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【黒ウィズ】ズローヴァ・ヤガダ編(ウィズセレ)

最終更新日時 :
1人が閲覧中
最終更新者:にゃん
2015/04/16





「……それで、貴様は「それ」を見たのだな?」


地獄の底が煮えたぎるような低い声で、ズローヴァは配下の魔物に問いかけた。

怒りに燃えるズローヴァに怯えながら、魔物たちは彼に見たままを話す。


「へ、へえ。あいつ、突然現れて、そのへん全部無茶苦茶にしていきやがったんス!

お陰で餌場が全部毒の沼になっちまって、もうさんざんですよ!!」


「それに、アイツに見られただけでヤラれちゃうんすよ!

見られただけで体が塩のカタマリになっちゃって……ボクの友達も……!」

「ムゥゥ……!! 我がほんの少し神殿を離れてしまったばかりに……!」



魔物たちの言うとおり、周辺は毒々しく荒らされ果てていた。

彼の守っていた神殿も例外ではない。柱は折られ、屋根は崩れ落ち――

神の宿るとされている巨大な台座も、粉々に破壊されていた。


「我が配下だけでなく……。

我が聖域まで侵すとは……!!

此度の下手人、我が戦斧にて両断してくれる……!」


鼻と口から怒りの炎を吐き出しながら、スローヴァは怒りに燃える瞳で周囲を見やる。

破壊の後を追い、スローヴァは炎を纏い歩き始めた。




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木々や草花をなぎ倒しながら、スローヴァは往く。

破壊の跡は新しくなっていき、周囲に満ちる瘴気も強くなり始めていた。

だが、スローヴァの炎はその瘴気すらも焼き尽くしていく。

暴走する猛牛のごとく、彼は進んだ。


「……どけ。」


おそらく、この破壊をもたらした者の配下だろう。

いびつな姿をした見たこともない怪物が、彼の行く手を阻んでいた。


「言葉すら通じぬか……この世のものとは思えぬな……。」


ふと、彼は思う。

……。仮に、この者達が本来的な意昧での異邦人だとしたら。

暴れ回ったわけではなく、『ただそこを通過した』だけでこうなってしまったのではないか。

もしかして、この者達は『そういう存在』なのではないか。

どこにも行けず、どこにも留まることの出来ない、この世界にとっての異物なのではないか。

つまり、神殿や土地を破壊し尽くしたのは、もしかして事故のようなものだったのではないか、と。


「……哀れな存在なのだな、貴様達も。」


ズローヴァの敵意は急激になりを潜め、怒りの炎は空気に混じり消える。

それを察したのか、臨戦態勢だった眼前の怪物たちも、自然と警戒を解いた。

仮に住む世界が違ったとしても、分かり合うことが出来る……。

そんな雰囲気が、周囲に満ちはじめていた。――が。


「だが、我は許さぬ!!!!

貴様達がどんな哀れな存在だろうとそんなものはどうでも良い!!

お前たちが破壊したのはあらゆる世界に於いて最も寛大で深い慈しみを持つ――。

邪神ルルベル様の御神殿!!」


周囲の木々が裂けるほどの声量で、叫ぶように言い放ちながら、ズローヴァは足を踏み鳴らす!


「ルルベル様は御神殿が破壊された程度では眉一つ動かさずお赦しくださるだろう……!

だが!! だが我は許さぬ!! 貴様らそこへなおれ、たたっ斬ってくれる!!」


爆発的な怒りの炎を全身に纏いながら、ズローヴァは戦斧を地面に叩きつける!

それを合図にして怪物同士の戦いが始まった!!





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「フウウウウウ……。」


周囲を焦土に変えながら、ズローヴァは戦いを終える。

怪物も毒気も、彼の纏う獄炎によって跡形もなく消滅していた。


「……手応えのない。こ奴らは雑兵か斥候だったというわけか。」


彼は堪え切れぬ怒りを瞳に宿し、空を見上げる。

……東の空が、見たこともない奇妙な色に染まっていた。

そして、足元に満ちる毒も、その方向へと伸びている。


「ほう……そこか……許さぬぞ、許さぬぞ!!」


ズローヴァは往く。憤怒の炎を身にまとい崇拝するルルベルヘの思いを胸に秘めて。





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