シーラ・バックストーリー

 
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シーラ・フリール CV:
2017/00/00

「その者の心にふさわしい香りを作るというのは、おまえか」

 瓶や壹、薬草や木の実が所狭しと並べられた香水工房。
 紡れた男の言葉に、工房の主たる少女は、ふんわりと微笑んだ。

「はい。どんな香りをお作りいたしましょう?J
「心に何も感じなくなる香りがいい」
 男は、絶望にまみれきった声で言った。
「私は兵士だが、今度、王の命令で、ある村を焼き討ちすることになった。
 見知らぬ村とはいえ、いい気分がするものじゃない。
 だから、何も感じなくなる香りがいい」
「わかりました」

 少女はうなずき、ゆるりと手を振った。
 すると、その勤きに合わせて、色とりどりの小瓶が三日月状に宙に並ぶ。
 少女は、その中から1つの小瓶をつかみ取り、蓋を開いた。

「では、あなたさまには、こちらの香りを」

 少女が小瓶をさあっと振ると、中身は輝く霧と化し、男を包んだ。
 たちまちかぐわしい香りに包まれて、男は、ハッと目を見張る。
「この香りは……俺の故郷の村のにおいじゃないか……!」
 激しい郷愁の念に撃たれ――男は薬を手で覆い、鳴咽をこぼした。

「どうしてだ……なぜ、俺に故郷を思い出させる!」
「わたくしは、お客さまが心から望む香りを作ります」
 少女は、震える男を優しく見つめながら、言った。
「その香りは、あなたさまの心が今、本当に求めていた香りなのです」
 それを聞いて――男は、恥も外聞もなく、座り込んで号泣した。

 ――工房を去った男がどうしたのか、少女は知らない。
 ただ、その後、どこかの村が焼かれたという話を聞くことはなかった。




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