの光があった。

「援軍か? いや、たったの2隻。ならば、味方の先遣隊か?
偵察班の報告から、2隻のうちの片方は、ディートリヒ直属の魔道艇であることが判明する。
「元帥閣下のところにいる魔法使いか? では、もう片方のあの黒い小型艇はなんだ?」

黒い魔道艇は、主砲を一発も撃たず、空を飛ぶ技法のみで連合軍の艦隊を翻弄していた。


「どけどけどけーっ!」
「反転!」

高機動水平飛行中に、右斜め上空に飛び上がり、そのまま後方への曲技飛行。
立ち塞がる敵艦隊の周囲を巧妙に飛び回りながら向こうの同士討ちを誘う狭柵な滑空術。
その飛行は、まぎれもなく正道から外れた、邪道な艦隊運動。軍人ではないものたちの動き。

「なんだあれは? あのような操艦技術はじめてみた。」
黒い小型艇(ナハト・クレーエ号)の飛行術は常識から大きく外れていた。

「敵艦、30と65の方角から同時に迫ってくるでゲビス!ゲビスたちを挟み込むつもりでケビス!
規律正しい艦隊運動を求められる、軍の操艦技術とは対照的に。
ナハト・クレーエは、自由自在に空を飛び回るウォラレアル竜騎軍のような曲技飛行をなんと小型艦艇で行っているのである。

「撃ってくる……。カルステン、避けろ。」
「急に言われてもよぉ!」
「やられたー!」
ジ―クは、無言で魔法陣から離れた。行き先は、もちろん甲板上。
「邪魔をするな……。相手を見て手加減できるほど、器用な男じゃない。
ジークの両手の間に、魔法陣が浮かび上がる。
「死んだ族長たちは、魔法を研究するだけで、結局、魔法をろくに使わずにむざむざと殺された。
俺はそんなバカはしない。空賊として生き残るために魔法だろうが、古代遺物だろうが、なんだって利用する……。
そして、立ち塞がる奴は、躊躇せずに殺す……。」


ジークの両手から魔力が発動し、炎の塊が手から放たれた。
この大陸に魔法文明が持ち込まれ、1度は人間たちの手から《魔法》という技術は、手放されたが――

人知れず、魔法技術を研究し、少数部族の間だけで、密かに継承されてきたこの大陸独自の魔法。
クレーエ族の長年の蓄積と執念とが、このジークという男の身体に宿っていた。
敵艦隊に命中した《魔法》は、一撃で鉄の戦艦を沈めていた。

「やりすぎた……?いや、軍人たちは、この大陸から消え去るべきなんだ。」

乗員たちの乗った離脱艇が発射したのを一瞥しながら、ジークは次の艦を瞬く間に撃墜する。

ジークが魔法を放つのを見た連合軍の兵士たちは、イグノビリウムの残党が、戦闘に介入してきたのだと勘違いした。
イグノビリウムの恐怖が植え付けられている連合軍の兵士たちは、瞬く間に恐慌状態に陥った。
その隙を突いて、ジークは次々に艦を落としていく。

「あの力は、まさか魔法だと!?元帥閣下の側には、《魔法使い》と呼ばれる正体不明の存在が侍っているとは聞いていたが。」

悔蔑に満ちた口ぶりだった。
魔法などという(邪法)は、この大陸の軍人たちには、唾棄すべき忌まわしい力だとみなされている。

「だが、あいつの身体に浮かぶ紋様は、クレーエ族の紋様だと? ほう、生き残りがいたのか。」
エルンストは、目を見開いて黒い魔道艇と甲板に立つジークの姿を凝視していたが。
やがてその目に、黒い復讐の炎が宿っていった。
「クレーエ族が持つ禁忌の力は、この大陸には必要ない。」
そう言って、エルンストは得物である、艦の副砲を改造して造らせた、《16粍口径連装小銃》をつかむ。
彼女の両目には、燃えたぎる憎悪が宿っていた。



story11-2


旧ガライド連合王国領。
プルミエは、領内にある古代魔法文明遺跡跡の調査を続けていた。

「あれは……?

その奇妙な場所を発見したのは、まったくの偶然だった。
興味が引かれるまま、プルミエは、その場所に迂闘に近づいた。
次の瞬間、おぞましい臭気が空間中に満ちていることに気づく。

「うつ……!この匂いは……!

地下遺跡内にあるーで囲われたその場所……。
匂いの原因は、檻の内部に放置された死体の腐臭だとすぐにわかった。

プルミエは、この先になにがあるのか、見極めずにはいられなかった。
おそるおそる覗き込んだ檻のなかにいた(・・)のは、大量の人間の死骸だった。
まだ殺されて、ひと月も経過していないようだが……驚くべきは、そこにある死体の数だった。

「100……いや、それ以上の数だ……。この者たちは監禁されていたのか?
むせかえるような吐き気を抑えこみ、プルミエは殺されたものたちの正体を探る。
それぞれの死体には、皮膚に模様があった。入れ墨、もしくは宗教儀式用の《紋様》に見えた。

儀式とは、なにか?プルミエの頭にある答えが、鋭く差し込んでくる。 
「このものたちは、ここで何らかの儀式を行い……そして殺されたというのか。
ふと顔を上げると、檻の奥に祭壇があり、そこにも死体がもたれかかっている。

「イグノビリウムを目覚めさせる儀式が、ここで行われていたというのか?
プルミエは、すぐにフアーブラに戻り、遺跡で見たものすべてをルヴァルに報告した。
報告を受けたルヴァルも、プルミエと同じ結論だった。
そこで殺されていたのは、(クレーエ族)という古代魔法文明を研究し、その成果を継承し続けてきた一族。
少数で細々と生きてきたクレーエ族は、決して大陸の人間たちと交わるうとしなかった。
しかし、彼らが継承している古代魔法の研究成果は、時の権力者にとって利用価値の高いものだったと伝えられている。

「人は、ここまで残虐になれるのですね。
「我々の先達は、人の本性に気づき、大陸に暮らす彼らから魔法文明を取り上げた。
「その判断は、間違っていなかったようだな。
クレーエ族に、なんらかの儀式を行わせたもの。
そのものこそが、すべての元凶である――とルヴァルは結論づける。
「連合軍議長ゲルトルーデ。奴はいまどこにいる?
「尻尾をつかませない男です。ですが、必ず探し当てて見せます。

「どうして俺を襲う……?助っ人に刃を向けるのが、ドルキマス空軍の礼儀なのか?
「貴様が使うその力は、古代魔法であろう!?それは人が手にしてはいけない禁忌の力だ!
その力は、ドルキマスどころか、人類そのものを滅ぼしかねん!
だから、私かここで貴様を倒す。そして、殺された部下たちの無念を晴らさせてもらおう!
「なにやら、クレーエ族と因縁があるようだな?
なにがあったのか知らないが、助けるはずの相手と戦うのもー興だ……。

ジークはふっと全身から力を抜いた。
彼の身体に浮かび上かっていたクレーエ族の紋様が消える。

「来い……。そんなに魔法がキライならば、魔法を使わずに相手してやろう。
「余裕を見せたつもりか?あとで後悔することになるぞ?


「どうしてあのふたりは喧嘩してるにや?もう、やめるにや!」
敵は、連合軍であってドルキマス軍でも、ジークたちでもないはずなのに……。
「こちらの話を聞く気はないようにや。こうなったら、力尽くでも止めるにや。」
君はこくっとうなずくと、いまにも散らせた火花を衝突させんばかりのふたりの間に割って入った。



story11-3


「ぐはっ……。ま、負けたか。……ならば、殺すがいい。
「ここでお前を殺しても、俺はなにも感じない……。俺にとってその程度の存在だ。

「ひとつ聞かせて欲しいにや。どうして、ジークを敵だと思つたにや?
「お前には直接因縁はない。ただ、私はかつて紋様を身体に浮かべる特殊な体質のものたちと戦ったことがある。
「それは……クレーエ族か?
「先王グスタフ様から、私は古代魔法の研究を行っている少数民族の調査と捕獲を命じられた。
「なぜ、前のドルキマス王が俺たちを調べていた?
「魔法という特殊な力を研究し、その力を受け継いでいる特別な一族――
時の権力者にとって、お前たちは魅力的な一族ではあるが、同時に脅威でもあったのだ。
「クレーエ族は、静かに暮らしていただけだ。それなのにお前らは、その平穏を破った。脅威はどちらだ?」
 「ジーク、落ち着くにゃ。身体に紋様が浮かび上がりかけてるにゃ。」
「感情的になど………なっていない。」
ジークは、ウィズの背中の毛並みの感触を手で触れながら、心の昂ぶりを沈めようとしていた。

「つまり、王様の命令でクレーエ族の調査に向かったら、ジークのー族と遭遇し……部下を殺されたのかにゃ?」
「クレーエ族と戦ってわかった。
「魔法という存在は、この世界を根底から覆す可能性のある危険な技術だと……。

エルンストは、君の目にも強い視線を向けた。ディートリヒのおかげでいままでなにも言われなかったが……。

「そのとおり、魔法は単なる技術にや。使い方を誤らなければ、それでいいにや。

君もこの世界の人々にとっては、クレーエ族と同じく、未知なる力を秘めた脅威も同然。
後ろ盾がなかったら、ジークと同じく、畏怖と忌避の対象となっていてもおかしくなかった。
必要以上に警戒することも、また必要以上に求めることもない。

「部下を失ったのは私の失態だ。ジーク・クレーエ……負けた以上、私から言えることはなにもない。
私は逃げも隠れもしない。お前の好きにしろ。この首欲しければ、くれてやる。

「一族が抵抗しなきゃ、今頃クレーエ族はドルキマスの収容所に入れられていたかもしれない……。」
ジークは知らなかったが、このときクレーエ族は一族の若い娘をグスタフに献上し、ドルキマスと従属的な和睦を結んでいた。

結果的にドルキマスは、クレーエ族を完全に従わせることができなかっただけで――
やっていることは、ガライド連合王国と同じであった。
「お前たち、クレーエ族を利用しようとした罪は重い。いくら命令とはいえ、軍人として恥すべき行為だとわかっている。

「その点については謝罪する。だが、私は殺された部下たちのことは、死んでも忘れん。
そんなことをいつまでも言っていては、復讐が連鎖するだけだと君は感じた。
「ジーク、君はどうにや?この人のこと、恨んでいるにや?

「軍人たちに恨みがないといえば嘘になる。
だが、おとなしく負けを認めた奴に手を下すのは、空賊の流儀に反する。
それだけ言うと、ジークは自分の艦に戻っていった。

かける言葉は、なにも浮かばなかった。

「ジークは、感情を抑えているにや。また魔力を暴走させないために……必死に。
かける言葉は、なにも浮かばなかった。
彼が抱える深い哀しみ。それを理解するのは他人では不可能だ。
ジークはナハト・クレーエ号に戻り、発進しようとしていた。

ジークはナハト・クレーエ号に戻り、発進しようとしていた。
要塞の外にはまだ多くの連合軍の艦隊がいて、ドルキマス軍との戦闘を行っている。

「私の命を奪わぬというのなら、私は部下のために要塞の指揮に戻らせてもらおう。


この世界の人たちは、気持ちの切り替えの早い人が多いね、と君はウィズ言う。 
「それだけ人の生き死に慣れているってことかもしれないにや。

エルンストは艦隊の指揮に戻っていく。

ナハト・クレーエと君の魔道艇に翻弄された連合軍は、指揮系統が分断され、四散五裂しかけていた。
もはや統率の取れた艦隊とは、言い難いあり様。

「第4艦隊集結しろ。反撃の機会が巡ってきた。
足並みが揃わない連合軍を、ドルキマス領から駆逐するぞ!」

戦記には、この防衛戦についてこう記されている――
第4艦隊を率いるエルンスト・バルフェツトは、鉄橋要塞を盾に防衛戦を行った。

緒戦は連合軍の勢いに圧倒され、守備部隊は潰乱しかけたが――
粘り強い指揮と迅速な判断により、連合軍の大艦隊を1隻も王都に近づけることなく、見事、要塞を守り切った。
――と端的に記述されている。

この戦いによりエルンストは『鉄壁提督』の異名で呼ばれるようになり、またこの功績により、のちに中将へと昇進する。
勝利の影に空賊ナハト・クレーエと黒猫を連れた魔法使いの協力があったことは、どこにも記録されていない。

目的は、対ドルキマス連合軍に寸断されていた後方の補給線を取り返し、全軍の秩序を正常に向かわせるためである。
―方同じ頃、ディートリヒは残る艦隊を率いて、ボーディス国境付近に向かっていた。
ボーディス上空で行われた空戦において、ディートリヒは、連合軍の主力部隊と戦い、たった一晩でそれを打ち破った。
芸術的な艦隊指揮により、華麗に勝利を収めたこの戦いは、後に(シェラーツラント》の戦いと呼ばれ。
ディートリヒの飾った数多くの勝利のなかでも。もっとも芸術的で美しい勝利と資賛されることとなる。

「ディートリヒが、どんな風に連合軍に勝ったのか見たかったにや。
でも、一緒にいれば戦に巻き込まれていたにや。それはごめんにや。

そうだねと君はうなずいた。
これまでの戦いで、多くの血が流れ、多くの兵が戦死者の館へと送られた。
それでもまだ、この大陸はより多くの血と死者を求めている。

ーーーーーーーーーー


story12 ドルキマス空軍


小国ドルキマス。
500年の歴史を持つ国家と言われているが、国として権勢を諦っていたのは、そのうちの100年程度。
そしてディートリヒが現れるまでは、旧ドルキマス王国領の大半を隣国に支配されつづけた惨めな国だった。

そのドルキマスが、ディートリヒという男の登場によって軍事大国へと生まれ変わった。
いまやドルキマス国が所有している軍艦は、大小あわせて200隻を超え、空軍の兵員は、後方要員もあわせて10万もの数を誇る。
空軍の強兵ぶりと比較して、陸軍のほうは、わずか1個師団を編成できるだけの兵数しか擁していない。
足りない分の地上部隊は、すべて傭兵を雇って補っていた。
どこの国も人的資源の欠乏には頭を悩ませており、傭兵団と契約して足りない戦力を補うのは、この時代、当たり前の処置だった。
そのおかげで、ボーディスのような傭兵料だけで国の歳入を賄う国家も誕生した。
現在、ドルキマスの地上軍は、フェリクス率いるボーディス傭兵連隊が主力になっている。
地上部隊の任務は、高射砲による敵艦隊への攻撃だけでなく、敵領内に潜入しての哨戒任務――
照明弾と煙幕弾による攻撃支援。艦隊を降下させる場所の安全確保などやるべきことは多岐にわたる。 

「傭兵は、荒くれものが多いが、戦場で生きる術を心得ている奴らばかりだ。空軍の連中が地上に落下しても俺たちが助けてやるよ。
一方の空車戦力。ドルキマス国は、資源と生産力の大半を空軍拡充のために使っていた。
「とはいえ、俺たちも超人じゃない。もっと楽な戦場に行かせて欲しいんだが、……それは無理な話だろうなあ。

先王グスタフの代からつづけられた戦力拡充計画のおかげで、いまやドルキマス空軍は、4つの艦隊を所持するにいたった。
現在、ユリウス・ヒルベルトが艦隊司令官を務めているドルキマス空軍(第1艦隊)。
前任の艦隊司令官は、ヴォルフガング提督であったがー―

先王グスタフの死を聞き、その死に殉じて自決したため、しばらく艦隊司令官は空席だった。
第1艦隊司令官の空白を埋めるためにディートリヒは、退役していたユリウスをその座につけた。
この第1艦隊は、近衛艦隊とも呼ぱれており、建前上はアルトゥール直属の艦隊である。
艦隊に所属する兵は、純粋なドルキマス国民だけで構成されており、兵の練度と士気は、空軍のなかで最も高い。
戦での第1艦隊は、総予備として通常は後方に控えており、敗色の色が強い艦隊の潰乱を阻止するための救援やー―
戦の勝敗を決定づけるための決戦戦力としての役割を主に担っている。
ドルキマス軍の最後の切り札であるため、第1艦隊が投入された戦場では、敗北は決して許されない。
第1艦隊の敗退は、ドルキマス全軍の敗北を意味していた。


「私のような老兵すら狩り出されるとは、ドルキマス軍に人材が不足している証拠だな。
私のような老兵すら狩り出されるとは、ドルキマス軍に人材が不足している証拠だな。
早く一線を退き、後進の育成に余生を費やしたいものよ。」
ドルキマス空軍第2艦隊は、ホラーツ・アイスラー上級大将が、一艦隊司令官を務めている。

前任のレーブンクランのあとを受け継いだホラーツは、これまでディートリヒの指揮する主要な戦すべてに参加しておりー―
そのすべての艦隊戦で敗北はおるか、敵に押されての後退すら一度もない。
(常勝不敗)の提督と呼ばれ、第2艦隊は、ドルキマス空軍の基幹艦隊として、(艦隊主力)を担う存在だった。
戦闘では、おもに正面主攻を担当することが多く、経験豊富な老提督ならではの的確かつ粘り強い指揮によって一一
どんな敵とでも互角以上の艦隊戦を演じるその安定感は、国民の誰からも信頼されている。
ディートリヒが全軍を指揮する際の要となる艦隊であり一一

ホラーツ・アイスラーが正面に陣取ってくれているからこそ、あらゆる奇策を講じることができた。
「アイスラー上級大将のいいところは、決して功を焦らないことだ。もっとも部下は、腹立たしいだろうがな
「死んで名を残そうなどとは、考えないことですな。生きていてこそ、花を愛でることができるのですから。
そして、ドルキマス空軍第3艦隊。

3艦隊初代艦隊司令官は、ディートリヒであり、その後ブルーノ・シヤルルリエに受け継がれた。
現在は、ブルーノの娘であるクラリア・シャルルリエ中将が艦隊司令官を務めている。
「えっへん!

第3艦隊は、編成されてまだ年月の浅い艦隊である。
老朽艦や廃棄寸前の船にならず者を乗せて、敵戦力を次々に撃破した戦法をさらに進化させる形で一一
ディートリヒは、造船思想が大艦巨砲主義に傾倒していた時代に小型で機動力の高い船ばかりを集めてー-

機動力重視の艦隊を編成し、速攻、突破、迂回、包囲などの機動戦を主とする艦隊運用を行った。
その高速戦術は(ドルキマスの荒鷲戦術)と呼ぱれ絶大な効果をあげた。
ドルキマス空軍を大艦巨砲主義から引き戻すだけでなくー―
空軍の戦略思想そのものを、根底から覆したと言われている。
その流れを受け継ぎ、第3艦隊はいまも機動力を極端に重視した艦隊編成となっている。
「第3艦隊は、別名《荒鷲艦隊》と呼ばれている。鷲のように迅速に力強く敵を撃破していくうちに、そう呼ばれるようになったのだ。
「第3艦隊には、ドルキマス以外の国の兵も多く所属しています。
初代司令官殿が、国籍なんかに拘らないお人だったんで自然とそうなりました。
そのせいで、第3艦隊は「ならず者の外人部隊」などと郷楡されたりもしていますが。
うちの艦隊には、そんなことを気にする奴は誰もいません。
「どちらかというとドルキマス国よりも、第3艦隊そのものに忠誠を誓つてる兵が多いのも特色だな。
(癖の多い兵どものせいで、ブルーノ閣下が戦死したあと、艦隊司令官の人選が難航しましてね。
ディートリヒ閣下が、ブルーノ閣下のお嬢さんを艦隊司令官に据えると、ようやく兵どもが言うことを聞くようになりました。
みんな、ブルーノ閣下には恩を感じてますからね。中将閣下をもり立てることが、その恩に報いることだと思ってるんですよ
もっともそれは、中将閣下には内緒ですがね)

そして、ドルキマス空軍で最も若い艦隊は、エルンスト・バルフェツトが司令官を務める第4艦隊である。
先王グスタフの時代。戦が長期化することが多かったため、本国に空軍戦力が存在しなくなる事態が頻発した。

それを受けて本国防衛のための守備艦隊として編成されたのが、この第4艦隊である。
艦隊司令官を務めるエルンストは、生粋のドルキマス軍人であるが、貴族の出ではない。
一兵卒から戦地で戦功を積み重ね、提督の地位にまで登り詰めたその点で、ディートリヒと経歴は似ていた。

若いながらも艦隊の操縦が巧みで、防衛戦のみならず敵艦隊の撹乱、機動戦、哨戒など、あらゆる任務を着実にこなすことに定評がある。
エルンストの器用さと艦隊司令官の才能は、ディートリヒにも愛されていたゆえ、第4艦隊を任されたのだった。
先はどの鉄橋要塞防衛戦で、(鉄壁)の異名で呼ばれるようになったがー―
私生活では、二度も婚約を破棄される不運に見舞われている。

「うるさい!いまは、そんなこと関係ないだろうが!
余談だが、エルンスト自身が戦災孤児だった経緯から、戦争で親を失った子どもを何人も引き取って面倒を見ているという。

 ***

「ドルキマス空軍には、数多くの有能な将官がおられる。
私はそのなかでも……提督、あなたに目をつけたのです。」

「早く、要件を言ったらどうだね?それとも護衛の兵を先に呼ばれたいかね?


ーーーーーーーーーー



ドルキマス3 Story

ドルキマス3 Story1
 プロローグ
 連邦国に栄光あれ!
 陽光照らす軍旗(初級)
ドルキマス3 Story2
 突撃兵の本領
 フェルゼン上空戦(中級)
 黒い鴉
 浮かぶ鉄の塊
ドルキマス3 Story3
 ヴェルカン公国の機動戦(上級)
 許されざる蛮行
ドルキマス3 Story4
 鉄機要塞へ
 要塞防衛戦(封魔級)
 ドルキマス空軍
ドルキマス3 Story5
 ホラーツ提督の決断(絶級)
 元帥の奏上
ドルキマス3 Story6
 空前のドルキマス軍(覇級)
ドルキマス3 Story7
 屍の上に
 傷ついた翼
 王座にふさわしきもの





空戦のドルキマス
ディートリヒ 初登場 (ウィズセレ)2014/11/14
空戦のドルキマス ~沈まぬ翼~ 
ドルキマス軍 最終戦
2015/10/22
空戦のドルキマス 外伝集2015/10/22

ディートリヒ過去 (正月)
2016/01/01
白猫×グリコ コラボ (メイン飛行島)2016/01/29

空を飛ぶ棺 (黒ウィズGP2016)
2016/06/13
空戦のドルキマスⅡ ~昏き英雄~
 前編中編後編
2016/09/23
プルミエ(4周年)
イグノビリウム侵略
2017/03/05
フェリクス(GW2017)
イグノビリウム侵略
2017/04/28
対シュネー艦隊戦 Story (GP2017)
ブルーノ少尉とディートリヒ准尉
2017/08/31
ドルキマスⅢ
2017/09/30

ジーク外伝
2017/09/30


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