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シュラ・思い出

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最終更新者:にゃん
鬼族の武人
シュラ・ソウリュウ cv.村瀬歩
百鬼夜行、魑魅魍魎を従える鬼。
人族を知るために各地を旅している。
2015/03/27


思い出1



皆様初めまして、私は鬼族の武人、シュラと申します。

よろしくおねがいします、シュラさん。

礼儀正しい人ね。

人ではありません。私は百鬼夜行を率いる鬼です。

人の子より恐れられ、さげずまれ、憎まれる、異形異能の種。

古の神にも匹敵する、この世ならざる一族の、末席にございます。

そうなの。まあ、ゆっくりしてけばいいわ。

おやおや、この島の方々は実に呑気ですねぇ。鬼の恐ろしさをご存じないと見える。

確かにご存じないけど?

教えて差し上げてもよろしいのですが、私としては、そんなことはどうでもいいのです。

何かご用ですか?

ええ。こちらには、お土産屋さんはありませんか?

えーっと……あったっけ?飛行島のおみやげ。

さあ……?

いけませんね。飛行島は今や世界中に注目される観光の名所。

確かに空を飛んでいる島なんてなかなか珍しいものね。

名高い観光地には、それなりのお土産があってしかるべきものです。まったく……わかってませんねえ。

そうなんですね。

仕方ありませんね。この近くの島で何か買っていきますから。

まったく、近頃の観光地と来たら。

……観光客さんだったのね?



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思い出2



このウッドソード、なんでわざわざ『ひこうじま』って描いてあるワケ?

バロンさんが作ったんだって。お土産といったらこれだろうって。

まさか、飛行島のお土産?この旗も?飛行島の絵が描いてあるわね。

旅の風景画家さんに描いてもらったんだって。

あとはこの……クッキー?

ヘレナさんがつくったクッキーよ。まだ試作品だって。

……あなた方は、お土産をナメてませんか!?

あ、お土産評論家さん。

鬼です!

せっかくですので、お土産を作ってみたんです。

それは大変殊勝な心がけです。ですけどねぇ。

なんですか今時ウッドソードって。

お土産の定番らしいじゃない。

そりゃウッドソードは定番ですよ。地名の書いたウッドソードはね。

でも、飛行島らしさ皆無です。この島ならではの特徴がほしいですね。

この旗はどう?

絵はすばらしいですが、やっぱりコレという個性が感じられません。

個性ってむずかしいんですね。

クッキーは?

……形が問題ですね。もっとこう……あるでしょう。飛行島らしさってものが。

何か参考になった気がするわ。多少ムカついたけど。

というわけでそこのウッドソードと旗、いただけますか?

は、はい。ありがとうございます。お値段は……

結局買うのね。



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思い出3



<シュラが、変な人形をもってやってきた……>

あら、お土産マニアの観光客さん。

鬼です!そろそろ本当に鬼の恐ろしさを知りたいようですね。

それ、お土産ですか?

その通りです。ご覧ください、この胡散臭い人形を。これこそがお土産ですよ。

面白い顔の人形ですね。

よくできてると思うけど?何が胡散臭いワケ?

この人形はとある遺跡にある石像のレプリカなのです。

ああ、そういうこと……たしかに胡散臭いわ。

実に奇怪な代物です。まったく意味がわかりません。

遺跡に観光にいったからといって、わざわざニセモノを買ってどうするんでしょうね?

旅の記念ってことでしょ。

旅の思い出に未練があるのですね。あさましい限りです。

実際に見た景観に、レプリカが及ぶはずもないというのに。

マニアのアンタがお土産にケチつけるわけ?

私は別にお土産マニアではありません。鬼です。

私は人間のなんたるかを研究するために、こうしたサンプルを集めているのです。

どうしてそんな研究をされてるんですか?

人間に勝つためです。

勝つ……って。

我が故郷である鬼ヶ島は、人間と敵対しています。現在戦いは小康状態。

だが両者は常に一触触発予断は許しません。

大変な状況なんですね。

よって私は威嚇と研究を兼ねて旅に出ているのです。

鬼の恐ろしさを伝え、人の愚かさを確かめるために。



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思い出4



討伐お疲れ様。シュラ、アンタって強いのね。

おかげで助かりました。

別にこの程度なんでもありません。我々は、戦いを好む鬼ですから。

たしかに、戦ってるときのアンタ、楽しそうだったわ。

鬼というのはそういうものです。戦いにおいては、鬼の異形と異能は、力となる。

この私も、百鬼夜行を率いる力を宿しています。<鬼>と呼ばれし存在の魂を率い、操る力が。

この世を怨む鬼の魂は、人を害することしかできません。されど……

普段は疎まれる鬼の異形が、戦では花となるのです。

そんなに嫌われてるワケ?ひどい話。

ええ、実に醜い話です。どうしてわれらが嫌われるのか、ご存知ですか?

わからないわ、どうして?

人と鬼は異なる種。異なることは争いの種。

そして争いを止めるのは、愛や思いやりではない。

……それは、なんです?

武力です。鬼が人とただ違うだけならば、すでに滅んでいたでしょう。

我らの異形は、強さの表れ。強いからこそ我らは生き抜いた。

戦い続けるしかないんですか?

今のままではそうでしょう。最近は少しだけ状況が変わる兆しはありますが。

だったら話しあう余地がありますよね?

もちろんです。だが交渉というのはおおむね戦と同じこと。

下手な妥協をすれば、鬼ヶ島の民は苦しみを背負う。

戦とは強いものが殺しあうもの。だが交渉に負ければ、弱い物から死んでいくことになります。

仲良くはできないの?

不可能ではないでしょう。でもそれは、遠い未来のことでしょうね。

……そしてこのシュラは武人。いつか起こる戦に備えるものです。



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思い出5



どうしたの、シュラ。なんか悲しそう。

少々面白くないことがあったのです。

どうしたんですか?

幼馴染と口げんかをしましてね。『なんとあきれた石頭じゃ』などといわれました。

……ガンコだもんね、アンタ。

我々鬼は人から嫌われてます。

そうみたいね。アタシらはそうでもないけど。

つい先日、ある島に赴いたところ、人間の少年に刀で斬りかかられました。

人間の世界を歩いていれば、よくあることですけどね。

シュラさん、その子を……

とりあえず刀を奪いました。そして、問いただしました。『何故このシュラを襲うのか』と。

少年はいいました。『俺の父親は、蒼の鬼神に殺された』と。

蒼の鬼神……?

私の二つ名です。聞けば少年の父は鬼ヶ島を攻めた人間の兵でした。

それじゃあ……

おそらく私が、少年の父を殺したのでしょう。

アンタ、その子どうしたのよ。

――斬ってやるつもりでした。

少年は鬼を憎んでいる。長ずれば、いずれ我らの敵となるでしょう。

武人として、禍根は立たねばなりません。

しかし、そこに駆けつけた幼馴染は、私を止めたのです。

幼馴染はこう言いました。『おぬしの考えは人と同じじゃ』と。

……私は、刀を振るえなくなりました。

よかった……

良くはありません。……私は、初めて迷いを覚えたのです。

私はなぜ……彼を斬れなかったのでしょうね?




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思い出6



この光、なるほど、ルーンの光ですか。

主人公どの、お心遣い感謝いたします。

だが私に、かようなことは不要。もうこの私に迷いはありません。

じゃあ、どうするわけ……?

とりあえずあの少年に告げようと思います。

『蒼の鬼神と戦いたくば、戦場に来い』と。

その子とも戦うんですか、シュラさん。

無論です。だがそれは、戦となればの話。

それまでは、この私が少年を斬る道理はありません。

人間とは、戦いを続けるのね……

もちろんです。私は百鬼夜行を率いる鬼の武人。戦いが生業です。

しかし鬼は、戦うだけが能ではありません。私の幼馴染のように策に長けたものもおります。

あいつだったら、面白い策を思いつくかもしれません。

戦争以外の解決方法を、探そうとしているんですか?

ええ。戦よりもえげつなく、人にとっては受け入れがたい解決方法をね。

……いったい何を考えてるワケ!?

私の幼馴染は、なかなかの陰謀家です。ましてあいつは言葉を操る。

じきに、面白いことになるかもしれませんよ。

コワいわね……ところでお土産のクッキーができたんだけど。

ほう。それは興味深い……む、このクッキーは、キャトラ殿の顔をかたどっているのですか?

そーよ。なんか恥ずかしいからアタシは反対したんだけど。

……一言でいえば、まだまだですね。

だいたい猫の顔なんてありふれています。一つください。

買うのね!?






百鬼夜行の将


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