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ソウルオブナイツ Story5

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最終更新者:にゃん

ストーリーまとめ

ソウルオブナイツ Story



story 轟くは戦の咆哮

story 謀りしは高貴なる蜘蛛

story 復活の海魔

story 英雄集う

story 御使い来たれり

story 伝説、そして若き伝説

story 灼熱の悪意

story よろしくお願いします

story 聖地を踏みしだく〈闇〉

story 魔影飛梁

story 大いなる獣

最終話 託されし想い


story 轟くは戦の咆哮



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 バートン率いる軍勢は、大神殿を望むアウロラの森で、周囲を囲まれていた――


 キース  

どうして、こういうことになる!


 ディーン 

わからねぇな。

だいたいこいつら、どっからでてきたんだ?


 バートン 

この場を突破しますぞ!


 アイリス 

この魔物たち……<>に……


 キャトラ 

う、ウソでしょ!?


 キース  

まさかとは思うが……

こいつが征討軍の本命ってやつか!?


 ディーン 

……見ろよ!


 大神殿の方角より――それは現れた――


 キース  

あの旗は……カイデン直属部隊!?


 ディーン 

親父……!!



 ギャレン 

なんだこの魔物の群れは――

だが、帝国もろとも踏みつぶすまで!


 魔物達を揉購しながら。<征討軍}>は帝国軍残存部隊に迫っていく!

 そして――軍団の先頭には――


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 カイデン 

白き光の名の下に! 聖王国の子らよ、悪しき闇を討て!



 バートン 

来ましたか――騎士王カイデン!



 ***



 一台のルーン装甲車が、その場に現れた。


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 メグ   

帝国と連邦が、やりあってるお!


シャルロット

んじゃ、この隙に大神殿ってとこに潜り込みますかね。


 メグ   

なんだかとっても、いきあたりばったりだおー。


シャルロット

しょーがないじゃん?

ま、チビ共だったら、この車に全員乗れるんだけどさー。


 メグ   

他の人たちも見捨ててはおけんのだおー。


シャルロット

帝国にも、出張ってもらいますかねぇ。


 メグ   

奴らのことを、邪魔してやるお~。


シャルロット

……仇を討つんでしょ。


 メグ   

…………


 メグは答えず、ハンドルを握り締める。

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story



 <氷の国>同盟軍が参加する帝国の軍勢は、バートン率いる二個師団の支援に向った。

 凄まじい数の魔物の群れ相手に、帝国兵はなんとか耐え抜いている。


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 ソフィ  

極光の輝きを――皆様のソウルをもって、今ここに!

凍て星のルーン>!!


 凄まじい冷気の嵐が、戦場に吹き荒れる!


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 カレン  

ソフィ様――我らも、及ばずながら!


 カレン率いる部隊は、<征討軍>投降兵からなる部隊である。


 投降兵  

カレン様、我らの命をあなたに!


 カレン  

ああ、みなの命、私が預かる!


 ソフィ  

カレン様、ご無理なさらずに。


 カレン  

心配は無用です。姫たる貴方が戦っているのに――

騎士を名乗るこの私が、引き下がれはしない!

白き光の加護を…………待て、なんだ、このソウルは……


 ソフィ  

どうしたのです、カレン様?


 カレン  

……お姉様、貴方という人は!



…………

……



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 ミューレアは、大神殿の前に布陣する軍勢の中にいた。


 ミューレア 

……さて……ここからが重要ね……


 ミューレアは、小さなルーンを取り出し、のぞき込む。

 ルーンには戦場の光景が、次々に映し出される――

 その光景は、戦場に放たれた魔物たちが見ているものだ。


 <奪視のルーン>――念じた対象の視界を奪う、希少なルーンであった。


 ミューレア 

そろそろ動きましょう……


 ミューレアが率いるは、<征討軍>でも最悪の部隊。

 <魔道軍>であった。


 ミューレア 

我が魔道によって、闇を討たん。

征討の光、今ここにあれ!


 帝国兵の多くは――<征討軍>の軍勢ではなく、彼らの魔道により葬られたのだ。


 ミューレア 

カレン……そこにいるのね。

さあ、あなたの力を見せなさい。

でないと死ぬわ……


 魔道兵たちは、己のソウルを、暁の賢者ミューレアに注ぐ。


 ミューレア 

業ありしものよ、罪ありしものよ。

汝らに、白き光の裁きを下さん。

流出せよ。創造せよ。形成せよ。かくして顕現せん。

白き滅びの光を――!

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story



 空を見上げたカレンは、姉の意図を察した。


 カレン  

滅びをもたらす大魔法か――

ここで止めなければ!


 カレンは、詠唱を始める――


誓いをここに。白き光よ、弱き者を守りたまえ

罪なき者よ、救い待つ者よ、汝らに白き光あらんことを

流れ落ちよ、生まれ出でよ、形象を為せ、かくして顕れ出でよ>!

白き救いの光を――



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 リアム  

どきやがれっても、どけねぇよなあ~。


 チェインド・ウイング・ナイツは、征討軍の陣地に切り込んでいた。


 リアム  

こーゆー月並みな奴は、二流っぽくて嫌なんだか、あえていっておくぜ?

まとめて来やがれ、ド三流ども! ……あーん?


 リアムは目の前にあるもの全てを斬り伏せ、前に進む。


 チャック 

ひゃにきっ!?


 リアム・マクラレン。嗅覚で生きる男である。


 リアム  

ヤローども!! 撤退!! 走れー!!


 チャックは己の鼻よりも、リアムの鼻を信じていた。



…………

……



 激しい閃光から目を伏せたソフィは、ゆっくりと顔を起こす。


 ソフィ  

こ、これは……魔法!?


 突如天より降り注いだ白い光が、全てを呑み込み、焼き尽くしたのた……!


 カレン  

くっ……がはっ!!


 ソフィ  

カレン様!


 カレン  

王家に伝わりし殲滅魔法、だが……同種の魔法で相殺すれば、威力を軽減できる!


 その言葉通り……帝国と同盟軍の周囲だけは、光の直撃を免れている。


 リアム  

……後退して正解だったぜ。


 チャック 

い、いきたここちが、しないっす~!!



…………

……



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 一匹の銀竜が、その場に飛来する。

 その背に業るのは、騎士と――商社マンであった。


 クライヴ 

なんだ、あの光は――!


ウォルター 

大規模殲厩魔法……ですか。


 地上に見えるのは、大神殿と、無残なる戦の光景である。



 クライヴ 

ここに戦力を集中させているみたいだな。


ウォルター 

魔物同様に、さらわれた人々に<>を植えつけるなら、大神殿に移送の必要はありません。


 クライヴ 

ここで何かをするつもりだな。


ウォルター 

こちらのプロジェクトが、戦争の原因ということになりそうですね。


 ***


 それは――轟いていた。欠片の輝きも持たぬ、ただ昏い――何者か。

 その中より、何かが這いあがった。


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 ドレイク 

ぴっぴっぴ~!!

いけない子だっぴ~!! いけない子だっぴ~!!

この匂いい~!! そこにいたっぴ~!!


 ソフィ  

――あなたは――!!


 ドレイク 

てえめえええがああ!!

余計なことを~してくれなきゃなああ!!


 リアム  

――テメーはぁ!!


 チャック 

アニキー!!


 リアムの母をさらい、罪の教団に売った男であった。


 カレン  

ソフィ様!


 ソフィ  

私はもう、逃げはしません。


 ソフィは、氷の矢をつがえる。


 ソフィ  

これが、凍て星の裁き――!


 矢は、ドレイクの眉間を貫いた!


 ドレイク 

でええええ!!

いってえええええ!!


 ――海賊だったものの体は、突如膨れ上がり――異形と化した!

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story 英雄集う



 海賊ドレイクだったもの――<>が生み出した異形は、凄まじい絶叫と共に、消え去った。


 ソフィ  

貴方の魂に、安らぎを――


 カレン  

これが――これが<>か。


 リアム  

そ~らしーな。フン……

面白くなってきやがったな。


 カレン  

お姉様――まさかあなたも、<>に――!



 ***



 ミューレア 

褒めてあげるわ、カレン。

本当に貴方、わかりやすいわね。


これであなたは<英雄>。

さて……他には誰が選ばれるかしら?



 ミューレアは<奪視のルーン>をのぞき込む……



 ***



 戦陣に現れた騎士王は、神気<ソウル>による嵐が如き剣を振るっていた。


 帝国軍  

ぐあああ!!


 カイデン 

>よ、帝国よ――灰となれ。チリとなれ。屍も残さず歴史より消えろ。


 バートン 

なるほどカイデン殿、貴殿は軍人が背負うには重すぎるものを背負ってらっしゃるようだ。


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 老将と騎士王は、それぞれの率いる軍を背に対峙する。


 ルーンライフルという武器がある。

 ルーンロケット、ルーングレネード。飛行艇、戦車、潜水艦。



 カイデン 

来い帝国。来い、悪しき権力よ。

騎士の誇りを教えてやる!


 バートン 

教えてあげましょう。

歯止めを無くした正義は、ただの暴力だと!



 しかし、いかなる兵器も。

 <ルーン>そのものを上回ってはいないのだ。


 よって二人の騎士は、剣と鎧、そしてルーンだけを携えて戦う。



 ***



 ギャレン 

なぜお前がここにいる――!! ディーン!!


 ディーン 

みんなに褒めてもらうためだ!!


 ギャレン 

だったらこちらに来い!

俺たちは正義を行ってるんだ!


 ディーン 

こんな戦が正義か!!


 ***


 ミューレアは、ルーンを見つめ、眉をひそめた。


 ミューレア 

そう――布石は打っておくものね。

彼がここに来る可能性を、考えておくべきだった。失敗の可能性は、潰しておくわ。


 ミューレアは、呪文の詠唱を始めた――


 ***


 ギャレン 

戦は醜いものだとも――

だが、血を流さなければ変わらぬものもあるのだ!


 ディーン 

そんなことをいってるんじゃねぇ!

全部まやかしだ!


 ギャレン 

黙れ……! 黙れ黙れ!!

その首を置いて地獄に行け!


 ディーン 

ど、どうしたんだお前!?


 先ほどまで、激してはいたが、正気を保っていたはずのギャレンであったが――


 ディーン 

(こいつ……こういう奴じゃ、なかったはずだ!)


 ギャレン 

そうか……お前がセリア様を殺したのか――お前がお前が!!


 ディーン 

なんでそこでお袋の名前が!


 ギャレン 

死ね、ディーン……!!

死んでこの俺に詫びろ!!


 ギャレンはソウルを込めた剣を、振り下ろした!



 ***



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 カイデン 

帝国の将帥よ。お前は、泥の中で息絶える。


 バートン 

(我がソウル……もはや無し。……万が一勝利しようとも、ここが我が死に場所となる

 歯がゆいものだな――軍人の人生というものは!)


 カイデン 

ふんっ!


 カイデンは、老将の体を、袈裟懸けに斬り下ろす。

 崩れ落ちる老将を、カイデンは冷ややかに見おろした。



 その響きは――島の全てに響き渡った。

『――来い、ふさわしき御使いよ。我を受け継ぐがいい。』



 ディーン 

何だ――今の声は!?


 ギャレン 

何を言っている!?



 カイデン 

――目覚めたか。獣よ。<大いなる獣>よ。



 ***


何だよ、今の唸り声は。


シャルたん、あれを!


 ***


海が、割れた……!?


これは驚きましたね。


 ***


とてつもなくヤバイな……こいつは。


あれは一体……


白の王国の――忘れ形見。


 湾の中より……巨大な遺跡が浮かび上がった!


 キャトラ 

あれが……約束の地の遺跡?


 アイリス 

うっ……


 キャトラ 

どうしたのアイリス!?


 アイリス 

お願い、手をつないでいて――主人公……



 ***



 倒れ伏した老将を見て、ディーンは走った。


 ディーン 

バートンさん!!


 ギャレン 

待て、ディーン!!


 アイリス 

……そんな……!


 無残な戦場で、親子は再会する。


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 ディーン 

親父! あんたはどうして!


 カイデン 

ディーン! どうしてお前が!


 ディーン 

俺はあんたに褒めてもらいたかっただけだ!


 カイデン 

どうしてお前のような! できそこないが!!


 二人の剣はぶつかり合う――


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 ギャレン 

ディーン!! お前は俺が斬る!


 割って入ったギャレンに場を預け、カイデンはその場を立ち去る。


 ギャレン 

騎士を捨てたお前は!!

正義を捨てたお前は!!

ここで死――


 ディーン 

うるせえよ!


 ディーンは、ギャレンの剣を受け止め、爆発的なソウルで弾き飛ばした!


 ギャレン 

ぬああああああ!!


 ディーン 

親父……!


 ディーンは大神殿へと走った!


 キース  

おい、ちょっと待ちやがれ!!


 キャトラ 

あっ、ディーン!?

ほっとけないわ、いきましょう!



 ***



 ミューレアは、目の前に広がる成果を見る。

 湾内に澪上した大神殿の<本殿>を。


 ミューレア 

英雄は選ばれた――

あとは彼らか選べば、全ては終わる――


ディーン。正直驚いているわ。

まさか貴方が、英雄だとでも――?

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story 御使い来たれり



 征討軍は、帝国軍との戦いを切り上げ、大神殿の<本殿>に進軍を開始していた。

 一方帝国軍は、バシレウス要塞に撤退を始めている。

 ディーンとキース、そして、主人公は、征討軍の目をかいくぐり、大神殿〈本殿〉へと侵入していた。


 ディーン 

バートンさん……!


 アイリス 

ううっ……


 キャトラ 

どうして……どうして戦争なんが……。


 老将の遺体は、帝国の兵たちが引き取っていった――


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 ディーン 

バートンさん、俺……

終わらせてきます。


 キース  

ディーン、このまま奥まで行くつもりなのか。


 ディーン 

ああ、クソ親父をぶっとぼす。

なにしてんだって問いただす。


 キース  

しゃーねぇな。俺もいってやるぜ。


 ディーン 

キースが乗り気ってことは、勝算があるってことか?


 キース  

これを勝算といえるかはわからんがな。


 ディーン 

それにしても、さっきの声はなんだったんだろうな――


 キース  

声ってのは何だ?


 ディーン 

ふさわしき御使いよ~とか、我を受け継ぐがいい~とか。


 キース  

まさか……お前?


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ウォルター 

はて、声と申されましたか?


 キャトラ 

どなた?


ウォルター 

わたくし、こういうものです。


 ウォルターは、キャトラに名刺を渡した!


 キャトラ 

名前の書いたカードね! わかりやすいわ!


 キース  

それより<>だ、あんたも聞いたのか、ええっと……


 キースは名刺を見た。


 キース  

スズキさん。


ウォルター 

スズキでございます。

先ほどそちらがおっしゃっていた内容の声を、私もたしかに耳にいたしました。


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 クライヴ 

なんだ主人公。お前たちも来ていたのか?


 キャトラ 

クライヴ?


ウォルター 

そちらのクライヴ様も、<>を聞かれたとのことです。


 クライヴ 

御使いかどうとか、受け継げとかそういうのか。


 リアム  

何だクライヴじゃねぇか。メンズナイツの撮影か?


 ソフィ  

皆様、ごきげんよう。こちらは危ないですよ?


 クライヴ 

リアムにソフィまで!?

まさか、アンタらも<>を?


 カレン  

――ああ、聞いたとも。あれは尋常な声ではない。心の中に直接響いた。


 キャトラ 

どちらさま?


 メグ   

この子はカレンたんだおー。

とってもいい子だおー。


 兎のような少女が、キャトラを抱き上げた!


 キャトラ 

アンタは誰?


 メグ   

メグだおー。


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シャルロット

トラじゃん。なんでこんなとこに?


 アイリス 

シャルさんも!?


 メグ   

みんなもあの変な声を間いたお?

シャルたんとメグも聞いたお!


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 ジュダ  

なるほど、な――


 黒い軍人が、忽然と現れた!


 キャトラ 

また! いろんな人と初めましてだわ!?


 ジュダ  

お前たちは皆、あれの声を聞いた。この地に眠る神獣の声を――

お前たちはいずれも、英雄と呼ばれるにふさわしい働きを行った。

不本意ではあったが、この俺もな――


 ディーン 

やっぱり――そういうことか!


 魔人フーゴと戦い、本能で追い詰めたリアム。


 ドレイクの艦隊を凍らせ、魔人と戦ったソフィ。


 征討軍の企みに気づき、魔人に止めをさしたカレン。


 剣豪シンザンを倒したクライヴ。


 ヘクトルと戦い、心を動かしたウォルター。


 狂焔の御子を倒したシャルロット。


 シャルロットを励まし続けたメグ。


 ジュダは、ベルメ修道院の人々を助け――。


 ジュダ  

九人の英雄をそろえ、<大いなる獣>を目覚めさせる。

そいつが征討軍の真の目的だ。


 ディーン 

そんなことのために――奴ら、戦争を始めたのか!?

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story



 リアム、ジュダ、シャルロットの三人は<本殿>の内部を強行突破していく。


シャルロット

えっとさー、めんどいから、簡潔におせーてほしーんだわ。

さらわれた連中は?


 ジュダ  

大神殿<拝殿>の地下礼拝所に幽閉されているはずだ。


 リアム  

何万人って数だぞ……!?


 ジュダ  

ベルメの修道士たちは、毎年この時期に、大神殿の礼拝所で一夜を過ごす。

白き光と九人の御使いに祈りを捧げるためにだ。そのために何千年とかけて築かれた場所だ。

捕えるだけなら、十万は余裕だろうな。


 リアム  

征討軍、さらった奴らを、どーするつもりなんだ?


 ジュダ  

生賛――だな。

目覚めたばかりの奴は、腹を空かせている――


 リアム  

大いなる獣>って奴か。


 ジュダ  

奴の<本能>は<闘争>だ。

この世全てを破壊するまで、ひたすらに暴れまわるだろう。


シャルロット

はーい。生費にされた連中を全員助ける方法は?


 リアム  

利用価値があるうちは、殺されねぇよな、ダンサーの姉ちゃん?


シャルロット

ダンサーじゃねーし!


 ジュダ  

利用価値があるうちに、利用できなくすればいい。


 リアム  

<大いなる獣}>か。ま、伝説と呼ばれるこの俺の相手にゃふさわしいよな~!


シャルロット

伝説って……なにそれ。


 ジュダ  

……ふん。


 リアム  

嗅いだか。


シャルロット

あんたら、わんちゃんかよ。



 リアム  

姉ちゃん。黒いオッサン。あんたらは、先に行け。


 ――通路の先より、凄まじい気配がもれていた――


シャルロット

なぁ~に自分の世界に浸ってんだか……


 ジュダ  

そうだ、鎖をひきずる騎士よ。

お前は確かに望んだのだろう。

だがその鎖、いつまで引きずっていくつもりだ?


 リアム  

鎖、ね……


 ジュダ  

俺はこの先に用がある。

届けねばならぬ――皇帝より預かりしものを。


シャルロット

じゃーな、リア公。

寝ざめわりーから死ぬなよ。



…………

……


 リアムは、静かに剣を抜く。


 リアム  

――この時のために、この俺は――

いや、そいつもダセぇ。俺はもう――


 そこにいるのは、修羅であった。

 剣のために全てを捨てて生きた男であった。

 リアムは確かに、その生き方にあこがれていた――


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一秒デェ……オワラセルゥ!!


 リアム  

ダセぇな。今の時代は、こういうんだぜ?

この一撃が――伝説だ!


 巨大な異形は消滅した――

 そして、暗い影の中から、男は立ち上がる。

 今になってわかる。己が求めていたものが、何か――

 伝説の剣豪は、構えた。若き伝説もまた、構える。


 リアム  

ウウウウウウオオオ!!


ハアアアアアアー!!


 二人の剣士は、笑った。



…………

……



 大神殿に布陣した征討軍の兵士たちの間を、銀の弾丸が突き破る!


ギュンギュンギュン……

ギュオオオオーン!!


 クライヴ 

行くぞヴィエム!!


ど、ドラゴンって!! 速いな!!


お、落ちる!!


 クライヴ 

しっかり捕まってろ!!


ドラゴンライダーを撃ち落とせ――!!


ウォルター 

ジャストアイディアで、失礼いたします!


 ――巨大な鎌が兵士たちの一陣を切り裂いた!!


これが御社のご提案なのね!


そうなのキャトラ!?


……てぇめぇらぁ~。


ひっ……これは、闇ッ!?


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 突然現れた、黒く燃え盛る焔は、征討軍の兵士たちを次々と呑み込みながら、膨れ上がっていく!


こいつも<>か。


征討軍の連中を、呑み込んでる!


――こいつらは、何なんだ?


何なんだ、とは何だ。


――<>は、悪そのものだって教わってきた。

でもあれは――なんていうか、異質――なんじゃ?


(……異質……? 異なる原理? こいつらはなんなんだ?)


俺にめんどーを~!!

かけさせんじゃねぇえ!!


ウォルター 

お世話になっております!


 ウォルターは焔に名刺を渡した!

 名刺は燃えた!


ウォルター 

わたくし、ネプチューンPLC、営業本部、第一戦争支援部、チーフマネージャー、ウォルター・スズキと申します。

これよりわたくし、こちらの武装を用いまして、御社のビジネスをドラスティックにキュレーションいたします。


 焔の中から、巨大な影が立ち上がった!



めんど~くせぇんだよぉ~!!

燃え尽きやがれェ!!

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story



 ウォルターの鎌が、忌まわしき狂焔を討ち果たした!


ぐぁぎゃあああああ!!


この俺は……御子だあああああ!!

この世の頂点だああああ!!


ウォルター 

いかがでしたか?

弊社のソリューションは?


救い……救いなんてェえええ!!

そんなものお、そんなものおお!!


ウォルター 

さようでございますか。では――


 商社マンの最後の挨拶は、決まっていた。


ウォルター 

以上、よろしくお願い致します!


なあああにがよろしくだああ!!

ぎゅええええええ!!


 狂焔の御子は、焔の中に消えていく――


ウォルター 

では、先に進みましょう。


 キャトラ 

アンタ、何者なの……


ウォルター 

ビジネスマンです。


…………

……


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 メグとカレン、ソフィの三人は、ファフナーの後について進んでいく。


 メグ   

カレンたんのおつきの人はとっても有能さんだお~。


 カレン  

有能だが、たまに私に甘い。


 ソフィ  

優しい方なのですね!


 メグ   

カレンたん……仇をとってくれて、ありがとだお。


 カレン  

君が、仇を取るべきだったのだろうがな。


 メグ   

その件で、気になることがあるんだお。


 ソフィ  

気になること?


 メグ   

ゼノが死んだ時の状況――革命軍のみんなであいつを追い詰めたときの状況とそっくりなんだお!


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 革命軍は、銀の諸島を中心に数々の犯罪を行っていたゼノを追い詰めた――

 しかし、追い詰められたゼノは――


 カレン  

自爆しただと――!?


 ソフィ  

では――


 メグ   

あいつは――生きているかもしれないお!

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story



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 至聖所に降り立ったミューレアは、儀式の準備を終えていた。


 ミューレア 

――さあ、来なさい、英雄たち。


 ミューレアは<奪視のルーン>を見ながら、微笑む。


 ミューレア 

貴方たちを依代に、<大いなる獣>は召喚される。その命、滅びに捧げなさい。


 カイデンの手には、激しく光り輝くルーンがあった。


 カイデン 

九人の御使いは来たり――我は汝を従えし者。


 騎士の王は、祭壇に向けて命じる。


 カイデン 

出でよ<大いなる獣>よ――!



…………

……



 シンザンを討ったリアムは、その場に崩れ落ちた。


 リアム  

くそっ……なんだってんだ!


 大神殿の巨大な柱の陰で、白銀の騎士と神気道の使い手は、苦痛にこらえていた。


なんだ、こりゃ……!


クソッ……こいつは一体!


始まりやがったか……


ウォルター 

ふむ、いけませんね――


 ウォルターは平然としている。だが――その眼鏡に、ひびが入った!


 崩れ落ちた光焔の御子の体を抱き、黒い軍人は至聖所に向って歩く。


はあ、はあ、はあ……!!

がああああああ!!


この俺を使うか――万物の破壊者たるこの俺を。

ならばお前の生み出す滅びは、世界そのものを滅ぼすだろう。


 大神殿の回廊で、ソフィとメグは互いの体を支え合っていた。


 ソフィ  

……何が……!


 メグ   

聞こえるお……これは……この叫びは!


我らを依代に、この世にあってはならないものを呼び出すつもりか。


 立ちすくむカレンの唇より、血が流れる――

 カレンの姉ミューレアが、最も得意とする魔術。それが<召喚>であった。



…………

……



ズアズア……ズアアアザアー


 祭壇から、凄まじい光が発せられた。ソウルの輝きである。

 騎士王が手にしたルーンが、一際強い光を放つ!


 カイデン 

応えたか、獣よ。

さあ、ルーンの光に従い、我が望みを果たせ!


ズアアア……


 カイデン 

そうだ!!

帝国と連邦が争うことなき世界を!!

戦争の無い新世界を!!


誰も私に頼ることのない世界を!



 ミューレア 

それは――どんな世界なのですか?


 背後に現れたミューレアを、カイデンはちらりと見る。


 カイデン 

このカイデンの人生は――頼られてばかりだった。

誰もかれも! この俺に何かを押しつける!!


 ミューレア 

まあ、そうだったのですね――


 カイデン 

押しつけて押しつけて!!

期待を外れると見捨てる!

もう嫌だ!!


だから俺は望む!!

誰もこの俺を頼らない世界を!


…………ズア、ズア、ズア。

ズアーザア……


 ミューレア 

それは――誰もいない世界。

ご安心ください。<>は、あなたの夢を叶えるでしょう。


 カイデン 

ミューレア、貴様は――!


 ミューレア 

貴方、どんな世界も……望んでないもの。


 カイデン 

これほど望んでいるではないか!


 ミューレア 

もう自分に押しつけるな。

一言そういえばよかったのです。


 カイデン 

なんだと……


 ミューレア 

貴方は、それを言葉にしたら、もう誰も自分を頼ってくれないと、そう思い込んでしまった。

なんと気高く強く、そして愚かな振舞いでしょう。


俺は――!


貴方に<>を操ることはかないません。その<調停>のルーンをもってしても……

(他の誰にも、ね……)


ぬうううう……

ぬうううううおおおお!!


ズオア!! ズオアズア!!


さあ獣よ、目覚めなさい。

その本能のままに、あらゆるものを滅ぼしなさい。


結局この俺がやるのか!!

この俺が!! この俺が!!


カイデン様、何を――!?


征天討神剣――!!

神如きが、俺に逆らうな!!


な!?


ズアオアア!?


 カイデンの剣技は、祭壇ごとソウルの塊を両断した!


ズアズアズアアアアアア!!


 ミューレア 

神を――神を殺したの!?

そんな、そんなことが!?


 カイデンは、大いなる獣のソウルを全身に吸い込んだ!


 カイデン 

俺と共に来い!!

俺の意に従え――!!


いつまでもこの俺を頼る奴らを!

俺にばかり背負わせるこんな世界を――!


 世界をどうしたいのか。この世界をどうしたかったのか。

 何も無かった。この男には、何もなかった。神をも殺す力を持ちながら。


 消し去る――


 辿り着いた答えは、至極単純だった。



…………

……




 ディーン 

何だ、こりゃあ……


 苦痛から解放されたディーン一行は、本殿の最奥、至聖所へと足を踏み入れる。

 目の前にあるのは、巨大な光の塊であった。



これは、ソウルの発する光ですね。


そういわれれば、そんな気もするな。


 散らばっていた騎士たちも、全員がこの場に集まった――


お姉様――!


 目の前にいる人影に、カレンは叫ぶ。


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これが何だと思う?

多くの人に称えられた、騎士王のなれの果て。

馬鹿な男。自らが破壊者になり果てるなんてね――


全ては――


大いなる<>の意志。


将軍――!


 キャトラ  

>ですって!?


 アイリス  

――間違いないわ……!

なんて力――存在するだけで、世界を否定するなんて!


世界の破壊者たる<>は目覚め、忌まわしき白の世界を完膚なきまでに破壊する。


全てを支配するは<>!

そう心得よ!!

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 騎士たちは、<>の生み出した魔物を退ける――


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 ジュダ  

ビゴー・マグナス。いや……

古き闇>マグナスオルムよ。


我が古き名を知るか。


 ジュダの背後より、<>が現れ、その中よりジュダの背丈ほどの何かが現れる。


あれは……棺?


 豪華な装飾のされたそれは、まさしく棺にほかならない。


お前は<帝国>の人民を、<>により穢した。故に――

皇帝陛下は、汝にこの棺を賜る。謹んで受け取るがいい。


ふざけるな――

ぬ……う――!?


 一瞬だった。黒い獣は、ビゴーの体を呑み込んだ。


――<>を、食った!?


(さすがね、帝国――いや<元老院>。帝国の真の支配者たち……!)


 <>を一撃で――跡形もなく――!?


 ――だが、その場に突如として光の球が出現した!?

 光の球は、膨れ上がっていく!!


なんだこりゃ! みんな逃げろ!


予想外だったけど……

まあいいわ――カイデン、あなたでもね……!


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どこに行く気だ~? ミューレア~!


 ゼノの手には、<調停のルーン>が!


おめえの目的くらいなぁ~

わぁ~かってんだよ!


何を言っているのかしら?


<大いなる獣}>ォ~!!

てえめええの力を、この俺に!


なっ……!?


ゼノー!!


この時を待ってたぜええええ!!

神獣そのものをこの俺様に融合させるこの瞬間をなあ!


させないおー!!


ウサ公~!! なぁ~んて俺はツイテるんだぁ!この力でェ~!

おめえを直接ぶっ殺せるたぁな!


 <帝国>……あまりに巨大なかの国家において、皇帝の立場はそれほど強くない。

 むしろ、権威だけあってなんの実権もないのが帝国の皇帝である。


おめえを殺したらぁ……

ちょっくら<帝国>に伺って、チョイチョイっと皇帝を殺す。


 それゆえ、ゼノの<首飾り事件>は成立したという背景がある。

 皇帝の軽挙は、皇帝家の立場を危うくした――はずであった。


何しろ、俺は、バカにされるのがでえええ嫌いなんだよぉ!


 ところで帝国の皇帝家には、非常に奇妙な風習がある。

 皇帝家は、葬儀を公表しない。さらに、皇帝即位の儀式も、公表しない――

 よって、現在の皇帝が果たして何代目であるのか、帝国の誰も知らないのだ。


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この匂い――ああ、お前はあの時のゆすり屋か。


――ンァ~!?


あいつの蒼ざめた顔は、実に見ものだったぞ?


『おこづかいが減らされちゃう~どうしようジュダ~』ってな。


ヴァアアアアアカにすんなああ!!

人をバカにしていいのはなぁ~

この俺さまだけだってんんだよ~!!

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 異形の魔獣は、動きを止めた。


――ソフィ様!


――凍りつきなさい!


<凍て星のルーン}>は全ての存在を停止させる。爆発は不可能。


そして魂を捕える我が魔術は、すでに発動している。


分身も全部あの世に送ってやったからな。詰みだぜ。


(――と、思うのがお前らの馬鹿なところよ――!)


 異形は、姿を消していた――あらゆる光、音、匂いを遮断して。


透明化>という水準ではない。


う、うそおー!?


今の俺はあ~この場のソウルで、影を無数に作り出せるゥ~!


ゼノ……! どうして、パパとママを殺させたおー!!


なぜってそりゃ~。邪魔だったからよ。

この俺がせっかくスラムのガキをさらってくるだけのカンタンなお仕事を紹介してやったのによ~。

あのウサ公、この俺様の申し出をことわりやがったのさあ~。


お前……


だか何より許せなかったのは、あのウサ公どもの偽善だ。


金の無い連中を救う? 馬鹿なの?

勝手に死ねばいいだろ~?

俺、間違ったこといってる~?


 メグは――聞いていた。聞こえないはずの音を。響くはずの無い音を。


そういう偽善はぁ~許せんのよ。

こぉの俺様はぁ~。だから、最高の方法で殺してやった~!

ちょこっと金を積んで~望みを聞いてやったら、銀の諸島の役人ども、俺の意のままになりやがった。


また増えやがったあ! めんどい~!


っつうわけでえ~!

クソウサ公には後を追わせてやるせえ~!


うるさいお!


 メグは――手にした槍を投じた!


へぶっ!?


 何もない空間に――槍は突き剌さる!

 メグは聞いていたのだ――ゼノの心音を!


た、魂の、移動――!!


 カレンの術はまだ発動している!


しゃあねぇ、自爆を――


極光よ――!!


 ゼノの全身は、一瞬で凍りつく!


てめえてめえてめえええええ!!

<死ぬ>だろてめええええ!!


 突如、光の中から現れた巨大な前足が――


ぐぼああああああ!!


 凍りついたゼノの体を押しつぶした!


何だ――何だこいつは!!


ドケェ……!!


 光は消えた。そしてその中から現れたのは――巨大すぎる存在。


ズオオオオウ……

コノ、カイデンガァ……!

スベテヲ、ケシサル……!!


これ、親父……なのかよ……


ぐはっ! ……まずい、ぞ、ソウルが、奪われる――!


 その場にいる者たちのソウルが、巨獣に吸われていく。


力が――くそっ――!!


もう、立てないお……!


<英雄>であろうとなかろうと、獣の前では全て賛か。

くく、そういうものだろうな。


くっそ~! あんにゃ、ろ……


いけま、せん、ね……


デカブツがあああああ!!

くっそ……!!


――終わりなのか――何もかも――そうだよな。


俺みたいな……誰かに褒めてもらいたいだけの奴に……

何かできるはずねぇじゃねぇか。

もうソウルだって、欠片も残っちゃいねぇさ……

それでもなああ!!


諦めきれるか!!


お前、ほんっとバカだよなあ……


でもそういうあきらめの悪いトコ、すげえよなあ、ほんと……


えっ?


だから、すげえって。


いやあ、照れるなあ~。


あ、あれ?


ソウルが――?


戻ってきたぞ?


……えーっと……

ディーンたん! えらいお! すごいお!


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そっか? それほどでもないぜ~!


どういうことよ!


ディーンさんが、ソウルの流れを

私達の方に向けてくれている!

すごいですディーンさん!


なんかみんな褒めてくれるから、

とっさに思いついたんだよ~。


ソウルを操る技だったら、俺の十八番だった!

みんな拍手!!


すごいです、ディーン様!


すばらしいです。ディーン様。


あーすげえすげえ。

ほんっと、すげえよ、あんた。


それは同意だ。

バカだがすげえぜあんた。


いいんじゃないか!


フン。


実に見事だ!


いや~俺って、褒められると、伸びるタイプなんだよな!


ディイイイイン……!!

オマエモ……オレ、ヲ……タヨルノカァ……


別に、頼ってねーけど。


……ナン、ダト……


あんたいってたじゃねぇか。

誰にも頼るなって。


ズウウウウウウ!!

ズオアアアアア!!


 頼られてなどいなかった。

 勝手に重荷を感じて、勝手に潰れた。それだけだ。


 巨獣は咆吟した――!!


BOSS



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 大いなる獣は倒れた――

膨大なソウルが、解き放たれる。


  親父!!


 ディーンは、神獣より解き放たれた父を、助け起こした――


立てるか、クソ親父。


――誰も、この俺など――


頼ってるさ。でも、全部は頼ってない。

俺もそうだしよ。


――ディーン、しばらく見ないうちに、お前は――


そうそうあんたにゃー頼らねーよ。クソ親父!


ディーン!!


 背後からの、斬撃であった。

 騎士王は最後の力で立ち、息子を突き飛ばす。


――うっ――!!


親父!!


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……カイデン……様……?

俺は――俺は何を――


ギャレン――てめええ!!


 カイデンは袈裟懸けに斬られる。ギャレンは……ミューレアの暗示にかかったままだった。


これが、報いか……

息子の信頼を、妻の信頼を、信じて頼ることを――裏切った……


……ギャレン!


いけない……早く傷を!


 アイリスは、魔法でカイデンの傷を癒す――


ディーン……お前は……この俺が……!


 二人の騎士は、剣を構える――


やめるお!! ……えっ!!


むっ……これは、先ほどの痛み!?


そういうことか。


<大いなる獣}>が、また目覚めちまうのか――!


ディーン!!


止めるな!!


やめろ、ディーン。剣を置け。

ギャレンさんっていったな。

あんたは多分正気じゃない。


――まさか。


 カレンは、ギャレンを見た。その目を――


精神操作か――ならば!浄化の精霊よ!


はっ……俺は一体……


わかったろディーン、操られていただけだ。


だったら……許されるのか!?


許すのはお前だ、ディーン。

お前にしかできない――!


だから、お願いだ。

全てを――許せ――


そんなことができるか――!!


お前ならできる。


 ディーンは、激しい痛みに

耐えながら、宙を見上げた。


――そうしたら、みんな、

褒めてくれるか――?


馬鹿息子……め。


クソ親父……!


ディーン、お前に全てを託す――


…………馬鹿野郎。どうして、最後の最後に――


 こときれた父を見下ろしながら、若き騎士は立ち上がる。


カイデン殿……!!


征討軍かっ……

こんな時に……!


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征討軍、戦は、終わりだ――

それが、カイデン・バルトの意志だ。


ご子息に、全てを託されたか。


ああ、そうだ――彼が、騎士王の意志を継ぐものだ。


なればそれが、征討軍が意志。この戦を終える。


――帝国は、停戦に合意する。


――痛みが引いたぞ?


元気になったお!


戦争は終わった。

英雄はもう必要ない。

だったらもう<>は――


って、ちょっと待て! この声は――


 一同の心に、声が響いた――


よくぞ――この我を征討した。


我は戦争により生まれた獣。

されど我が司るのは、戦争だけにあらず。


そう、お前は――<調停者>だったな。


調停はなされた。

真なる<英雄>たちよ。

汝らに我が力を託そう――




…………

……




 聖地を巡る戦いは終わった。


征討軍は連邦軍要塞に撤退。

帝国側には増援部隊が到着。


半ば予定調和のような形で、長く続いた戦いは振り出しに戻った。


戦後、連邦基地にて謎の事故が起こり、クリストファル要塞は崩壊、基地は放棄された。


征討軍>は総司令官ヘクトル・ヴァランガのもと解散され、彼らか捕えた人々の全員が解放された。


飛行島で、主人公は激しい戦いを思い返す――




…………

……



 大空を、一隻の飛行艇が飛んでいた。その甲板上に、ソフィとカレンがいる。


皆様を氷の国にお迎え出来て、本当に幸せです!


お招きありがとう。ソフィ様。


そうそう、カレン様……<剣の国>でずいぶんご多忙とか。


雑務に追われる日々だ。

総長の補佐といっても、これがなかなか忙しくてな。


ギュオーン!!


 飛行艇の脇を、銀色の竜と騎手が通り過ぎた――

 竜の背に乗るは二人の騎士。


いいねぇ~。おいクライヴ、そろそろ運転かわれ。


ヴィエムは乗りものじゃない。

それにお前、ドラゴンライダーを甘く見過ぎだ。


クライヴ様! リアム様も!


騎士クライヴ、道中お守りします。


ところでクライヴ、カレンもある意味お姫様じゃね?


なんだと!?


私は姫ではない! 騎士だ!



…………

……



 ルクサント王国の、小さな村――


シャル姉ちゃん、メグ姉ちゃん、あそぼー!


いいおー、高い高いだお~!


シャルお姉ちゃん!

あじぇんだって知ってる?


スズキ~。

ウチのチビに変なこと数えないでくれませんかね。


ビジネス用語を身につけれぱのちのち役にたつと思いますが。


孤児院が再建できたのも、皆様のおかげです……


気にしないでだお~。

スズキさんの会社、なんだかもうかったみたいだし、おごってもらうお~。


いえいえ、停戦交渉のフィーをいくらか……おっとこれ以上はコンフィデンシャルですね。


よし、いろいろ片付いたから、しばらく休むかね~。


これで~全部おわったお~!




…………

……



 ――聖地を遠く離れ、暁の賢者は<帝国>の首都にいた。


ミューレアは、真紅に光るルーンを手にしている。

宮殿の最奥――そこで賢者を待ち受けたのは、黒い軍人である。


闘争のルーン>やはり、貴様が手にしていたか。


大いなる獣>を操るためには、<調停のルーン>ではなく、こちらが必要というわけ。

――手土産には、十分でしょ?


さあな。……<元老院>はこの奥だ。せいぜい楽しめ。


 ミューレアは、宮殿の奥に消える。


馬鹿な女だ――元老院は、お前の思っているような組織ではない。


帝国を牛耳っていると錯覚している、どうしようもなく老いさらばえた害虫どもだ。

せいぜい、奴らの玩具となってやるがいい――



…………

……



 一台のトラックが、街道を走っていた。


ま~なんだかな~俺はやっぱり、みんなの笑顔か見たいんだよな~。


はいはい、うるせーよ。ところでお前、騎士団どうすんたよ。


騎士団総長なんて、ガラじゃねーからな~。


託されたんだろ。


ああ託されたぜ。

だから俺はもっと、いろんな人に褒めてもらいたいんだ!


 戦争は終わったが、世界から争いが消え去ったわけではない。


だが人は知る。希望はあると。いつか、誰も見たことのない平和が訪れるかもしれないと。


いつか、きっと――託した想いの先に――

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後日談 飛行島

ディーンカレンソフィリアム
シャルロットメグジュダクライヴウォルター

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