サテュルネ・バックストーリー

 
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サテュルネ・ソトン CV:
2017/00/00


気が付くと幼い少女が一人、僕の枕元に立って顔を覗き込んでいる。
「――君は誰?」
彼女の唐突な出現に、僕は驚く事も忘れて、ただ静かに名を尋ねた。
「私……、サテュルネ。サテュルネ・ソトン」
名前なんか知ってどうする? もっとこの状況にふさわしい質問があるだろう。
例えば、そう……理由。なんでこんなところに女の子がいるんだ?
「どうして君は――」
ようやく口を出た僕の質問は、彼女の振るう大鎌によって遮られる。
彼女は身の丈よりもずっと長く大きな鎌を振り下ろし、その刃を僕の顔すれすれで止めたのだ。

「あ、まだか……、今の、間違い。でもお前、もうすぐ死ぬよ。そしたらそのタマシイ……、私の。いい?」

――と、僕はまた、そこで夢から覚める。
こんな風にサテュネが僕の夢に現れる様になったのは、星屑山に入って二日目の晩からだ。
羊飼いの僕は、毎年この時期――空に浮かぶ鎮星が太陽よりも大きく見える季節――になると、羊達を連れて星屑山に登る。
そして西の空に氷星が浮かぶまでの数週間、一人で山小屋に住み込んで、羊達を放牧するのだ。

――そして僕はもう、三週間も同じ夢を見続けていた。
ふと、自分が死んだ後の世界について考えてみるが、羊の事しか浮かばなかった。
なんだかなぁ。僕は、ベッドを出て、昨日の内に汲んでおいた水で顔を洗う事にした。

「……お前、もうすぐ死ぬよ」
驚いて顔を上げると、そこにサテュルネが立っていた。
「私……、サテュルネ。サテュルネ・ソトン……。あ、違う。名前はもう言ったんだ」
「うん……。君の名前は知ってる」
口をついて出た自分の声は、いささか間抜けではあるものの、物理的な音として響いた。
これは夢じゃない。
「私……、死神……。あなたの魂をもらいに来たの……。あ……、言えた」
現実の僕は、夢よりもずいぶんと冷静だった。
「……つまり、僕を殺すの? だったら、最後に羊を放してやりたいんだ――」
しかし彼女は小さく首を横にふり、僕を遮る。
「殺さない。ただ……、待つだけ。放っておいても、あなたは死ぬもの」

――こうして、僕は死ぬまでの間、この幼い死神と二人きりで過ごす事になった。
いっしょに羊を眺めながら、僕たちはいろんな話をする。
彼女はとても無口だから、ほとんどは僕が質問をする訳だけど。
彼女は鎮星に住んでいて、死んだ人の魂を集める役目を負っているそうだ。
鎮星には巨人が沢山住んでいて、みんな見た目は怖いけど、気弱で優しいやつばかりらしい。
他にも色々質問したけど、結局、自分がいつまで生きるのかは聞かないことにした。

――空に浮かぶ大きな鎮星の環を眺めながら、僕たちは今日も、羊を眺めて過ごす。





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