ドルギマスⅢ ジーク外伝 Story

 
最終更新日時:
白猫ストーリー
黒猫ストーリー

2017/00/00


主な登場人物

空賊(ナハト・クレーエ)
ジーク・クレーエ
クレーエ族の生き残り
カルステン
ハルトゲビス
ドルキマス開発官アーレントに作製された機械兵器。
ナディ
元ドルキマスの軍楽隊所属 軍楽隊員。
ペティナ
その他
アクロイス・リンデ
ガライド軍
ディートリヒ・ベルク
ドルキマス軍元帥
ブルーノ
ドルキマス軍
ゴドフリード
総魔元帥



目次

Story1 収容所からの逃亡
Story2 お宝は古代遺物
Story3 見覚えのある場所
Story4 察しない男
最終話 空賊たちの空



story1 収容所からの逃亡


歴史書には、大きな歴史の流れが記録されている。
そこに記されているのは、国家同士の紛争や興亡。そして歴史の勝者に対する賛辞である。
空賊(ナハト・クレーエ)の名前が、歴史の正史にはじめて記録されたのは、ドルキマス国アルトゥール王の時代であった。
どこの国にも属さないただの空賊が、歴史書に記載されるなど前例のないことである。

「出身はクレーエ族。大陸では禁忌とされている《魔法》の研究を行い、その力を利用して生きる一族だと聞いて育った。
魔法という古代文明の遺産。そんなものに手を染めなければ、クレーエ族は歴史から姿を消すことはなかったかもしれない。」

ジークは、目を閉じる。
浮かぶのは、冷たい強制収容所の檻と、日々痩せ細っていくクレーエ族の同胞たちの姿。

「収容所の環境は最悪だった……。
そこを管理している軍人たちは、クレーエ族を人間とは思わないような奴らばかりだった。」

軍人たちは口癖のように呟いていた。

『クレーエ族を大陸から抹殺する』
『生きていてはいけない一族なのだ』

「食事もまともに与えられなかった……。
同い年で仲の良かったー族の友達が、飢えて死ぬのを目の当たりにしたとき。
俺は、収容所から脱獄することを決意した。」


 ***


「なんだ、子どもか?収容所から逃げてきたのか?」

収容所の壁に穴を開けて、監視の兵の目をかいくぐり、やっと外に出たと思ったのに。
収容所の外にも軍人たちがいた。再度収容所に連れ戻らされるぐらいなら、精一杯抵抗してみせると決めた。

「おっと、そう構えるな。俺たちは、あの収容所を管理している兵じゃない。
むしろ、あの収容所でなにが起きているか把握するための偵察に来たんだ。
私の上官は、針の穴を射貫くような鋭い洞察力を持つお方でね。ガライド軍の些細な、動きも見逃さない。
というわけで、暇でぶらぶらしていた私を偵察に遣わしたんだ。君たちの敵じゃない。信じて欲しい。」

目の前の軍人がなにか言っている……。
だが、ジークの耳には、彼の言葉の半分も入ってこなかった。

長い収容所生活で軍人という存在に対する憎しみと警戒が培われており――
軍服を見ただけで感情が昂ぶり、『連れ戻されたくない』という危機感も手伝い、ジークの心は、平静が保てなくなっていた。

「……って、君のその身体に浮かんだ紋様は……なんだ?
まさか、君はクレーエ族なのか?まだ生き残りがいたとはな。
そうか。つまり、ガライドの連中が収容所で行っているのは、古代魔法文明の研究か。
なるほど。禁忌の術を軍事利用するつもりか。」

どこかの国の軍服を着た男は、突然優しい目になった。

「まだ子どもなのに辛い目にあったな。そして君は、重たい宿命を背負うことになる……。
悪いな俺たち軍人のせいで、お前の一族だけではなく、運命すらねじ曲げてしまって……。」

ブルーノは、身体を斜めに開いて逃げ道を作る。
手をふってジークに向かって「いけ」とサインを送った。

彼の行動を疑問に思つたが、もたもたしていると収容所の兵に追いつかれてしまうかもしれない。
ジークは、一目散にその場から走り去った。

他の兵たちが、戸惑うような目をブルーノに向けていた。

「子どもを脅すために軍人になったわけじゃないんでね。ただ、ディートリヒ中佐には内緒にしておいてくれよ?」

その夜、ガライド連合王国の収容所が、少数の部隊の襲撃を受けて炎上した。
中にいたガライド連合王国の兵は、全滅したと伝えられているが……。
その施設でなにが行われていたのかは、歴史書に記されていない。


 ***


「面舵―杯!両機戦闘速度目―杯だぜ!」
「シェーネ国の私掠艦め、今日こそは逃がさないでゲビス!」

漆黒の魔道艇が、空賊艦に偽装した旧式の軍艦を追撃している。
軍艦は、ルフト国の民間商船を無差別に襲い、通商破壊工作を行っていた。
空賊艦に見立てた偽装艦をルフト国の国境に派遣し、罪もない商船を襲っているのである。

「よっしゃ、奴らのケツにばっちり張り付いたぜここから一気に追いつくぜ!
……あ、あれ?くそっ、こんな大事な時になって、速度が落ちてきやがった。」
「魔力の供給量が減ってるでゲビス!お頭、また居眠りしてるでゲビスね?


「……ふふっ。もふもふ。もふもふ。ふふっ……。」

「またかよ……。おい、ナディ。例のアレだ。なんでもいいから、相棒の感情を爆発させて魔力が増幅するようにしむけろ。」
「はあい! それじゃあ、ナディちゃんが演奏する哀愁のマーチに合わせて……。」
「名作童話『可哀想な猫』の朗読でゲビス!昔々、あるところに可哀想な猫がいました。」

「ううっ……。なんて悲惨な話なんだ……。」

「悲しんでる悲しんでる!もっと悲しめ、そしてもっともっと、ナディちゃんたちの艦に魔力を供給するのよ。」
「おお、いい感じに魔力の供給量が上がってきたぜ!相棒、お前って本当に便利な体質してるよな!?」

「はっ!? 俺は……寝てたのか?」

外を見ると追跡中の偽装軍艦が、目と鼻の先にまで迫っていた。

「いまよ!突撃行進曲〈ナハト・クレーエのテーマ〉!」
「よっしゃ飛ばすぜ!」


「……でも、みんな頑張ってくれてるようだから任せておこう。
ふあ~あ。二度寝するか……。」

ーーーーーーーーーーーーーー


story2


ジークたちナハト・クレーエ以外にも、大陸には空賊が大勢存在している。
そのうちの大半は、滅亡した国の軍人たちが、弱い者を暴力で脅して財産を奪うだけのどうしようもない輩どもだったりするのだが。
ナハト・クレーエは、そういう空賊たちとは、目的からしてまったく別の空賊だった。

「古代遺物(アーティファクト)は、どこにあるでケビス?」
ハルトゲビスは、ドルキマス開発官アーレントに作製された機械兵器だが、妙に凝った人工知能を搭載されたせいで一一
ある日突然自我に目覚めてレベッカ・アーレントの元を飛び出した。そして色々あったのちに、ジークの子分になった。

「そんな簡単に見つかったら、とっくに誰かが手に入れてるわよ。」
ナディも似たようなものだ。
元はドルキマスの軍楽隊に所属していた優秀な軍楽隊員だったのだが。
軍隊生活が性に合わず、軍を飛び出していまはナハト・クレーエに所属している。

「見つからないから、お宝ってのは価値があるんだとナディちゃんは思うの。」

ジークが所持している(天運の六分儀)という古代遺物は、かつて大陸に名を轟かせた伝説の空賊が所持していたアイテムであり一一
それをひとつでも所持している空賊は、他の有象無象とは違う、特別な空賊として一目置かれる。
そして古代遺物を所持している空賊の頭は、年に一度(片目蛇の空岩)にて開催される空賊たちの大会合に参加することが許される。
空賊にとっては、誰もが手に入れたがる特別なお宝。それが、ジークたちが探し求めている古代遺物であった。

J「古代遺物……。噂では《元帥》と呼ばれているものが、それを狙っているらしい。」
K「元帥? どこかの国の軍人かな?軍を相手にして、お宝を奪い合うのは、少々リスクが高いぜ?
N「それだけ入手難易度が高いってことでしょー?そうじゃないと手に入れたときのありがたみがないじゃない?
J「ふたつめの古代遺物も俺たちが手に入れる。どこの誰だろうと邪魔はさせない。
P「そういえば、うちのドルキマス軍にも《元帥》って呼ばれているひとがいるさねぇ。
そういえばそうだ。もしかして、ドルキマス軍とお宝を争うことになるのか?
P「でも、うちの《元帥》さまは、空賊のお宝なんかに興味ないだろうさねぇ。
ありゃ? 後方からものすごい速度で飛ばしてくる飛空艦がいるよ!みたことない艦だよお。

望遠鏡にて、後方を確認すると――
きらびやかに飾り付けられたド派手な艦が、ナハト・クレーエ号に接近してくるではないか。

J「そういえば、あいつも《元帥》を名乗っていたな。

G「薔薇の香りは、妖艶なる魔性の香り。無数のトゲの餌食になりたくなければ、道をあけるがいい。退避退避退避ぃぃっ!
おや? 美の欠片も感じない真っ黒な小型艇発見。
その美的センスのなさ。野に咲く雑草のごとし。花なし、トゲなし、魅力なしのー―
3なし空賊のナハト・クレーエの面々ではないか!
美しくないものは、いまここでわたくしが、焼却してやろう!」

「よお、ゴドフリードの大将。相変わらず、ぶっ飛んでんなあ?
「大将!? わたくしにそのような無粋極まる泥臭いあだ名をつけないでいただきたい!
何度も言うが、わたくしは《総魔元帥ゴドフリード》!
この生まれ持った魔性で、敵すらも魅惑し、やがて世界を支配するものだぁ!魔魅魔魅魔魅ぃぃっ!」
「ちょうどいま古代遺物を狙う元帥とやらの話をしていたんだが。それは、お前のことか?
「古代遺物などとなんと無粋な。
あれは天の使いが、うっかり地上に落としてしまった聖なる遺物。美しきわたくしが持つにふさわしいもの。
大陸上にある聖遺物は、すべてわたくしの美に照らされて、そのうち姿を見せるだろう。
お前たちは、歓喜の日が来るのを指をくわえて待つがいい!待機待機待機ぃぃぃぃっ!
「いちいち長いな……お前の話は。」
「そしてジーク。あなたが持つ《天運の六分儀》も、いつか奪い取ってみせよう!奪取奪取奪取ぅぅぅぅっ!!
それでは無粋な鴉の諸君、お先に失礼。この先に魅惑的な気配を発する遺跡があるらしいのでね。
でも、そこに辿り着くのは、わたくしひとりぃっ!鴉は、ここで薔薇とワインの香りにむせ返っているのがお似合いですよ!」

ゴドフリードの艦から、巨大な噴霧器のようなものが出現する。
そして、小さな噴射口から吹き出したのは、たまらず仰け反ってしまうほど強烈な薔薇の香り。

N「なにこれ?匂いがきつすぎて、頭がくらくらしてくる~。
「げほっげほっ! 機械のゲビスですら、匂いを感じてしまうほどの強烈な兵器でゲビス。
「コケにしやがって。どうする相棒、追うか!?」
「奴に興味はない……。けど、この先にある遺跡か……。」

ーーーーーーーーーーーー


story


たどり着いた遺跡は、かなり朽ち果てていたが、ひとが立ち寄った痕跡が、そこかしこにあった。

「ぼろぼろになったテントだ。そこにあるのは、キャンプの痕か?
「ここは……似ている。
「おかしら? なにに似てるの?
「俺たちクレーエ族が、連行されていた地下施設に……。
軍人たちが俺のー族を拷問にかけ……クレーエ族の秘技を奪い取ろうと……ううっ!?」

全身に浮かんだ紋様は、ジークの感情が昂ぶった証しだった。
自分で感情を抑制できるときは、強い意思で、ある程度魔力の放出を抑制できるのだが。
時々、ジーク本人の手には負えないほど激しい感情に動かされ、制御できなくなるときがある。

(……仲間たちが、なにか言ってる。けど……なにも聞こえない
意識を……閉ざすしかない。こんなところで気を失うのは危険だが……)

ジークは、最後の手段として、みずからの意識を閉ざした。

 ***

視界が真っ暗な幕で覆われる。
自発的に意識を閉ざすと同時に魔力の暴走も収まっていく……。

「心配しないで、お姉ちゃんがここから逃がしてあけるからね?

ふいに真っ暗な闇のなかに、記憶の片隅で常にジークを見守ってくれてる少女の姿が浮かび上がった。

「……怖がらなくてもいいの。ジーク、あなたひとりでも逃げなさい。
私は……この傷じゃ、どうせ助からないから……。」

足元に横たわる少女の顔は、蒼白だった。

その様子に狼狽えているうちに、ジークは足の下にどろっとした感触を感じた。
手でそれに触れてみると、真っ赤な液体が指先に付着した。
おぞましいほど大量の血。それは、少女の身体から流れ出たばかりのものだった。

突然、光の筋がジークの目を突き刺す。
慌ただしく地面を駆ける足音。向こうから、兵士がやってくる。

少女は、最後の力でジークの身体を押した。
それを切っ掛けに、強ばって動かなかったジークの両足は、弾かれたように地面を蹴った。
暗い闇のなか、どこに向かっているのかもわからず、ただ闇雲に走り続けていた。

「おっと!悪い。ん……?
なんだ、子どもか?収容所から逃げてきたのか?」

子どもだったジークには、なぜ軍人たちによって自由を奪われ、鳥かごのような狭い収容施設に入れらていたのかはわからない。
施設に入れられてからは、親しかった一族の女性たちや、頼もしく感じていた大人の男たちとも引き離され――
子どもは、子どもだけでひとつの場所に集められていた。
なにをすればいいのか……。
どうしたらいいのかわからず……。
子どもたちは、毎日拷問されるために連行されていく大人たちを檻の隅で震えながら見つめることしかできなかった。

「お前と、そこのお前も……こい」
いつしか軍人たちは、子どもたちまでも、どこかへ連れて行こうとした。

ひとり、またひとりと子どもが滅っていく。
連行された子どもは、二度と檻に戻ってくることはなかった。

いつか自分も連れて行かれる日が来る。
明日かもしれない。今夜かもしれない。
恐怖に怯える日々を送った。日が差すことのない、冷たい檻のなかで……。


「逃げよう。一緒にどこか遠くに……。」
ジークは、その少女と逃げることを決意した。

だが、少女は途中で軍人たちの放った銃弾に倒れた。

 ***

「……すまん。気を失っていたようだ。
「ヒヤヒヤしたぜ。でも、お前が感情を抑えられなくなるってことは。この場所は……。

目に映るのは、大きな動物を閉じ込めるための檻。そして、地面を握り返してなにかを埋めた跡があった。
ついこの間までひとが出入りしていたということは……。
ひょっとして、最近までこの場所で、ジークの同胞たちが、苦しい収容生活を強いられていたかもしれない。
だが、真実を確かめるためにジークは、〈なにかを埋めたあと〉を掘り返すつもりはなかった。
同胞たちから、これ以上〈安らぎ〉を奪いたくなかった。

「クレーエ族の収容施設の一部だった場所だ。おそらく、ここに古代遺物はない。」
「そういうことなら、長居は無用でゲビス!さっさとずらかるでゲビス!」
「あれ? でも、先に到着したあの元帥さまは?」

「ひいいい! 美しい、このわたくしに手を出すとあとが怖いですよ!
覚悟があるのなら、やりなさい!」

奥の方から声が聞こえてくる。
かなり怯えているようだ。

「どうせ、俺たちには関係ない奴だ。ほっとこうぜ。」
「いや、ここで見捨てるのは、俺の空賊としての主義に反する。」

ーーーーーーーーーーーーーー


story4 察しない男


「わ……わたくしは、総魔軍を統率するという重大な使命を受け継ぐ高貴な身の上。手を出すと、あ……あとが怖いですよ!?」
「なんだこのうるさいのは。お前なんぞ、誰も相手にしておらん。とっとと消えろ。」
「なっ!? そう邪険にされてしまうと、それはそれで腹が立ちますね。」
わたくしが一声かければ、魔の界域に暮らす総魔軍がー斉に地上に現れるのですが……いまはひとりで事は足りるッ!」
「変な奴は相手にするな。我々は、我々の任務を果たすぞ。」
「くうっ。総魔軍は陽の光に弱いため、陽が昇っている間は、地上に出てこられないのをいいことにわたくしを侮って! 悔しいっ!」

遺跡の最深部にたどり着いたジークたちが目にしたのは、ひとり勝手に憤っているゴドフリードと。
それを無視して遺跡内部の探索を続ける、正体不明の男たちだった。
とても温度差のある両勢力の姿に思わず、助けに入るのを躊躇してしまいそうになったが――

「この遺跡はクレーエ族の収容所だったはずだ。くそっ、研究資料などは、すべて何者かに持ち去られたあとか!
なにも収穫なしか。せめて、クレーエ族の生き残りでも、いてくれればと思ったのだがな。」
「生き残りがいたら、どうするつもりだったんだ?」
「なんだ貴様は?」

部下らしき男たちが、ジークに向けて銃を構えていた。
無数の銃口を突きつけられても、まったく動じないジークの姿は、堂々としたものだったが。

「おかしらぁ……。
奴らは、ナディたちの頭にも、銃を突きつけていた。

「お前たちはどうせ遺跡を荒らすのが目的のちんけな空賊か山賊だろ?
仲間の命が惜しければ、武器を置いてひざまずけ。
そこにいる変態ともども、我らの船で、奴隷兵として扱ってやろう。」

「わたくしは変態ではない!美しく麗魅な男と呼んでください!もしくは魔に咲き誇る薔薇の化身とでもー―

ジークたちに突きつけられた銃には、紋章が掘られていた。
それはジークたちクレーエ族を連行し、収監して拷問したガライド連合王国の紋章に瓜ふたつだった。

「……仲間には、手を出すな。」
すぐにでも吐き出したいほどの怒りを抑え込みながら、ジークは武器を捨てて両手をあげる。

「手を頭に置け。隠している武器がないか、部下に調べさせる。変な動きを見せたら、お仲間の頭に風穴が空くぞ。

「……ん?」
隣で、同じように丸腰にされて頭上に両手を置いているゴドフリードが、しきりに目配せしている。
(このままでは共倒れです。悔しいですが……ここは、あなたの力を貸して欲しいところですね)
「……なんだ?」
(あーもう! わたくしの麗しい目配せで、察してください!
わたくしが隙を作るので、あなたの持つ聖遺物を使ってこの危機を乗り越えるのです!)
「……目にゴミでも入ったのか?」
(あ~あ、もう。なんて鈍い男なのでしょう?もう、絶望しかありません)
そうこうしている間に、男たちはジークの懐に入っていた古代遺物(天運の六分儀)を見つけ出す。
「なにをしているのです!それをとられたら、こちらの切り札がなくなるのですよ!

「そんなに焦るということは、この古くさい六分儀は、よほど価値のあるものらしい。いただいておこう。」
「生憎だが、それは貴様には扱えん。俺ですら、持て余しているほどだ。」
「六分儀の扱いかたぐらい、飛空艇を操縦するものであれば、誰だって心得ている。バカにするな。」
「それが普通の六分儀だと思っている時点で、お前が持つにはふさわしくない。」

アクロイスは、露骨に不快さを顔に出し、手に持った拳銃の引き金に指をかけた。
そして、脅しのつもりでジークの頬をかすめる位置に銃弾を放つ。

「……ふっ。」
銃弾が顔をかすめても、ジークは微動だにしなかった。そして、銃声の響きが、あたりから消えたあと――
なんの前触れもなく、遺跡のなかに強風が吹き荒れた。

「な……なんだこれは?遺跡のなかだというのに、なぜ風が吹いている?」

吹きすさぶ突風により砂埃が立ちこめ、男たちの視界を奪っていく。
さらに風は吹き荒れる。足腰の弱いものは、風の強さに耐えきれず、その場に倒れこんでしまうほどだった。

「それが貴様のもつ古代遺物の力だ。価値のわからないものが持っていていいものではない。」

ジークは、すばやく《天運の六分儀》を奪い取ると、仲間に銃を突きつけていた男たちを素手で薙ぎ倒す。

「ナハト・クレーエに戻るぞ。ここにいても厄介ごとに巻き込まれるだけだ。
「さんきゅう、おかしら!それじゃあ、さっそく撤収のマーチ!いってみようか!


「うぬぬ……。空賊ごときにコケにされて、黙っていられるか! 逃すな!追え、追え!」



最終話 空賊たちの空



ぬははははつ!? 地下空間では、わたくしの持つ《極められた美》がいまひとつ伝わりづらかったがー―
地上に出てしまえは・こちらのものだ!わたくしのむせかえるほどの究極美を受け止め、そして涙するがいい!

「なんなのあのひと。さっき総魔軍は、陽に弱いんだとかなんとか、言ってたくせに。
「ほっとけ。奴の言う総魔軍とやらが、本当に存在するかも怪しいもんだ。

地上に出たナハト・クレーエ号は、漆黒の翼を広げて空高く羽ばたいた。
それに追従して地上より飛び立ったのは、古びた複数の軍艦だった。
それは先ほどのアクロイスが指揮する艦隊である。整然とした艦隊運動は、他の空賊とは比較にならない。

「おかしいと思ったけど奴らやっばり、どこかの国の軍人だったんだねえ。
「空賊じゃないのか?
「いや、空賊同然の存在だ。奴らは旧ガライド連合王国の残党だ。
「ガライドっていやあ……。」

ジークたちクレーエ族の仇である。
当然、ジークにとって憎い仇だ。ここでその恨みを晴らしたいのは山々だが……。

P「奴らの艦は、10隻? いや20隻ほどかも。どこかの王国の正規軍ぐらいの戦力さねぇ。

「なかなか手強そうな相手ですね。総魔軍元帥であるこのわたくしを躊躇させるとは、なかなかやる!
ここはひとつ……。傍観!静観!日和見!絶対的日和見!わたくしの辞書に『助太刀』という文字はない!
この場は、鴉どもに任せましようかね。日和日和日和日和日和日和日和っ!?ぬははははははっ!?」

「お頭、さっきみたいに古代遺物をつかって、この危機を乗り越えられないでゲビス?
「そうしたいのはやまやまたが……。いまは上手く、古代遺物を扱えない。
先ほどできたのは、寝起きで頭がすっきりしていたからかもしれない……。
G「真面目な顔で言われても、反応に困るでゲビス。
N「ちょっと~!向こう、撃つてきたよ!?
K「戦うのが得策じゃないのなら、ここは逃げるか?
J「逃げ切れるか?
K「へっ。このアドミラル・カルステンさまに不可能はないぜ!
何年このナハト・クレーエ号を操縦していると思ってるんだ?」

貴族出身で、いまは空賊という人とは違った経歴を持つカルステンは、このなかで一番ジークとの付き合いが長いと自負している。

貴族の堅苦しい生活に嫌気が差して、自由に憧れ――
ついに空賊になってしまった変わり租だが、本人はいまの自由すぎるくらい、自由な生活にとても満足しているらしい。

「とろくさい軍艦なんて、瞬きする間もなく、振り切ってやるぜ。」

長い収容所生活で、自由に生きたいと願っていたジークと自由に憧れていたカルステン。
ふたりの性格はまったく違うが、両者が見たいと思っている景色は、同様のものだった。

「そいつは頼もしい。」
「じゃあ、飛ばすぜ。しっかりつかまってろよ。」

と、舵を握る。
だが、黒い魔道艇は前ではなく、背後に突き進んだ。

「黒い鴉ども!わたくしの美しい艦にぶつけるとは!?これは、由々しき事態ですよ!

「やべえ、やっちまった……。いまのはなし! 俺のうっかりミスだ!
「もう、頼むわよお~。


「奴が持っている六分儀を奪い取れ。あの奇妙な力を持つ道具は、ガライド連合王国を再興するための力となる。
なんとしてもあの黒い小型艇を捕らえるんだ!」

「敵が追ってくるでゲビス!向こうもなかなかの速度でゲビス!
「振り切りたいんだが、魔力の供給が安定しないんだ。相棒、頼むぜ。もうちょっと勢いよく出してくれよ!
「出せと言われても……。魔力は、滝の水ではない。そうジャブジャブと吐き出せるか。」
「でも、このままだと追いつかれちゃうわねぇ。」

ざわめくジークの心。先ほど足を踏み入れた地下遺跡で、過去の悲惨な記憶を蘇らせてしまった。

収容所でジークを助けるため犠牲になった少女。
逃してくれた優しい軍人。
そして、連れて行かれたまま戻ってこなかった同胞たち。

さまざまな人間に対しての記憶が複雑に絡み合いジークの心を惑わせていた。

「いつまで、過去の亡霊に追いかけられているんだ俺は……。
そんなものに囚われている間は、いくら自由に振る舞って見せようが、本当の自由を手に入れたとはいえないだろう。
「過去は過去だ。完全に忘れるのは難しいかもしれねえが、足かせになるようなら、さっさと切り捨てちまえよ。
「カルステン。俺は、不自由そうに見えたか?
「貴族だったころの過去をさっさと捨てて、本当の自由を手に入れた俺さまに比べれば相棒、お前はまだまだだ。
「……ふっ。そうか。さすが俺の相棒(・・)だ。俺よりも先に、本当の自由を手に入れていたか。
笑うと、心が軽くなった。

ジークを逃すために犠牲になってくれたクレーエ族の少女――
彼女が手に入れたくて、結局手に入れられなかった自由は、ジークの手のなかにあったのだとようやく気づく。

しばりつけていた鎖が、音を立てて崩れ落ち、心の呪縛を解放する。

「おお!? 速度があがってきた!その調子だ!」

ナハト・クレーエ号は、一気に最大戦速まで上り詰め、白い雲を突き破り、天高く舞い上がる。
ガライド連合王国の戦艦は、いまだはるか低空を飛空していた。

いつの間にか、ゴドフリードの艦も、ガライド連合王国の艦も見えなくなっていた。
いまこの青い空を飛んでいるのは、ナハト・クレーエ号だけだった。


「猫を飼いたい……。もふもふした毛並みを触ると心が落ち着くと思うんだ。
そしたら、今回みたいなトラブルが、なくなると思う……。いいかな?」
「反対。猫は引っ掻くしな。」
「動物がいると思い切って演奏できないもの~。」
「猫の毛が精密機械に絡まると、ゲビスの命に関わる事態を招くから却下でゲビス。」

「そ……そうか。みんながいやなら、やめておこう。」
「元気出してジーク。私は猫好きだよ。」
「い……いいんだ。慰めてくれなくても……。」





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