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【白猫】メルクリオ・思い出

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最終更新者:にゃん
偉大なる吸血鬼の眷属
メルクリオ・C・アンジェロ cv.水橋かおり
偉大なる吸血鬼<夜の王>の末裔。
始祖にならって100人の花嫁を探している。
2015/07/29


思い出1



積み荷はこれで全部かしら?えーっと、他には……

ちょ!アイリス!こ、ここここれって……

運び込んだ積み荷の中に奇妙な黒い箱が紛れている……

これは……棺、よね。とりあえず中身を確認しないと……

ええぇ~、やめましょうよぉ……もし中になんかいたら――

よいしょっと。


Zzzz‥‥‥Zzzz‥‥‥

いたわぁーー!!

う~ん……おい、まぶしいぞ……誰だよもう……ん?

え、えっと……こんなところで寝てたら、身体痛めちゃいますよ?

いやいやいやいや、そうじゃないでしょ。

…………

あ、あの……

……ククク……なるほど、運命の邂逅とはよくいったものだな……

な、なんなの、この子……もしかして、寝ぼけてるの?

ククク、決めたぞ……おい、お前!

えっと、なにかしら?

我の花嫁になれ!!

……え?

ちょ! なに言ってんの!?そもそも、どこの子よ、アンタ!

ふん、我の名はメルクリオ!かの偉大なる<夜の王>の系譜を継ぐ吸血鬼だ!

はあ……吸血鬼ねえ……ていうか『よるのおう』って?

なに……我ら吸血鬼の歴史にその名を残した、あの<夜の王>を知らないというのか!?

知ってる、アイリス?

ううん……主人公は?


お、お前ら~~!僕を馬鹿にしてるだろ!少しは怖がれよっ!!

いや、怖がるもなにも……アンタまだ子供じゃないの。

ふん……まあいい。おい、そこの銀髪の娘――アイリスといったか。

えっと……なにかしら?

お前は必ず我のものにしてやる。次に会う時までに、その首筋を綺麗にしておくんだな。

ククク……フハハハハハ!!

メルクリオは、無数のコウモリとなってその場から消え去った――!


……もう金輪際、棺は開けないように。いいわね、アイリス。

う、うん……


思い出2


……すっかり遅くなっちゃった。早く帰って夕食の準備をしないと……

ククク……いい夜だ。吸血鬼の時間に相応しい。そうは思わないか、アイリスよ。

! あなたは……メル君、だったかしら?


『メル君』!? だから子供扱いす……ゴ、ゴホン!人間風情が気安く我の名を呼ぶな。

それじゃあ、なんて呼べばいいかな?

へ? え、えーっと……そ、そんなことよりも、アイリス!そろそろ決心はついたか?

え? 決心……?

ククク、これからお前は、我の寵愛をー身に受けるのだ。これ以上の幸福などあるまい。

ゆえに聞くまでもないことだが、あえて問おう……我の花嫁となることを誓うか?というか誓え。

その……ごめんなさい。誓いません。

おい! 我はたった今、『誓え』と言ったはずだぞ!

やっぱり、あなたにお嫁さんはまだ早いと思うよ。

わ、我は吸血鬼だぞ!人間ごときの尺度で我を推し量るでないわ!

それにね、そういうことはあなたが本当に大切だと思った人に言うべきだと思うの。

いや、だからな……

……とても大事なことよ。

う! は、はい……って、違う、そうじゃない!

ふん、どうやらお前には、自分が蜘蛛の巣に捕らわれた蝶であるという自覚がないようだな。

うーん、そうなのかな……?

そうだって言ってるだろ!お前は人間で僕は吸血鬼なんだぞ!怖がるのが普通だろうが!

ご、ごめんなさい……

ちっ、いいか、もうー度よく聞け!

我は、人間どもを恐怖の底に陥れた<夜の王>の眷属!邪悪の頂点に立つ吸血鬼だ!

アイリスよ、次に会ったとき、それを思い知らせてやる。覚悟しておけ!


……邪悪な、吸血鬼……

ちょっとアイリス~!なかなか帰ってこないから心配したわよ~。

あ、ごめんなさい。この間の吸血鬼の子とお話してて……

ええ!? だ、大丈夫だったの?なにかされなかった?

ううん、平気よ。それに……あの子はたぶん悪い子じゃないよ。そんな気がするの……

アイリス……?


思い出3


さあ、今日もはりきって魔物討伐にいくわよ~!

ええ、いきましょう!

――待て。

あ……メル君!

アンタは……いつぞやの、おマセ吸血鬼!

ククク、あの夜ぶりだな、アイリス、それからその他大勢。

ていうか、おマセって言うなー!僕は本気なんだぞ!!

ふふん、ツッコミが遅いわ。まだまだ青いわねえ。

ちっ! ……ところで貴様ら、今から魔物の討伐にいくのだろう?我も同行させてもらおうか。

へ? なんでまた?

我が始祖――<夜の王>の正統な後継者であることを、力をもって示してやろうと思ってな。

はあ……で、どうやってそのチカラとやらを見せてくれるわけ。

ククク、これを見るがいい!


メルクリオの手にした剣から、血のように赤い妖気が立ち上る!

これは<魔剣ノクトゥス>。始祖より受け継いだ正真正銘の魔剣だ。

始祖はこの剣の力で人間どもの軍勢を撃滅し、夜の世界を支配したのだ!



ククク、どうやらこのノクトゥスの妖気に引かれてきたようだな。

メル君!まさか、一人で戦うつもりなの?

お前たちは下がっていろ。いささか役不足だが、我の力を示すにはちょうどいい。

やめときなさいよ。子供の遊びじゃないんだから。

いいから見てろ!これが魔剣ノクトゥスの――夜を支配する力だ!!


クハハハ! 脆い、脆いよなぁ!

失せろ、下等種族どもが!クハハハハハ!!

もっと、もっとだ!もっと血を見せろ! アハハハハ!


調子に乗っちゃってまあ……アイツら剣が弱点なんだからそりゃ楽勝でしょうよ。

メル君……



クク、ハハ……どうだ、人間ども。僕の力はすごいだろ? これが夜を統べる吸血鬼の力だ……

怖いだろう、恐ろしいだろう。わかったら大人しく僕の花嫁になれ、アイ……リス……

メル君!?どうしたの? しっかりして!

ちょ、今度はなんなのよ!

う、うう……

倒れ伏したメルクリオの手で、魔剣ノクトゥスが怪しく光る――

……まさか、この魔剣がメル君を……?

とにかく、急いで飛行島に連れて帰りましょ!

え、ええ、そうね!


思い出4

こんにちは、メル君。身体はもう大丈夫?

……なんだよ。僕を笑いに来たのか?

えっと、メル君はどうして花嫁にこだわるのかな?私、それが聞きたくて……

ふん、欲しいモノは物だろうと女だろうと我のモノとする、ただそれだけだ。

……本当にそうかな?

なんだと? どういう意味だ。

私には、それ以上の……もっと先に理由があるように思えるの。違うかしら?


……我が始祖――夜の王には、こんな言い伝えがある。

え……?

始祖は同族からも恐れられた暴君の中の暴君だったという。

それこそ始祖に対抗できる者は、かの帝王ヴィルフリートくらいといわれたほどだった。

ref(50x50/1503836991.jpg,20)そんな始祖の暴君のごとき所業の中でも有名なのが、<100人の花嫁>の伝説だ。

100人の……花嫁?

人間たちの中から絶世とうたわれた美女を掠奪し、手元に置いたのだ。

その数はなんと100人にのぼり、いまだかつてそのような偉業を成し遂げた吸血鬼はいなかった。

それじゃあメル君も、そうなりたいと思って……?

……だが、始祖は暴虐の果てに人間どもに討ち滅ぼされた。

途端に眷属たちは逃げるように離散し、―族は没落の一途を辿ったのだ。

……そういうことだったのね。

人間にやられたことは口惜しいがそれでも始祖は歴史に残る数々の偉業を成し、伝説となった。

だから、今度は僕が新たな夜の王になって、もうー度吸血鬼の時代を築くんだ!

そ……それに……

うん?

100人も嫁がいれば、たくさん家族もできるだろうし……

メル君……大変だったんだね。

アイリスは、メルクリオの頭をそっとなでた。


っ! き、気安くさわるな、人間!

きゃっ!

あ、ご、ごめ……くっ!

お、お前ら人間風情に同情されるいわれはない!

メル君……あなたは……

我は始祖の遺志を継ぐ吸血鬼!いずれはお前たち人間の脅威となる存在!

僕がお前たちを支配してやる。夜は再び吸血鬼の時間となるのだ!


「――その覚悟、しかと聞き届けたぞ――」


え?

! なに……この邪悪な気配は……!


「――我の遺志を継ぐ、誇り高き吸血鬼よ――」

ノクトゥスがざわめいて……まさか……始祖様なのですか!?


「――時は満ちた……我が末裔よ、我が剣を取れ――!」

っ! メル君、だめ!今その剣にふれたら……!



…………ククククク……

ハハハ……フハハハハハハハ!アーーハッハッハッハ!!

メ、メル君……?


思い出5


ア、アンタ、なにしてんのよ!?アイリスを離しなさい!

悪ふざけにもほどがあるわよ!

ううう……みんな……

ふん、ひかえろ、虫けらどもが!!

ひぃ! な、なんなのよ……このプレッシャーは……!

気をつけて! この人は……!

誰が発言を許した、人間。今のお前は我の所有物だということを忘れるな。

一体どうしちゃったのよ、アンタ!

ふん、聞け、愚かな人間ども。そして我の言葉をその心に畏怖をもって刻め。

我は夜に生きる者たちの王!かつて<夜の王>と呼ばれ、恐れられた吸血鬼の祖であるぞ!

……フリって感じじゃないわね。まさか本当に……?

それにしても、我が不在の間に、ずいぶんと虫けらが増えたようだ……なあっ!!

――!!

主人公!いきなりなにするのよ!

ちっ、まだ魂と肉体が完全に定着していないか……だが復活さえ果たせばこちらのものだ。

どれ、復活の祝酒に、我が末裔が見初めた女の血でも頂くとするか。

っ!やめて!メル君、おねがい、目を覚まして!

ああ、助けてやるとも。お前を我の101番目の嫁とし、あらゆる苦痛から解放してやろう!


――ッ! アイ……リス……

! メル君……!!

ぬう! こやつ、まだ意識が残っていただと!''

くうっ! ……アイリスは……僕のもの、だ……!

ぐぬああああ!たかが末裔ごときが……!邪魔だ、我が内から消え失せろ!

なんだかよくわからないけど、チャンスよ、主人公!

主人公!メル君を助けてあげて!お願い!


思い出6


ぐああああ! その光は……!や、やめろぉぉぉぉ!!


あれが……夜の王の魂……!

うう……はぁ……はぁ……

ええい、なぜ拒絶する!夜の王となることがお前の望みだったのだろう!

……始祖様にはこんな言い伝えがありましたよね。

ああ!?お前、なにを言って……

かつて始祖様が掠奪した花嫁の中にー国の姫がいて、その報復として国王が始祖様に大軍を差し向けた。

そして何万といた人間の軍勢はたったのー夜で壊滅した。……始祖様一人の手によって。


ああ、そうだとも!我のモノに手を出すなど愚の骨頂!徹底的に滅ぼしてやったわ!クハハハ……はっ!

そう、アイリスは僕のモノだ。手を出すなど愚の骨頂……そういうことですよね、始祖様。

ま、待て、落ち着け!いいからその剣をしまえ!お、おい! 聞いて……

滅びろォーー!!


ぐあああ! こ、この夜の王がかような若造ごときにィィィー―!

覚えておけェ、我が末裔ッ!このままではすまさんぞ!絶対にだァァァー―!


夜の王は黒い霧となり、魔剣の中へと吸い込まれた……


や、やっつけたの?

ヤツはノクトゥスの中に再び閉じ込めてやった。しばらくは出てこられないはず……

アンタ、ご先祖様を尊敬してるんじゃなかったっけ?

始祖様は、敵なら身内であろうと容赦しない、残忍な吸血鬼だった。だから僕もそれにならっただけだ。

メル君、大丈夫!?

アイリス! ……ゴ、ゴホン!ふん、問題などなにもない。

まだ続けるわけ?その夜の王スタイル。

しかし、まさか始祖に身体を乗っ取られるとはな……我もまだ未熟ということか。

だが見ていろ! 我はいつか必ず始祖をも超える王の中の王になってみせるわ! フハハハ!

そうね、メル君ならきっとなれると思うわ。がんばって!

フハハ……って、え?そ、そこはお前ら的には止めるところじゃないのか?

僕は邪悪な吸血鬼になって、お前らを支配するつもりなんだぞ?そこんとこわかってるのか?

それでも私は……メル君のこと、信じてるから。

お前……!ふ、ふふふ、そうか、さすが我が見初めただけのことはあるな。

いいだろう! そこまで言うなら、お前を栄えあるー番目の花嫁として娶ってや――

あ、ごめんなさい……お嫁さんになるのはちょっと……

はあ!? なんでだよ!お前、僕に惚れてるんだろ?

自意識過剰よ、アンタ!どこまでマセてるのよ、まったく!

ぐぬぬ……決めたぞ!夜の王の名を継ぐためにも、いつか必ずお前を嫁にしてやる!

覚えてろよ! 絶対だぞ!ちくしょーーー!


またお約束な捨て台詞を……やっぱりまだまだ子供ね。

……がんばってね、メル君。



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